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大学生が考えるコロナ禍の生活~暗黒期との付き合い方~(全3記事)

「みんなと同じがいい」が口癖の17歳に課せられたのは、3週間の国際会議への参加 「私の居場所」から飛び出したことで得た、人生を変える経験

日本財団ボランティアセンター主催で開催されたイベント「大学生が考えるコロナ禍の生活~暗黒期との付き合い方~」の模様をお届けします。新型コロナウイルスの影響を受け、思い描いていたキャンパスライフを送れずにいる大学生。この“暗黒期”を抜け出し、前を向いて歩んでいけるきかっけを作るためにはどうすればよいのか、大学生の2名とグローバル教育推進プロジェクト(GiFT)ファウンダー辰野まどか氏が考えます。本記事では、辰野氏の人生を変えた「暗黒期」のエピソードと、大学生のコロナ禍の生活の実態について語られました。

世界中の学生を悩ませたコロナ禍の生活

樋口佳純氏(以下、樋口):みなさんこんばんは。学生インターンの樋口佳純です。それではゲストをお迎えした対談を進めていきたいと思います。ゲストはグローバル教育推進プロジェクト(GiFT)ファウンダーであり、代表の辰野まどかさんです。さっそくですが、辰野さんより自己紹介をお願いいたします。

辰野まどか氏(以下、辰野):かすみん、ご紹介ありがとうございます。あらためまして、みなさんこんばんは。私はGiFTの辰野まどかと申します。簡単にスライドをシェアさせていただきながら、自己紹介させていただきます。

私はグローバル・シチズンシップと言って、「世界をよくしたい!」という誰でも持っている思い・志を育成する。そういった教育団体を10年前に仲間と立ち上げました。SDGsであったり、そういった世界を良くしたいという思いのあるいろんな人をつなげるお仕事をしています。

その中で7ヶ国でプログラムをやったり、もしかしたらご覧のみなさんもご存知かもしれないんですが、「トビタテ!留学JAPAN」といって、毎年1,600人の高校生・大学生が世界に出るプログラムを文部科学省が行っているんですけれども、そちらで出発する前と後の高校生コースの研修を担当したりしています。

他にも世界とつながる若者たちを育成するための先生の研修をしたり、思いのある方々を集めてプログラムをやったりしています。

ただ、みなさんこの写真でお気づきかもしれないんですが、私たちは人をつなげる場作りを仕事にしているので、実はコロナの影響でスケジュールが真っ白になり、会って話してもらうことがずっとできない状況が続きました。でも、今はそれを越えて、こうやっていろんな国でプログラムを行っています。

こうやっていろんな国とプログラムをしていると、どの国も本当にコロナで同じように悩んでいて、同じように学校に行けなくて、同じように職場に行けなくて、いろんな生きづらさを感じている大学生、高校生がいることに気づかされます。その中で、今オンラインでプログラムをやるようにしています。

人生の「暗黒期」は、自分に向き合う時間

辰野:今この瞬間も、ラオスという東南アジアにある国とつないで研修をやっていたり、昨日までバリ・インドネシアとつないで研修をしてました。研修先ではインドネシアの大学生、そして日本にいる大学生とをつないで、世界をよりよくしていくというテーマで話していく。そんなプログラムをやっています。

今まで10年間、このGiFTを通していろんな国とつながってプログラムをやってきているんですけれども、ただ私の人生自体は……これは0歳から今まで、今はもう少し年齢が上なんですが、人生のアップダウン表です。

※ぼかし加工を行っています

もうご覧の通り、すごく落ちている「人生どん底」があります。今日のイベント名で言えば「暗黒期」ですね。暗黒期があったり、外に出たり。アップダウンが相当激しい人生を送っています。

一言で言えば、もしかしたら私にとってこの人生の大変だった時期は、自分の居場所を見つけるための、自分に向き合う時間だったのかなと思っています。そして人生が楽しくて、世界に出ている時は、もしかしたら外に出て自分の居場所を広げている時期だったのかなと今は思っています。

また後ほどこのアップダウンがどんな感じだったかをお話しできたらと思います。私自身、今はちょっと華やかに「世界とつながってます」なんて言ってるんですけれども、実は本当に大変な、息もできないようなつらい気持ちもたくさん味わいながら今を生きています。ありがとうございます。

大学生と振り返る、コロナ禍の不安やもやもや

樋口:ありがとうございました。次に、もう1人学生インターンが登壇いたしますので、自己紹介をお願いします。

大野さくら氏(以下、大野):私は大野さくらといいます。中央大学文学部に在籍をしております。ボランティアをする時とかは「サクラン」という名前でよくしているので、覚えていただけるととてもうれしいです。

