スマレジ・DMMの補助制度

小笠原治氏(以下、小笠原):スマレジでは在宅勤務とかオンラインワークに、なにか補助とかやってるんですか?

山本博士氏(以下、山本):補助はないですね。その代わり通勤の交通費を、出社しようがしまいが、距離が近かろうが遠かろうが、一律で3万円支給しますというのをやってます。なので通勤しない人はそのぶんを手当てと解釈してくださいね、みたいな。通勤代をそのままなにかの足しに使ってください、というのがありますね。

あと、特徴的なものとして「マイホリデー制度」というのをやっています。祝日と重なる連休って、混雑するじゃないですか。お盆・正月もそうですけど、まとまった休みの日に出かけると、混雑して値段も高い。それを回避するために、祝日を自分の好きな日に移動させられる制度です。年間で祝日が約20日あるんですけれど、申告制で自分でスケジュールを組んでください、っていうのは始めました。

小笠原:今、国も「休日の分散化」みたいなこと言い出してますよね。

山本:そんな感じですね。本当は土曜日・日曜日も自分で決めたらいいのにな、とか思ったんですけど。「僕の休日は火曜日です」とかって人が出てきてもええんちゃう、とか思ったんですけど(笑)。管理部が「あまりに大変だからやめてくれ」って言うので、なしになりましたけど……(笑)。

小笠原:(笑)。

亀山敬司氏(以下、亀山):でも実際問題、本当は選べたほうがいいし。ただ社会全体がそうなってないから、例えば子ども持ってたら土日にしたいとか、ほかの会社が動いてる・動いてないに関係あるじゃない。なかなかやっぱりそのへんってね。

山本:そうですね。

亀山:国全体でそうしてくれないと難しいね。

小笠原:それこそ大元のところで、そこの自由を認めていただけないと。祝日とか、いわゆる休日出勤は本来は割増ですからね。そのへんのルールも変わっちゃうし。

亀山:うちらは緊急事態宣言出た時に、一律で環境揃えるっていうので6万ぐらい出した。どうしようかなって思ってたら「メルカリとかいろんな会社出してますよ」って言うから「じゃあ出さなきゃいけないな」みたいになって(笑)。で、交通費は会社に来たぶん、実費精算みたいになってるかな、今。

小笠原:さくらでは椅子の貸し出しとかもやってますね。

亀山:あっ、そうそう。「腰痛いから椅子買いたいけど……」とか言われて。じゃあまぁわかんなくなるからお金で出すわ、って話になったのかな。だからみんな、一斉に椅子注文したんじゃないかな?(笑)。

山本:めちゃくちゃ売れたらしいですね、椅子が。

亀山:あ、やっぱり? 椅子とかマイクとか、なんかいろんなもの。あと(ビデオ会議の時に)後ろ隠すやつとか。

変化する、会社と従業員の関係

小笠原:今、このNew Norm Consortium立ち上げさせてもらったtsumugも、小さな分散オフィスっていうのをけっこう進めてて。15分から会員なら使えますよ、みたいなのを東京は六本木周辺と、福岡でやってるんですけど。それの企業占有型、企業がその一部屋をまるっと借りるっていうかたちは、大手の企業さんが発注を出し始めてくれていて。仕事しやすい環境ごと、従業員の住んでる場所の近くに提供するからそこで働いてくれ、っていうのが出てきてますね。そこもやっぱり「椅子が気に入った」とか、そういう話は多いですね。

亀山:これからは、どうしてもリモートの人間が増えてくるから。フリーアドレスにしてフロアは少なめにして、みたいな。昔は「このビルに入ってたらちょっとステータス」だったのが、今はもう「オフィスないです」とか言ったほうがエンジニアは集まりやすいかもしれないね。

小笠原:でもこれ本当そうなったら……亀山さん、DMMって複業OKなんでしたっけ?

