「UberとAirbnbを見て衝撃を受けた」グリー田中社長が語るスマホ時代の新ビジネス

グリーの今 #3/3

IVS 2015 Spring Miyazaki
に開催

IVS 2015 Springの本セッションを前に行われた特別インタビューに、グリー・田中良和氏が登壇。IVP(Infinity Venture Partners)共同代表・小林雅氏をモデレーターに、スマートフォン時代のビジネスに革命的な変化をあたえた「Uber」と「Airbnb」のサービスについて語りました。

ゲーム業界にはまだ大きなイノベーションがある

小林雅氏(以下、小林):「グリーの今」に戻して話を聞いてみたいと思います。

田中良和氏(以下、田中):「グリーの今」ということでは、ゲームは作っていきますと。ゲームのいいところというのは、僕らも全世界でいろいろやってますけど、日本のゲームで全世界に通じるものがつくれる、その可能性があるところかなと。ゲーム以外のもので全世界でやるっていうのは、相当難しいところがある。

夢として続けるのはいいんですけど、起業家としては現実的にありえるものをやんなきゃいけないと思って。ゲームが好きというのもあるので、いいものを作ってグローバルなものにしたいというのがゲーム部門の夢というか目標の部分です。

ただ、これから5年後10年後を考えたときに、次の大きなイノベーションとして何が起きるのかなと。ゲームはゲームでこれからまだ大きなイノベーションがあると思っていて、新興国のゲーム需要というのがこれから大きくなってくると思うんですよ。

コンソールゲームって先進国だけのビジネスなんで、新興国でもゲームは本当に大きなビジネスになる。そういうタイミングが来ると大きく変わると思っていて、これはここから10年かけて見つけるべきテーマだと思っています。

UberとAirbnbを見て衝撃を受けた

ゲームではそれくらいで、それ以外で大きなものとしては、僕はここ数年間でUberとAirbnbを見て衝撃を受けたんですよね。「こういうものが次のインターネット業界なんだな」と思って。

あれを初めて見たときに「タクシー業界はネット業界じゃねえよ」みたいな(笑)。Airbnbだってプレゼンを聞いて「民宿向きASPです」って言われても「儲からねえよ」って思いますよね(笑)。

けど、実際に見てみると革命的なわけじゃないですか。そうなると、生活産業系のビジネスってパッと聞くと「えっ?」ってものが多いんだけど、すごくイノベーティブだというのが特徴だと思ってて。

思い出したのがカカクコム。一番最初、カカクコムのサイトの紹介を「Impress Watch」か何かで見たと思うんですけど、そのときは若い兄ちゃんが秋葉原を足で回りながら「○○電気のPCは○○円」みたいに価格をメモして……。

小林:あれ、自分でやってたんですか?

田中:そうですよ。僕は、人力で秋葉原中のお店を回って手でメモして、それをHTMLで更新している会社があるって聞いて「そんなのネット企業じゃねえし、ハイテクでもねえし、なんなんだそれ」と思ったんですけど、今はすごい会社になってるじゃないですか。

小林:まあヤフーも最初は人力ディレクトリですからね。

田中:あとAmazonの一番最初は、ホームページに例えば「辞典10ドル、聖書20ドル」みたいに簡単な文言が書いてあって「こちらに住所、氏名など書いて送ってください」と。そうすると、自分の家に本が届く。そう聞いて「梱包して送ってるだけだから、こんなのネット企業じゃねえじゃん」と思ったんですよ。けどこちらも今すごい会社になってるじゃないですか。

だから生活産業系のものって、ユーザーからすると便利っちゃ便利なんだけど、今でもあるといえばあるものなんですよね。それが変わっていくと大きなものが生まれるというのは、同じだなと思ったんですよ。

UberとAirbnbは、今までのネット業界ではなかったようなものが、ネット業界になった瞬間。それがもっといっぱいあるんだなと。交通網とか民宿以外にも、ありとあらゆるところに相当いっぱいある。

「この新しいチャンスをつかむことができれば、もっと世の中を大きく変えることができるかな。今やるべきだ」と思って、やってます。

スマホ時代だからこそ実現するビジネスもある

小林:すばらしいですね。UberとAirbnb以外でいくと、衝撃を受けたというのは何かあるんですか?

田中:その2つが象徴的で、パッとアイデアを聞いて特にすごい。「スマホでちょっと押したらタクシー呼べるんです」っていう(笑)。ただすごい。結構こういう感覚が大切だなと思ってます。

あとは、スマートフォン時代でしか実現し得なかったものだと思っていて。Uberだと仕組みとしてはWindows95でもできるアプリだと思うんですよ。サービスとしては。使う側もタクシーの運転手側も。

でも実際問題、タクシーの運転手が全員Windows95のパソコンを持ってるかというと持ってない。パソコンを車に積みっぱなしかというと積んでない。さらに、無線機能も付いてない。

ある意味ありふれたアイデアとかテクノロジーなんだけど、スマートフォン時代になって初めて実現できるサービスなんですよね。Airbnbも同じで、民宿というかありとあらゆる家に全部パソコンがあるかっていうと、そもそもないわけですよ。スマートフォンになって初めて実現したと。