神奈川県から来ました。ストレス発散としてドラマを見て感動したり、ビーズでアクセサリーを作ることがとても好きです。私もかすみんと同じように日本財団ボランティアセンターの、今年度のインターンをしています。

私は高校生の時に本格的にボランティアを始めました。高校生で主に東北の農家さんの支援のお手伝いをしていました。大学ではオンラインでのボランティアをしたり、最近では軽石を回収するボランティアに行ってきました。以上です。

樋口:サクラン、自己紹介ありがとうございます。それでは最後に、私も自己紹介をします。東洋大学国際観光学部2年生の樋口佳純といいます。出身地は長野県です。先日東京に移動してきたんですけど、長野県はまだ雪がすごく降っていて、雪をかき分けながら東京までやってきました。

辰野さんと出会ったのは、大学での授業がきっかけでした。その当時私は大学1年生で、コロナ禍まっただ中のオンライン授業でした。やりたいことに何も挑戦できずに、私自身もやもやした気持ちを抱いていたんですが、辰野さんの授業であるワークをやったことがきっかけで、そのコロナ禍の不安やもやもやが自分の中で整理されて、気持ちが軽くなったなと思いました。

このワークは、後ほど参加されている学生のみなさんにもやっていただこうと考えています。このイベントで、少しでも気持ちが軽く、一歩踏み出せるきっかけになってもらえたらうれしいです。本日はよろしくお願いします。

「みんなと同じがいい」が口癖だった17歳

樋口:それでは、さっそく最初のお話に移っていきたいと思います。今回のイベントテーマを、「暗黒期」としています。私たちが考えている暗黒期は、人生の目的が見つからなかったり、日常が忙しく他のことを考える余裕がない。思いどおりにならず自己嫌悪になるなど、悩みを多く抱える時期だと思っています。

この暗黒期は、特に学生時代では誰にでもあるものだと考えているのですが、暗黒期のご経験など、辰野さんからお話しいただければなと思います。それでは辰野さん、よろしくお願いします。

辰野:ありがとうございます。では少し暗黒期という大きな大きなテーマで、ぐっと重くなるような痛い思いをするものなんですけれども、私の人生も包み隠さずお見せしてます。本当にアップダウンの激しい人生でした。一言で言えば、自分とは関係なく外の理由で暗黒期が来る時と、自分が理由で暗黒期が来る時があるなぁと思うんです。

後ほどみなさんに、今かすみんにも紹介していただいたような、この図を説明しながら何かが起きた時にどう捉えるかというワークの話をしたいんですけれども。実は1つ、私の人生のアップダウン表の17歳の時に、大きな「!(びっくりマーク)」があるんです。

この「!」は何かというと、恥ずかしながら、こんな仕事をしているにも関わらず、中学の頃から英語が大嫌いでした。

樋口:えぇ~! 

辰野:周りに英語ができる友人や帰国子女の子も多かったので。なんというか、「もう私が勉強しても意味なくない?」「私、別に海外にも興味ないし、日本人たるもの日本語しゃべってればいいんじゃない?」という感じで、徹底的に勉強しませんでした。

私の当時の口癖は「みんなと同じがいい」でした。周りの友だちにあわせながら、一生懸命がんばって生きてましたね。

母親に参加させられたNGOの国際会議

辰野:でも、ある日うちの母親から突然、「スイスでやっているNGOの国際会議に参加する権利をあげる」と言われて。

樋口:突然。

辰野:そう。「大人の会議だけど参加することはできるから」と言われて。

樋口:すごい。

辰野:突然夏休みに、英語がまったくできないのに、世界中のいろんなNGOのリーダーとか政治家のリーダーとかやってくる会議に、1人で、3週間も参加させられました。

樋口:すごい。

辰野:これは外部的要因です。なぜなら私の意思じゃなく、親にもむりやり「行ってこい」って言われたから。「みんなと同じがいい」と言っている娘だったからこそ、母は送り出したかったんだと思うんですけど。

これは人生でめちゃくちゃ使えるのでみなさんにも覚えていただきたいんですけれども、この時何が起きたかというと、私がその時にいたのは、「居心地のいい場所」ですね。真ん中のコンフォートゾーンです。言ってみれば、「私の居場所」でもあったんですね。

そこでぬくぬくと同じ友だち、同じグループの子たちと、ずっと仲良く、学校も通学路を行ったり来たりしながら、普通に生きてたんです。でもむりやり母に言われて、言ってみれば「パニックゾーン」まで飛び出す感じで、海外に送られちゃったんです。

怒られたことで気づいた、大きな「!」

辰野:ちなみにこの「コンフォートゾーン」という自分のいつもの居場所から一歩外に出ると、「ラーニングゾーン」が待っています。一言で言えばすごく居心地が悪い場所です。大学生のみなさんで言うと、私も含めてみんなそうだと思うんですが、コロナ禍なんてもうまさに「ラーニングゾーン」です。

