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日本3.0 日本の将来、何に投資すべきか?(全4記事)

「みんな、Facebook疲れしている」投資家らが注目する“ドヤ顔しなくていいコミュニティ”の可能性

グローバル時代のメディア・コンテンツビジネス、AI、VRなど未来を切り開くビジネスパーソンに必要な最旬テーマを語るイベント「SENSORS IGNITION」。その中で行われたセッション「日本3.0 日本の将来、何に投資すべきか?」では、グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナーの高宮慎一氏、iSGSインベストメントワークスの佐藤真希子氏、トーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬氏が登壇しました。モデレーターはNewsPicks編集長の佐々木紀彦氏。本パートでは、投資家らそれぞれが注目している次の領域について語られました。

日本で新たなイノベーションが起きるんじゃないか

佐々木紀彦氏(以下、佐々木):それではみなさん、お座りください。最後のセッションになりますけれども、よろしくお願いします。

かなり長く続いているので、みなさんお疲れかと思うんですけれども。今回最後なので、できるだけ明るい話をしながら、締めていきたいと思います。

今日のテーマは「日本3.0 日本の将来、何に投資をすべきか?」ということでして。「日本3.0」というのは、恐縮ながら私が最近出した本のタイトル(注:『日本3.0 2020年の人生戦略』)にもなっているんですけども。

問題意識としましては、2020年前後くらいにかけて、かなり日本の中で非連続的な変化があるんではないかなと思ってます。

それは、日本というもの全体もそうなのですが、ビジネス界で大きい変化が起きるのではないかと。特にテクノロジー、最近言われるようにAIとかですね。IoTとかいろいろな変化がありますし。

あとは、今日のテーマの1つでもあるんですけれど、大企業とスタートアップ、そういったとこの境界線もどんどん薄くなって、新たなイノベーションが起きるんじゃないかなと思ってます。

そういった観点から、今日は3名の日本を代表する投資家の方と、そして起業家の方にどんどんお話をうかがっていきたいと思っております。

VCが注目する日本の投資領域

ここからだいたい自己紹介という感じで、長く続くケースが多いんですけど。自己紹介だけだとあまりおもしろくないので。今回は、みなさん3名ともご存じかと思いますので、具体的なテーマにどんどん入っていきたいなと思ってます。

最後に、このセッションは質疑応答の時間を設けてますので、ぜひみなさん、なにか3名にお聞きしたいことがあったら、積極的に手を挙げていただければと思っております。

それではまず最初のテーマとして、「ベンチャーキャピタリストが注目する日本の投資領域」ということなんですけれども。

これちょっとあいまいな問いかけでもあるんですが、いろいろな分野が盛り上がってきましたね。ネットとかいろいろなところが今後、例えば今年から2020年にかけて、どういった分野、どういった企業、もしくはどういった人に投資する。

そこらへんがホットになるといいますか、注目しているかということを、まず軽く自己紹介を兼ねて、それぞれ3名の方々におうかがいできればと思います。

まず日本一のベンチャーキャピタリスト(=VC)の高宮さん。ぜひお願いいたします(笑)。

領域は狭いが、ファンの熱量が高いもの

高宮慎一氏(以下、高宮):いきなりハードル上げられちゃいまして(笑)。グロービス・キャピタル・パートナーズの高宮です。

VCをやっているというところで、このへんはNewsPicksさんのほうで投稿させていただいたりもしてるんですけど。簡単にいうと時間軸の短い順に3つかなと思ってまして。

1つ目がポストデバイスシフト……。ポストソーシャルかなと思ってます。

どういうことかというと、今までここ3年から4年で、ガラケーからスマホに変わるという、すごくわかりやすい大きな波がありました。

別にデバイスが変わったからって、ユーザーの根源的なニーズは変わるわけでもなんでもないんで。ゲームとかコマースとか、ほとんどガラケーとかPCでやってたものを、スマホに最適化する。スマホファーストどころかスマホオンリーとかにするだけで、わかりやすい大きなところは迎えていた。

まぁ、ガラガラポンがあったりもした。逆に今、ゲームとかコマースみたいな大きな領域がもう埋まっちゃったときに、「残りはなんだ」という話が、ポストデバイスシフトかなと思っています。

そこで、残された細いバーティカル。ファンとして熱量が高いんだけど、全体の個数でいうとすごい小さいもの。

例えばDeNAの子会社・SHOWROOMって、地下アイドルのサイトがあります。そこでは、投げ銭の課金をしながらやっても、細いバーティカルでもすごく盛り上がって、課金も高い。

だから、メディアもそうだと思ってまして……。ファンメディア化する。その濃いファンに向けて課金を高くしていって、受益者負担みたいな概念がどんどん強まっていくのかなと考えています。

ソーシャルの時代は終わる

ポストソーシャルというのは……、みんなけっこうFacebook疲れをしているじゃないですか。

「みんなに向けてドヤ顏しなきゃいけないのが、疲れた」みたいな。その中で出てきてる流れが、Snapchatだと思っているんです。ドヤ顏しないとか、クローズなLINEのグループチャットみたいなところという、新しいスペースがそれによって生み出されてきています。

逆にいうと、今までのWeb上ではトラッキングできなかったデータも真似できていて。1つ目でこんなに話しちゃいましたね(笑)。

佐々木:すばらしいですね。例えば『君の名は』のプロデューサーで、映画プロデューサーの川村元気さんを数ヶ月前にインタビューしたら、やっぱりソーシャルの時代について、彼も「終わる」みたいなことをおっしゃっていて。「もうFacebookやらない」という感じで、断ってるらしいんですね。

かなりリアルな流れが10年、20年くらいのけっこう長い軸としていくんじゃないかと言ってたんですけど。ネットにグーッときた流れって、高宮さんも見てらっしゃいます?

