DMMの3Dプリントサービスは大赤字らしい

林 信行(以下、林):札幌で開催中のIVS 2014 Springインタビュールームに、ゲストをお招きしてお送りします。今回お越しいただいたのはこちらのお二人です。どうもよろしくお願いします。

田川欣哉(以下、田川):よろしくお願いします。

青木俊介(以下、青木):よろしくお願いします。

:皆、たった今、セッションが終わって、ちょっとやや達成感でだらけている感じなんですけれども、びっくりしたことに、すでにTwitterで実況していたイケダハヤトさんが、もうイベントのレポートしてくださっています。ぜひそちらも後ほど読んでいただければいいと思うんですけれども、この後、まずは二人にお一人ずつ簡単に自己紹介をお願いできればと思います。じゃあ青木さんからお願いします。

青木:こんにちは、ユカイ工学の青木です。ロボットを開発する小さい会社をやっています。よろしくお願いします。

田川:こんにちは。takramの田川といいます。僕のほうはデザインエンジニアという人たちを集めて、いろんな会社の新しいサービスとか製品をつくる仕事をやっています。よろしくお願いします。

:よろしくお願いします。我々がやったセッションはテーマ「デジタルファブリケーション最前線」ということで、ハードウェアスタートアップについて話をしたんですけれども、実は来場者も結構いろいろおもしろい。

最近テレビでバンバンCMを打っているDMMの亀山代表とかやってきたりですとか、あと、日本でハードウェアスタートアップといえばというCerevoの岩佐さんも来ていれば、僕ひどいモデレーターなんで、いきなり会場の亀山さんにパネリストを紹介する前にむちゃぶりしてしまったという。そしたら亀山さんが、DMMで3Dプリンターのサービスをやっているけれども、あれは毎月500万円と言っていましたっけ?

青木:500万円と言っていましたね。

:の赤字が出る。

青木:売上が500。

:売上が500万か。そうかそうか、赤字は億?

青木:ですよね。

田川:赤字がものすごいことになっている(笑)。

青木:500万だと年間でも6000万とかで、たぶん使っているプリンター、ダーッと並んでるうち1台ようやく買えるくらいだと思います(笑)。

:そんな暗い話で始まりました。(笑)ちなみにこのセッション、実は去年も、田川さんがモデレーターで、僕がそのときはパネラーという形でやっていたんですけれども。

田川:そうでしたね。一緒に。IVSでこの手のセッションをやるとやっぱりソフトウェアの人が多いんで、会場がガラッガラなんですよ。でも、今年ちょっとふえましたね。来ている人はすごい熱いんですよ。

青木:よかった(笑)。

:来ている人はすごい熱いんだけれども、人数少ないんだけれども、去年のセッションが終わった後に亀山さんがやってきて、「おまえら、ここ誰も人いないだろう。だから俺はチャンスだと思うんだ」と言ってあのサービスを始めて、500万で大赤字だけれども、でも、実はDMM自体が最初は赤字で、今やあんなことになっているのですごいというので、やっぱり相変わらず皆さんすごい熱い期待を寄せてくれているという感じで、すごい暗いムードで始まったセッションが最後は明るく終わったのをぜひ。

田川:Nobi(林信行)さんが期待していた答えが全然違ったんじゃないですか、亀山さんの(笑)。

:そう。もうDMMでどんどんブレイクしているのでなくて、くるかなと思ったらあんな感じだったので、ちょっとびっくり。

青木:おもしろかったですね。

:でも、逆にだからおもしろかったですね。

青木:うん、おもしろかった。

:いきなりこうマイナスからはい上がっていく感じのセッションでしたよね。

田川:そうですよね。まだまだ日本でもいけるぞ、とか(笑)。

:セッション見ている人は、このビデオ観ている人はぜひレポートも見てほしいんですけれども、ちょっと簡単に2人でセッションの振り返りをしていければと思います。

ソフトウェアのプロがハードウェアに興味を持ち始めた

青木:僕は、(Bsizeの)八木さんとまだきちんとお話したことがそんなになかったんですけれども、八木さんの言われている「真善美」から会社を始めたとか、すごいそのコンセプチュアルな。

