紙の編集とWebの編集は、もっと競い合うべき

司会:今回のセッションは、「メディアの伸ばし方・稼ぎ方と」いうタイトルで、東洋経済新報社の佐々木紀彦さんと、株式会社nanapiの古川健介さんにお越しいただきました。

佐々木:東洋経済オンラインの佐々木と申します。ずっと紙メディアをやってきたジャーナリストなんですけれど、1年前から東洋経済オンラインというサイトに移って、編集長を務めております。

古川:株式会社nanapiの古川と申します。nanapiというサイトをしている会社です。

司会:メディアと一言で言っても、お二人のやっているメディアというのがかなり違っているわけじゃないですか。佐々木さんのほうが割と伝統的なメディアを展開されていまして、古川さんのほうは、ご自身ではメディアよりもサービスというのが主なんだよねというのをおっしゃっていたんですけれど。お互いに全然違うやり方をされているんですけれど、質問とか、こんなこともう少し聞いてみたいなということはありますでしょうか?

古川:紙メディアの人が、オンラインのほうが伸びていくことに対して、どういうふうに捉えられているのかな、と。

佐々木:社内的な話ですね。

古川:嫌がられていたりはしないんですか?

佐々木:さっき話したようにですね、記者集団は、やっぱり紙だけでなく、他にいっぱい自分たちの記事を見られる場所が出来たという意味で、喜んでくれているんですけど、紙の編集部とかは、正直複雑な気持ちの人もいると思うんですね。

古川:そうなんですね。

佐々木:あると思います。私、それは社内での競争になるからいいと思っていまして。記者を取り合い、どっちが記者を惹きつけられるか、そして社内の支持を得られるか。そうやって社内で競争するぐらいでいいと思っているんですね。なので、敵視はしていないけど、切磋琢磨って感じですね。

古川:紙はどちらかというと年々落ちていって、ウェブはすごい伸びてるとなると、よりこう、記者さんがオンラインに行きたいみたいにはならないんですか?

佐々木:そうなりがちですよね。なので、そこはねえ(笑)。私としては嬉しいんですけど、社内の、マネジメントの立場からすると、複雑だと思うんですよ。

古川:そうですよね。一方で、収益源としては紙のほうが圧倒的にいいわけですよね。

佐々木:まだいいので、そこに本当絡むんですよね。それでもう、ウェブが紙と同じぐらいか、それ以上儲かるんであれば、経営陣ももう紙から人をどんどんシフトしようとすると思うんですけど。今、広告が倍々で伸びていますけど、紙を補えるぐらいの規模ではまだないですので。経営陣としても、紙の落ちを防ぐほうに資源を投入するか、オンラインの成長に資源を投入するか、結構迷うところだと思いますね。

古川:そうですよね。なるほど。

スマホでは「検索」をしなくなる

佐々木:私が思ったのが、検索が、スマホではされなくなったというのが、(さっきのセッションで)最後みんな盛り上がったじゃないですか。PCの場合、nanapiって検索でユーザーを引きつけてきたわけじゃないですか。スマホではどうするんですか?

古川:そうですね、検索に代わる部分というのを押さえていくのが多分一番かなと思っていて、コンテンツって着地ページになってしまうので、ユーザーさんがたくさんいて、砂時計の真ん中に、Yahooさん、Googleさん、あとグノシーさんなどがいると。そこからさらにいろんなコンテンツのプレーヤーのところにいくっていう形なので、我々って非常に競合が多いところなんですね。

で、やっぱりこの、真ん中にいる検索ですとか、そういったところの変化によって我々は非常に左右されてしまうので、検索の部分から押さえるというのが、メディアとしては必須かなと。検索というか、真ん中のところですね。新聞とか、そこから押さえてたから、いまだに強く残っていて、宅配を押さえているというのも、強烈なんですよ。なので、そこからできるというのが一番かなと、最近は考えてますね。

佐々木:そういう意味じゃ、Google の権力って、スマホだと落ちてくるんですかね?

古川:そうですね。ただ、Google さんもいろいろ考えていて、まさにGoogle Glassとか使ってみると、検索をもうしないんですね。リアルタイムに出てくる。そういうのが近いのかなと思っていて、例えば、脳波で困っていることを感知したら、どうしたのって聞いて、実はこうなんだよと、答えたら結果を返すみたいな。そこまでしないと、多分、強いプレーヤーとしては生き残っていけないのかなと、思ったりしますね。

IT技術と編集力の融合について

佐々木:冒頭に、我々メディアとしてタイプが違うという話があったじゃないですか、サービス的な、コンテンツ的な。これって、こういうのが融合したメディアが、ないなって思うんですよね。お互い得意分野ってあるじゃないですか。これが融合したメディアって作れないもんですかね? 相性悪いですかね(笑)。

古川:作れるとは思います。海外でも、強いプレーヤーが自分たちでコンテンツを作るっていうふうになっているんですけれども、サービスとかツールを作っている人がコンテンツを作ることはできても、逆ってなかなか難しいなと思っていて。なぜなら、完全にコンテンツとテクノロジーでわかれてしまっているので、今から東洋経済さんがプログラマを100人集めてイケてるものを作るって、なかなか大変だなと思いますね。

