タバコの副流煙より深刻?
日本人の3人に1人が患う「愛着障害」とは何か

元マッキンゼー赤羽雄二氏と学ぶ10年後の未来と働き方 #7/8

Premium Innovators College
に開催

2017年9月14日、ニッポンイノベーター塾が主催のイベント、Premium Innovators Collegeが開催されました。登壇したのは、マッキンゼー・アンド・カンパニーにて14年間活躍し、現在はブレークスルーパートナーズ株式会社にてマネージングディレクターとして企業の経営を支援している赤羽雄二氏。「10年後の未来と働き方」と題して、AIなどの発展によって急速に変化するビジネス環境や、これからのビジネスパーソンの在り方について、参加者と意見を交えながら語りました。「将来、AIに仕事を奪われる」というのは本当なのか? 技術の進歩によって私たちの生活はどう変わるのか? すべてのビジネスパーソンに贈る、10年後も生き残り続けるために必要なマインドセットを解説します。

赤羽雄二氏(以下、赤羽):1つ大事なことは、将来に向けての情報収集ですね。これができないと、目をつぶって高速道路を渡るようなものです。そんなの無理ですよね。時間がないので要点を説明します。

「Googleアラート」です。指定したキーワードを含む過去24時間の最新記事をまとめて送ってくれます。もちろん無料です。情報収集上、これが一番使いやすいので、必ず使ってください。キュレーションアプリは余計な情報も送られて来ますし、だんだんずれていくのでよくありません。

Googleアラートは検索するとすぐ出てきますし、設定が簡単です。1つの言葉を登録するのに10秒くらいです。私は毎朝6時、過去24時間の記事がメールで届きます。どんな人でも30~50は登録されるといいでしょう。私は仕事柄、日本語、英語あわせて300ほど登録しています。

2度ある言葉は、1つは日本語の記事、もう1つは英語の記事を検索するためです。クリックするとこのようにページが表示されますが、全部を読むわけにはいかないので、目を引いたものを読みます。

おすすめは、毎朝毎晩、自宅でこういった記事を30分読むことです。会社では、落ち着いた気分でこういった記事を読むことはむずかしいと思います。そうすると、読み逃しが起きたり、せっかく見つけた素晴らしい記事を書いた人の関連記事を見ずにすませたりしてしまうので、本気で成長したい人には自宅で読むことをお勧めしています。

こういう努力をしなければ、目をつぶって高速道路を渡るという状況に近いのではと思います。

残業をゼロにするには、まず社長が「残業をゼロにする」と宣言する

最後にどうしてもおすすめしたいのが、この『最速のリーダー』、7月に上梓した本です。

最速のリーダー 最少の時間で最大の成果を上げる

この本では、1日24時間を3分割して考える「1日24時間3分法」をお勧めしています。

まず、会社は8時間、プラス昼休みを入れると9時間。これを下回ることはほぼ無理でしょう。

次に健康維持。平均で6時間から7時間くらい寝ないと体が保ちません。さらに運動、入浴など、健康維持に8時間必要です。

残りの時間は7~8時間ですね。これを、家族・パートナーとの時間、自分の成長、趣味、食事・料理・家事、友人・仲間との時間、人との出会い、ペットとの時間、通勤、他の雑務に当てます。通勤や食事で、普通は毎日どうしても3時間以上、取られるかと思います。

今まで会社にいる時間が12時間だった人は、何としても9時間に減らしましょう。浮いた時間で毎日1時間から2時間、必ず自分が成長するために時間を使う、というところが最大のポイントです。経理部の方なら、経理がAIでどう変わるのか、ブロックチェーンでどう変わるのか、ブロックチェーンはどんなものかということです。

残業をダラダラするのではなくて、会社をできる限り早く出て、1日1~2時間を自分の成長のために使います。そうすると、年間365~700時間、1つの分野の専門家になれる時間ですよね。この時間を確保することによって、自分の総合戦闘力を上げることができ、今後の大変動を生き抜くことができます。もちろん、成果を減らすわけではありません。仕事のしかたを抜本的に見直して実現します。

この本を出版するにあたって、残業ゼロに関係のある本を取り寄せて、全部読みました。驚いたことに、どれ1つとして、まともに残業をゼロにする方法論を書いていないんですね。部門レベル、チームでどう努力するかにとどまっています。経営者が書いた本もあります。ただ、特別リーダーシップが強い人が多く、あまり参考になりません。