亀山:まぁ、いろんな業種あるから、たぶんOKなところはOKって感じ。

小笠原:すごくシンプルに、エンジニアとか2つ3つ仕事を受けるの可能になっていくじゃないですか。そこの関係性もすごく変わるというか。今は会社と従業員が一対一の方が多いので、まだ。どこまでその人が従業員、日本流で言うと社員みたいな扱いにするか。

亀山:そうだね。社員と業務委託と、そのへんどっちが本業かわかんないっていう時代になるよね。

小笠原:そうですよね。本業・副業っていう考え方しなくなるのかな、とか。でもそうなった時に会社って……会社って実際には、日本の新卒制度みたいなところからいくと、ものすごいコストかけて育てるじゃないですか。そのお金も本当にごく一部の人にだけ適用するようになるのかな、と想像しちゃってたんですけど。ちなみにDMMで新卒っていうと、ここ数年何人ぐらい入られてたんですか?

亀山:何人なのかな。今年は何十人だと思うんだけど。確かに、今年の新卒なんて1人も会ってないからね。

小笠原:ですよね。

亀山:もう頭からリモートじゃない。で、もともといた社員ってまだ昔の関係値があるから、やっぱそういう人間関係の資産みたいなのがあるんだけど。画面越しの相手に恋できないぐらい難しいよね。

やっぱり一体感がなくなってくるし、ロイヤリティがこれから落ちるのは間違いないじゃない。会社っていうのは、もともと家族の次に深いコミュニティっていう感じがあったじゃない。それがなんとなく、関係がとても遠い感じになってくるかもね。ハグもできないし花束も渡せないし、みたいな。そんな状況じゃない、今(笑)。

小笠原:ハグ好きですね(笑)。

亀山:(笑)。俺、ハグ推進委員長だったから。

小笠原:あ、確かに(笑)。

亀山:いろんな人と、お父さんお母さんとか、じいちゃんばあちゃんもハグしよう、みたいなことを推奨してたんだよね。ついこの間まで。でも、最近ばあちゃんに、ハグしようとしたら「やめてくれ!」とか言われるから(笑)。

(一同笑)

小笠原:やめてくれって言われそう(笑)。

生まれた子どもにも会いに行けない、コロナの現状

亀山:ハグどころか、田舎帰ろうと思ったら「帰ってくんな」って言われたからさ(笑)。

小笠原:それ、ありますよね。最近僕、福岡で部屋探してたんですけど。今の部屋じゃない所を。そしたらやっぱ「どちらから引っ越されますか?」って聞かれるんですよね(笑)。

亀山:あぁ、なるほどね。確かに、そうそう。

小笠原:マジですか、それ聞きますか、みたいな。一応、半年ほど福岡居たので……とか返事しつつ。

亀山:だからもう、都会ブランドがすごい落ちたわけよ。都会人っていうだけで、車のナンバーだろうが免許証だろうが、出たら犯罪者扱いじゃないけど(笑)。差別されるような。

小笠原:なんとなく、ありますよね。人口比で言ったら東京、そこまで多くないっていう。数字だけで言うとね。実数で言うと、やっぱり数百人が検査を受ける前にウロウロしてたわけですから、良くはないんですけど。

比率で言うとそうでもないし、例えば京都なんかも人口比で言うとほぼ同じはずなんだけど、京都の人も「東京の人が来るとなんとなく気になる」っていう話が、この間ちょっと聞こえてきたりとか。やっぱそういうふうになるんだなぁ、と思いながら。あ、あくまで個人的な体験ですが(笑)

亀山:東京ってやっぱり田舎と温度が違って、東京で若いやつ同士でいるぶんには「まぁかかってもいいや」ぐらいの勢いで飲みに行ったりしてんじゃない、みんなね。

小笠原:(笑)。多いですね。安いお店が混んでるの見ますね。

亀山:一方で、田舎だとけっこう親と同居とかしてる人間も多いから。じいちゃんばあちゃんがいるっていうのもあって、けっこう気を遣うし。ましてやたまに1人か2人しか出ないから、出ると1面に載るのよ、新聞の。「〇〇大学生、東京に行って帰って来たらコロナ発症」みたいなね。

