憲法改正、2つの論点

山本一太氏(以下、山本):最後ね、今日五百旗頭(真)先生がおもしろいことをおっしゃったのは憲法改正について。例えば自民党の中だと今総理が提案した、1項をそのまま残して2校も残して、1、2項を残して3項で、まあその2になるのかわかんないけど自衛隊を明記するという案と。

それからやっぱり2項は削除しないとダメだと。どう考えても神格論争が残ってしまうという案ですよね。そのほかに例えば軍法会議を作れとか、そういう話はもちろんあるとして。

その2つの大きな意見の違いで今自民党は議論している。今日青山さんもいたと思うけど、五百旗頭先生は最後におっしゃってた。

青山繁晴氏(以下、青山):いました。

山本:1、2項を残してみたいなそういう瑣末な感じになってしまうのが心配だと。五百旗頭さんは自衛隊という存在を憲法に書くということはどうかと。それよりも「あらゆる手段を尽くして国民を守る」と書けばいいと。

1番始めにとにかく1項は残し、2番目はとにかくあらゆる手段を使って「日本の国家と国民を守る」と書き、憲法9条の3番で日本なりのできる貢献をやると、こういうふうにやったほうがいいんじゃないかというふうにおっしゃっていますが。そこらへんはどう感じました?

青山:五百旗頭さんはもう1つ、このままでは袋小路に入ってしまうと言われたんですね。残念ながらこの件は一太さんとちょうど時間が合わなくてお話できていないんですが、僕は第3の案を去年の12月20日の憲法改正推進本部で提案して。

そのときは一太さんだけじゃなくてどなたにも相談せずに突然出して。そのときにいきなり5人支持されたんですよ。今日、みなさんニュースでご覧になってるかもしれないけど、憲法改正推進本部の会合を開いたということはニュースでやってると思いますから。

改正案の自衛隊に関する問題点とは

青山:そこで申し上げたのは、僕はあえて新提案と不遜にも言って提案したものに賛同者がいらっしゃったので、その後4回勉強会をやって法制局とも詰めました。今日もう1度いわば正式に提案をいたしました。

山本:行きたかった。行けばよかった。どうしても地元の日程で間に合わなかった。

青山:一太さんがいらっしゃらなくて残念だと正直思ったんですけど。もともとは僕は当然2項を削除して、つまり2項というのはみなさんご存知だと思いますけれども、「陸海空軍だけならまだしもその他の戦力も全部ダメ」って書いてあって。

なによりも致命的なのは最後の1行で、「国の交戦権はこれを認めない」と。憲法学者はいろいろおっしゃってるけども、まともに読めば、ふつうの人間の心で読めば、相手が国だったら拉致されようが竹島奪われようが尖閣を奪われようが赤珊瑚盗られようがなにもできないと言ってる規定ですから。これは当然削らなきゃダメなんですよ。

でも総理が昨年の5月に突然「2項を残して3項で自衛隊を合憲とする」とおっしゃったので流れは変わったんです。つまりなんといきなり本丸の9条が改定日程に乗ったんですよ。あれで。

ただしこのあとは五百旗頭さんとそこだけは一致するんですが、自衛隊と明記すると、ご承知の通り憲法は国会と内閣と最高裁とそれから独立機関の会計検査院しか書いてないんです。当たり前なんです、憲法だから。

そこに自衛隊だけ突然固有名詞で書かれると、防衛省は防衛省設置法でしか担保されなくて自衛隊は憲法に明記されるから全部入れ替わってしまうし。

山本:そうだよね。そしたら憲法で役割まで書かなきゃいけないですよね。自衛隊の位置付けとかね。一緒に。

憲法はなるべく簡素にする方向にすべき

青山:あとね、僕は新提案するまでに自衛官の方も国民の方もブログだけじゃなくて自衛官のたくさんの人間に会ってお話を聞いたんですが。「今の自衛隊を固定するなんてやめてください」と、血も涙もないような言い方なんですよ。

というのは総理がおっしゃる、すでに定着している自衛隊というのは災害救助隊ですから。1度も防衛室が閣議決定したことがなくて本来任務を果たしたことがないんですよ。本来任務を果たしたときに、流れ弾が一太さんに当たっただけで例えば殺人罪とかそういうことで裁かれますよね。

今、現に自衛隊のヘリの事故のために整備士は普通の法律で調べられているわけですからね。自衛隊は本当は国会で証言すべきなんですがさせてもらえないから、申し訳ないけど総理もそこをよくご存知ないまま、自衛隊を定着させようとしてるんですよ。

そうじゃなくて、自衛隊じゃなくて自衛権。1項2項残してもいいですが、残さないと公明党がのってこない、公明党だけじゃなくて国会発議まで至らないから。あるいは国民投票のリスクが残るから。じゃあ2項は残しましょう。

でも第3項で「前2項は自衛権の発動を妨げない」、これだけです。そしたら2項のネガティブな面、つまりその他の戦力もダメ交戦権もダメというのは全部吹っ飛ぶんです。一瞬で問題がなくなっちゃうんです。自衛権の発動はオッケーですからね。

それと同時に当然自衛権は集団的自衛権を含むのかどうちゃらとか出てくるでしょ? それはちゃんと法律に書き込めばいいのであって、憲法はなるべく簡素にする方向にすべきです。すみません、お時間がないので早口でしゃべりましたが。

集団的自衛権の話になってくる

青山:かと言って僕と何人かの方々、11人くらいかな、乗っかってくださった案を押し通せというのではなくて。逆にのりしろを作ってあるんです。

自衛権の前になにか制限を付けたいとかいろんなご意見はこれから党内の擦り合わせ、それから公明党との調整、あるいは野党の志ある方々との擦り合わせで完成させればいい。こういう花は最後に完成させる方々が作ればいいので、僕はもう今日で引っ込むみたいなものなんです。