でもどうすべきかは明確です。社長が「残業をゼロにする」と宣言して、役員、部門長、部課長を直接動かし、会議や書類作成を抜本的に減らして無駄をなくし、生産性を上げていくしかありません。

それにより、宣言した翌月は半分に、翌々月は4分の1に、3ヶ月後にはゼロにしていきます。鍵は、その間、残業を減らしながら従来の残業手当と同額をフルに払い続けることです。

残業が減った分を「残業削減報奨金」という名目で補い、過去3ヶ月の残業代分と同額を払い続ける。残業が減っても成果は同等か、むしろ、増やす。3ヶ月後からはその人の真の貢献に合わせて、「貢献度給」というかたちで払う。

決して、人件費削減ではありません。人件費削減を説く本が多いですが、真の働き方改革は残業を減らしながらの生産性向上であり、利益率向上に見合った人件費増加でなければいけません。

経営者が動かない会社、下から経営者を動かそうとしない会社はかなりやばい

私もコマツに8年いましたから、いかに残業代を最大限払ってもらうかだけにエネルギーを使っていました。みんなそうだと思うんですよね。残業代を減らすのであれば、誰も自ら残業削減を進めません。トップダウンで無駄な会議、資料作成をなくして生産性向上を図り、即断即決、即実行を徹底し、だめな事業を縮小・撤退して、本気で新事業を立ち上げていけば、日本企業の競争力は復活します。これが日本を救う道です。残業で何時に帰れるかわからないのに、生産性向上の工夫はしないんですよね。

『最少の時間で最大の成果を上げる 最速のリーダー』は、この点を妥協せず、体系的に書いている唯一の本だと思います。残念ながら他の本はそういう視点に立っていないようです。答えは経営者にしかありません。経営者が動かない会社はまずいです。自ら動いてくれないとき、下から経営者を動かそうとしない会社はまずいです。ここにいらっしゃる皆さんには、ぜひ読んでいただきたい。みなさんの会社の経営者にも、押し付けて読んでほしいです。

『3年後に結果を出すための 最速成長』は本日の講演のベースとなっている新書で、手軽ではありますが本当に大事な「考えなければいけないこと」が全部入っています。

3年後に結果を出すための最速成長 (ベスト新書)

社員15人の会社の社長が、15冊買って全員に配って読ませたとも聞きました。「ここに書いてあることは当たり前だ」と思えるくらいになったら、確実に生き残れます。

これは『入社3年塾』です。

入社3年塾: 今、何を知り、どう考え、挑戦するか (単行本)

入社数年の方、あるいは入社数年の部下を持っている方に、どういうスキルが必要か、どうやって身につければいいかをきめ細かく、かつ具体的に説明しました。

特に、いかに即断即決、即実行できるようになるか、一生使えるコミュニケーション力をどう身につけるか、一生を豊かにする人間力をそう身につけるか、どうやって自信を持ちいつもポジティブでいる工夫をするか、などは他の本にはほとんど見られない体系的なマニュアルになっています。

毎月、即断即決即実行ワークショップを実施しています。 3ヶ月ごとに「好循環を生み出す」というテーマと「人間関係を大きく改善する」というテーマに交互に取り組んでいます。

特に後者に関して、仕事上のほとんどの悩みは、上司との関係、部下との関係、同僚との関係ということで人間関係の悩みが多いと思います。家庭でも、たぶん結婚されている方の3分の1以上はモラハラ夫に悩まされていると理解しています。

また、かなりの人は毒親に悩まされています。みなさんにもし子どもがいたら毒親である可能性が結構あります。子どもに有害なこと、つまりわけもなく罵倒する、人格を否定する、馬鹿にする、親の気分で子どもへの対応を変える、兄弟と比較する、えこひいきする、過保護、過干渉、育児放棄、DVなどをしている可能性は決して低くありません。

「いや、してない」という人でも、「あなたはどうせできないんだから」「お姉ちゃんはかわいいのにあなたはねぇ」のような話はついしてしまうことがあります。それは、言葉の暴力であり、人格否定です。