小笠原:(笑)。

亀山:名前まで出さないんだけど、やっぱりみんなわかるじゃない。「どこどこの息子がかかったよ」みたいな。もうその村にいられないわ、みたいな(笑)。

小笠原:つらい(笑)。

亀山:確かに1人しか出ないんだったら新聞の1面に出るよね、みたいな話じゃない。

小笠原:まさに昔の、協調性ない人を村八分にするのと一緒ですね(笑)。農耕民族感がすごい。

亀山:そうそう。なんでね、俺が万が一行って(症状が)出た日には大変なことになるからっていうので、やっぱり田舎帰れなくなっちゃったよね。

小笠原:うちのスタッフも何ヶ月か、子ども生まれたのに会ってないんじゃないかな。出産で奥さんが実家のほうに行ってて、その間に緊急事態宣言出て、会いに行こうと思っても「来ないで」みたいな感じ。

文化・コミュニケーションが減少していく

亀山:これから社員はどういう関係になると思う、博士は。

山本:今の「ロイヤリティが下がる」っていうのは、確かにそうかなと思いましたね。今、学校に通ってるんですけど、全部オンラインなんです。オンライン授業を選択してるんですけど。そうすると懇親会とか飲み会とかは一切出なくなって、友達づくりとかもあんまりしない、授業だけ受ければいいか、みたいな感じにもう気持ちが切り替わってしまっています。

同じように、会社も業務だけちゃんとやってればOKみたいな感じで、それ以外の文化とかちょっとしたコミュニケーションみたいなのが、かなり減るのかなと思います。

亀山:俺もグロービスにたまたま行ってたんだけど、その頃に。途中からオンライン授業になったのよ。それまではみんな終わったら「ちょっとこのあと飲みに行きましょう」ってやってたのが。

山本:必ずやってましたよね。

亀山:そうそう。そういうのも含めて、ああいうコミュニティってあるじゃない。会社で送別会もできない時代だからさ(笑)。

山本:まったくなくなりましたね。会社の飲み会もない、今年は忘年会もやらないでおきましょう、という流れになっています。でも、部署を越えてコミュニケーションしてほしい気持ちはあります。

あと社員同士でお酒を飲む・飲まないのリテラシーも、ちょっと変わってきた気がしています。飲み会よりはランチ会のほうがいいよね、とか。「就業時間を超えたら、あとはもうプライベートなんでみんな自由にやってください。あんまり会社として関与しません」みたいなほうがいいかなって、ちょっと今思ってます。

あと、東京に行く回数がすごく減ってしまった。だいたい1ヶ月の半分以上は東京に行ってたんですけど、東京のほうが都会の密度が濃いから、会いたい人に会いやすかったんですよね。今はそれが裏目に出てて、あんまり出歩きたくない感じじゃないですか、東京って。

亀山:東京の売りって「密」だったからね。

山本:そうそう。

亀山:awabarとかも、密な状態でなんかやってるからおもしろいんで(笑)。

(一同笑)

小笠原:本当! そうですよ。

亀山:密じゃない東京って何よ、みたいな感じじゃん。

小笠原:awabarなんて売上、今どうだろう……10分の1とかかな。そんなんですよ。

亀山:だろうねぇ。

山本:IRとか投資家回りも全部オンラインに変わったんで、もう東京に行く必要がないというか。

小笠原:正直、機関投資家回りはだいぶ楽でしょ?

山本:すごく楽になりましたね(笑)。

小笠原:上場後はまだいいんですけど、上場前のロードショーとかめっちゃしんどいじゃないですか。

山本:(笑)。

小笠原:上場手前にね、いろんな機関投資家回りってしますけど。基本的に小型上場だったら彼ら、興味ないから。興味ない人に説明して、興味ない人がしてくる質問に答えないといけない、みたいな。けっこう地獄ですよね。

山本:形式ですね(笑)。

亀山:博士はそれに答えにくいと思うよ、たぶん(笑)。

(一同笑)

小笠原:「そうですね」とは言えない(笑)。でも御二人の話聞いてたら、ロイヤリティっていうとなんとなくね、経営者目線みたいに思われるかもですけど。会社に愛着を持ってもらう、組織に愛着を持って参加してもらうっていうのが、やっぱりなかなか難しい局面というのはありそうですよね。