コロナ後にもリモートワークは推奨する?

小笠原治氏(以下、小笠原):今、質問で来てたんですけど、コロナって話が出てたので。「コロナにワクチンとか治療薬ができて、インフルエンザ同様共存するようになっても、リモートワークを推奨しますか?」と。

亀山敬司氏(以下、亀山):そうだね。リモートワーク推奨っていうよりも、例えばそれを望む人たち、エンジニアとかをじゃあ獲得しようと思う時に……。たとえば「リモートワークを中心にいきます」っていうヤフーとか「リモートワークじゃないほうにいきます」のサイバーエージェントとか。いろんな会社の中で方向分かれていくと思うんだけど。

たぶん一番いいのは「来てもいいし、来なくてもいいよ」っていうのが一番ウケるじゃない。そういった中で、さっき言ったプロフェッショナルとしてのエンジニアの獲得に関しては、みんなそっちに行かざるを得ないみたいな話で。

一方でITじゃない企業でも、このあとAIとかITとかECとか、そういういろんなことには転換していかざるをえないじゃない。小売店とか生産者とかもさ。やっぱりどうしても、そういった人材が重宝されて集まる時に「リモートでもいいよ」みたいな感じで集めていくパターンが多いよね。それこそ副業でもいいけど。「大企業で勤めてます。で、副業でおたくの小売店のITのところをやりましょうか」ってやっていくとかね。

当面はやっぱりデータサイエンティストとかプログラマーとか、どうしても重宝されやすくはなるし。だから、リモート推奨ってよりも、AIとリモートをうまく使わないと生き残れない、って話にはなるわけ。だからUberをうまく使って飲食店も生き残るとか、メーカーもやっぱりEC使って売ってくしかない、とかっていうのは出てくるからね。

小笠原:リモートに依存するというよりは、リモートも働き方の一つに入れて、人が望む形で集まれる存在になっていく、みたいな感じなんですかね。

亀山:もともと、そっちの方向には徐々に行ってたじゃない。それがコロナで加速してる。で、ある程度収まっても「次来るかな」って恐怖がある。第二・第三のコロナが来るか、とかあるわけだから。

どのみちリスク管理ってことで。今まで「うちはこの味は店でしか出さないんだ」っていう人たちも「冷凍して送っちゃおうかな」とか(笑)。「このブランド品はここでしか買えない」からの「もうやっぱりECで売っちゃおうかな」っていう展開には、どうしてもなるよね。ちゃんとそこの生き残る道を用意しないといけないからさ。

小笠原:なんだかんだ言って、これだけみんなが外に出なかったことで、ほかの病気で死ぬ人も減った部分もありますし。そもそも出歩きすぎてたんだ、密すぎたんだって話もあるんで(笑)。

亀山:なるほどね。

「雨なので家で仕事します」が許されるように

山本博士氏(以下、山本):あと少なくとも「行かなくても仕事できるんだ」っていう気付きはありましたね(笑)。

小笠原:ね(笑)。

亀山:これ、ITのやつが一番今思ってるよね。「意外とやれるわ」みたいな(笑)。

山本:会社行かなくてもぜんぜん成立するし、1ヶ月ぐらいだったらぜんぜん大丈夫。でも行ったほうがいい場合もあるので、うまく使い分けたらいいなって思う。「コロナウイルスのワクチンができてインフルエンザみたいに共存可能になった場合にどうしますか」っていうところでいうと、今回リモートやってみての気付きはすごく大きかったので。例えば大雨の日に「今日外に出たくないな」と思った時に「あっ、家で仕事できるやん」っていうのは、僕はけっこうありかなと思います(笑)。

コロナとか関係なく「雨降ってるので、家で仕事します」とかが許される。今はたぶん、出社した人からしたら「俺は出てきてんのになんでやねん」とか、感情的な部分があるとは思うんですけど、仕事は成立するんだろうなと思いました。

亀山:コロナって俺たち、初めての経験じゃない。だから1年ぐらいはいけると思うんだよね。で、このあとに意外と、生産性がだんだん落ちてきたとかっていう話も出てくる可能性はあるわけよ。っていうのは、家にいて腹筋できるかっていったら、できないようなもんで。スポーツジムまで行くから、運動できるとかあるじゃない。

家の中で集中力を保てるか? とかさ。たぶん今後いろんなデータ出てきて、エンジニアは何パーセントアップとかダウンとかあったり、営業マンは何パーセントダウンとか、いろんなデータが上がってきて。やっぱりそれだったら会社来るほうがいいよ、って出社を勧めだすとか。

山本:いいですね今の、腹筋しないですもんね(笑)。

亀山:俺なんかは家で一応ラジオ体操やってんだよ、NHKの。第一と第二をね。

(一同笑)

第一、第二できるけど第四ができないっていう。第四、今度見てみてください。

山本:誰にもできないです、それ(笑)。

(一同笑)

小笠原:僕、今『Fit Boxing』やってますけどね。

亀山:それ家でやってんの?