山本:なるほど。今言った話って、つまり集団的自衛権の話になってきてね。フルフレッジ、総合的に認めるかどうかみたいな議論にたぶんなってくると思うんですね。

青山:僕は認めないほうがいいと思ってる。

山本:そこはそう思ってるんですね。憲法に書くのはそこまでで、それは別に昔の自民党の案じゃないけど安全保障基本法みたいなもので規定すると。細かいところは。

青山:基本法はもともと石破(茂)さんとニュアンス違うかもしれないけど、そうなんですが。今ちらっとおっしゃったのでいうとね。平成24年の自由民主党憲法改正草案と文言はよく似てるんですよ。

それを承知のうえでやってるんですが。その代わり24年草案は2項を削除して国防軍を作って軍事裁判所を置くっていう趣旨になってるんですけど。

山本:そうでした。

青山:それは少なくとも今は通りませんから。逆に2項を残したまま文言をいただくようにする。だから自由民主党の中でも1回よく揉んだ、石破先生もはじめみんな苦労して作った案でしょ? その努力を無にしたくないし。

国民にはそれが興味ある人はあれから何年間もご覧になってるわけですからね。1つのたたき台として今日発言させてもらえて、僕にとってはヒストリカルでした。

山本:なるほど。今日は行けなくて残念だったんですけど、ここで伺って、私もこれからできるだけ。普通は出るから。いろんな議論をしていきたいと思いますけど。

青山:一太さんほどすべての会合に出る人はいないから。本当に。

山本:いやいや、そんなことないですよ(笑)。興味関心を持ってフォローしたいと思いますし。自民党の中で2つの議論があるやつを、私はもちろんきちっと発議してほしいと思うけどあんまり焦らず両方の意見をもうちょっと議論したほうがいいと思います。

青山:おっしゃる通りです。

山本:党内を見てると、武見(敬三)政審会長も心配してたけど先にスケジュールばっかりで。総理の意向に沿うために、総理はそんなこと考えてないのに総理の意向に合うためにここまでにどうしても出さなきゃいけないみたいなものばっかり先行して中身の議論も、しかも本当に通すためにはある程度、国民も踏み込んでいかないといけないのに。

青山:そうです。

山本:そこで私も武見さんと同じでちょっと心配してるので。

青山:僕も同感で。

山本:ありがとうございました。あっという間に時間が過ぎちゃって、ぜひまた青山さんに来ていただいて。30分はもともと短すぎるんでね。

ビクター・チャの人事撤回問題

山本:憲法改正だけもそうですし、もうちょっと日中、日米も含めて。例のビクター・チャが内定取り消しなってけっこうワシントン大騒ぎになってるから! やばいやばいって、みんなが。

青山:これは大きいんですよ~。日本でなぜあんまり騒がないのか不思議なんですけど。我が身の問題ですよ、あれ。あれはもう予告ですから。

山本:けっこうやばいですよね。

青山:ビクター・チャがダメになった(注:駐韓米大使に事実上内定していたが、撤回された)直後に米軍と接触し我が自衛隊とも接触したんですけど。連中の見方はがっちり一致してますよ。予告だと。

山本:(ハーバート・)マクマスターとかはけっこうバーンといっちゃってて、(ジェームズ・)マティスが止めてるみたいなことを私も関係者から聞いたりして。

青山:大枠はそうなんですが、トランプさんの意思がだんだん固まってきているということなんですよ。

山本:だって青山さん、ビクター・チャがああやって辞めてワシントンポストが書くってことは、ある意味身を呈して「こんな計画があるけど大変ですよ!」と訴えたみたいに見えますもんね。はっきり言うと。やばいよって。

青山:ビクター・チャはもともとは対北強硬派なんですよ。

山本:そうですよね。なるほど。ブッシュ政権のときね。

青山:これだけの犠牲が出るから軍事作戦だけはやめましょうって言ってただけですよ。もともと北に融和してるんじゃなくて。バサッですからね。外交に関しては。

山本:これちょっとおもしろすぎるので、次またこれを。私もあさってプライムニュースで日韓関係やるので。

青山:日韓なんですね。

山本:そう、日韓の話なんだけどやっぱりアメリカの動向もものすごく関係あるから。これは個人的にもちょっと青山さんにいろいろご意見も聞きたいし。

青山:このごろのアメリカはすごいですよ。韓国無視が。平壌五輪で(笑)。アメリカ人は「こいつダメだ」になったらストンッとダメだから。

山本:おもしろい! みなさんおもしろいでしょ!? 青山さんとの対談。本当に名残惜しいんですが、ありがとうございました。

青山:光栄でございました。

山本:もう3回目。本当に忙しいところ来ていただいて。青山ファンが多いのでまたよろしくお願いしますね。青山さんでした!

青山:ありがとうございました。

(会場拍手)

政治はパッションだから

青山:もう番組終わってるんですか?

山本:これで最後のところには。まだ終わってません。

青山:ありがとうございました~。

山本:ということでみなさん、青山さんとの対談いかがだったでしょうか? やっぱり青山さんはなにがいいかと言うとね、もちろん安全保障、政策の知識もあるんだけどパッションがありますよね。さっきの学者の話じゃないけどね、俺のほっぺたをつねるみたいな、このパッション。

政治ってパッションだから、青山さんが自分で政治家に向いてるかどうか思ってるかわかりませんけどね。政治ってパッションなんでね。それを青山さんと話してると思い出させてくれるということで。

ぜひまたどこかで4回目お呼びしたいと思います。本当に今回も忙しい中時間を作って来てもらったので、改めて青山さんに感謝をしたいと思います。