副業は個人スキルを上げるが、会社との繋がりを薄める

亀山敬司氏(以下、亀山):どこが本業で副業がよくわかんなくなってくるし、会社が副業とか認めるっていうかたちが普通になってくると思うんだ。

そうなってきたときに、今までは「結婚はしてるけどたまに浮気してもいいよ」みたいな感じで言ってたけど(笑)。

(一同笑)

戻ってくるのが前提だった話だけど、そのままそっちが本業っていうのもあるわけじゃない。ヤフーに浮気に行ったと思ったらそのままヤフーが本妻になる、みたいな話もあるわけなのよ。ノリ的には(笑)。

山本博士氏(以下、山本):ヤフーの「ギグパートナー」って募集してるじゃないですか。

亀山:それそれ。

山本:あれ僕、エントリーしましたもん(笑)。

(一同笑)

亀山:あ、そうなの? 俺も実はエントリーしようと思ってたんだよね(笑)。俺、でも10年前にソフトバンクアカデミー受けて、落ちた覚えがあるから(笑)。

(一同笑)

山本:そうなんですか(笑)。

亀山:そうそう、孫さんの後継者探しって言ってたやつ。あれも副業じゃないけど、辞めなくてよかったから。だから今回も、ちょっと応募しようかと思って。

山本:おもしろいですよね。そういういつものメンバーじゃない人と仕事したりとか、なにか違う文化を持ってきたりとか、お互い持ち合ったりしたら、なにか生まれそうな気はしてて。

亀山:俺たちでも思うぐらいだから、多くの人たちがあれに応募する気持ちもよくわかるのよ。でもあれは珍しいパターンで、普通は副業っていうと作業的なことが多いと思う。ただ結局ほかの文化に触れたり、ほかの人脈ができたりってことで、個人的スキルとしては上がると思うんだけど。一方で会社とのつながりが弱くはなるよね。

だからさっきので言うと、フリーじゃないけど、所属はしてるみたいな。『逃げ恥』じゃないけど(笑)。別に一緒に住んでるけど、ほかで恋愛してもいいよとか(笑)。すごいフリースタイルで。

あっちこっち、好きな時に行ってもいいっていう。どこでも働けるし、どこ行ってもいいし、誰と付き合ってもいいし、みたいな話じゃない。

昭和時代だったら新卒で入ったら、お見合いで結婚したみたいに「もう一生その場にいます」ぐらいだった。『半沢直樹』みたいなね。半沢直樹なんてあそこから出る気ないから、あの中でどうやって生き残るかだけ考えてる(笑)。

小笠原治氏(以下、小笠原):ものすごい内向きですよね(笑)。一つの社会になってますからね。

亀山:そう。あの社会と今話してる社会とは、ぜんぜん違う社会じゃない。だからいかに本社に戻るかとか。半沢直樹だったら「リモートワークで転職しようか」ってないよね。

小笠原:まったくドラマにならないですよ(笑)。

(一同笑)

気持ちの面での会社への愛着とか依存とかひっくるめて。日本の会社って、昭和時期に連帯感でやってきたわけじゃないですか。そこが、例えば今回1割でも2割でもオンラインに移行したら、けっこう一角が崩れるんで。だいぶ働き方が変わる気はしてるんですけどね。

「社員ってなんぞや」

山本:職種にもよるかなと。例えばプログラマーみたいな専門職で、オンラインでどこでもできるような仕事だったら、副業はめちゃくちゃやりやすくなりますよね。同じ場所でいろんな仕事をすればいいですしね。

亀山さんのおっしゃってたみたいな「どこか基準となる場所がほしい」っていうのは確かにあると思うんです。いざ「フリーランスになれ」って言うと、例えば住宅ローンが通りにくかったり、どこかの正社員ですっていう社会的なステータスが必要な場面もある。でも、もうちょっと本業の分量を減らして、その分で副業の部分を増やしたほうが、スキルは上がっていくのかなと思いました。