アイデアが新しいわけじゃないんですけど、「スマートフォンじゃなかったらできなかったんじゃない?」というのがいっぱいあるなと思っていて。これももうひとつ大きなテーマかなと思ってますね。

小林:スマートフォンとかスマートデバイス(のように)、インターネットがあらゆるところにモバイルで普及してきて生活を変えていくというのが、これからのネットビジネス……というんですかね? ネットビジネスの定義自体が変わってきちゃってるんで難しいかもしれないんですけど、ライフスタイルに関わるビジネスというのはおもしろいということですね。

スマホビジネスと世の中の価値観の変化

田中:問題は、スマートフォンならではのビジネスをするときに……例えばUberですよ。タクシーの運転手がスマートフォンを持って「自分でタクシーの配車できますよ」という感性が動くかどうかなんですね。

たぶん、普通スマートフォンならではのビジネスっていうと「ネイティブアプリがどうのこうの」とか、「アプリの動きを見たディープラーニングがどうのこうの」とか、そっち系にいっちゃうじゃないですか。そうじゃなくて「スマートフォンを持ってなかったからできなかったよね」というのが、スマートフォンならではのビジネスだと。それがUberやAirbnbからの学びかなと思ったんですよね。

小林:おっしゃるとおりですね。Airbnbとかも、アイデアだけ聞いたら「誰が泊まるの、他人の家に」と僕も思ったんですけどね。いつのまにかこんなに普及しちゃって、逆に言うと普通の家もプロっぽくというビジネスになってくるような。

新しいビジネスが生まれる感じに変化してるじゃないですか。そういうスマートフォンならではの新しい変化が出てきて、非常におもしろいなと思います。

田中:3つ目の重要なテーマは、「一般的に考えるとそんなことやんねえだろ」って感覚。それが大事だと思っていて。だって、見も知らぬ人の家に泊まるとか車に乗るって、ウルトラ危険じゃないですか。でも、実際はそんなに危険じゃない。僕もUberに乗ってますし。

これって、10年前にあった「SNSに写真上げたら誘拐される」みたいな、今思うと「そんなバカな」ってことが普通に言われてたわけですよね。「ネットにクレジットカードを入れると全部スキミングされる」とも言われてましたけど、実際にはそんなこと頻繁に起きてるわけではないじゃないですか。

それくらい、世の中の価値観というか安全性の概念が変わるわけですよね。同じように、いま聞くと「そんなの絶対やんないでしょ、俺もやんないよ」というものが、10年後に「やべー、毎日やってる」となることもあるわけですよね。これを探し当てるというのが、重要なことだと思ってますね。

起業向きなのは失敗する確率が高くてもやってしまう人

小林:なるほど。ありがとうございます。「そろそろお時間なのでまとめてください」ということなんで。「グリーの今」をまとめると先ほど言ったようなことだと思うんですが、最後に視聴者の方にメッセージをいただければ。「何をやったら成功するか」みたいなメッセージを。難しいんですけど。

田中:何をやったら成功するかは僕は知らないんですけど。教えてほしい(笑)。

まあ、やっぱり僕が大切だなと思っているのは……世の中に新しい価値を生み出すようなビジネスがしたいという人は、なかなかうまくいかなかったり、人にああだこうだ言われる宿命にあると思うので、「自分がそういうことがしたい」「自分はこういう生き方でしか生きられない」という自覚を持つことがすごく重要だなと僕は思ってます。

逆に、新しいことをしなくても生きていける人には向いてない仕事というか(笑)。する必要がないと思うんですよね。僕はよく「生まれ変わったら会社をやりたくない」「やりたくないことランキングの1位は起業だ」って言うんですけど、それでも会社を始めちゃうようなタイプだと思うんですよ。

僕がやりたくないと思ってる真の意味というのは……起業するとよく失敗するわけじゃないですか。友達もなくすし、お金もなくすことが多い。統計的にはそういうことが多いと思うんですよね。多少うまくいっても「ちょっと増える」程度じゃないですか。

にもかかわらず、そういうことをやってしまう人。確率論的には失敗するんだけど、それでもやってしまう人っているんですよね。そういう人が起業に向いてると思うんですよ。起業もしくは新しいことをやるのに向いている人。確率論的、合理的にやるのが正しいと言っている人には向いてないと思ってるんです。

だから僕はつねづね「これはすごく大変なことだから、起業するとか会社を新しく興すというのはぜんぜんいいことじゃないよ」と言うんですけど。

そう合理的に説明しても、それでもやっちゃう人がまさに起業に向いていると思うので、そう聞いても「やりたい」と思うのか、「確率論的にうまくいかないんだから、うまくいくことをやったほうがいいよね」と思うのか、どっちかを見極めるのが自分の人生にとっていいかなと思ってますね。

小林:わかりました。ありがとうございます。最後は人生論になって……まとまりましたね? はい。ということで、この対談番組。僕の雑談も入ってましたけど、最後はうまくまとまったんじゃないかと思います。どうもありがとうございました。

田中:ありがとうございました。

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