2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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程近智氏(以下、程):それでは、残り15分弱ありますけれども、コメントまたは質問をよろしくお願いいたします。所属とお名前をお願いいたします。
質問者1:今日は貴重なお話をどうもありがとうございます。先ほどお話にありました、意識のギャップというところに今すごく悩むことが多いんです。
15年前の環境と今許される環境というのが、ぜんぜん違っています。例えば、自発的に飲みに行ったのに「なんかいやらしい目で見られたからいやだ」とかね。私じゃなくて、従業員がそういうことを言われたりするんですね。
「どこまでが配慮すべきところ」「どこまでがセクハラでどこまでがそうじゃないのか」という、そこの判断ってみなさんどのようにされているのかなというのをお聞かせいただければと思っております。
程:はい。どなたからでもけっこうです。永沢さん、大丈夫ですか?
永沢徹氏(以下、永沢):これはもう、やはり被害者が「いやだ」と感じたらば、それはセクハラと捉えたほうがいいだろうと。処分するかどうかは別ですよね。
ただ、例えば1対1で飲みに行くというケースがあるとします。別に普通の男女が1対1で飲みに行くのは、そんなにおかしいことではない。だけど、上司が異性の部下を1人で誘うと、これはやはりまずいのではないかと。少なくともまずいと思われた……とするならば、それは改めるべきではないかなと。
これが複数の女性を誘うということであったり、あるいは上司も何人かで行くんだったらば、それはそれ自体でおかしいということにはならないんだろうと思います。そういう点では、やはりセクハラに関するかぎりは、被害感情を持たれるような客観的な情勢を作ること自体に責任がある、と考えるべきなのかなと思いますね。
一方でパワハラに関してはその基準ではなくて、客観的に見て「優越的地位の濫用」というのが企業間の取引ですので、「通常の指導や指揮・命令の範囲を超えるかどうか」という、客観的な認定が必要になるのではないかなと思いますね。
程:女性の方がお二人いますけど、そのへんはいかがですか?
大門小百合氏(以下、大門):まったく同感です。もう1つよくあるケースは、1対1じゃなくてグループで行ったときに、同じ会社の人が見てるんですけど、それ(ハラスメントが発生していること)をなにも言わないとか、そっちのほうが罪が重いのではないかなと思うんですね。
それはやっぱり社員の教育だと思うんです。どういう場だとアウトなのか。「これ、まずいですよ」とちゃんと上司の人に耳打ちできるかということもありますから、まずそのへんの社員教育をしっかりやるのがいいのかと思います。
程:はい、ほかにありますか?
岩田喜美枝氏(以下、岩田):(慌ててマイクをとりながら)すみません。
(会場笑)
質問者1:そういう意味で、直属の上司じゃなくて、斜めというのもあるんですか?
岩田:もちろんそうです。はいはい。
それから、逆に言うと、部下が引き起こすハラスメントもあるんですよ。新任の管理職とかが来たときに、部下が団結してその新任の管理職をいじめるって、これもパワーハラスメントなんですね。だから、職務上のいろんな力関係が背景にあると、ハラスメントが起こりやすいんですね。
岩田:今、各社さんが社員にハラスメント研修というのをやっていますけれども、「なにがハラスメントか」という本質をちゃんと教えることが一番です。
もしなにかそういう不愉快なこと・つらいことが起きたときには、まず「いやだって言いなさい」ということを、ちゃんと教育しないといけないんですよね。相手は「いやじゃなかったよ」「同意してたんじゃないか」と言いますので、「いやだ」ということをはっきり言うって当たり前のことです。そういうことの教育とか。
私は、女性社員に限らず、ハラスメントを受けた人が「つらい」と思えば、それをちゃんと日記風に記録をしなさいという指導もしていました。あとで本当に事実関係を調査するときに、そういうのが本当に資料として大事になるので、いつなにが起こったか記録を録るようにも言ってましたね。
永沢:そういう意味では、今はもう記録を録るよりも録音されているケースが非常に多いです。申告されるときにスマホの音声を出されて、それで「こういうことを言われたんです」ということがあるので、繰り返されるようなケースだとするならば、それはきちんと録音するのが対応策としてはいいのかなと。
やっぱり、「言った・言わない」と水掛け論になることはすごく多いですし、「そういうニュアンスじゃなかった」とおっしゃるケースがほとんどですのでね。
程:わかりました。ほかにどうぞ。
