もうブラインドタッチができなくても困らない

質問:「今の大学生はキーボードのタッチタイピングができない」っていう記事がバズってて、これってレガシーにすがる感じなのかなと思っているのですが、佐藤さんはどう感じてますか?

佐藤航陽氏(以下、佐藤):まさにそれですね、キーボードを使える必要はないですから。スマホのほうが早いんだから。

亀山敬司氏(以下、亀山):確かに俺たちの世代ってキーボードを叩けるやつは仕事ができるやつみたいなイメージあるよね。俺なんか、ブラインドタッチができなくて恥ずかしいみたいな気持ちがあったからね。でも今だったらスマホだけでいけるもんね。

佐藤:もう必要ないです。普通に考えたら、なんでわざわざキーボードでカタカタやるのか意味がわからないですもんね。

亀山:そうそう。

佐藤:あれが固定観念というか、世代が持つ常識だと思いますね。私も今、仕事でいうとキーボードほとんど使わないですよ。効率だけを求めていくと、スマホでいいので。メッセージを送るのはこっちのほうが早いので。

亀山:でも今のITの人ってもともとキーボードから入った人が多かったりするからね。

佐藤:そうです。だから、ITの世代も古くなってきてるっていうのもありますね。1999年くらいにネットができた人たちは、これがスタンダードなので、「やっぱこれから離れるのはありえないよね」というふうに思っちゃってると思う。でもそれは、ぜんぜん今の常識じゃないと思います。

亀山:確かに。スマホチェンジとか遅れるのはそういうのもあるね。

佐藤:あと、ビットコインもそうですよね。日本円を触ってた人にとっては手触り感のない通貨って言われても「絶対おかしいよ、なんで金庫に入ってないんだ」となっちゃうんで。

だからよく若い20前半ぐらいの社員に言うんですけども、「自分が当たり前にしていることを話して、10個とかもうちょっと上の世代の人に違和感を持たれたら、そこはすごいチャンスあるよ」と。「そのギャップこそがチャンスなんで、見つけたら覚えておいたほうがいいですよ」と。

自分には当たり前なんだけど、先輩に言ったら嫌な顔をされたり、「君おかしいよ」って言われる。だけど自分はなんでおかしいのかわからないっていう。それはすごいチャンスがあるんで。

起業家という職業はもう古い?

亀山:逆に、10年後になったら自分がスマホいじってたら「スマホ触ってるんすか? 古いですね」とか言われると思うんで、そのときに「え? なんで?」みたいにならないように、常に頭をほぐさないといけないね。俺なんてこの年になっても、いつも頭のマッサージが大変よ。

佐藤:最近起業家って職業が古くなったんだなって感じましたね。

亀山:おー、起業家ね。

佐藤:アントレプレナーってのは古い存在なんだなと。会社を作って社長になるっていうプロセス自体が古くなってきていて、その必要がなくなってきていると。

亀山:なるほどね。

佐藤:今のブロックチェーンとかああいうものって、そもそも会社とかなくても回る仕組みを作っちゃっているので、次の世代っていうのはもしかしたらアントレプレナーじゃないんじゃないかなって気がしますけどね。

亀山:なるほど。つまり、まがりなりにもリーダーになって組織を作って、その会社を運営していくって形じゃないってこと?

佐藤:うん、その道自体が過去の道になりつつあるんじゃないかなって感じましたね。

亀山:そうか……。うん、うん。

佐藤:みなさん、ここがチャンスですよ(笑)。

亀山:その辺の切り口も、ときどき考えとかないと俺も「生涯経営者!」とか言ってても「なにそれ?」みたいな。

佐藤:「起業家って古いね」と。昨日やっていた堀江さんの「ホリエモン万博」もそうですしね。あれも新しい形ですし、あとはイーサリアムとかもそうですよね。あれも世界中にディベロッパーが点在していて、一応形はあるんですけども、別に企業っていう体をそんな重要視していない。シェアアセットも全部世界中にばらけちゃってるんで、株式とかシェアとかそういう概念もなくなっている。でもうまくいってるっていう。

亀山:基本的には長い時間経営が頭の中にあるから、そっから先また裏返さないといけないから。

佐藤:「売上があって、利益があって、財務諸表がある」っていう思い込みに縛られちゃっているじゃないですか。それが怖いですよね。

孤独を受け入れて、時代の先端をいくべきか

亀山:じゃあ俺もこの50年間を全否定して仕切り直しだね。「俺は50年間、間違っていた〜!」みたいな。まあ、間違ってはいないんだけど。

佐藤:その時代ではあっていたんですよね。今はあってないかもしれないけど。

亀山:これからは違うっていう感じだね。

佐藤:みなさんの世代でいうと、亀山さんの世代の背中を学ぶこともあると思うんですけど、ぜんぜん違うアプローチをしたほうがブレイクスルーする可能性は高いですね。勝てないですからね

亀山:先人の背中を追うだけじゃ勝ちにくにくいね。俺も俺なりに経営のやり方も変えてきたんだけど、そうなってくると前からいた社員とか友達とかとは考え方がずれてくるわけよ。「お前は昔そんなやつじゃなかった見損なった」と。

「もっとこういうことに熱いやつだった」とか、いろいろ言われるから。要は、変わっていくっていうことはもちろん時代にはついていけるんだろうけど、ある意味孤独というか。変化していくことが幸せかは、別の話なんだよね。

佐藤:一緒の速度で動いてくれる人がいれば、別ですけどね。なかなかそれもいないですし。

亀山:うん。時代の速度がずれてくるっていうのは、それはそれで孤独なもんだよね。それで言うと 、「孤独じゃなくみんな仲間がいて楽しくやれるのを幸せと感じるか?」「未来にあるような真理に近づこうとする、ちょっと哲学的なことに刺激を感じるのが楽しいか?」。まあ結局、幸せって難しいね。

佐藤:亀山さんはどっちがいいですか? もうちょっとで全部がわかるかもしれない一歩手前なんだけれども、それを知ってしまうと理解者がゼロになるって瞬間があるとしたら。死ぬ瞬間に周りに誰もいなくなっちゃうとしても、知りたいですか?

