2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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赤羽雄二氏:次に、ブラック企業についてお話します。残業をさせて給料を払わないとブラックと言われますね。電通のようにそれなりに給料を払っていたけれど、社員が追い詰められて自殺するということもあります。社員が裸踊りをさせられることもブラックと言いますが、世界的な基準からしてあまりにもおかしいこと、ひどいことをして、少なくない社員がうつ病になったり自殺したりするのは全部ブラック企業と見なすべきです。
今後、そういう会社は淘汰されると思います。そういう会社で我慢して働く人は減っていく。顧客・消費者からも淘汰されるので、居残ることもできません。日本人の権利意識はだんだん高まっていくので、これまでのようにはいかないでしょう。欧米では、日本人ほど我慢強くないのでブラック企業は人が集まりません。ソーシャルメディアの時代には評判がすぐに伝わるので、そういう会社は選ばれない。この淘汰は今までよりも激しくなると私は思っています。
ダメ上司というのは「なんの価値も提供してくれない」上司です。「あれやれ」「これやれ」と言いながらずれたことを指示している。なにか困ったことを相談しても「お前が考えろ」と突き放して、なんの価値も出さない上司です。
パワハラ上司は「自分の立場を使って部下を威圧する」上司ですね。罵倒する人、人間性を否定する人。今まで残っていましたが、これからは通用しません。そういう上司のもとで部下がやる気を出すことはありませんし、素晴らしい結果を出すこともありません。今後、多くの会社が潰れ、生き残る会社はグローバルスタンダードにのっとっていると思います。したがって、いいことが何もなく悪いことしかないパワハラというバカげたものはどんどん淘汰されます。
日本には女性上司が少ない。取締役や管理職の数など、先進国の中で一番女性が活躍できていないのは日本です。グラスシーリングや明確な障壁があります。なぜ日本では女性が活躍できないのでしょうか。もちろん男性が阻害してきたからです 。
女性を差別し、社会進出を遅らせてきたのは他の国でもありましたが、違いは、他国ではすでに数十年前から解決へのアクションを取ってきたのに対し、日本はまだその動きが弱く、なかなか形になりづらいことです。
ダメ上司やパワハラ上司はなくなっていきます。ブラック企業も減っていきます。それはいいのですが、一方、仕事をしたくても仕事がなくなります。あるいは仕事はあっても、それが自分にはどうにもこうにも受け入れられないということも起きます。
そうならないためのスキルを14に分けて詳しく書きました。もっと減らしたかったのですが、起こりうる問題を真剣に考えた時に、生き残るためにはどれか捨てるわけにはいかないんです。それぞれ詳しく、どうやってそのスキルを身につけるか、気持ちの整理のしかたも含めて説明しました。
第一は、「人生設計力・準備力」ですね。自分が取り得る、あるいは許容範囲であるオプションを持ち続けることが大事で、それを準備しておく力です。今、会社を辞めたら、会社が突然潰れたら、「あそこに行けるかも」「ここにいこう」という準備をしておくことです。それを増やしておくとよいと思います。選択肢をあげ、少しでも確実なものにしておきましょう。オプションを常に複数持っていれば、最悪の状況に追い込まれることが減ります。それがオプションを持ち続ける「人生設計力・準備力」です。このあと、A4メモに実際に書いて考えていただきます。
それから「成長力」。成長し続ける習慣を身につけることですし、それができるようになる力ですね。
それから「思考力」。自分の頭で考える楽しさを早く知っていただく必要があります。ダメな経営者・役員・部課長は、今ここでこういう経営をしないと会社がどうなっていくのか、真剣に考えないんですね。もちろん、目の前の仕事をどうこなすかは誰でも考えますが、それでは近視眼的になりますし、中期的に会社がよくなっていく保証や、欧米・アジアの競合企業に勝つための手段にはなりません。
次は「アンテナの立て方」「知識の収集方法」です。先を読む方法を早く身につけることが大切です。
個人としての一般的な問題把握・解決力に加え、生き延びるために必要な大事な3つのスキル・姿勢についてお話します。まずは「経営改革推進力」です。
