日本の女性の教育と保険の水準は世界1位

井口恵氏(以下、井口):みなさんありがとうございました。では、さっそくパネルディスカッションに移らせていただければと思います。(小木曽様の)ご経歴のお話のなかで、「世界銀行」というワードが出た際に「すごーい!」という言葉が会場中から聞こえました。

そんな小木曽様にご質問させていただきたいと思います。グローバルにご活躍されている小木曽さんが(一番大きな問題と)感じておられ、低い点数に評価されている、日本のジェンダーの状況をどのように見ておられますか?

小木曽麻里氏(以下、小木曽):そうですね。やっぱりもうみなさんも感じておられると思います。日本の見られ方は、日本以外のところに出た時に「あっ、あなた(のように)、日本で仕事している女性たちは大変だね」とみんなに言われてしまうような状況はあると思います。

ご存じのとおり、世界経済フォーラムがジェンダーのランキングを出しております。日本は今年、149ヶ国中で114位ということで、G7の国の中で段トツで一番下になっています。

これをさらにブレイクダウンして、どうやってこの順位を決めているのかを見ますと、保険・教育・経済・政治分野で女性がどの程度活躍しているか、または女性の生活水準がどれくらいか、というところで評価しています。日本はなんと、教育と保険は世界1位なんですね。それぐらい日本の女性は恵まれているんです。ところが、経済参加と政治参加であまりにも遅れているので、結果的にはG7の国で段トツ(で一番)下になってしまっています。

ですから、とくに経済と政治の状況をどうやって変えていくかが、今後とっても大事なことなんじゃないかなと思います。一方、他のアジアの国はどうかというと、韓国や中国も日本よりちょっと上か下を行ったり来たりしているような状況なんですね。

じゃあ、そんなにひどくないじゃないかという意見もあるのですけれど、やっぱり日本の特徴というのは、家庭内では女性がすごく主導権を握っていますし、休日にレストランなどに行くと、高いランチを食べるのは女性ですよね。

世界的にも珍しい「お小遣い制」

小木曽:日本は、世界にたぶんほとんどない、旦那さんが給料袋を奥さんに渡す国なんですよね。これって世界的に日本ぐらいしかないのではないかというぐらい、旦那さんが奥さんにちゃんとお金をそのまま渡してお小遣いをもらうという国なんですね。

女性が虐げられていたり、女性への体罰や暴力が今いろいろと問題になっているなか、そういう意味では日本は非常に良いのですけれども、どうしてこれだけ経済や政治参加が進まないかというところが、すごく大きな問題だと思っています。

これはもう答えがないのですけれども、個人的には、高度成長期に男性が外に出て働いて、女性が中にいるということが染み付いてしまった(と思っています)。その前の江戸時代を見ると、日本は農耕民族なので、そんなに分かれていなかったんですよね。

ところが、やっぱり高度成長期以降に、この家と外の違いができてしまって、女性の経済参加や政治参加が非常に少なくなってしまったことは、非常に残念だなと。日本は島国なので、わりと頑固なソーシャルノーム(社会規範)に関して、そういうものだと思うと「そういうもの」でいってしまう国民性なので、一度そうなってしまうと、なかなか是正し難いというバックグラウンドがあるのかなと思います。

ただこれは、国際的にも、日本にとっては大きな問題です。企業のおじさまの方々に「なんで女性の進出がないとだめなの?」と言われるんですけれども、やっぱり今非常に言われている多様性・イノベーションは、世の中が大きく変わる時には、ものすごく大事なんですね。

逆に世の中が変わらない時って、同じような人が同じような職場にいて、同じような意思決定をしているのが一番いいんですよ。日本の高度成長期ってある意味、そこでバタバタだったんですけれども、今はもう本当に時代が変わってくる中で、多様性を出していかないといけないということです。やっぱり女性進出というものが、今後の競争力のなかで非常に大事になってくるんじゃないかなと思っています。

この記事は無料会員登録で続きをお読み頂けます

既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。

登録することで、本サービスにおける利用規約プライバシーポリシーに同意するものとします。

SNSで会員登録

メールアドレスで会員登録

パスワードは6文字以上の文字列である必要があります。