高宮:そうですね。たぶんネットの流れってなんでも民主化する、フラットにするという、要はグローバリズムみたいな話だったと思うんですよ。それの揺り戻しとして、小コミュニティが重視されてきていて。

例えばInstagramをやってる人たち。インフルエンサーがなんで力を持ってきたかというと、若い人の感覚だと、トップダウンで誰かの申請があって発信されてるメディアの意見よりも、身の回りにいる人、自分が信用している人の意見のほうが信じられるみたいな話になっている。

それがやっぱり、トランプ現象の背景とかにもあると思っていて。小コミュニティが乱立する時代になってきているので、その社会的な変化をとらえるサービスというのは必要なんじゃないかなと思います。

古い業界にネットが染み出すことでの変化

佐々木:おもしろいですね、今の意見。佐藤さんだとサイバーエージェント第1期生で、ネットの世界をずっと見てこられましたけど、高宮さんの今の意見をどう思われます?

佐藤真希子氏(以下、佐藤):ネットって揺り戻しが必ずあるじゃないですか? いいときもあれば悪いときもあるし、広がったら狭まるし。なので、「そうだよね」という感じです(笑)。

佐々木:自然な流れということですね。

佐藤:そうですね。VCをやってると、どっちかっていうとスケールというところを重視しがちなんですけど、小さく、規模がなくても深く掘っていくというところがたぶんこれから熱くなるよねと思っています。

佐々木:2つ目よろしいですか? お願いします。

高宮:2つ目というとめっちゃ長くなる(笑)。僕らグロービス・キャピタルでは、インダストリー・トランスフォーメーションと言ってるところなんですけど、ネットがどんどんリアルに染み出していって、変えていくところだと思ってまして。

ちょうど、安倍首相と世耕経産大臣がドイツに行って、インダストリー4.0に対抗するかたちで、コネクテッド・インダストリーズとか言ってたんです。そういうのも中心にあるかなと思ってまして。

日本って、今までのレガシーやアセットというところで、製造業はけっこう強い。しかも製造業のミソは生産技術であったり、生産現場にあったりする。生産現場の暗黙知と言われていたようなところが、どんどんデータで可視化されている。

それが蓄積されて、新しいテクノロジーとしてAIを使って機械学習がどんどんされていくと、究極職人の暗黙知で、機械で微妙に1ミリ調整してみたいなところができるようになったりとか。トヨタの改善活動みたいなのも、機械ができるようになったり。

看板方式で自社だけじゃなく、複数社をまたいでサプライチェーン全体で最適化するみたいなことが、どんどん機械で最適化するようになってくる。

そういう変化が起きて、またはネットが染み出すことで規制緩和と相まって。例えばヘルスケアだと、遠隔診療とか解禁されてるんで。今までなかなかネットが及ばなかった古い業界が、どんどん変わっていくのかなというのが2つ目だと思っています。

大企業がメディアに注目し始めた

佐々木:そういう古い業界は、斎藤さんはベンチャーだけでなく大企業ともつながりがあると思うんですけど……。そういう古い業界の大企業の動きも、今高宮さんがおっしゃったような流れの中で、動きを感じますか?

斎藤祐馬氏(以下、斎藤):そうですね。大企業では、これまではかなり長い時間をかけて研究開発をして、自前出資で事業を作る。それがずーっと利益を生んできたわけですよね。

このサイクルがすごく短くなってきてるんですよ。ちょうど2010年以降くらい、劇的に早くなってきているので、ここで「自前主義だともうだめだな」ということに、2~3年で気づき始めてきていて。

ここでいきなりスタートアップに目が向き始めて、日本中で大企業がベンチャー投資を始めた。こういう流れですよね。

佐々木:斎藤さん、トーマツベンチャーサポートで、大企業とスタートアップとのコラボとか、新規事業支援をしてるわけですけれども。流れが変わってきているということですね?

斎藤:そうですね、あまりに変わった。だから5年前、ベンチャーというと、メディアの方もぜんぜん取り上げない、大企業の中でもそう言っている人はほぼ誰もいない。

経産省もベンチャー政策で、打ってる政策はほぼなかった。これが激変して、ベンチャー企業では、大企業出身者がどんどん起業するようになったんです。

なので、大企業に関わりがない人たちでやっていたベンチャーの世界が……急に大企業出身者がどんどんあふれて。同じ文化を共有しやすくなったんですよ。ここ、大きな流れですね。

佐々木:大きいシフトですね。そこで大企業とスタートアップの流れも、あとでまたくわしくうかがいしたいと思います。

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