テーマは「働くママとパパは理解し合えるか?」

田中和子氏(以下、田中和):みなさん、こんにちは。リーママプロジェクトの田中と申します。サラリーマンのママを略して「リーママ」と呼んでいる、働くママが元気になるための集まりを推進するプロジェクトです。今日は、偶然にも私と同じ苗字の、男性学の第一人者である田中俊之先生をお招きしております。

タイトルが「働くママとパパは理解し合えるか?」なんて、理解し合えないことが前提になっていることも問題かと思うんですけれども(笑)、そんなテーマでお話をさせていただければなと思います。よろしくお願いします。

先生の話もすぐにうかがいたいのですが、まずは「リーママプロジェクトが何をやっているのか」を少し紹介させてください。

今日はメンバーも後ろに来ていますが、博報堂という、いかにも長時間労働をしていそうな広告会社のママたちが集まって、「なぜわたしたちは働いているのだろう」ということから始まり。

平たく言うと両立なんですけれども、バランスじゃなくて、自分らしい働き方、自分らしい育て方ってどうやったら作れるのかという疑問をスタート地点に、まずは集まって情報交換して、話し合ってみようよというシンプルな活動を始めました。

社内だけでやっていても、価値観がけっこう同じなんですよね。やっぱり、同じ入社面接を受けてきているので、フィルタリングが機能しているんだと思えるんです。それで、いろんな会社のママとも交流してみようということで、ママばっかりで集まってランチタイムに「ランチケーション」しようと。

夜の「飲みニケーション」に対して「ランチケーション」と呼んでいます。ママはランチタイムぐらいしか時間がないので、いろんな会社さんのママと合コン形式で、日時と場所と人数を決めてランチするということをやってきました。今、50社500人ぐらいのママたちとランチケーションを重ねています。

そこから、いろんなことばをいただいて、ママたちのことばをちょっと綴らせていただいたりもしています。

男性の家事・育児時間

田中和:ママと話すことに意義を感じてはいますが、客観的に自分たちが置かれた状況を見るのも大切だと思い、我々もいろいろオープンデータとかも見ています。

国もいろんなデータを作っているんですよね。でも、それって私たちにどういう意味があるんだろうって、あんまり考えたことがなかったので、ママたちとこんな数字を共有しています。

「29:39」。これは何でしょう、と聞いてもわからないと思うので種明かしをすると、これは、平日の男性の家事・育児時間(分)なんですね。全成人男性で、年配の方も含めた平均値なので、ちょっと低めにはなっています。

「29:39」から発見したのは、共働き世帯の夫と専業主婦世帯の夫を比べて、29分と39分って、そんなに差がない。共働き世帯は夫婦で同じように稼いで対等にやっているんじゃないかなと思っていたら、どっちにしても男性はやっていないという結果なんです。

先生の前で言うのもなんですが、29分というのが、実は共働き世帯の数字だったんです。それで、専業主婦世帯の数字が39分。

逆転したほうがいいんじゃないかと思ったんですけれども、いずれにしても29分と39分なので、ゴミ出しとか、お風呂にちょっと入れるとか、その程度かなと思えてしまうんですよね。

やっている方はやっている、やっていない方はやっていない、という中での平均値だと思いますけれども。まぁ、家事育児はやっていないに等しいですよね。

「1.0:3.0」。これも家事・育児時間なんですが、6歳未満のお子さんをお持ちの家庭の、パパさんの家事・育児時間です。

日本の6歳未満の子供を持つパパさんが、平日1時間。欧米、OECD加盟国などの先進国諸国のパパさんたちが3時間。

3時間だと、ママさんたちだいぶ助かりますよね。おそらく、何かしら家事・育児を分担しているんじゃないかなと思いますね。

例えば、「料理は全部パパです」とか、「洗濯は俺に任せろ」とか。掃除は全部パパかもしれない。毎日のことなので、「必ず買い物してから帰る」とか、業務の分担ができているんじゃないのかなって、この数字から想像できるんです。

働く女性が抱える「60+60+60」のプレッシャー

「60+60+60」。田中先生に「これ何の意味だと思いますか?」と聞こうと思ってたんですが、さっき打ち合わせしている時に言っちゃったので(笑)。これは、ママたちからの「糧ことば」の中にも出てくる数字なんです。

「60+60+60」は、「家事・育児・仕事」の足し算。「産めよ・育てよ・働けよ」すべてちゃんとやらなきゃ、とプレッシャーに感じてしまっている女性たちの後ろめたさを表現しているんです。家事も60パーセントしかできない。育児も60パーセント。専業主婦みたいにきちんと子供に向き合えてないかもしれない。

仕事も中途半端で、毎日帰っちゃっている。ものすごく「私って全部できていない」と思っちゃっているママさんたちと話している時に、「いやいや、でも60を3つ全部足せば180パーセント、私たち100パーセント超えるじゃない」という、ありえない算数なんですけど(笑)。

でも、そのぐらいの気持ちで、「もう十分にやっている」って思えることが大切だと感じているんです。これは言い方は悪いかもしれないですけれども、傷の舐め合いでありつつ、励まし合いなのかなと思っています。

