グローバルインサイト(話題性)を作る

それからいろんなことがあって、PARTYって会社作って移ったんですけど、いくつかのコンテンツを手掛けてわかったことがあります。それは、作り方を考えるっていうことで多少整理ができると思います。

1つ目は、グローバルに通用するインサイト。インサイトっていうのは、たぶん皆さんもよく使われる言葉かと思うんですけど、広告では「洞察」とかいったりしますね。話題とか、こんなのあったらいいよね、っていうコモンセンスだと思います。最近ひとつ作ったものがあります。

これは、モバイルのクロームでやるゲームなんですけど、パソコンの前でモバイルをやると、よくスマホのゲームで、玉ころがしゲームみたいな、スーパーモンキーボールみたいなゲームがあるんですけど、それをこっち側で動かすとパソコンの向こうで玉がコロコロ転がるみたいな。そして、世の中のサイト全部を画像認識してゲームステージに変えて、その中で玉ころがしゲームをするっていうことをやりました。

Googleさんなので、そもそもグローバルがターゲットなので、グローバルに作ってグローバルにウケた。ワールドワイドに作ったというのが1個あるんですけど、もう1個は、Webの構造を解析して、その分だけ無数のゲームにするっていうことを前もやってまして。

これはプレイステーション3の『ザ・ラストガイ』ていうゲームのプロモーションで作った「どこでもラストガイ」っていうサイトなんですけど。サイト全体をキャプチャして背景の一番色の多い部分をゲームで動ける場所にすると。

で、それ以外を障害物にして、ていうふうに、まあステージを解析してゲーム化するっていうことをやったら、1週間で600万回ぐらいプレイされたんですね。

こういう誰でも楽しめるゲーム、ユーザーに応じて無限のステージを作れるっていうのは、意外と誰でも楽しい。誰でも違うふうに「楽しい」というインサイトを持つことができるのではないかな、と仮定してみました。

リアルなものはWebでも話題になる

もう1個は、単なる話題、世の中に話題があるニュースっていろいろあると思うんですが、じゃなくて、イノベーティブな話題っていうものを作ること。これは多分みなさんも狙ってることだなと思います。イノベーティブな話題っていうのは、こんなことできちゃうんだなあってことですよね。たとえば、人が乗れるロボットを作るKURATASとか、脳波で耳が動くNECOMIMIだとか。

それを広告に当てはめたとき、昔作ったものに、すみません汚くて、ウンコで走るバイクっていうのを作りました。これはTOTOさんなんですけど、何かこれグローバルインサイトだなと思って、アラレちゃんじゃないですけど、ウンコで走る車があったらいいなと思って、調べたらあったんですよ。

イギリスのベンチャー企業がウンコで走るフォルクスワーゲンを作っていて、で、連絡したんですよ。連絡したらどうやら日本の技術でもできる。どうやるかっていうとバイオガスっていう燃料を作るんですね。排出物や汚泥を燃料として発酵させたりして作るバイオガスは、タクシーの天然ガスによく似ていると。なので、バイオガスで動くエンジンを載っけてコンセプトモデルということで作って、バイオガスわざわざ輸送してきて、積んでこれで日本を縦断してPRしました。

そうしたら、これが先に海外で話題になりまして、なんか日本のトイレメーカーが頭のおかしいもの作っているぞと。で、それを嗅ぎつけてきた日本のTVメディアに拾ってもらって、目覚ましテレビとかに出たんですね。PR会社を使ってPRを仕掛けてもかなり投下しないと、タレントを使って記者会見とかしないとテレビにいかない。海外で面白がられて火がつくと、(日本でも)テレビに出たりして大きなPR効果を得ることができるみたいな方程式があります。ちょっと蛇足なんですが、トイレ型バイクに続いてもう1個だけ作っています。

これは、トイレ型ゴールキーパーという。説明しようみたいな感じなんですけど、ハイスピードカメラを使ってボールの軌道を見るんですけど、なんでこんなことをそもそもTOTOさんがやっているのかを話すと長くなるので、Twitterとかで後で……。とにかく、グローバルインサイトっていうのを作ると話題化しやすいんじゃないかっていうこと。もうひとつは、Webとはいえリアルな物体を作るっていうことは、結構効くんだなあということがわかりました。