亀山:うーん、どっちかなあ。

佐藤:これを一歩超えたらもう二度と帰っては来れないんだけど、まだ知らない世界のことがわかる。「うわー、こんな形になってた!」「四次元がここにある!」と。でも帰って来れないと。

亀山:っていうのと、理解者が何人かいる中でそれを見ないまま。

佐藤:一歩先に知らない世界があるってのがわかってるんだけども、見ないまま止めるっていう。

亀山:オレは今まで見るか見ないかだったら、良いことも悪いことも含めて全部見ようと思って生きてきたんだけど……まあ最期1人になるんだったらやっぱ見ないでおこうかな(笑)。余韻を残して。

興味の軸足を「人間」に置くのもあり

佐藤:僕は見ちゃいますね。無理ですね。

亀山:俺は見ないで、見てる佐藤を「ああいう人生もあるか」とか言って遠くから見てるかもしれないね。

佐藤:もう交流できないですけどね。その時点で断絶しちゃう。

亀山:それはもうできないよね。キミは違う世界に行っちゃったからね。

佐藤:なるほどな、じゃあそれたぶん生まれ持っての気質ですよね。

亀山:そうだね。なんだかんだ言って、やっぱり興味の本質が過去の気質から見て、人間にあるんだよね。

佐藤:僕には人間味がないみたいなこと言って(笑)。

亀山:いやいや(笑)。佐藤のほうが興味がもっと広いの。宇宙とかマクロとかミクロとかもっと広くって、広めに世界を見てる。俺はなんだかんだ言いながら、人との付き合いの中でこう……。

佐藤:軸足が「人間」にあるってことですよね。

亀山:そうだね。孤独になりきれてないんだろうね。だって俺が旅に出るなんていうのも帰る場所があるような旅でさ。

佐藤:確かに。根無し草じゃないですもんね。

亀山:根無し草じゃないんだよね。ときどき「孤独じゃない」を実感するために旅に出るみたいなとこがあるから、だからやっぱり人間関係ってのは俺にとってどうしても必要で。

それによって真理に近づけなくっても、それが宇宙の真理までいかなくていいのよ。人の中の世界の真理ぐらいでいい。だからちょっとね、佐藤より俺のほうが、目指すところがちっちゃいかもね。

佐藤:トカゲの世界とか知りたくないわけですよね。

亀山:トカゲの世界? 別にいいや!(笑)。トカゲの世界も人を中心で知りたいっていうこと。

佐藤:なるほどね。

亀山:人から見てトカゲがどうだっていうことは知りたいんだけど。

佐藤:トカゲから見た世の中はいらないわけですよね。

亀山:「トカゲから見たらこう見えるから、人から見てるものはちょっと見方を変えたほうがいいかもね」っていうことは思うのよ。

佐藤:人が主体なわけですよね。常に。

亀山:人が主体だから。例えば、クジラとか虫とかいろんな動物がいたら、人間を中心にしたらどう関わるべきなのかは感じるんだよね。でもそっちの立場に立って世界を見るっていうのはしてないかもしれないな。

オレの人生の中では「人」っていうだけでもけっこう複雑でさ。そこを理解するだけでも、めいっぱいかな。銀河系とか宇宙とかさ、そこまで飛んでいくのは、あんまり興味が持てないかな。

佐藤:面白味を感じないと。

結局、真理が見つからなかったら…

亀山:でも、意外と結論って似たところにいくんじゃないかなって気はしてんだよね。

佐藤:そんな気がしますね。政治家とか経営者とかスポーツとかやってる人たちって、けっこう最後の結論は一緒ですよね。だいたい同じようなこと言いますよね。

亀山:みんな結論はおんなじなんだけど、キミだけはちょっと違うところに行くかもしれない。

佐藤:でも帰って来れないと伝えられないですよね。「どうだったー?」って聞かれても、「こうでしたよー」って伝えられないですよね。

亀山:たぶん 仮に聞こえたとしても、「なんか意味わかんなーい!」みたいな話になるよね 。

佐藤:違う周波数とかだったり。

亀山:そうだね。違ってくるよね(笑)。とりあえずちょっと1回行ってみてよ。

佐藤:行ってきます。

亀山:もしかしたら 何かあるかもしれない。なかったらなかったでそれもOKだし。

佐藤:無でしたと。 何もありませんでしたと。

亀山:なかったくせに「あるからおいで〜」とか言わないでよ。 騙しなしよ。「ちょっとこいつ巻き添えにしてやろう」みたいな。

佐藤:言いそう(笑)。「来てみてくださいよ! すーごい見つけましたよ!」って……なんの話でしたっけ?

亀山:なんの話だったかな〜? とりあえず『お金2.0』から結局宇宙の話に。前もなんか最後はわけわかんない話になって。そういうことでオレのYouTuberの未来を目指すために、最後に「チャンネル登録よろしく~」ってやって。

佐藤:チャンネル登録よろしく……?

亀山:かわいくだよ。今までやったことない自分を見つけるんだから。めいっぱいかわいく、新しい自分を見つけるために。行くよ ー! チャンネル登録〜。

亀山&佐藤:よろしく~!

亀山:まだ照れ入ってんだよー!

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