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日本3.0 日本の将来、何に投資すべきか?(全4記事)

「起業家は希少なリソース」投資家らが日本でイノベーターが増えにくい理由を解説

グローバル時代のメディア・コンテンツビジネス、AI、VRなど未来を切り開くビジネスパーソンに必要な最旬テーマを語るイベント「SENSORS IGNITION」。その中で行われたセッション「日本3.0 日本の将来、何に投資すべきか?」では、グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナーの高宮慎一氏、iSGSインベストメントワークスの佐藤真希子氏、トーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬氏が登壇しました。モデレーターはNewsPicks編集長の佐々木紀彦氏。なぜ日本では起業家のようなイノベーターが少ないのか。本パートでは、投資家らがイノベーターが増えにくい背景を解説しました。

イノベーターに必要なマインドとネットワーク、経営スキル

佐々木紀彦氏(以下、佐々木):わかりました。斎藤さんどうですか? イノベーター人材。

斎藤祐馬氏(以下、斎藤):大企業の中でのイノベーターでいうと、大事なのは3つあって、1つはマインドですよね。マインドは、先ほどのクレイジーな話じゃないですけど、端的にいうとビジョンとパッションです。

ビジョンというのは世の中に対してどういう価値を残したいか、どういうものを作りたいかという、登るべき山のテッペンですね。これを示して、周りの人を巻き込んでいく。

もう1つは、新しいことをやるのはすごい大変なんで、みんな疲れてモチベーションが下がっていっちゃうんです。なので、自分の中で「これをやってるといつでも燃えられる」というパッションが必要。

ビジョンとパッションをちゃんと持ってるかどうかが、1つですね。

こういうのって、言われてやってるとぜんぜん起きないんですよ。例えば、大企業の中でなにかやるときは、「上から言われた」みたいなところから始まると、なかなかテンションが上がらない。やらされて仕事になる。

なので基本的には、株式会社自分というか、上司が株主だと思って、やりたいことを決めて、そこをファイナンスしていくという発想をするのが当然ですね。

あとはネットワークと経営スキル。大企業って会社としてはネットワークがあっても、属人的にはネットワークが少ない職業なんです。事業をやるときって、とにかく知り合いが多いほうが有利で、このネットワークを作っていくというところが2つ目。

最後は、経営スキル。例えば事業計画を、大企業の中できちんと作れる方って本当に少ないです。これは100社くらいのエリートの方々が集まったところで、事業計画を作ってもらって、全部レビューしたことがあるんですけど。

その中で普通の起業家、そんなにすごいお金を集めてるわけじゃない起業家と比べても、そこに勝る大企業の人ってほとんどいないですよ。

(エリートの方々は)めちゃくちゃ優秀なんですよ。でも、自分たちが歩いて回って、ダメ出しされるという経験はほぼない。だいたい起業家は、100人くらいに事業計画を見せてブラッシュアップしてもらうと事業になるんですけど、大企業って多くても4~5回。ここがぜんぜん違うんですよ。

なので、マインドとネットワークと経営スキル。これは大企業の中でも、それがきちんとあれば、大変だけど事業が起こせるんです。実は大企業の中で起業する人もけっこうたくさん出てきてる。

企業内のイノベーターに必要なのはビジョンより共感

佐々木:そういう人はどれくらいいます? 今、日本の大企業に。

斎藤:だいたい大きな会社、トップ100くらいあるんですけど、1人ずつくらいですよ。

佐々木:だいたい何万人? 10万人?

斎藤:1,200万人くらい働いてますけど、だいたいその中で100人くらいいて、結果を出している人がまだ10人くらいしかいないんですよ。

ただ、佐々木さんはやってますけど、2020年が変革のときだとすると、これ以降はきっと下剋上というか、新しい分野で成功をかたちにした人が、大企業の中で新規事業の役員とかになっていく時代だと思っていて。

基本的に先輩がいない世界で戦うと、すぐ部長とか役員になれる世界なんですよね。なので、2020年までに飛び込めるか飛び込めないかで大きく分かれるんじゃないかと思っていて。そういう人をとにかく増やしていきたいと思っています。

チャンスはあると思いますよ。僕も25万人くらいの会社の中で社内ベンチャーを始めたんですけど。ベンチャーをやってる人がほぼ誰もいないので、何年かやっていると圧倒的に会社でトップになるんですよ。そこで、上の方はわかんないので任せてもらいやすい。

少しずつ実績を出していけば、どんどんメンバーを増やして……。今150人くらいでやってるんですけど、人事と予算を取りにいく。それがおもしろいかなと思います。

佐々木:大企業は上司もそうですけど、嫉妬もすごく渦巻いてるので、つぶされやすい環境でもあるじゃないですか。その中でイノベーティブなことをやりつつ、嫉妬をうまくかわしてつぶされないためには、どういうことが大事ですか?