佐々木:ですよね。

古川:それでまた、使ってもらえるかって別の問題になってしまうので、もし東洋経済さんがグノシーみたいなのを作っても、使われるかというとまた……。

佐々木:無理ですよね。

古川:と、なると、どうするのがいいかなというのも、悩みどころですね。

佐々木:ネットと古い伝統的なメディア企業の提携みたいな感じで、何か起きると、面白いものが生まれそうだなという気が、最近しているんですよね。

古川:ネット企業はコンテンツを作るのがまだそんなに上手ではないので、そこに価値はあるとは思いますね。

佐々木:ベゾス的なものを誰か試してほしいんですよね。

古川:そうですね。東洋経済さんがテクノロジー企業とかを買収したりすると……。

佐々木:そんなお金ないと思います(笑)。

コンテンツ自体はお金にならない

司会:今回のテーマが、メディアの伸ばし方・稼ぎ方なんですけれども、ぶっちゃけて稼ぎ方のほうが重要なんだろうなと思うんですけれども、そういうのって、皆さんでお話した中ではわかってきたんでしょうか?

古川:藤代さんのおっしゃっていたのが、象徴的だと思ったんですが、コンテンツを売ろうとしてもなかなか売れませんという。ただし、物販、写真は売れたというのが面白いなと思っていて。これから、お金を払うところって、コンテンツそのものよりもコンテンツにまつわる体験かなというふうに思っていまして。ほぼ日さんですと、「やさしいタオル」という商品は、「タオルの作り方」から順に、20回ぐらいの連載をやって初めて売る、と。そうするとその過程を見ているので、タオルを買うという体験が楽しくてお金を払ってくれるですとか、そういったところに、これからのメディアの稼ぎ方のヒントがあるかなというふうに思っていますね。

佐々木:リアルイベントの話もありましたけど、今日話していて大きく違うなと思ったのは、伝統的な企業とかある程度数十人、数百人、数千人いる企業が食うためのビジネスモデルと、数人のちっちゃいメディアが食うモデルは違うんだろうなと。物販とかもですね、数十人なら食えるかもしれないですけど、数百人、数千人は食わせられないと思うんですよ。今、まだ単価は低いにしても、いろいろなビジネスモデルがある中で、私は広告が今のところ一番ポテンシャルがあると思っていまして、なので私は広告のほうに全力投球したいなと思ってるんです。

古川:広告の最終形態としては、テレビ並に収入が上がるというイメージですかね?

佐々木:そこまでいくかはわからないですけど。今日、動画の話をしましたけれども、あれによってブランディング広告がとれて、テレビの莫大な予算の一部をとれるんじゃないかっていう、期待があるんですね。そこさえとれれば、今までの単価が安いだけじゃない、高い広告もウェブで出てきて、ウェブメディアのマネタイズのあり方もかなり変わるんじゃないかなと、期待しているんですよね。

古川:動画広告は1つありそうですよね。

司会:過渡期ということで、将来は動画とかで儲かるかもしれないという、期待が考えられるということなんですけれども、そこに至るまではどういったブレイクスルーが必要でしょうか?

佐々木:私は、メディアは先ほど古川さんと話したように、どこかのテクノロジー系の企業、ネット系の企業と大胆に提携しないとだめだろうなと思いますね。これから儲ける手段って、テクノロジーがあるかどうかで、相当違うと思うんですね。それがメディア企業ってほとんどないので、自分たちで作るんじゃなくて、どっかのテクノロジー、超一流のテクノロジー、そしてビジネスセンスを借りてきて、一緒にマネタイズしていくみたいな。自分たちだけじゃなくてどっかと組んでマネタイズするっていう発想が、ブレイクスルーにつながるんじゃないかと個人的に私は思っています。

古川:私も近いことを思っていて、いわゆるコンテンツプロバイダ側と、ディストリビューター側の二つがありまして、新聞とかって宅配と、紙面と、コンテンツの3つを押さえているから、非常に優れていましたと。テレビも近いんですけど、ネットと分断されているので、収益化が難しい構造になっているのではないかと個人的には思っています。なので、これを組み合わせて1つのパッケージとしてビジネス化するか、もしくはそれぞれが稼げる道を探すかのどちらかしかないと思うんですが、個人的には前者のほうを考えていきたいなとは思います。

司会:ディストリビューターってスケールメリット効くじゃないですか、大きくなった企業はどんどん大きくなっていきますし。そうすると、すごい影響力、独占力を持ち始めるわけじゃないですか。そうすると、その後にのってくるコンテンツメーカーっていうのは、いいように使われる傾向になっていかないのかなという心配があります。それはどうなりますか?