:コンセプチュアルですよね。

田川:そうですね。

青木:あと、今の販売されているRESTという製品の紹介ムービーもめちゃくちゃ格好いいじゃないですか。映像がきれいなのはもちろん、地域の人に貢献していたり、間伐材を使っていてとかというすごく共感できる、なんかそれは製品紹介というよりもブランディングムービーみたいなレベルだったので、そこが聞けてよかったなと。

:ちょっと解説させると、実際のセッションではこの2人に加えて、「Bsize」という「一人家電メーカー」というのをメディアに書かれて、「家電」はついていなかったかな、「一人メーカー」と言っていましたね。「Bsize」というすごい、STROKEという格好いい1本の線がこう折れ曲がってなっている、自然にすごい優しい光を入れてくれるLEDのデスクライトとか、RESTという、何て言いましたっけ?

田川:充電器ですね。

:Qiという?

田川:接触充電ね。

:接触充電を出しているんですけれども、その方と、あと、非常におもしろいロボットの研究一筋、「クラタス」をつくっちゃって、この間ガンダムの声優の方を乗せて夢がかなったみたいな(笑)。V-Sidoの吉崎さんという方が加わっていたんですけれども。今、青木さんが話されたのは、そのBsizeの八木さんです。

青木:八木さん、はい。

:じゃあ、田川さんのほうは、振り返り、どうでしょう。

田川:僕も仕事で結構このハードウェアでスタートアップやっている人たちのお手伝いすることが多いので、すごい興味があるというか、僕もこの会社で8年ぐらいやっているんですけれども、明らかに去年くらいから、何かそういう問い合わせとか依頼とかをしに来る人がふえたんですよね。

で、どういうタイプの人たちがそこへ入ってきているかというと、以前は、すごいハードウェアを好きな人がハードウェアを諦めきれなくてみたいなところもあったんですけれども、最近は、ソフトウェア業界でかなり経験を積んだ、かなりビジネス的にも経験値の高いような人たちが結構、読み切ってハードウェアに入って来るみたいなパターンもあって、そういう人たちが、ちょっとスライドで出しましたけれども、ハード、エレクトロニクス、ネットワーク、サービスみたいな、あそこら辺を融合したところでのハードウェアイメージみたいなものをすごくクリアに持っている人たちが結構増えて来ていると思うんですよね。

これたぶん日本全体でみるとそんなにまだ数少ないと思うんですけれども、一つ、たぶん大きな流れになっていくんだろうなというような気はしますよね。西海岸とかでも明らかに、ハードウェア系というのが増えているじゃないですか。

:そうですね。

デジタルファブ、Kickstarterなどがハードウェアを後押し

田川:何だっけな。去年かな、どこかのリサーチ系の会社が出したレポートで、今ハードウェアスタートアップの数とソフトウェアスタートアップの数というのは、たしか100倍ぐらい違うんですよね。

青木:そうなんですね。

田川:USでね。なんだけれども、そこの調査会社が言っているのは、ここ10年間ぐらいでハードウェアスタートアップの数がソフトウェアスタートアップの数と、桁が少なくとも2桁違うみたいなところがなくなって、それなりに近いところまで行くんじゃないかという予測を出していて、だけれども、それを可能にしているのは、デジタルファブリケーションだったりとか、(資金調達を支援するクラウンド・ファンディングの)Kickstarterみたいなファイナンスの仕組みだったりとか商流だったりとかいろいろあるんだけれども、確かに今まで少なかったですよね。

:そうですね。

青木:本当にもうそのコンサル業だけじゃ食えないくらい少なかったですよね(笑)。1年前は(笑)。

田川:今ちょっと、何となくどっちかというと盛り上がり過ぎているようなところもあるんですけれども、例えばこの前、眼鏡系の会社が立て続けに2社そういうのを出したりとか、ちょっとあれは飛び道具っぽいのかもしれないんですけれども、だけど、とはいえ、やっぱりそういう会社もそういうところをつくっていこうみたいなところになっているのは、今までにはあんまりなかったかなとかね。

