教育における「無意識のバイアス」

井口恵氏(以下、井口):では、また小木曽様にお話をいただければと思います。本日は本当にいろいろな方にいらしていただいていまして、学生の方も多数いらっしゃっています。

今最前列に高校生の方においでいただいています。そんな教育の観点で、このジェンダー平等について、小木曽様にお話しいただければと思います。教育のなかでも、ジェンダーのギャップは存在するのでしょうか?

小木曽麻里氏(以下、小木曽):学生の方が来ているのでおうかがいしたいのですが、けっこう男女で差別されていると感じることってありますか? ないですよね。まさにそうで、日本人のほとんどが、大学を出るまでは女性が不利になったり、こんなに男女で社会的に違うんだということが、ぜんぜんわからなかったという方がほとんどだと思います。社会に出ると同時にまったく違うということで、洗礼を受けるとおっしゃる方がほとんどなんですね。

さっきの世界経済フォーラムのデータでも日本は教育分野では世界でも1位ですから、一応表面的には格差はなく、まったく平等だということになっています。でも実はよく見ると、日本だけではないのですけれど、やっぱり非常に問題なのは、蓋を開けてみると、「女子は女子らしい教育、男子は男子らしい教育というものを受けるべき」というふうに、非常に社会観念が強いですね。

「無意識のバイアス」と言われていて、たぶん親御さんは、そう思っていなくても無意識に男子には数学を教えて、無意識に女子には国語と社会を教えて、というようなことをやっているというデータが実際に出ています。

ベトナムでとったデータで、先生が(男女)どちらの生徒のほうを向いて話しているかというと、理数系では男子に向かって話をしているというデータがもう出てきているんですね。

ジェンダーに関する無意識の偏見が世界一強い日本人

小木曽:だから、悪気はなくても無意識のうちに、男子はやっぱり理系だろう、女子はこっち(文系)だろうというようなことで接してしまっているし、多くの人はそう考えてしまっている。でも、これはさっき言った多様性とか、まさに(女性の研究者や技術者が活躍している)未来技術推進協会の方もいらしていますし、女性も能力的にはまったく変わりがないというデータが出ているんですね。

ICTやAIなど、これだけ科学技術が変わる時に、人口の半分の女性の方が、無意識のバイアスや思い込みによってそちらに行かないのは、本当にもったいないことだと思います。

ですから、ぜひ女性の方には、自分の能力は(男性と)変わらないんだということをわかっていただいて、ぜひそちらの分野に積極的にチャレンジしていただければ、非常によいんじゃないかと思います。

私もけっこう、知り合いのママ友や男の子と女の子を見ていると、すごく小さい時から男子は自動車で遊ぶし、女子はお人形で遊ぶので、「生まれつき違うんじゃないか」と言う人もいるんですけど、私が脳科学者の友だちに聞くと「それがもうバイアスなんだ」と言われるんですよ(笑)。

本当は変わらないんだというところを、われわれはもうわかっていないといけない。ちなみに、その「無意識のバイアス」は「アンコンシャス・バイアス」と言われていて、ハーバード大学の調査によると、ジェンダーに関する無意識のバイアスが世界で一番強いのは日本人なんですね。

自分の偏見を治すのは難しいが、自覚することが重要

小木曽:これ(無意識のバイアス)は男性だけではなくて、女性も強いんですね。悪いニュースは、この悪いバイアスが1回ついてしまうと一生とれない。もう治すことは難しいので、自分にはもともとそういう偏見があるんだと思って、それを意識してやっていくということが、日本人にとってはすごく大事なことなんです。

井口:なるほど。私も弟が2人いるんですけども、2つ下の弟が始めてしゃべった言葉が「ブーブー」でした(笑)。無意識のうちに車の絵本ばかり見せていたのかなということを、今感じました。

小木曽:はい。だから、幼稚園とか小学生の段階で、なりたい職業が男女でぜんぜん違ってしまっているんですよ。女の子はパン屋さん。これは海外ではトップニュースで取り上げられるぐらい、すごくびっくりされます。でも、それはよく考えるとすごく変な話で、いろいろな職業が混ざっているほうが自然なのかなと思います。

井口:小木曽様もお子さんがいらっしゃいますよね?

