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クリエイティブ集団PARTYの挑戦- 新しい創造は、新しいプロセスから生まれる-(全3記事)

「画面の中」から「リアル世界」へ 林信行氏が語る、これからのITトレンドのゆくえ

数々の斬新なクリエイティブコンテンツを世に送り出しているPARTY。その主要メンバーのひとり中村洋基氏が、PARTYを立ち上げるまでの経緯、そしてユーザーに喜ばれる話題性の高いコンテンツをどのようにつくっているのか、具体例を挙げながらそのポイントを解説します。(IVS 2013 Springより)

画面の中から外の世界に消費者の目線が移っている

:ありがとうございます。本来、みなさんスケジュールご覧になっていただくとわかると思うんですけれども、もうひとりPARTYの川村さんって方が参加されて、2対1で僕がモデレーターをやるはずだったのが、ちょっとそうならなくなったんですが、講演の形にさせていただきました。

で、1時間ほどあるところを今回ものすごく短くしていただいたんですけど、このままだと僕が壇上のタイムキーパーになってしまうんで、みなさんもうちょっとだけお付き合いいただいて、そもそもIVSの方々、小林さんとかがですね、なんで今回PARTYの方を呼んだのかってこと、僕なりの認識を紹介させていただければと思います。

:みなさんPARTYのお話、今楽しんでいただけましたでしょうか。

(会場拍手)

:僕も壇上で楽しませていただいたんですけど、楽しいっていうと、最近よく「BSと地上波どっちが面白い?」みたいな話があるんですね。でちょっと先日、去年のIVS京都でみなさんIVSの京都のセッションが終わって、京都大学のほうで学生さん向けのセッションをやってですね、僕nanapiの社長の古川さんなんかと一緒に登壇したんですけども、やっぱり、アナリティクスをかまして、どんどんアナリティクスでA/Bテストとかやって、いい方いい方ってやっていくのはいいんだけど、そうすると結果的に結構つまんないサイトになってしまわないか、という話があって。やっぱりある程度、クリエイティブっていうものが必要で、その何かアナリティクスばっかり頼ってしまうとつまんなくなってしまうっていう話が出てきてですね。BSと地上波も、結局CMが入らないBSの方が結構自由にやって面白いんじゃないかっていう議論もよくしています。

今回、僕の勝手な思いで、もしかしてIVS小林さん、違っていたら申し訳ないんですけど、結構やっぱりPARTYさんってフィジカルな部分。実際のこれまでのIVS、IT系のカンファレンスの中でもダントツに面白いセッションがあるんですけども、結構ずっと画面の中の世界の話が多かったですね。そうじゃなくて、だんだん画面の外の世界に、話題が、消費者の目線が移り始めているんじゃないかと最近、僕は思っています。

それで言うとですね、ちょうど今週、先週ですか、auさんが発表されて、今回の携帯3キャリアの夏の新モデルが発表されたんですけども、端末の発表はだんだんスモールニュースになってきて、今回KDDIさんが何を一番柱にしたかというと、スマートフォンって画面の中だけの世界じゃなくて、実際スマートフォンを使えなかった人たちが、使いこなせるようになって。たとえば、年配の、ITが全然苦手な人が、PARTYのチケットやったりとか、テレビ番組のコンサートのチケットをスマホで買えるようなレベルにまで持っていきましょう、みたいな話があったりですとか。

あるいはソフトバンクさんも、端末なんか全然目玉じゃなくて、それよりかは「フィットビット」といってヘルス系のアームバンドを発表したりしました。

気が付けば、スマートフォンってだんだんと、画面の中の世界よりかも、もっとリアルな世界との結びつきのほうが面白くなっている。

左上は、私も知っていますけど「アップ」っていう、会社のジョウボーンというヘルス系のアームバンドだったり。右下は決済システム、これもEコマースの決済じゃなくて、リテールとかで使えそうな決済のスクウェア。こんなもの出してきたりしています。左は、2005年はあんな感じでただ見ているだけだったのが、今年のコンクラーベではこんなにiPhoneやiPadを撮影していたり、というように、フィジカルなリアルな世界の風景が変わりつつある。

先ほどのPARTYの冒頭のほうでも、IVSで億万長者になるっていうのをちょっと引いて皆で俯瞰してみるっていうか、風景として見るとどういうふうに見えるのかっていう話もありましたけど、やっぱりちょっと客観的に見るって大事なんじゃないかと思います。

フィジカルな方面への揺り戻しが来ている?