例えばシャープにいます、東芝にいます、その会社が微妙ですとなった時に、そこから逃げ出せるのかです。35歳も過ぎると急に転職は難しくなります。「じゃあ自分はこの先どうするんだ」と考えたとき、その会社の経営改革を自分がしかけて、今いる会社を何とかよくしようとする力や姿勢が大事です。
中小企業だったら、例えば40歳ぐらいの人でも社長の右腕となって改革ができますね。大企業で課長や係長でも、取締役クラスで割とまともな考えを持ち、会社の将来を憂う人がいるはずです。その方に「会社をなんとかしないとダメじゃないですか」ということを突き上げる。その取締役と何人かでプランを作って、社長を突き上げる。そこまでやれば、社長は「そうだな」ということでなにかアクションをとる、ということもままあります。
日本はもともとミドルアップダウンですから、そのような動き方ができるんですね。これが「経営改革推進力」です。そのために、本質的な問題把握・解決力が必要です。
「世の中こうなってて、当社はまだこんな状況だから、社長、取り組むのなら今しかありません。ぜひこうやりましょう」と進言しないといけない。それが経営改革推進力。
ただ、それでも社長がボンクラだったり事なかれ主義で「いやいや、まあいいじゃん。今リスクを取ってやるほどのことじゃないよ」とかいうことも多々あります。何度もそういう事態を見聞きしました。その場合、会社に見切りをつけることも必要でしょう。
山一證券が潰れた時、早めに見切りをつけなかった人はひどい目に遭っています。リーマンショックの時に見切りをつけなかった人も同じです。見切りをつける際には転職力が必要です。35歳以上になるとある程度のスキル・プロファイルでなければ面接もしてもらえないという悲しい状況が起きます。
ここにいらっしゃる方は「これまで勝ち組だから、自分はそんなことないよ」と思うかもしれません。ただ、その状況に置かれた時、十数社に応募して、1社も面接にいたらなかったらどうしますか。生き残るためには、遠慮なく転職する、転職できる力もいりますよね、という話です。
そのためには、自分が3年後、10年後、何をしていると一番うれしいか、どうやったらそれができるようになるかを書いてみて、転職先の候補を20社ほど挙げ、将来性があるかどうかの観点で10社程度に絞り込みます。
その上で、採用面接の準備を徹底的に行います。Googleアラートを活用して多数の記事を読んだり、友人に頼んで面接のロールプレイングを実施したりすると効果的です。
それでも、「よさそうな転職先もない」「業界全体がほとんど死滅しそうな気がする」「どう考えても5年後には業界全体が厳しい」「今から転職してそれから3年がんばっても、その会社もダメになるかもしれない」ということになったら「起業」するしかないかも知れません。別にハイテクベンチャーだけではなく、サービスやコンサルティングもあります。そういう力を身につけないとやっていけませんよという話ですね。
こういう時代を生き抜いていくには、「考え方」「生き方」のポイントも大きく変わります。
1つには、「モチベーションの保ち方」です。どんなときもやる気を維持することが必要で、「最近はやる気が出ない」とか、「やっとやる気が出てもすぐに落ちてしまう」などと言っている場合ではありません。どうしてもやる気が出ない人、維持できない人はまっさきに淘汰されます。
もう1つは、「自信の持ち方」ですね。いろいろ工夫して、自信がある人に生まれ変わることができると考え、その具体的な方法を本では説明しています。「今までは全体としてなんとなく良かったし、そこまでクビにならなかったし、クビにはできないはず」という時代はもう終わりました。
今後に向けた「家族」「パートナー「仲間」へのスタンスも大切です。家族というのは法律的な婚姻関係にある人、あるいは親子。パートナーというのは、事実婚や同棲相手、自分にとって大事な相手。もちろん、LGBT(同性愛など)でもいいです。とにかく自分が大切に思える人ですね。仲間というのは、法律的な関係も性的な関係もないけれど気が合い、趣味が合う大切な仲間です。
私からの問題提起は、こういう時代なので「いち早く気がついた人が直ちに行動を開始し、その周りを救わないと、ひどいことになりますよ」ということです。
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