ユーザーに自発的に参加してもらう仕組みをつくる

もう1個、コミュニケーションのスイッチをひとつ切り替えるっていう話です。いくつか、簡単に言うと、電車のレールがガーッとあるところをイメージしてください。そのスイッチを切り替えると違う方向に電車が行くように、何がしかひとつ切り替えると、人の流れが変わることがあるのではないか。いくつか、わかりやすい方程式があると思います。

これはユニクロさんで作ったUNICLO LUCKY SWITCHっていうものなんですが、ブログパーツですね。たとえば、これは何かっていうと、そのサイトの画像を全部ユニクロのくじに変えることができる。試しに、ブックマークレットから使ってみますと、大事なダイヤモンドパートナーであらせられるSAPさんを(クリックすると)ユニクロになる。

この辺全部、1個のJPEGなんだな(大きな画像を選択して)なんて思いながら。ユニクロになる。みたいなものを作りました。

これを、ブックマークレットみたいな形とブログパーツで配布したんですね。ポイントがひとつで、ブロガーに配布したときに、すごい低確率で当たりが出たらユニクロから粗品をプレゼントするんですけど、当たったユーザーにも、それを配布したブロガーにもプレゼントするっていうふうにして、付けて回ったんですね。それじゃアフィリエイトです、ていう話なんですが、ブロガーさんが自分から宣伝してくれたので、短期間で300万回くらい捲られるみたいなことになりました。

もう1個ですね、3年前mixiアプリが全盛だった頃に、HONDAさんがクライアントで1個だけmixiアプリを作りました。ホンダのCR-Zっていう車のプロモーションなんですけど、CR-Zという名前がぜんぜん若者に浸透しない、と。これは若者向けの車なのだと。若者向けのメディアであるウェブでよく言いそうなことですね、クライアントさんが。で、何とか名前をもっと認知させる方法はないかと。

考えたのは、mixiのなかの自分のニックネームに「CR-Z」をいれるだけでCR-Zが当たるっていうことを考えました。もうアプリはないんですけど、今もうmixiで「CR-Z」で検索すると、1000件以上、3年前のキャンペーンなのにまだみんな変えてないのかというぐらい、みんなCR-Zがついている。結果、これは1ヶ月で83万人(ニックネームが)変わりました。サイトに登録して、アプリに登録して、自分の名前を変えたということです。

なぜこういうことになったかというと、自分のニックネームにCR-Zを入れるだけでCR-Zが当たるっていう懸賞の神秘性と、もう1つはソーシャルアプリみたいなことやったんですね。毎日、当選倍率が1から始まって、サイコロ振れる。そのサイコロがフレンドを呼ぶとたくさん振れる、たくさんサイコロもらえるみたいなことをやったんです。当選倍率をどんどん上げたり下げたりすることができる。

こういうことやった結果、83万人のプロフィールを変えて、mixiは出禁になりました。「変なアプリ作るんじゃない」と怒られて。

(会場笑)

まとめのところに戻りますが、コミュニケーションのスイッチをひとつ切り替えるっていうことは、たぶん、イコール、ユーザーに自発的に参加してもらうってことを、コミュニケーションのなかに作らなきゃいけないんじゃないかということです。これ難しいなと思いながら。

情報がストック型からフロー型に

3つ目、最後です。「ナウイズム(NOWISM)」って言葉が、数年前から海外の記事でよく目にするようになりました。これは、わかりやすく日本語的に解釈すると「今を共有すること」かなと思います。たとえば、Snapchat、ベンチャーのみなさんはご存じかと思いますが、写真を10秒間だけ共有できるアプリですね。これは、1日3千万回ぐらい使われている。ホリディシーズンには、Instagramの4倍くらい使われている。これはすごいナウイズム型だな、情報がストック型からフロー型に変わっている、みたいなことをよく言われます。

リアルタイムに、さっき調べたら297億回再生されて、そのすべてが全部蓄積されないでどんどん流れていっているっていうのが、僕らが何か面白いコンテンツを1個作っても、あっという間に、すげえ、はい次、次、次……というふうに流れていくっていうのが今の現状です。