小木曽:はい。男子が1人。

井口:やっぱり自動車とか好きなんですか?

小木曽:自動車はぜんぜんだめですけど、人形遊びもしなかったですね。もっぱら積み木をしています(笑)。

井口:ああ、積み木(笑)。はい。ありがとうございます。私も学生の時は、あまりジェンダーの差は感じたことはなくて、社会に出てから感じました。教育のなかでもジェンダーの差があるということは、本当に驚きでした。ありがとうございます。

では、また視点を変えまして、仲田様にお話をうかがえればと思います。エンタメの分野でご活躍されています。男性目線から見て、女性が社会進出することのメリット、こういうことがよいということがあればお話しいただけますか?

古い体質が残るメディア業界・エンタメ業界

仲田光雄氏(以下、仲田):実はジェンダーの平等というところで言うと、メディアの世界が一番遅れているかもしれません。みなさんも目にすることが最近多いと思いますけど、例えば有名な雑誌が「ヤレる女子大ランキング」とか。女性の新聞記者が取材をする時に、いろいろセクハラを受けたとか。あと、例えば「#MeToo(ミートゥー)」。海外を見てみると、ハリウッドでプロデューサーがいろいろとセクハラをやっていたと。

実は世界的に見ても、エンタメ業界というのは、ちょっとそういう土壌があるかもしれないです。日本の場合は、とくに新聞記者の方が来られているので、あまりアレですけど(笑)、実はちょっと古い体質です。やはりそのなかで、女性は生意気だとか、そんな偉そうなこと言うな的なものとか、性差別を受けているとかですね。

差別を受けていることが実際には多いです。これはけっこうデータでも出ていて、とくに20代の女性が、実は一番被害を受けています。一人前になっていないうちに、上司からセクハラまがいのことをされるということが実際にあったりします。

ただ先ほど言いましたように、実は女性の感性はものすごく大事です。今の女性誌をいろいろ見ているとわかるように、女子高生や女子大生など、女性がブームを作っているということがものすごく大きいです。

だからミーティングなどをしていても、例えば男性が「これなんか今からヒットしそうだよ。これいいんじゃないの?」と持ってくると、女性に「もうそんなの古いよ」という感じで言われることは、けっこうあります。

(会場笑)

仲田:私が大手の雑誌社で働いていた時も、例えば化粧品をヒットさせるのに、実際に原宿などでテスト的なサンプルを配って、「原宿でピンクのルージュが今ブーム!」みたいな感じでやると、実際にそれが流行ってきたりします。だからみなさん、メディアには騙されないようにしてください(笑)。

(会場笑)

井口:ブームは作られているということですね(笑)。

仲田:そういうことはけっこう多いですよ。

通訳や文章の世界で活躍する女性たち

仲田:私は海外のアーティストを含めて、今まで1,000人ぐらい取材をしてきました。ハリウッド女優、例えば、クリスティーナ・アギレラとか、ブリトニー・スピアーズ、M.C.ハマーとか、デュラン・デュランとか。その時に実際に通訳でつくのが、ほとんど女性なんですよ。

男性にはほとんど会ったことがないです。やっぱり、日本語から英語に翻訳する、その逆も、実は世界の言語で一番難しいらしいですね。例えば、英語からフランス語に直すのはけっこう簡単らしいですけど、英語から日本語に直すのは、順序も逆ですし、ものすごく難しいです。

同時通訳を含めて、通訳の場は女性がどんどん活躍しています。逆に言えば、文章の世界や言葉の世界、アナウンスの世界などは、女性の力を発揮できるところかもしれませんね。

井口:なるほど。エンターテイメントの世界は、あまり男女差がないように感じていたので、前半のお話がすごく意外でした。

仲田:けっこう古い体質なんですよ。

井口:そうなんですね。なるほど。ありがとうございます。後ほど、エンタメ業界でご活躍されている女性も登壇されますので、みなさま、楽しみにしていただければと思います。