青木:それは、やっぱりスマホがあるというのもでかいと思うんですけれどもね。スマホみたいにつながり先がないと、その辺のネットとつながるとかそういうのを全部入れ込まないといけないってなると。

田川:そうそう、それは大きいですよね。だからスマホに結局CPUを持っていて、複雑な操作のインターフェースはBluetoothで済ませて、ハードウェアのほうは、どっちかというと人間とのインターフェースにシンプルに徹するみたいな。

青木:そうですよね。

田川:それができるようになったかというのがありますよね。

青木:それはかなり大きいと思います。なんか僕らがお手伝いしているものも、基本的にはもうBluetoothのローエナジーという、僕たちが「konashi」で製品を出しているのもあって、ほとんどその技術を使ったもののプロダクトの開発をお手伝いしているというのがほとんどですね。

田川:BLEも、もう少し世代が進むロードマップというのがあるじゃないですかBluetooth系も。あれって今後どうなっていくんですか。

青木:メーカーによってはBLE同士がメッシュになって、単体でどんどんつながっていくみたいなことをやっていたり、あとは、すんごい飛ぶ……。

:100メートルとか?

青木:何かもっと飛ぶみたいな。数キロ飛ぶようなものを出している会社さんもたしかあったりとか。BLEの仕様が決まったのが、ちょうど2年前くらいなので。

田川:一気に来ましたよね。BLEというのは、僕らも今、ちょっとウェアラブル系で使っていて、どうしてもこうビットレートというか、遅いじゃないすか。

青木:遅いですね。

田川:あれは、これから先は何とかなっていくんですか。

青木:特にアップルの場合は、OS側でインターバルをこれ以上とらないといけないみたい、何ミリセカンド以上とらなきゃいけないみたいに決めていたりして、なので、そんなにたくさんやりとりはしないように制限かかっているので、ちょっと劇的に速くなるというのは難しいかなとは思いますね。

田川:なるほどね。

:BLEでつないでそのあとWi-Fiとかそんな感じなんですかね。

青木:データ量が大きいものに関しては、はい。結局たくさん通信しちゃうと、その消費電力がローエナジーじゃなくなっちゃいますので(笑)。

:それはそうですね。

青木:そういう場合はライセンスを取れ、アップルのMFIを取れって話なのかなと思います。

「一人家電メーカー」八木啓太さんは仙人みたいなすごい人

:でも、セッション聞いていて、八木さんの説明がおもしろかったのが、八木さんがもともとメーカーのほうにいて、全部、CADソフトも無料で。

田川:あれ八木さん簡単に言っているけれども、一人で全部やれるのは結構すごいですよね。

青木:いや、なかなかいないですよ。

田川:なかなかいないですよね(笑)。

青木:できる人は(笑)。

:あれは、全部のスキルセット持っていたってことですかね。

田川:僕、八木さんの説明を聞くの何回目だろう、5回目ぐらいなんだけれども、いつも、いや、今はフリーでCADも出ていて、回路CADもP板でピピッとつくって。

:P板というそのネットのサービスで、印刷して基盤ができてきたという、ね。

田川:3DのCADもこんなフリーのCADが出ていて、こうやってつくると云々でと言っているけれども、普通、あれは自分一人でオペレーションも全部はできないよ(笑)。

青木:でも、八木さんはすごくて、それをやろうと決めたのが高校生時代だったらしいんですよ。僕、その話をこの間、聞いたんですけれども、たぶんエンジニア向けの話だったので、そういうビジネスっぽいんじゃないところを話ししたみたいなんですけれども、iMacを見たときに、こういうものをつくりたいと思って、それをつくるにはメカの設計とデザインと回路設計ができるようになる必要があると。だから、まず大学では電気系に行って、同時にデザインを勉強しながら、メーカーに入ってメカを学ぼうというようなことで(笑)。

田川:それを高校生の時から(笑)。

:すごい。そんなこと考える高校生。

青木:しかも、だって、20代のうちにメーカーの技術者をやりながら、起業資金の1,000万円をためていたと。たぶんそれは、ほとんど飲みにとか行ってないはずなんですよね。だからもう仙人みたいだということで(笑)。