質問者2:大変興味深い話をありがとうございます。私自身も自分の会社でハラスメントを撲滅する側の人間なので大変興味深く思ったのですが、実はちょっと最近感じているジレンマがございます。
まず、基本スタンスとして、ハラスメントは絶対にあってはならないことです。そして、そういうことが起こったらきちっと対処するというのがまず大前提です。ですが、先ほど程さんもおっしゃられたとおり、これがドラマになったり、今「ハラスメント」とググりますと「〇〇ハラスメント」とやたらいっぱいハラスメントが出てきて、ちょっとバズワード化してきてるようなところもあるかなと。
そうなってきますと、例えばクレーマーがモンスター化していくように、ハラスメントを人質のようにとって、いろいろなことを主張してくる方というのも生じないわけではない、というところがあってですね。
私自身はハラスメントをもちろん撲滅したいわけですけれども、過剰にハラスメントを気にしすぎるとか、ハラスメントと主張した側が有利になるとか、そういうことでない本当に健全なかたちで進むようにするために、なにか「やるべきこと」「心がけるべきこと」があれば教えてください。
程:これは重たいテーマですね(笑)。私も社長の時、常にケースバイケースで悩みましたけど、なにかありますか? たくさんケースを見られているみなさん(笑)。
永沢:やっぱりそういう意味では、案件に対してどう公正に会社が判断したかということをちゃんと社員が見ています。そこで「これに関してはさすがにクレーマーだろう」という、「リバースハラスメント」だというケースもあるんですけれども、それはそれでまったく言いがかりであるということを、きちんと認定してやることが大事なのかなと思います。
言いがかりの場合でも、一分の理があるというケースもなかにはあります。それはそれで、今後対応すべきだという場合もあるのかなと。
ですから、先ほど岩田さんからもおっしゃいましたけれども、きちんと事実認定をするのは非常に大事なことです。なかなか水掛け論で最終的な事実認定が難しいケースはあるのですが、やっぱり周りが見ていますので、そういう点では「周りから見てどう感じるか」ということはすごく大事です。そのあとの会社の判断に対して、従業員が支持してくれるのか・そうではないのかというのも、すごく大事な要素ではないかなと思いますね。
程:はい。ほかにアドバイスはございますか?
大門:たぶんたくさんの企業の方がすでにやっているかもしれないんですけど、やっぱり「ハラスメント規定」というのを、きちんと就業規則に入れるということはまず大前提だと思うんですね。
就業規則違反をした社員をどうやるか(対処するか)というのは、みなさんやられていると思いますけれども、懲戒なのかなんなのか、その前の調査。それから、双方の言い分をちゃんと聞き取って、それを文書化して、第三者が入って議論して、本当にこの処分でいいのかというのを(やる)。
あとは本当に、全部会社の規定に則ってやることだと思うので、「パワハラだけ」「セクハラだけ」が特別なことではないんじゃないかな、とも思うんですね。ですから、きちんと就業規則に明文化してやるということだと思います。
程:なるほど。うちの会社も、コンダクトとハラスメントのトレーニングを毎年(実施していて)、私は今でも受けないといけないんです。受けるだけじゃなくてクイズがあって、それが通らないと通過できないというのがあります(笑)。
毎年みんなやっているんですけれども、コンテンツが変わってますし、「こういう事例があった」「こういう観点があるんだな」ということがあるので、愚直にずっとやっていくことも、非常に重要かなと思います。
もう1つか2つのコメント・質問の時間があると思うんですけど、いかがでしょうか? はい、どうぞ。
質問者3:ありがとうございました。私は今、人事部長をやってまして、日々この問題に直面しています。あと、昨年までブラジルにいて、ブラジルでもこういうことに携わっておりました。そういうことによって、国による差ってけっこうあるなということを認識しています。
加えて、今年……まあ内情を言っちゃうと、アメリカの人事のマネージャーから日本人の出向者の発言についてのレターが届いて、不適切だということがありました。それに対してはいろいろアナウンスメントを出したり、あと出張者や出向者に対する教育をしようか、というようなことをやろうとしています。
その時に気がついたのが、アメリカにおいてどういうものが問題になるかということについて、やはり日本の常識とだいぶ違うなと感じました。
そういうなかで、とくに日本人だけが別に国境を越えているわけではなくて、いろんな国籍の人間がグルグルと世界中を回っているようなところで、基本は同じだと思っているのですが、これからどういうグローバルなハラスメント教育をやっていいのかということが、1つの課題になっています。なにかご示唆をいただければありがたいなと思ってます。
程:西谷さんいかがですか?