樋口:そうですよね。

辰野:だって外部的要因で突然来て、自分がやりたかったわけでもないのに、とんでもない経験をいっぱいさせられるから。でも実はそこにいくと、人って新しい経験、新しい気づきがあって、すごく成長すると言われています。でも自らいくことなんてなかなかない。この時は、私はむりやり親に行かされて、ラーニングゾーンど真ん中に突っ込んでいったんですね。

これで何が起きたかというと、私の人生がめちゃくちゃ変わるんです。300人ぐらいのいろんな国から来た大人たちが、ずっとSDGs的な、いわゆる環境問題・貧困問題・世界がなぜ戦争をするのか、どうやったら平和な世界が作れるのかと、ずっと話し合っている場にいたわけです。

そこで毎日毎日、大人たちが必死になって世界をどう良くしようと話しているのを、英語がぜんぜんわからないんだけどなんとなく見て、すごく感動して。3週間終わった日に「こうやって大人たちが平和を話し合っている場が、本当にすばらしいと思う」と。「こういう場がずっと続いてほしいと思います」って、参加者の人たちに伝えたんですね。

これで私の人生が大きく変わるんですけれども、そこにいた参加者のおばあちゃんにすごく怒られたんです。「あなた何言ってんの、『こういう平和な場所が続いてほしい』じゃなくて、あなたが続けていかなきゃいけないのよ」と怒られた。ここに大きな「!」があるんです。

ラーニングゾーンの世界で人生が一変

辰野:そこで私の人生は「みんなと同じがいい。いつもがんばって普通でいる」という人生から、「あ、そうか。こうやって誰かが平和を作っているんだったら、私も平和を作れる人間になりたい」と。突然、その世界が自分ごとに変わるという経験ができたんです。

これができた理由が、まさにこのラーニングゾーンの世界で、「いつもと同じ」から外れたことです。本当に英語もできないから毎日孤独だし友だちもできないし涙が出るし、サンキューとアイムソーリーしか言えない中、3週間を過ごした。本当につらかった。

でもそのつらい時に、自分と向き合いました。いつもだったら外に出て、いろんな人たちに出会ってワイワイしているような時間に、自分がなぜ生きてるのかとか、いろいろもやもやと向き合ったことで、その後のGiFTを起業するエネルギーに変わっていったと思っています。

この後もいろいろアップダウンがあって、特に30歳の時に一番落ちてるところは父が亡くなったところで、すごくつらかったです。

でもそのつらい時に、自分と向き合いました。いつもだったら外に出てわーいってやってるような時間に、自分がなぜ生きてるのかとか、いろいろもやもやと向き合ったことで、その後のGiFTを起業するエネルギーに変わっていったと思っています。

大学生が感じたコロナ禍の孤独感

辰野:なので、今日かすみんとサクランの話を聞くのをとっても楽しみにしてきました。今回のテーマが「大学生が考えるコロナ禍の生活~暗黒期との付き合い方〜」というすごく大きなもので、コロナ禍では、もちろん世界中どの世代もみんな大変だったと思うんだけれども。

でも特に大学生は、キャンパスに行けない。中学生や高校生は行けているし、小学生だって、保育園だって、幼稚園だって行ってるのに、大学生はなかなかいけない。それがずっと続いていた。

樋口:そうですよね。

辰野:それが本当に大変で。それはたぶん社会人とは比にならない大変さがあったと思うんだけれども。そういう意味で、ぜひ言いたいだけ言ってもらいたいんだけど。もうコロナ禍は暗黒期だったでしょ? この2年、何が起きていましたか。

樋口:どうですか、さくらさん。

大野:そうですね。すぐオンラインの授業に切り替わって、高校生の時とかパソコンはぜんぜん使わないじゃないですか。履修登録から、オンライン授業から、全部1人でやらなくちゃいけなくて、自分の部屋の中でパソコンと格闘しながらやっていました。

今思い出すだけでもすごく暗かったイメージで、薄暗い部屋の中で私がぽつんといる感じでしたね。だんだん慣れてきたんですけど、やっぱり最初はつらかったです。かすみんも同じ感じでしたか? 