小笠原:はい、Switchの。

山本:あっ、Switch。

亀山:あれか、あれか。なるほどね。ああいう楽しみながらじゃないとムリだよね。

小笠原:あれがギリですね。しかも1人の時じゃないと。

亀山:あれは楽しいだろうけど、仕事なんかあんな楽しいわけじゃないんだからさ。会社行かないと気合が入んないかもしれないしさ。

小笠原:そうなんですよ。完全にtsumugの広告みたいな話しますけど(笑)。だからこそ家の近くでもちょっと出て仕事するスペースって今、受け入れられてきたのかなと思っていて。普通の住宅街に作ったんですけど、使いに来てくれる近所の人がけっこういるんです。大きいスポーツジムじゃなくって、小っちゃい24時間やってる無人のスポーツジムみたいなの、流行ったじゃないですか。あんなイメージで使われてる感ありますね。

評価体制抜きでは、リモートは語れない

亀山:あぁ、そうそう。だからさっきの話で言うと、会社の本業と副業が溶けてよくわかんなくなるのと同じで、プライベートとビジネスも溶けて、どこからがプライベートかわかんないような状況にはなりやすいわけよ。

結局どうなるかって、最終的に成果の「何ができたの?」とかっていう話になるから。プログラマーとかならまだ「これ作ってね」っていうのでわかりやすいけど、わかりにくい業種、山ほどあるじゃない。総務とか人事とか、とくにマネジメントみたいな話も含めて。そこ自体どう評価するのっていう。つまり、評価体制抜きでリモートを語れないっていうのはあるじゃん。

小笠原:そうですねぇ。

亀山:評価しやすい場所は、営業マンがどれだけ出したとかね。でも俺のイメージも、半分以上は評価しにくい業種なんだよね。成果だけでは。

小笠原:そういう意味ではさっき言ってた「ジョブ型」って言われたり「プロフェッショナル」って言われたほうは、いわゆる定量的な評価。「メンバーシップ型」みたいに、その会社とか組織を維持するために必要なコミュニティに近い人たちっていうのは、定性的な評価になるから、オンラインではまだ少し難しいよね、みたいなところも出てきますよね、きっと。

亀山:そうなのよ。だからけっこうこれ、みんな方針打ち出してるけど。「うちはリモートだ」とか「うちはやらない」とかさ。でも、俺なんかちょっと、まだ「とりあえず今年はリモートだ」ぐらいの言い方に(笑)。

(一同笑)

ちょっと先はわからないよって言わないと。だって今リモートにしても「やれるからいいや」みたいなとこもあるんだけど……やっぱり「出て来い」って言ったら「えぇー」とか、社員が言い出す可能性もあるよね。「もう僕、遠い所に引っ越しちゃいました」とか言われたら困るじゃん(笑)。

(一同笑)

小笠原:「え、だってオンラインって言ってたじゃないですか」ってなるとね(笑)。

亀山:そうそう。なのでもう行かないつもりで「月1回行けばいい」って言ってたんで。交通費が往復で1万円かかります、みたいなね。

小笠原:いやでも、それありますよ。さくら(インターネット)の「Tellus」のチームでも、まだ20代かな、メンバーの一人が長野の大自然に引っ越して。この間『ガイアの夜明け』出てましたよ(笑)。そういう働き方ができるんだ、って。

コロナ禍でのチャレンジ

小笠原:ちょっと時間がなくなってきたんで、まとめる話に入っていきますね。今、会社がオンラインかどうかを……オンラインというか、例えばオフィスを本当に必要な大きなにするって判断、働き方をオンライン前提にするって判断などは「これまでにそうしたかったところが、これをきっかけにやっていく」というのが目立ってると思います。

なにが正解かは亀山さんが言うように、まだわかんない。ここから先、世の中の流れ的にどっちを優先するか受け入れられるかはわかんないので、それに合わせてなのか、率先してなのかは各社選択しつつ、参加したい組織と行きたい場にしてくっていうの考えるべきタイミングってことかもしれないですね。

亀山:そうそう。とくにうちなんか、(オフィスを)3年どうせ解約できないからね。

(一同笑)

今後オフィスがなければいろんなコストは減るわけじゃない。でも当面、今んとこは、半年ごとぐらい「今月はこういう感じでいきます」ぐらいのことしかまだ言えなくって。最長で言えてもたぶん「1年間この体制で」ぐらいにしとかないと。

小笠原:そうですよね。Googleでさえ「年末まで」って言ってたのを、ここ最近「来年7月まで」って延ばしたんですよね。単純にやっぱり半年とか、ある程度の流れの中で「次こうしていくよ」っていうのをタイミングよく伝えていく。その上で従業員が困らない手当をしていくっていう感じですよね。

