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26歳で社長就任、その2週間後にバブル崩壊… 窮地から起死回生した男が若い起業家らに贈ったエール

2017年6月7日に行われた「IVS 2017 Spring」のセッション「IVS DOJO」で、D2C本間広宣氏が登壇しました。26歳で社長就任、その2週間後にインターネットバブル崩壊。株価が一気に240分の1まで下がるなど逆境過ぎる逆境を乗り越えてきた本間氏。それでも今なお活躍し続ける本間氏が、あらゆる苦難に立ち向かう起業家らにエールを贈りました。

光通信ってどんな会社?

本間広宜氏(以下、本間):初めまして、D2Cの本間です。僕、実は経営者でもなんでもないただのサラリーマンなんですが、「お前誰やねん」って思われる方のために、簡単に僕の経歴を持ってきました。

大学中退後は光通信という会社にいて、今はD2Cというドコモの子会社で広告屋さんを営んでいます。あ、営んでないです。普通にサラリーマンです。

今日は僕の社会人経験の中でおもしろかった出来事を2つピックアップしてお話ししたいと思います。

まず、光通信時代ですね。最近でこそ言われなくなりましたけど、「光通信ってどんな会社?」ってよく昔聞かれていたので、僕なりにまとめました。(スライドを指して)光通信はこんな会社です。

(会場笑)

注意があります! (光通信の説明スライドを指して)1996年当時です。今は2017年なので、非常にいい会社です。東証一部上場の立派な会社なんですが、20年前はこんな会社でした。誤解していただきたくないのが、別に僕、不幸自慢をしたいわけでも苦労自慢をしたいわけでもないです。

なぜならば、僕はぜんぜん不幸でもなかったですし、ぜんぜん苦労とも思ってなかったです。光通信という会社で働いたことがすごくハッピーでした。最初がこの会社で本当によかったと思っています。でも、世間一般的に言うとブラック企業ですよね。

(会場笑)

96年当時、ブラックという言葉はありませんでした。かつ初めて入った会社だったのでこれが当たり前だと思ってたんですよ。朝8時半に出勤して、携帯電話が売れなかったら(深夜)1時でも2時でも公園とか飲み屋さんに行って「携帯電話いりませんか?」ということが当たり前だと思ってました。

なので、ここで苦労したということはまったくなかったです。

社長就任後、わずか2週間でインターネットバブル崩壊

じゃあ、そもそも僕はなんで光通信に入ったのか、どんなことを目的にやっていたかというと、とにかく出世したかった。とにかく給料を上げたかったという2つだけです。

とにかく携帯電話を売りました。携帯電話を売って売って売って、1月にお店で1,000台とか売ってましたね。それで、中国地方ではそれなりに表彰されるぐらいまではいったんですけども。

結果、僕はどうなったかというと、26歳の誕生日、2000年の2月1日に光通信の子会社の代表取締役に任命されました、おめでとうございます。

(会場拍手)

いやー、この世の春を謳歌しましたね。「きたぞ」と。やらしい話、年収もそこそこになって。まあ社長ですよ、社長。とりあえず目指すところまできたと思って、浮かれたのもつかの間。オーバー40の方はご存知だと思いますが、この2週間後になにが起きたか。

インターネットバブル崩壊ですね。

(会場笑)

会社の解散=社会人人生で一番ハッピーな出来事

就任後わずか2週間です。2週間後にインターネットバブルが崩壊したんですね。これで光通信がどういう影響を受けたかというと、こんな感じです。

光通信全盛期、株価は24万5,000円ぐらいまで伸びました。当時の時価総額は7兆円です。

(会場笑)

時価総額7兆円で日本ランキング7位ぐらいまでいきました。ちなみにその時はソフトバンクが20兆円ぐらいまでいきましたね。

そしてこれが1,000円まで落ちたんです。正確には1,000円切りました。240分の1です。とはいってもみなさんまだピンとこないと思うので、参考までに言うと、2006年のライブドア事件、これは9分の1です。

(会場笑)

とはいえ9分の1。さらに、みなさんの記憶に新しいところで言うと、gumiさんは8分の1です。

(会場笑)

まだイメージがつかない方がいらっしゃると思います。これはインターネットから引っ張ってきたんですけど、これの下が4,000円なんですね。

(会場笑)

これ、実はまだ掘っていきます。がーっと1,000円ぐらいまで掘っていきます。やっぱり一番が好きな光通信。未だに日本経済至上最大の20日間連続ストップ安という記録を持ち続けています。

(会場笑)