樋口:私もそうですね。オンライン授業は教授と私だけで、画面上には他の人もいるんですけど、やっぱり教授の一方方向な授業になってしまう部分があって。「教授、私いるよ~!!」みたいな。そういう気持ちで受けていました。課題も一方方向で、何もフィードバックがなかったり、それに関してはすごく孤独感を感じていました。

辰野:聞くだけでつらいよね。

大野:つらいですね。

アルバイトもできず、オンライン授業をただただ受ける毎日

辰野:ちなみにどんな生活をしてたんですか。今は授業や大学の話だったけど。

大野:そうですね。どんな生活だったんでしょうね? 生活リズムも崩れてしまって、朝は大学に行かなくていいので、遅く起きたり。それでちょっと授業にも遅れちゃって、自己嫌悪みたいな。悪循環ですよね。

辰野:リズムが狂ってる。なるほどね。

大野:行かなくていいのは、(家から大学が)遠いのでうれしかったんですけど、うれしいはずなのに、自分をよりだめにしているような気がしましたね。今はやることが増えてきて、そんなこともなくなったのでよかったなと思うんですけど。

辰野:やっとオンラインに慣れてきた感じ。

大野:そうですね。なんか、ぐだぐだになっちゃいますね。かすみんはどうですか。

樋口:私は生活の面で言うと、4月から上京したアパートの近くでアルバイトを始めようと思ってたんです。ずっとカフェで働くのが夢で楽しみにしていて、面接も受けて、いざ始めようって思ったら緊急事態宣言になってしまって。急遽実家に帰るということで、「残念なんですがアルバイトはキャンセルでお願いします」って電話をした時は、すごくつらかったですね。

辰野:そうか。バイトできなくなっちゃって、何してたの? 

樋口:バイトができなくなって、両親から「もうすぐ緊急事態宣言なんだから急いで帰ってきなさい」ということで、実家で何もせず、オンライン授業をただただ受ける毎日でした。

辰野:ただただ受ける毎日だったんだね。

大野:つらそう。

家にいるのに不安だった「居場所」のない感覚

辰野:他にも何か言っておきたいことはある? コロナ禍で、特に大学生としても言っておきたい、大変だったこと。

大野:高校生の時に、(大学に入ったら)やりたいこととか楽しみなこととか、いろいろ考えるじゃないですか。

辰野:そうよね。

大野:それがぜんぜんできないし、友だちにもなかなか会いにくい。不安を感じる程度は人によって違うと思うんですけど、自分自身のことも心配だったし、なかなかキャンパスでも友だちができなかったし。物理的にも自分1人しかいないような気がして、本当にもう「なんなんだ!」と思いましたね。

辰野:そっか。

大野:かすみんも思いましたか? 

樋口:やっぱ悲しいなって思う時期は長かったです。

辰野:ディスカッションの前に「居場所」があったら乗り越えやすかったんじゃないかというお話も出てたんですけど。「居場所」という意味で、大変だったところにフォーカスすると、どうでした? 

大野:居場所は、なかなかなかった気がしますね。大学は始まりましたけど、ただ授業だけ始まった感じで、課外活動はもちろんできないですし。大学の授業も受けてますけど、家にいるので、家の人としか会わない。

先生もがんばって、いろいろ授業の中で友だちと仲良くなれるような時間を設けてくれたりするんですけど、なかなか難しいですよね。今となっては、オンラインではこういうふうにしゃべればいいとかわかりますけど。

辰野:今は慣れてきてね。

大野:当時はそういうのもなかったので。家にいるのに不安でした。

辰野:今考えると、すごい違和感がある気がしますね。

寂しさを乗り越えた自分を自分で褒めてほしい

大野:かすみん、居場所はどうですか? 

樋口:そうですね。やっぱサクランに共感できる部分が多くあります。特に印象的だったのが、オンライン授業でグループワークがあるんですけど、そういうところで大学の同級生と話せる。(逆に)本当に家の人しか会わないから、こういうグループワークが唯一外部の人と話すきっかけでした。

辰野:そうだよね。

樋口:そこでやっと大学の同じ仲間と話すという、居場所が少しできましたね。

辰野:そっか、そっか。最近、私も2年ぶりぐらいに対面の研修をさせてもらった時に、大学生のメンバーが、グループワークの時に本当に緊張しちゃって、本人が「もう手が震えています」って言っていて。

しかも何人も同じことを言っていて、「えぇ!?」と思ったのだけど、本当にこういう人と話す場が久しぶりすぎて緊張してしまう。それぐらい、こういう場が少ないんだと感じましたね。

そういう意味では、視聴されているみなさんも「そうそう!」という感じだと思うんですけれども、まず私から伝えたいのは、本当におつかれさまでした。本当、よくがんばった。

大野、樋口:ありがとうございます。

辰野:めちゃくちゃがんばったと思う、本当に。そういう意味では誰も褒めてくれないと思うんですけど、ぜひ自分で自分を褒めてください。だってこの寂しさって、わかってくれるのは自分だけだもの。

大野、樋口:そうですよね! 

辰野:この寂しさを乗り越えて、今、オンラインにも慣れてがんばれている自分。まず自分を褒めていただきたいなと思います。

樋口:そう。えらい、えらい。

辰野:がんばったがんばった。

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