それでいうと、我々の風景ってどんどん変わりつつあって、気が付けば、デジタルカメラもスマートフォンとの連携も当たり前になっているし、家電なんかも今やブラビアであろうとレグザであろうと、世界中のほとんどのテレビが、無線LAN機能さえ設定すればスマホでコントロールできるようになっちゃったり。あるいは、名古屋に行くとAZAPAっていう会社がスピードメーターからタコメーター、カーナビまで全部iPadでやっちゃおうっていう車を作っていたりします。

僕がこういった系で一番衝撃受けたのが、去年アメリカのトイザらスに行ったときの経験です。最近の子どもたちってみんなタッチジェネレーションじゃないですか。泣き出すとお母さんがパッとiPad渡して、機関車トーマスを見せて泣きやむ、みたいなことやっている。そういう子どもたちのおもちゃって、タッチして反応しないおもちゃって面白くないんですね。

なので、気が付けば幼児用の玩具ってどんどんタッチパネル式になっている。でも、タッチパネルを組み込んでしまうとおもちゃの値段が高くなって、親が買ってくれないというジレンマがあって、じゃどうしたらいいかっていうと、どうせ親が既にiPad持っているから、おもちゃの中にiPad入れて、それでソフトウェアでカバーしようという発想で、ですね。アップトイズっていうものが、今どんどんアメリカとかで増えつつあります。

で、これが実際、トイザらスのアップトイズのコーナーなんですけども、たとえば、釣り竿の中にiPhoneいれて、ブルブルっと震える釣り竿の釣りゲームだったりとか、モノポリーとかいろんなものがあるんですけど、この棚がびっくりするほど巨大だったりします。ほとんどiPhone、iPadを組み込んでいるおもちゃだったりします。

こういうフィジカルなおもちゃがあると、どんなに皆さんすばらしいゲームを作っても、アップルストアに出した途端、埋もれちゃいますよね。でも実はトイザらスだけじゃなくて、ターゲットに行っても、ベストバイに行っても、こういうコーナーがあるんで、通りがかりに子どもが「あれ買って、あれ買って」っていうふうにおもちゃを指して、買い物かごに入れてアプリを通す、そういったモデルができつつある。

あるいは今回、今日の会場にもいるんですけどBeatLabっていう会社があってですね、BeatPlugを作っているんですけど、音楽をあげるっていっても、iTunesとかでただリンクをクリックしてメールで送っても、ちょっとありがたみが足りないですね。BeatPlugがどういったものかというと、これで音楽あげるよってフィジカルにあげられるようにする。そうすると結構感動が違ったりするんじゃないかと思ったりします。

あるいは、Eコマースももちろんいいですけども、最近ジョブズが亡くなったりとかもあって、いろいろ叩かれてもアップルですけれども、やっぱりアップルストアにしてもそれ以外のお店にしても、お店に行って商品棚を見ると、エモーショナルな部分に訴えるアピールも違えば、セレンディピティの数も全然違います。

アップルストアってどんな売り方をしているかっていうと、iPhoneをレジ代わりにして、レジをなくしたことも非常に大きいんですけども、最近、アップルストアっていうアプリを出しているんですね。これ何がすごいかっていうと、EasyPayっていう仕組みを使ってお客さんが、たとえばオロクリップっていうレンズを、ピッて自分でスキャンしてアプリ内課金して、インアップパーチェイスを使ってその場で決済して、お店から持ち出しちゃっていい。万引きと間違えられるのが嫌な人は、レシートを店員さんに見せると袋をくれるので、万引きに間違われない。そんな仕組みでやっています。

これ、ただ単に、珍しいから面白いのかっていうと、そんなことではなくて、たとえば、東急ハンズとかへ行って、みなさん、いろいろ「面白そう!」と思うけど、今日この後デートがあるんで、せっかく1回カートの中に入れたものを戻してしまって、今日必要なものしか買わない、そんな経験があると思うんですね。