西谷武夫氏(以下、西谷):非常に難しい問題ですね。私も常々考えるんですけど、このハラスメントの要因というのも、やはり「会社によって」「そのときによって」、当然、「国によって」違いますよね。ただ、基本的に同じものってあると思うんです。それはやっぱり、ケースから割り出すしかないんじゃないかと思ってるんですよね。
ですから、先ほど申し上げましたように、各国でのいろんな要素を、あるいはケースを拾い上げて、その中から自分の今ある会社での一番合ったルールというか、そういうガイドラインのようなものを作っておくことが、私は一番よろしいんじゃないかなと思うんです。
それから、繰り返しますけど、それが常に変わりますから、定期的にレビューをしていくことが、非常に重要なんじゃないかなと思うんですね。
ですから、会社の生産性とかそういうことを考えると、もうすべて決め込んで「これが違反だ」と言うことは、私は必ずしもよくないんじゃないかなと思っています。ただ、基本的にダメなことがあるのは当然ですけど。
程:逆に質問なんですけれども……例えば、毎月やらなくてもいいですけど、3ヶ月に1回ぐらい、経営会議でダーって事例をあげて経営者のみなさんで議論するというのは、いかがですかね?
質問者3:うちの場合ですと、ホットラインなどで上がってきたことについては、実は経営会議などで共有しています。そういうときに明らかになってきたようなことは、今おっしゃっていただいたように、事例として出したり、アナウンスを出したり、1年に1回アンケートを出したりして周知はしています。
それを見たときに問題だと思うのが、「日本人的な視点で作っちゃってるってところが、本当に大丈夫かな」というところなんですね。「外国人から見て本当にこれでいいのかな」とか、「そこらへんの目があまり入ってないかな」というところが、ちょっと不安なところです。
こんなことを言ったら怒られますけど、日本よりも、まだそういうところにおいてレベルが違うところでは、ある意味もっと日常的にそういうことが行われちゃってるじゃないかとか、そういうあたりが悩みになってますかね。
程:なるほど。ありがとうございます。すみません、もう時間があと2分ぐらいしかなくて、最後にみなさんからひと言、「これだけは言っておきたい」ということを、繰り返しでもいいので、ぜひ。じゃあ岩田さんから。
岩田:今日申し上げたかった一番のことは、リスクマネジメントとして非常に大事だということはそのとおりなんですけれども、それだけではなくて、冒頭で言った、広義の成長戦略としてのダイバーシティマネジメントでどうしても欠くことができない要素であるという、そういう捉え方も大事ではないかということです。
程:ありがとうございます。じゃあ大門さん。
大門:先ほどの件でちょっとだけ付け足しです。外国だとやっぱり、欧米なんかはとくにヒューマンライツという観点でハラスメントを見ているので、できれば一番厳しいところに合わせてほしい。例えば「Human Rights Commission」というホームページもたくさんあります。例えばニュージランドとかオーストラリアもそうなんですけれども、そのあたりの例を見られたらいいかなというのがあります。
もう1つだけ。私も多様性という話をしたんですけれども、これもやっぱり大事です。……今、若い人は「会社は経営をどういうふうにやっているか」というのをすごく見ているので、「自分が働きやすい会社かどうか」というのですぐに判断されて、「ダメだ」と思ったら逃げてしまいます。いい人材を獲得してキープしておくためにも、ぜひがんばっていただきたいなと思います。
程:ありがとうございます。永沢さん。
永沢:やはり働き方の問題だと思うんですよね。働く環境をいかに整えるかということで、仕事における優越性と人間的な優越性はまったく別なのに、それが混同されているのがハラスメントの多くに共通していることなのかなと思います。そういう意味では、やっぱりいかに働きやすい環境を会社として整えるかということが、すごく大事ではないかなと思いますね。
程:ありがとうございます。じゃあ西谷さん。
西谷:私もこのハラスメントの問題については、やはり異文化をどう活かしていくかということが、これからの日本の大きな課題であるし、大きなチャンスだと考えております。
程:今回「G1経営者会議」ということなので、起こってくる事象というのは経営者の自分の鏡だと思って、正面切って見ていただきたいと思います。守り的な発想から、ぜひ攻めのハラスメント対応ということをしていただきたいなと思います。
ちょうど時間となりましたので、パネリストの方に感謝の拍手をもって終了したいと思います。ありがとうございます。
(会場拍手)
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