亀山:確かに自分のスキル上げてっていうのはわかるんだけど、じゃあ「社員ってなんぞや」って話になるわけだけど。経営者的な立場から見るときに、例えて言うなら「良い社員って何ですか」って言ったら、とりあえず「辞めないやつ」っていうのも一つあるわけよ。

つまりいろんな会社の運営とか、人脈・資産、いろんな権限任せようと思う時に、要は来年いないかもしれないとかさ、コミットしてないとかってなった時に。職人的な技術職なら全然いいけどね。極論で言うと……エンジニアで100の能力があるやつの上に、50のやつでも会社に10年いたやつが上に立ったりするじゃない。

つまり、エンジニアがけっこう流動的で流れたりするとしたら「辞めない社員が、次のエンジニア雇うこともしないといけない」とかあるじゃない。だから管理職というか、上の役員とか部長クラスっていうのが、しょっちゅう辞められたりとか副業的な動きになると、そのポジションに就けにくいよね。会社としたら。

小笠原:そういう意味ではいわゆる従業員、これまで社員と言われたような人たちって「マネジメント」と「プロフェッショナル」になっていくのかな、っていうのを今の聞いてて思って。

亀山:あぁ、うまいこと言うね。そうそう、マネジメントとプロフェッショナルの違いだな、確かに。

小笠原:そこにマネジメントをちゃんとやれる……マネジメントこそ職能だと思うんで。オンラインを使ったマネジメントをできる人を従業員(=社員)として。で、副業やれるようなプロフェッショナル職の人たち、経験をたくさんしたほうがスキルが伸びるような人たちをマネジメントしながら、というかたちになるのは一つあり得るかもしれないですよね。

亀山:そうだね。「これから一つの会社にいるのがトレンドじゃない」みたいな雰囲気はあるわけよ。とくにIT業界はね。『半沢直樹』とか見てたら「あんな世界に行きたくないよね」ってなるわけじゃない。

でも逆に言うと、そういったのが多い中で、やっぱり一部そこに定着してずっといるっていうことも、これも人的な価値になるっていうかな。そういうことはあるかなと思うんだよね。うちでもやっぱり昔からいる人間って、信頼関係とかそういったのも含めたら。ある意味、力不足かもしれないけど「真面目であればいい」とかさ。そういう考え方も含めて、そういうポジションもあるわけよ。会社っていうのは。

だから「結婚しても浮気しまくるよ」っていうやつと「あなたについてきます」っていうやつと、このへんちょっと片側で得るものと、片側で失うものが出てくるよね。

小笠原:そうですね、確かに。最近よく「ジョブ型」と「メンバーシップ型」みたいな言葉で。ジョブ型はプロジェクトへの参加で、メンバーシップ型っていうのは今までの社員みたいなかたちで所属してる。それが極端に、今までパイが、ジョブ型の方が小っちゃかったのが少し大きくなって、メンバーシップ型が少し小っちゃくなって。

亀山:うん、まぁそうなるのかな。まぁリモートって言っても、でも一部だけだからね、なんだかんだ言っても(笑)。

店舗ビジネスで、どう生き残るか

小笠原:そうなんですよね。リモートできないリアルな店舗とか、そういうのもスマレジの中ではお客さんとして多いわけじゃないですか。最近アレですか、それを試したいから焼き鳥屋やってるんですか?(笑)。

山本:焼き鳥屋というか、屋台やってます。

小笠原:(笑)。リアル店舗の。

山本:はい。スマレジって、小売店さん向けと飲食店さん向けのバージョン、大きく分けて2つあるんです。小売店のほうは知見・知識が少しあったんですけど、飲食店のほうは知識がなかったので、一度ユーザーになりきって、自分たちのソリューションを再評価したほうがいいよねっていうところからやり始めたんです。