たとえば「Red Bull」のキャンペーン、これすごいですね。これは、すごいナウイズム型かなあと思います。これは僕、深夜たまたま見れていたんですけど、ナウイズムって考え方、すごいアディクテッド(中毒性がある)だなあと思います。この瞬間だけしか見られないからお前も見てみろよと言われたら、絶対見ちゃう。釘付けになる。アディクテッドだ。

もうひとつ、家入(一真)さん。同い年なんでちょっと仲がいいんですけど、家入さんはフロー型の人間だなあと思います。彼自身がフロー型の広告だなあ。IVSに呼ばれていないのに来て怒られた家入さんは、非常にナウイズムなんじゃないかなあと思います。

作っている最中も、その経過も共有する「ナウイズム」

……ということで、僕が考えているのは、広告を作っている最中も、その経過も、共有するっていうこと。たとえばですが、先日TBSで深夜番組を作りました。これはSONYさんなんですが、先にアプリケーションをダウンロードしておいて、ボタンが付いている。そのボタンを押すとリアルタイムにテレビ番組の向こうで、そのボタンが押された数を集計して、その数字如何によってリアルタイムにライブの内容が変わる。

これは、アメリカの、ソニーミュージックで大ヒットしたKarmin(カーミン)というアーティストを呼びまして、でっかい倉庫を借り切ってインタクラティブに発動する装置っていうのをやったんです。真ん中に「プッシュ」っていうふうに出ているのが―これテレビ番組に直接フラッシュで載っけているんですけど―だんだんこの、押す数が上がってくるんですね。

それに対して、リアルタイムでみんなが押している数がどんどん集計されて、装置が発動するかしないかっていうのが決まる。それによってリアルタイムにミュージックビデオを一緒に作っていこう、という実験をしました。これはどうしてソニーがこういうことやっているかって言うと、SONYがマルチスクリーン戦略っていうのを考えていて、たとえば、「タブレットとかXPを使いながらテレビを見る」っていう行為を楽しくやるためにはどういう事例が必要なのかっていうようなことを一緒に考えていった結果、作ったものです。

これは最後の事例です。これは、一番最近作ったものです。

これは、インテルグローバルアジアがクライアントだったんですけど、まあほとんど課題がなかったんですね。ウルトラブックで面白いことやってくださいと。で、実はUltrabookのキャンペーンを前にもやっていて、うちの会社にUltrabookが結構余っていたんですね。

で、やったのは、コインドーザーを作りました。ロボットアームで自分の名前を登録すると、シェアすると同時に、その名前が落とされてコインドーザーみたいにプッシュされて、Ultrabookを落とすことができたら、それをあげるっていうキャンペーンをつい最近までやっていました。一昨日ぐらいに終わったのかな?

で、これもグローバルで85,000 LIKE(いいね!)ぐらいですかね。1ヶ月いっていないキャンペーンですけど。これやるためにロボットアームの免許とったりしました。これはUstream見ながらリアルタイムに参加して、リアルタイムにコインドーザーをやっていくようなことを狙ったものです。

PARTYの3つの広告手法まとめ

駆け足でしたが、まとめます。3つ、お話をしました。

1.グローバルインサイト。話題性を作ること。

2.コミュニケーションのスイッチを何がしか切り替えること。つまり、みんなが自発的に参加できるような仕組みをつくるということ。

最後が、3 .NOWISM(ナウイズム)。要するに今を共有する。このトレンドのあたりが、私たちが今注目していて、大事にしている手法です。

作り方を考えるっていうことは、イコール、作り続けると見えてくることでもあるんですね。私たちがもう1個大事にしていることは、とにかく試行錯誤を増やすと。あんまり考えないで作ってみようと。

で、こういうのも、やった結果たまたま見えてきた仮説なんですよね。ので、間違ってないとは思うんですが、とにかく、こういうふうな目線を持って作ってみてダメだったら、またすぐやり直すっていうことが非常に大事なんじゃないかなあと思って、僕らはやっています。

なので、結局、面白いことを思いついたらすぐに作ってみよう、とにかく作ってみよう。これが「作り方を考える」っていう初めのお題のために、「作り方を考えるために作ってみよう」という逆説が生まれます。そのなかから答えっていうのが生まれるんじゃないかな、ということを私たちは考えてやっています。