古川:多分、そうなるものなんじゃないかなと思っていて、テレビとか新聞とかも数社が独占して、強い影響力を持ったところがコンテンツを集めてこれるというふうになっていると思うんですね。となると、ディストリビューターのほうはよくて数社になっていって、コンテンツを作る人がたくさんという形になるんじゃないかなと思っていますね。

佐々木:独占だとまずいですけど、数社あれば、そこでどこかのコンテンツを囲い込むためにお金出したりとか、競争が起きるかもしれないですね。

古川:そうですね。

佐々木:テレビ局もそうですよね。

古川:そうですね。1社は、独占はないかなと思います。

司会:じゃあ、ディストリビューターとして既に力をつけてきているところっていうのは、見えてきているんでしょうか?

古川:検索ではGoogle さんは圧倒的です。パソコンだとYahoo さんが圧倒的で、スマートフォンはこれからだと思うんですが、やはりグノシーさんとスマートニュースさん、あとラインニュースさんが今力を伸ばしていると思っています。なのでここですね、スマートフォンをどこがとるのかというのが、1つのポイントになると思います。

佐々木:そのための差別化として、何か自分でコンテンツを作ったりとか、強力なものを作るかどうかということですね。

古川:そうですね。なのでグノシーさんとかスマートニュースさんは、もしかしたらこれから自分たちでコンテンツを作るっていう道があるんじゃないかなと、勝手に想像したりしていますね。

タブレットの普及で、「雑誌の時代」がまたきている

司会:従来型メディアの場合というのは、そういったスマートフォンの流れに対して、どう対応していくべきだとお考えですか?

佐々木:スマートフォンの流れですね、それはどうしたらいいんでしょうね……。

古川:タブレットで読む、専用のものとか作ったりしないんですか?

佐々木:それはもう、いろんなところがやっていますし、やるべきですよね、確実に。さっきおっしゃったのが面白かったですよね。新聞社、雑誌者のノウハウが、スマホででもできるんじゃないかと。パッケージングのノウハウが。

古川:アップルさん、ニューススタンドとかで雑誌をまた定期購読するようになって、これは結構、雑誌社これからくるんじゃないかと。アスキークラウドさんとか僕、紙だと読んでなかったんだけど今定期購読していて、これは非常に品質も高いし面白いなと。となるとですね、500円、1000円払って雑誌を買うって全然やってくれるんじゃないかという気はしていてですね。今、お金がないから雑誌に払っていないわけではなくて、紙だからかさばるなとか、わざわざ買うというアクションが面倒くさかったりするだけだと思うで、その辺、可能性がありそうだなと思います。

佐々木:雑誌がスマホに奪われたとか嘆いているんじゃなく、スマホ空間の中で存在感高めるための、売り方とかいろいろ考えていくってことですね。そういう意味では、課金が一番重要ですね。

古川:そうですね、課金は多分あるなあと、最近また思い始めました。

佐々木:そうすると、通信キャリアと組んで、課金もスムーズにできたりとか……。

古川:そうですね。

佐々木:そういうのじゃないとだめですね。

司会:タブレットが、世界的に見て日本って普及率が低いじゃないですか。それはどういう理由だと思われますか? そして、タブレットの普及が例えば3年後に来るというんだったら、そのとおりに照準を当ててビジネスのことを考えていけばいいと思うんですけど、何年後ぐらいに来ると思われますか?

佐々木:古川さんにちょっと聞きたいのは、最終的にメディアを読む媒体というのは、タブレットになるんですかね、もしくはスマホになるんですかね。それとも違う、何か新しいデバイスができるんですかね? 紙でできてる、ペーパータブもインテルなんかが開発していたりしますけど。

古川:多分、多様化していくだろうなとは思ってますね。タブレットでもスマートフォンでも読むっていうのが、基本になるのかしらと。

佐々木:タブレット、今後、日本でも配られますよね学校で。そうすると、そういう世界がどんどん増えてきて、全然違ってくると思うんですけど、2年、3年ぐらいで大きい変化がありそうな気は、私はあんまりしないっていうか。スマホが中心であり続けると思うんですけど……。

古川:そうですね。日本人は特にスマホが好きな感じがするので、その辺だと、まだまだかなという気もするんですが、一方でようやく周りでもタブレットを持ち始める人が増えてきたので、2~3年後にはもしかしたら、そこそこいくかもなとは思ってます。

司会:雑誌とかをね、スマホで読むのはちょっと小さすぎるしという方が結構いらっしゃって、タブレット7インチとかが、読書用としては軽いし最適だという話をよく聞くんですけど。そこが広がってくると、雑誌の復活があるのかなという感じですかね?

古川:そうですね、あると思いますね。

佐々木:タブレットとおっしゃるとき、kindleとかも含まれますか?

司会:そうですね。Kindleも。

佐々木:最近、漫画はタブレットで読んでる人、かなり増えましたよね。

古川:そうですね、漫画は増えてるって聞きましたね。30冊とかだと、一気に買うと場所をとる、日本だと場所の問題は大きいので、そのとき電子書籍がいいんだろうなと。

佐々木:ばんばんタブレット、きてますね。