そういう結果、悩みが生まれます。性格がゆがんだりもします。自己肯定感が持てず、自信のない子どもが育ちます。自信のない子どもはむやみに攻撃的だったり、感情的になったりもします。皆さんがこういう被害者だったり、加害者だったりして、人間関係に悪影響を与えていることが非常に多いです。そこに真っ向から取り組んで何とか大きく改善しようとメスを入れます。

人間は本を読まなければいけない

『ゼロ秒思考』を読んでいる人は多いと思いますので、次のおすすめは『速さは全てを解決する』です。

速さは全てを解決する---『ゼロ秒思考』の仕事術

みなさんの仕事は3倍以上速くなると考えています。私自身、マッキンゼーに入社したときの経験、マッキンゼーでソウルで活動し始めたときの経験、マッキンゼーを退社してからの経験などからほぼ断言できます。皆、実に無駄な仕事のしかたをしています。無駄でない場合も、事前準備が下手だったり、着手が遅かったり、再利用が少なかったりで、もったいないことだらけです。

AI、ロボット、ブロックチェーンなどの導入で、仕事はどんどんなくなっていきます。ただ、みなさんと同レベルの仕事をしている人の、全員の仕事がなくなることはなかなかない。上位3分の1の人はしっかり残るし、給料は上がります。

そのためには、まずは質を上げるよりもスピードを上げる。質を上げるのは大変ですし、時間もかかるからです。スピードを上げるだけならすぐにできることがいくらでもあります。しかもスピードを上げていくと、好循環が生まれますし、時間の余裕もできるので、何もかもうまく行きます。

スピードを上げるためには、単語登録を100以上、できれば200以上することです。私であれば、「あ」変換で「赤羽雄二」、「ぱ」変換で「パワーポイント」。「あけ」変換で「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」とにかく全部入れます。メールの返信や資料作成が驚くほど速くなります。単語登録と並行して、文例フォルダの作成、ファイルの再利用促進、テンプレート作成、ショートカットキーの徹底活用などもあります。

『ゼロ秒思考』シリーズ3冊目である『ゼロ秒思考[行動編] 即断即決、即実行のためのトレーニング』は、即断即決、即実行の具体的方法論として、どうやって全体観を持つか、そのために適切なフレームワークをどう素早く作成するか、漏れのないオプションをどう立案・評価するか、を詳しく述べました。

ゼロ秒思考行動編―――即断即決、即実行のトレーニング

次は、『アクションリーディング』をご紹介します。

アクション リーディング 1日30分でも自分を変える"行動読書"

人はやはり本を読まなければダメです。もし今までに数十~百冊しか読んでいない人がいたら、300~400冊は読んだほうがいいです。知識、教養、知恵がつくからです。ただ、多くの人は本を読みすぎるという問題もあります。本を読むばかりになって行動しないためです。

ある程度の本を読んだ人は、月に4冊以上、週に1冊以上は読まないようにして、その代わり行動しましょうと提案しています。「受け身の読書」「本を読むだけの読書」ではなく、行動を促進するための読書ですね。「私は本が趣味です」というなら趣味としてはいいんですけど、本の場合は「自分の将来を考えている」「自分はけっこういいことしてる」という誤解を本人が持ってしまうんですね。本を読むことによって、自分はいいことをしている気がして、気休めになってしまうところが大きな問題です。SF小説やライトノベルが悪いとか、そういう意味ではありません。それらからも、学ぶものはいっぱいあります。行動するための読書をしようということだけです。

『成長思考』は、どうやったら成長できるか、という基本的な課題について書いた本です。成長をじゃまする要因を整理し、その上で、成長し続けるための具体的な方法論を説明しました。私は、人は誰でも成長できるし、成長し続けることも実はそこまでむずかしいことではない、と考えています。それを詳しくご説明します。成長するための7つのアクションは、例えば、「思い切ってハードルを下げる」「つらくない努力、楽しくなる努力をする」「好循環を生み出す」「コンディションを維持する特別な工夫をする」などです。

成長思考 心の壁を打ち破る7つのアクション

日本の上司は部下を効果的に育てていない

今日来られている多くの方は上司あるいはリーダーをされていると思います。私が日本企業への経営支援や、個人の悩み相談を受ける中でわかったことですが、日本の上司は、部下をまともに育てていない、という問題があります。上司としての貢献をせず部下の仕事を増やしたり足を引っ張ったりするばかりの「ダメ上司」か部下を罵倒して萎縮させる「パワハラ上司」が大半です。