最初は恵比寿のいい物件を探してたんですけど「あ、これ失敗するパターンだ」と思って(笑)。見栄を張ることをやめ、絶対に最初から黒字にできるような、素人が飲食店を始めても黒字で経営できることを目指そう、ということで。家賃とかがなるべくかからない屋台を選んだんです(笑)。

亀山:屋台って、その場所借りるの? それともとにかく払わないで、道路でやるの。

山本:JRさんの駅前で場所をお借りしてやってます。デベロッパーさんが間にいるんですけど、屋台村を運営してる会社さんがあって、そこからテナントを借りて運営するんです。

亀山:あ、本当。許可取るんだね。俺なんか昔、露店で許可取らないであっちこっちで勝手にやってたけど。

(一同笑)

小笠原:リアル露天商(笑)。

亀山:よかったよ、あの頃はね(笑)。家賃かかんないわ、人件費かかんないわ、売ったぶんだけ全部利益だから(笑)。

小笠原:博士のところは売り分でもなく、家賃?

山本:固定の家賃5万円と、あと売上に応じて何パーセントとか。

亀山:今時の屋台は家賃払うんだ。俺の時代なんて適当にやってたよ、みんな(笑)。そのへんに占いのおばちゃんいたり、こっちにラーメン屋のおっちゃんいたりしてさ。40年ぐらい前だからねー、誰も家賃払ってないし税金も払ってなかったよ。

(一同笑)

山本:税金払ってないのヤバいですね(笑)。やっぱり、店舗ビジネスはお客さんに来てもらってなんぼっていうところがあるので、どうやってそこを生き残りをかけてやっていくのかっていうのを、自分も同じ目線で体験していきたいと思ってます。

たとえば小売店さんだったら、IT投資を早くからやっていると、店舗のことはわからないんですけどECはけっこう売れています! みたいな生き残りができています。比較的わかりやすいです。でも飲食店はその場で調理したりしないといけない。「食」をどうやって流通させていくか、みたいなテーマになるので、今すごくおもしろくて。

飲食店を分解していくと「ご飯を食べる」っていう機能と、あとなにかそこでの付加価値というか「空間を提供する」っていうものと。あとは「コミュニケーションを楽しむ」っていう、3つぐらいになるのかなと思うんですけど。

食を提供することだけに特化すると、例えばレトルトだったりとか、あとはレシピだけを販売するとか。ゴーストレストランみたいにする、無店舗で広げていくとかっていうやり方があるのかな、とかっていうのは今思ってるんですけど。

亀山:スマレジを広める、いいものにするために、身をもって体験しようってことなの?

山本:そうですね。このまま飲食店の数が今の半分ぐらいになってしまったらスマレジとしても困るので。いわゆる飲食店のニューノーマルがどういうものなのかっていうのを、同じ目線で考えたほうが、スマレジのソリューションを発展させやすいなと思ったんです。

亀山:自分で体験するよりも、俺を社外取締役で雇ったほうが効率いいよ。

(一同笑)

小笠原:意外と安くやってくれるかもよ(笑)。

亀山:リアル商売の厳しさを(笑)。

山本:ありがとうございます(笑)。

亀山:うちもついこの間、ビデオレンタル店とカラオケ店、閉店したとこだから。

小笠原:けっこう大きなお店でしたもんね、加賀温泉駅前の。

亀山:そうね、それなくなって、地元のみんな遊び場ぐっと減っちゃってさ。なかなか厳しいね。

小笠原:昔はレンタルビデオ店、ほかの大手が入ってこないようにめちゃめちゃがんばられてたと聞いてましたし、本来なら守りたいところのはずでしたよね…

亀山:そうなんだよね。TSUTAYAとかGeoも寄せ付けないでそこの地域を守ってたんだけど、コロナには負けたっていう話だよね(笑)。意外なところから強敵が現れたということで。

小笠原:確かに強敵ですよねぇ。

亀山:その前も飲食店とかやってたからさ。雇えよ、俺を。あとでギャラの相談しよ(笑)。

(一同笑)

山本:ありがとうございます(笑)。