働くママのモチベーションを左右する「3つの壁」

リーママプロジェクトではいろんなインタビューをさせていただいたり、ランチケーションを通してアンケートを取らせていただいているので、そこから見えてきたママたちの働くモチベーションの増減を大きく「3つの壁」にあわせて表現しています。

まず妊娠から始まって、出産があって、産休・育休を取っている時期、モチベーションはどんどん下がっていきます。もちろん休み中なので、この辺には働くモチベーションよりも育児に集中している期間ということもありますが、さらにガタンと落ちるのが、今「保活問題」なんて言われている、保育園探しのところですね。これが「復帰の壁」と呼ばれる第1の壁。

その時期にたまに人事から電話があったりして、「復帰先どうしますか?」とか、「君はこのあと、どういう働き方をしますか?」とか聞かれても、「いやいや、そもそも私、復帰できるかどうかわからないんですけど」「キャリアがここで分断されちゃうかもしれない」って思ったら、もう仕事へのモチベーションなんて下がりまくり。

それから、どうにか復帰できると、モチベーションはエイッと少し上がるんですね。それで、上がるんだけれども、そこで重なってくるのが育児と仕事の初めての両立。

育児休暇を取得できる期間が長くなり、1年弱から2年くらいまで取られているママさんが多いでしょうか? 一番手がかかる頃に(子供と)一緒にいられることは悪いことではないですし、母子ともに良い経験だと思いますが、(育児休暇が)長くなったところで、私の経験値から言う落とし穴は、「イヤイヤ期」。これが「第1次反抗期」と呼ばれる第2の壁です。

1歳半ぐらい〜2歳半、場合によっては3歳ぐらいまでイヤイヤ期というのがやって来るんです。いわゆる「魔の2歳」。それが終わったら「悪魔の3歳」なんて言っていますが(笑)。

もう何があっても「イヤイヤ」と。「保育園行きたくない、靴履きたくない」何でもヤダヤダと。経験あるママさんたちは、「そうそう、ほんと大変よね」と共感してくれるんですが、初めて経験する新米ママさんはどう対処したらいいかわからない。イヤイヤ期がいつまで続くかもわからない。

さらに自分の仕事の復帰も初めてで、今まで残業つきの働き方をしていたのを、グッと6時間に縮めなきゃいけない。そういう縮め方をした結果、昼間もどう回したらいいかわからないことだらけ。

それで帰ってからも、このイヤイヤの怪獣をどう扱ったらいいかわからない。そういう時に、ママたちの心がものすごく乱高下しちゃう。「子供が泣いているたりグズるのは、ちゃんと相手してあげてないからかしら?」なんて自分を責めることも。

そんな時、「ちょっと、もうダメだ」って(仕事から)離脱しちゃう。復帰後の離脱って、そこの理由がけっこう大きいんじゃないかなと思ったりします。

そのあとも、第3の壁と呼ばれる「小1の壁」などがあります。東京では、今50パーセント弱が中学受験をするんですかね。中学受験をするとかしないとか、受験の勉強を見てやれるとかやれないみたいな時に、やっぱりちゃんと子供と向き合ってあげられないのはつらい、しかも「そんなにやりがいのある仕事ではないんだったら辞めちゃおうか」って言って、辞めていってしまう。

そういう離脱の壁というのはいくつかあるのかなと思うんですが、これは第1子の成長だというのもキーポイントで、これを超えて2人目とか3人目とかまで行くと、この波がなくなっちゃう。

これはなぜかというと、育児の経験が自分の中で積み上がっているから、「先があるんだよね」というのがわかるし、「子供は泣くもんだし」くらいにおおらかな気持ちになれて、母としての成長がこれを乗り越えさせてくれているのかなと思っているんです。

2人目、3人目を経験できればいいんですが、問題は最初の子の時に振る舞い方がわからないこと。1回目の苦労で離脱してしまったら元も子もないじゃないですか?

ランチケーションの中でも、一人っ子のママが多いんです。一人っ子が多いのは仕方が無いけど、経験値を伝えていけたらだいぶみんな楽になるんじゃないかなと。

1回苦労しただけで終わっちゃっているのはもったいないので、自分の苦労も楽しさも、次のママさんに伝えていってあげたらいいなと思って。あえて「こういう苦しみがあるよ」っていう経験をみんなでシェアしているところです。

「すべての男性は育児休暇をとるべき」その理由とは

田中和:あとは「糧ことば」という、ママたちが元気になることばをランチケーションの中で拾っているんですが、それをちょっとシェアしながら田中先生にもご意見をうかがいたいと思うのですが、例えば、「量より質」。

まぁ、普通の言葉ですが、ママたちは本気なんです。先ほども申し上げたように、仕事も中途半端かもしれない、子供との時間も短いかもしれないという時に、質を求めればいいんじゃないのかという考え方ですね。

「密度重視」。量どころじゃなく、密度を重視してやっていきたいと。ママたちに聞いていると、ものすごく仕事も効率よくやろうとしているんですよ。

時間制限のある人の働き方はエンドがあって、そこから逆算していくんですよね。どうも時間制限がなく働くと、積み上げ型で永遠に働いていってしまうのかなと思うんですけど、どうですかね?

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