彼らは「そんなつもりはない」「育てているつもりだ」と言いますが、仕事で成果を出しながら効果的に部下を育てている人にはなかなか出会えません。そういった問題意識から、次の3冊を出しました。

世界基準の上司

マンガでわかる! マッキンゼー式 リーダー論

すごい成果をあげているリーダーが実行している40の習慣

あとは個人向けのコンサルティングもやっています。それから、オンラインサロンもやっています。

愛着障害という深刻な問題

最後に愛着障害についてお話しさせてください。「愛着障害」についてご存知の方、手を挙げてください。

(会場挙手)

数人ですね。これは「タバコの副流煙を吸うと肺ガンになる」「公害のあるところに行くと非常に体に害がある」と同じくらい重要な問題で、日本は深刻な状況です。

2歳までの間に、お腹が空いて泣いたらすぐおっぱいをもらって、泣いたらすぐおしめを替えてもらうということを、安心しきってやってもらえた人はいいんですが、そうでない人は、心に穴が空いて、人との距離感をうまく取れず、人への愛着をちゃんと持てない人になり、しかも、それは一生続きます。

そうすると、大切な相手に対して深い安定した関係を築けなくなります。自分に自信が持てず、決めたこともなかなか実行できません。自信がないので、その裏返しとしてパワハラやモラハラをしてしまうんですね。

日本人に愛着障害が多い理由

問題は、『愛着障害』という本を書かれた精神科医の岡田尊司先生が、日本人の3人に1人がこの愛着障害だと言っていることです。3人に1人というのは大変です。今80人いたらこの中の25人以上が愛着障害ということになります。みなさんの周囲で、あるいはみなさん自身が、自信がないとか、自己肯定感が低いとか、どうやってがんばったらいいかわからないとか、そういうことは多数あると思いますが、それは愛着障害が原因だ、というのが先生の分析です。

しかも、どうも、3人に1人という比率は、日本が世界一高いらしい。その理由は、核家族化が世界一進んでいることです。おじいちゃん、おばあちゃん、おじさん、おばさん、いとこなどとの接点が少なく、家族だけで閉じています。女性が夫あるいは彼氏に「お前のこの料理を食ったから俺は下痢をした」と言われて、自分が悪いと考えてしまい、追い込まれる。

もともと劣等感が強い状況で一方的に言われ続ければ、洗脳されていることに気づかない。そういうモラハラ夫、モラハラ彼氏はときどき大変に優しい面を見せるので、彼が怒るのは自分のせいだと信じ込む。子供はそれを見て、いびつになっていきます。

核家族の問題に加え、ブラック企業の問題が悪影響を及ぼしています。私は、日本企業の大半はほぼブラック企業だと思っています。残業をさせてなかなか夫を家に帰さないからです。午後5時や6時くらいに帰れる人というのは、本当に例外的です。しかもそこから1時間、下手をしたら1時間半以上、満員電車に揺られて帰らなければなりません。

「おしめを替えたらイクメン」とか言われていますが、女性から見たら多分、論外なレベルでしょう。多くの家庭で、夫の育児参加は限定的です。父親の存在が家庭内で薄いと、お母さんと子どもの母子分離ができません。お母さんと中学校や高校の娘がペアルックとか言って喜んでしまう。お父さんが入ることによって、自分の思う通りの世界というのはないんだということもしっかり理解しないと、子どもの自我がちゃんと発達しないんです。

このダブルパンチで、日本は愛着障害が多いということです。もちろん、アメリカで貧困層の問題はものすごく深刻です。離婚後、面会時に離婚した父親が子どもを殺すということもよく起きます。黒人家庭の問題はご存知の通りです。

ところが、日本は貧困層だけではなく、最下層から最上層まで、それこそ大学の先生とか頭取の夫で外目には立派な方が、妻に対してはモラハラやDVをやっている、罵倒しているというケースが結構多いです。妻からのモラハラ、DVももちろんありますが、比率はずっと少ないと思います。

この『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』は私の本ではありませんが、ぜひ読んでいただければと思います。非常に重要な概念なんですね。これをきちんと理解して早々に手を打たなければ、今後大変にまずいことになります。

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)

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