斎藤:大企業で新しいことをやるときに大事なのは3つあります。今みたいなビジョンの話。

佐々木:今日、3つあるんですね?(笑)

斎藤:(笑)。ビジョンの話より、共感。なにかを語って、共感してもらうと少しだけ仲間が作れるんですよ。ほとんどの人は見向きもしない。

次が数字、ロジック。ロジックを語ると仲間がさらに増えるんですよ。これだけだと大企業だと動かなくて、最後が政治なんですよね。要はWin-Winの関係を作れると、どんな人でも動いてくれる。例えば次、部長になりたい人には、その人が部長になれるようなきっかけになるとか、そういうインセンティブを提示する。

イノベーター人材=起業家

佐々木:社内政治のバランスの上でということですね。高宮さんはどうですか? イノベーター人材。大企業とかスタートアップとか、ぜんぜん違うかもしれないですけど。

高宮慎一氏(以下、高宮):僕、簡単に言うと、イノベーター人材って起業家だと思っているんですよ。

起業家が、今の世の中で一番希少なリソースだと思っている中で、ここは斎藤さんがおっしゃっていた通りなんですけど。

日本の……残念ながらスタートアップのエコシステムの安定がインターネットサービスを中心に発展してきて、幸いその中でもシリアルアントレプレナーとか出てきているんですけど。ほかの領域でなかなか立ち上がってきていない。

例えばハードウェアの領域でいうと、お金のボトルネックがあった人材のことだけ。お金が付かないから起業家が育たない、起業家がいないからお金が付かないみたいな、ダメなサイクルに入っちゃったところがあります。

ただし、昨今は本当に倍々ゲームで投資金額自体が増えてきてるけど、やっぱり起業家人材が足りない。

起業家人材が足りないときに、インターネットサービスにいる人が、ほかの領域のスタートアップを立ち上げるというところに、ちゃんと人材が移動する。もしくは大企業の中で新規事業を立ち上げるといった移動していかないといけないと思うので……。

ほかの領域に飛び火する。相対的に、先ほどのインターネットサービスだけでカバーできる領域が狭くなってくるという話でいうと、マーケットの原因としてそこがおいしくなくなってきたら、みんな勝手に、よりハイリスクハイリターンの領域に飛んでいくと思うんです。

そういう中で、一番希少なリソースの流動性が高まるといいなという感じです。

佐々木:確かにそうですね。私の知り合いでも介護領域で起業してる人とかっているんですけど、ぜんぜんライバルがいないみたいで、どんどん成功している。そういう領域がいっぱいあるっていうことですね。

高宮:そうですね、逆にいうとシリコンバレーと日本が比べられて、マーケットはめちゃくちゃ向こうのほうがデカイんだけど、圧倒的に起業家間の争いが激しすぎて。

総論、実は「マーケットは日本のほうがおいしいんじゃないか」みたいな話もある。日本の中でもインターネット領域とほかの領域を比べちゃうと、ほかの領域が本当に手つかずのブルーオーシャンみたいだから。自分がシリアルアントレプレナーで、もう1回やるんだったら、実はほかの領域にいったほうがむちゃくちゃおいしいんじゃないか。

しかもシリアルアントレプレナーとして、経営ノウハウみたいなものを生かせる上に、ハイリスクハイリターンのハイリスクの部分を、シリアルであることによって多少エッジできるという、ズルいプレーができるんじゃないかなと。

佐々木:イーロン・マスクなんかもそれをやってますもんね。そうか、そういう意味で「インターネット=起業家」みたいなイメージを払拭すべきですね。

高宮:おっしゃる通りです。

佐々木:起業家を汎用化していくべきフェーズなんですね。わかりました、ありがとうございます。

捨て身になれない理由「ロールモデルがいない」

その意味で最後のテーマなんですけど、今のテーマとほとんど絡みます。「大企業とスタートアップのイノベーション」。

今日ずっと移ってきて話が出てきたんですけれど、大企業とスタートアップのどちらかだけでもダメで、やはり融合することによってイノベーションというのは生まれるんでしょうか?

ここの分野の一番専門家である斎藤さん、やっぱり融合すべきですか?

斎藤:新規事業って、最初は火種が必要なわけです。その火種になるのが起業家的な人材、ビジョンとパッションを持った人なんです。これは大企業の中にいれば、その人を中心に立ち上げることになるし。

ただ往々にして、そのためにベンチャーを起こした起業家も多いので……そういうビジョンとパッションを持った人は。なので、まずは彼らはエンジンになる。彼らという希少なリソースを応援しながら軸を作るというのが、現状でいうと、わかりやすい方法ですよね。

佐々木:大企業は起業家を置けるんですかね? どう思います? 起業家の定義によると思うんですけど、日本の大企業って売れるんですか? 起業家を。

斎藤:なんというか、まず発想。僕らはいろいろな大企業の人と話して、新規事業立ち上げとか議論すると、「基本的に給料をもらっている会社員なのに、やりたいことをやっていいわけないよね」って99パーセントの人が思ってるわけです。

ここのなにかが抜けた人は、基本的に優秀なんですよ。この概念が抜けて、上司を株主みたいな感覚で捨て身でやれる人。

意外と気づいてないのが、大企業の最悪の扱いが、僕なんかはいじめられたりとか、給料ちょっと上がんないで下がったりするとか。リスクもそれくらいしかないじゃないですか。

佐々木:辞めさせられるわけでもない。

斎藤:そう。これに気づくと、けっこうみんな捨て身でやっていると、みんなリスクを怖がってきてる人たちが多いので、ポンと出た人を応援してくれるんですよ。

佐々木:なんで捨て身でできないんででしょうかね? ずーっと言われてる話じゃないですか。もっとリスクをとれとか。リスクないんだからもっと挑戦しろとか。なんでできないんですかね?

斎藤:やっぱり、ロールモデルが見えづらかった。

佐々木:ロールモデルですか。

斎藤:例えばですけど、ぜんぜん違う業界の会社で、大企業の新規事業やってる人がいたとして。それはすごく遠い話なんですよ。でも、同じ会社で同じような条件で立ち上げてる人がいると、みんななにくそと思ってがんばるんですよ。これは起業家も同じで。

昔、IPOがぜんぜんないところで、隣の人ができるようになると、みんなこぞってやりだすんですよ。そんなもんですね。

佐々木:ロールモデル問題ですね。

斎藤:そうです。

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