どこまでをセクハラと捉えるか?

程近智氏(以下、程):それでは、残り15分弱ありますけれども、コメントまたは質問をよろしくお願いいたします。所属とお名前をお願いいたします。

質問者1:今日は貴重なお話をどうもありがとうございます。先ほどお話にありました、意識のギャップというところに今すごく悩むことが多いんです。

15年前の環境と今許される環境というのが、ぜんぜん違っています。例えば、自発的に飲みに行ったのに「なんかいやらしい目で見られたからいやだ」とかね。私じゃなくて、従業員がそういうことを言われたりするんですね。

「どこまでが配慮すべきところ」「どこまでがセクハラでどこまでがそうじゃないのか」という、そこの判断ってみなさんどのようにされているのかなというのをお聞かせいただければと思っております。

:はい。どなたからでもけっこうです。永沢さん、大丈夫ですか?

永沢徹氏(以下、永沢):これはもう、やはり被害者が「いやだ」と感じたらば、それはセクハラと捉えたほうがいいだろうと。処分するかどうかは別ですよね。

ただ、例えば1対1で飲みに行くというケースがあるとします。別に普通の男女が1対1で飲みに行くのは、そんなにおかしいことではない。だけど、上司が異性の部下を1人で誘うと、これはやはりまずいのではないかと。少なくともまずいと思われた……とするならば、それは改めるべきではないかなと。

これが複数の女性を誘うということであったり、あるいは上司も何人かで行くんだったらば、それはそれ自体でおかしいということにはならないんだろうと思います。そういう点では、やはりセクハラに関するかぎりは、被害感情を持たれるような客観的な情勢を作ること自体に責任がある、と考えるべきなのかなと思いますね。

一方でパワハラに関してはその基準ではなくて、客観的に見て「優越的地位の濫用」というのが企業間の取引ですので、「通常の指導や指揮・命令の範囲を超えるかどうか」という、客観的な認定が必要になるのではないかなと思いますね。

ハラスメントを見て見ぬふりすることの罪と対応策

:女性の方がお二人いますけど、そのへんはいかがですか?

大門小百合氏(以下、大門):まったく同感です。もう1つよくあるケースは、1対1じゃなくてグループで行ったときに、同じ会社の人が見てるんですけど、それ(ハラスメントが発生していること)をなにも言わないとか、そっちのほうが罪が重いのではないかなと思うんですね。

それはやっぱり社員の教育だと思うんです。どういう場だとアウトなのか。「これ、まずいですよ」とちゃんと上司の人に耳打ちできるかということもありますから、まずそのへんの社員教育をしっかりやるのがいいのかと思います。

:はい、ほかにありますか?

岩田喜美枝氏(以下、岩田):(慌ててマイクをとりながら)すみません。

(会場笑)

質問者1:そういう意味で、直属の上司じゃなくて、斜めというのもあるんですか?

岩田:もちろんそうです。はいはい。

それから、逆に言うと、部下が引き起こすハラスメントもあるんですよ。新任の管理職とかが来たときに、部下が団結してその新任の管理職をいじめるって、これもパワーハラスメントなんですね。だから、職務上のいろんな力関係が背景にあると、ハラスメントが起こりやすいんですね。

「いやだ」という意思表示と記録を録ること

岩田:今、各社さんが社員にハラスメント研修というのをやっていますけれども、「なにがハラスメントか」という本質をちゃんと教えることが一番です。

もしなにかそういう不愉快なこと・つらいことが起きたときには、まず「いやだって言いなさい」ということを、ちゃんと教育しないといけないんですよね。相手は「いやじゃなかったよ」「同意してたんじゃないか」と言いますので、「いやだ」ということをはっきり言うって当たり前のことです。そういうことの教育とか。

私は、女性社員に限らず、ハラスメントを受けた人が「つらい」と思えば、それをちゃんと日記風に記録をしなさいという指導もしていました。あとで本当に事実関係を調査するときに、そういうのが本当に資料として大事になるので、いつなにが起こったか記録を録るようにも言ってましたね。

永沢:そういう意味では、今はもう記録を録るよりも録音されているケースが非常に多いです。申告されるときにスマホの音声を出されて、それで「こういうことを言われたんです」ということがあるので、繰り返されるようなケースだとするならば、それはきちんと録音するのが対応策としてはいいのかなと。

やっぱり、「言った・言わない」と水掛け論になることはすごく多いですし、「そういうニュアンスじゃなかった」とおっしゃるケースがほとんどですのでね。

:わかりました。ほかにどうぞ。

バズワード化してきている「〇〇ハラスメント」

質問者2:大変興味深い話をありがとうございます。私自身も自分の会社でハラスメントを撲滅する側の人間なので大変興味深く思ったのですが、実はちょっと最近感じているジレンマがございます。

まず、基本スタンスとして、ハラスメントは絶対にあってはならないことです。そして、そういうことが起こったらきちっと対処するというのがまず大前提です。ですが、先ほど程さんもおっしゃられたとおり、これがドラマになったり、今「ハラスメント」とググりますと「〇〇ハラスメント」とやたらいっぱいハラスメントが出てきて、ちょっとバズワード化してきてるようなところもあるかなと。

そうなってきますと、例えばクレーマーがモンスター化していくように、ハラスメントを人質のようにとって、いろいろなことを主張してくる方というのも生じないわけではない、というところがあってですね。

私自身はハラスメントをもちろん撲滅したいわけですけれども、過剰にハラスメントを気にしすぎるとか、ハラスメントと主張した側が有利になるとか、そういうことでない本当に健全なかたちで進むようにするために、なにか「やるべきこと」「心がけるべきこと」があれば教えてください。

:これは重たいテーマですね(笑)。私も社長の時、常にケースバイケースで悩みましたけど、なにかありますか? たくさんケースを見られているみなさん(笑)。

ハラスメント問題を逆手に取った「リバースハラスメント」

永沢:やっぱりそういう意味では、案件に対してどう公正に会社が判断したかということをちゃんと社員が見ています。そこで「これに関してはさすがにクレーマーだろう」という、「リバースハラスメント」だというケースもあるんですけれども、それはそれでまったく言いがかりであるということを、きちんと認定してやることが大事なのかなと思います。

言いがかりの場合でも、一分の理があるというケースもなかにはあります。それはそれで、今後対応すべきだという場合もあるのかなと。

ですから、先ほど岩田さんからもおっしゃいましたけれども、きちんと事実認定をするのは非常に大事なことです。なかなか水掛け論で最終的な事実認定が難しいケースはあるのですが、やっぱり周りが見ていますので、そういう点では「周りから見てどう感じるか」ということはすごく大事です。そのあとの会社の判断に対して、従業員が支持してくれるのか・そうではないのかというのも、すごく大事な要素ではないかなと思いますね。

:はい。ほかにアドバイスはございますか?

大門:たぶんたくさんの企業の方がすでにやっているかもしれないんですけど、やっぱり「ハラスメント規定」というのを、きちんと就業規則に入れるということはまず大前提だと思うんですね。

就業規則違反をした社員をどうやるか(対処するか)というのは、みなさんやられていると思いますけれども、懲戒なのかなんなのか、その前の調査。それから、双方の言い分をちゃんと聞き取って、それを文書化して、第三者が入って議論して、本当にこの処分でいいのかというのを(やる)。

あとは本当に、全部会社の規定に則ってやることだと思うので、「パワハラだけ」「セクハラだけ」が特別なことではないんじゃないかな、とも思うんですね。ですから、きちんと就業規則に明文化してやるということだと思います。