山本:僕、会社を分けてやってみたいな、チャレンジしてみたいな、とはちょっと今思ってます。エストニアのe-Residencyみたいなかたちで、エストニアに行かなくても会社が作れて、納税ができてみたいなかたちの。電子手続きがすごく発達してる状態を考えたら、なにかおもしろい世界観ができるかなと思って。

ただ今のスマレジでやっちゃうと、文化が衝突してうまくいかないだろうなと思って。だったら一回、実験的に事務所なしの小さなソフトウェア会社を作ってみて、そこでどんな文化ができてくるのかを試してみたいなと思うんですけどね。

小笠原:究極にリ・デザインした組織、っていう感じでやれますよね。

山本:そうですね。いろんなものが、例えば管理部門とか営業チーム、スマレジでいうと開発チームとかカスタマーサクセスとか、いくつか部門があるんですけど。全員がプログラマーだったらどんな会社になってたんだろうな、とかって想像してて。

プログラマーはルーチンワークが苦手というか(笑)。同じことを何回もするのが苦手だから、プログラムで作ってなんとかするっていう性格があるのかなと思って。そうすると、管理部とかも全員プログラマーとかの会社。で、全員リモートで会社の所在地もあってないようなものです、みたいな感じで組織を組んでみたら、これはどういう文化になるんだろうと。

小笠原:なるほどね。全員エンジニアですべての仕事をこなすって、ありですよね。

山本:はい、やってみたいですね。

今は毎週言うことが変わっても構わない

小笠原:そういうのの布石で今、社長室で起業家募集みたいなことやってるんですか(笑)。

山本:特命担当募集ですね。それはまさにDMMさんの「亀チョク」を意識したというか、インスパイアされて作りました。

亀山:それパクったっていうこと? パクったってこと?

(一同笑)

山本:そう、パクったんですよ(笑)。

(一同笑)

やってみて一個課題になったのは、例えば家で洗濯を回してから仕事して、洗濯ができあがったら一回干して、みたいな。プライベートと仕事が、どっからどの時間が仕事なのかわかんないっていうのが、いろんな働き方があっていいかなとは思うんですけど。労務上、時間で管理しないといけないのでそれって矛盾してて、だったら業務委託契約のほうがはるかに楽だなと思ったんです。ジョブ型って言うんですかね、になるかもしれないですけど。それをしかも3ヶ月単位で更新します、みたいな亀山さんのモデル。「亀山モデル」(笑)。

(一同笑)

小笠原:亀山さんもうちょっと優しくて、半年だった気がしますけど(笑)。

亀山:もうちょっとね(笑)。

山本:あ、そうでしたっけ(笑)。それは素敵な制度だと思って、ちょっと今取り組んでます。

亀山:本当にね、業務委託っていうのはある意味で柔軟性があるからやりやすいけど、でもサラリーマンというか、事業主として付き合っていく感じだし。多くのサラリーマンがこれから先、やっぱりそういうスタンスは持たないといけないんだけど。

一方でやっぱり、会社の資金を使って大きいことやるか、自分で資金集めから全部あらゆることをこなして、経営者になるかみたいな。

そういったいろいろな選択の中で、でも多くはやっぱり、営業が得意でここだけやる、プログラムだけやるとかっていう人かな。まぁ、どっち行くのかなぁ……。

ただ、今の労基自体の時間的な感覚からは、かなり遠ざかってきて。もともとちょっと整合性ないところが、さらになってくるよね。

小笠原:そうですね。

山本:タイムカードを打刻することの意味が、よくわからなくなってきてますよね。

亀山:なんにしても、あんまり早く「これだ」って決めつけないほうがいい。とりあえず半年とか1年でルール変わるかもねっていうのは、前提にしておいたほうがいいかなっていう気はするよね。

小笠原:わかります。じゃあ、ちょうど時間になったので。なんか「これ言い忘れた」があればぜひなんですけど、とくに大丈夫でしょうか。

亀山:まぁ、今は毎週言うことが変わっても構わない、ということで。

小笠原:そうですね、それ僕らにとっての免罪符ですよね(笑)。

(一同笑)

「今は変わるぞ!みんなのことを思ってやるから!」っていう(笑)。

亀山:みんなも混乱してるけど、経営側もみんな混乱してるんだよ。何が正しいかを今、模索中。ここをうまく仕組みが作れた会社が10年間生き残るし、その中で適応できたやつが生き残る。みんなで次の10年を生き残ろう、ということでございました。

小笠原:ありがとうございます。

亀山:なんとなく締まりましたかね(笑)。

小笠原:はい、ありがとうございます。じゃあまた落ち着いたら、awabarで(笑)。

山本:awabarで(笑)。

小笠原:会えることがあればいいなと思っています。今日はどうもありがとうございました。

亀山:はい、また。

山本:ありがとうございました。