とりあえず、カートの中に物を放り込んでおいて、で、今日は今これ1個しか買わないけど、後でカートの中に入れっぱなしのモノを家からオーダーするってことが、アップルストアのEコマースと直営店と両方で繋いでいるというのもあったりします。

「ビット」から「アトム」へ

今日のまとめに戻りますけれど、スマートフォンって確かに面白いことができるんですけども、ユーザーインターフェイスの良いものはスマートフォン入れるかもしれないけど、ユーザーエクスペリエンスっていうと、もっとリアルな方も考えていかなければいけないんじゃないか。

ユーザーエクスペリエンスというと、ビットの方だけじゃなくて、もっとアトムの方にも、目を向けなければいけないんじゃないかとも思ったりもします。

それで言うと、どんどんビットもアトム化し始めていて、IVSでも金曜日の11時から3D関連のセッションやったりしますけども、ちょっと前にIVSでもテーマによく出てきた、たとえばセカンドライフなんかもですね、セカンドライフ上でみなさんたくさんアクセサリーとかしていましたよね、ジュエリーとか。そういったものが、今の時代3Dプリンターで簡単にリアルのジュエリーができてしまう。こういったものを売っているアムステルダムの会社があったりもします。

あるいは医療の世界でも、臓器とか、これはどこを血管が通っているか、手術のシミュレーションをするためのCTスキャンとかをもとにした臓器のモデルですけれども、10数年ぐらいするとだんだん、移植可能な臓器とかも3Dプリンターで作れるようになってくる。そんな感じで今フィジカルな方への揺り戻しが来ているんじゃないかな。そういったものを伝えたいということで、IVSさんも考えて今回PARTYの方々にお願いしたんじゃないかと思ったりもしました。

技術の"先"にあるものに人は感動する

中村:これは終わっているので一瞬だけ。さっきトイザらスでいうとアップブラスターという銃で構えたところにあるおもちゃは、日本のトイザらスに売っているので僕も買ったんですけど、銃自体の価格が安いですよね、アプリが3つとか4つとかあるんですよ。なので、1個のインターフェイスに対して、その後マルチにアプリを作って課金する方向を増やしたり、トイザらスで買うときに、この銃は一見安いんですよ。なので、手に取りやすくなっちゃうっていうメリットが両方あって。

今おっしゃったようにアプリ単体では面白くないかもしれないけど、あと、プレゼンスが少ないかもしれないけど、物質と組み合わせることによって、物質とソフトを両方作る。アップルとかもそもそもそういう戦略だったみたいですけど。そういうのって、すごいあるし。たぶん、さっきお話していたナウみたいな、ライブみたいなものを作ることとも結構関係してくるんじゃないかなあと思います。

1個だけご紹介するのを忘れてしまったので。弊社で、広告じゃなくて自社サービスでテスト的にやったもので、「OMOTE 3D(表参道)写真館」というのをやりました。

ごめんなさい、我田引水みたいにしちゃって。昔からよくある卒業写真とか結婚式の写真とか。写真館っていう昔からあるBtoCを3Dスキャナーでやったら面白いんじゃないかってことです。撮ったらフィギュアで届けるというだけです。これは、もしかしたら、文脈としては半分ぐらいしか噛んでないのかもしれないんですけど。

きっとぐるっと1周まわって、「atom<bit」っていうのがあったんですけど。技術でできることって「短縮」だと思うんですよ。あっという間に電話で繋がるとか、メールで届けられるとか、TwitterやFacebookで多くの人と情報を共有できるっていう。すごい短縮できた結果、その次に来るものに、たぶん人々は感動を感じるのではないかなあと思って。

それは意外と物質的なこととか、ライブとか、CDのアルバムじゃなくてDVDじゃなくて、っていうところになってくるんじゃないかなあなんて思ったりしますので、3Dプリンターのセッションを僕も楽しみにさせてもらおうと思います。

:わかりました。じゃちょっと時間がオーバーしているので、ここで終わりにします。ありがとうございました。

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