さすがです、光通信。やっぱり突き抜けてますよね。そんな光通信、ネットバブル崩壊を受けて大変なことになりました。結果、僕がどうなったかというと、就任しただけでした(笑)。

(会場笑)

26歳でこの世の春を極めようとしていた会社が解散。いやー、これですね、僕の社会人経験で大きなことは会社の解散なんですが、実は僕の社会人人生で一番ハッピーな出来事だったと思ってます。26歳で会社の解散を経験でき、社員の人たちが路頭に迷う感じ。

そこで結局、自分の無力さに気付いたんですね。やっぱり人の人生は背負えない。

「お前の人生を背負ってやるから俺についてこい」って言う上司はよくいますけど、「これほど無責任な言葉はないな」というのを26歳で経験できたことが、本当に一番幸せなことだと思っています。

というのをギュッと濃縮した光通信の話でした。

10月に広告買切りを始めて、翌月に反省会

もう1つは、9年前の話です。2008年10月のモバゲー事件ですね。これは広告業界じゃないといまいちわからないと思うんですが、単なる広告枠の買切りの話です。ですけれども、周りの人がモバゲー事件と言ってたので書いてきました。

(スライドを指して)このロゴもわからない人はたくさんいますね。当時、広告メディアと言えば三大SNS+ヤフーという言葉があって、このへんのメディアがすごく売れてました。今に置き換えるとこんな感じですね。

(会場笑)

ヤフーさんを例えるアレがないですね。ロゴもちょっと古いの探してみました。GREEが一番新しいんですけど。その中のモバゲーという媒体だけを買切ったわけですけども、内容で言うとこんな感じです。

まず買切り期間2008年10月から2009年3月の半年間で、……金額はすいません、言えないです。モバゲータウンを運営してる会社さんが非常に有名な会社さんでして、NDA(秘密保持契約)の関係などもあって言えないんですが、ざっくりこんな感じです。

前年の1年間の売上の2倍以上の金額を半年間で買切ったという話ですね。なので、「1桁億円ではなかったです」ということは言っておきます。それぐらいの金額です。

2008年10月から始めたこの話がどうなったかというと、始まった10月のタイミングで赤字が確定しました。

(会場笑)

もう売り切れない。買切った枠が買切れない。わかります? 買切りの初月ですよ。初月に広告枠がすべて売れないことがわかりました。結果、2009年3月期、D2C史上最大の赤字を樹立したんですね。

10月に広告買切りを始めて、11月ですよ。ボスと2人で反省会をしました。ご飯を食べながら「何年かかるかわからないけど、返そうね」と。

(会場笑)

(スライドを指して)10月に始まって、11月に反省会をしてる僕らはなんなんだって思いましたけど、結果はこんな感じでした。

ただ、ただですよ、僕ちゃんとここに立ってます。生きてます。

その後どうなったかと言うと、オチでもなんでもないですけど、買切ってきた期間は半年間だったですが、そこから前年度比の売上は14倍ですね。14倍まで売上が増えて、赤字は翌年にすべて回収できたので、結果よかったです。もう後付けです。

赤字がわかった時は一切笑えず「どうしようかな」ということしか考えてなかったんですが、結果はうまくいったというわけです。

「あなたに解決できない問題は、そもそもあなたに起こらない」

まとめですが、僕の言葉じゃなくてすいません。これはGMOインターネットさんの「スピリットベンチャー宣言」の一文を抜粋させてもらってるんですが、ちょっと言いますね。

「私たちには、自らが解決できる問題しか起こらない。今まで、私たちのところには100兆円の問題は起こったことがない。私たちのところに起こる問題は、すべて『ちょっと努力が必要な問題』ばかりである。あなたに解決できない問題は、そもそもあなたには起こらない」。

僕はこの言葉にすごく共感していて。僕も26歳の時に社長になって、その会社は瞬間的にとびました。外的要因があれども、会社がとんだのは僕の責任です。モバゲータウンの(広告枠)買切りというのも提案したのは僕で、それを遂行するのも僕でした。そこで会社に対して壮絶な赤字を計上しました。でも僕は今ここに立っています。ちゃんとご飯を食べられています。なんだったら人よりちょっといい生活ができてるかもしれません。

そもそもいろんな問題が起きるかもしれないですが。とくにスタートアップとかやられてる方はさまざまな問題が起きていると思います。でも、そこに起きている問題はあなたに解決できる問題しか起きてません。

ということで、ぜひみなさんそのぶん前向きにやっていってほしいなと。人生なんとかなるものです。あまり深く考えずに楽しく人生を過ごしていただければと思います。

ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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