パパにマジギレするときはどんなとき?
田中和子氏(以下、田中和):そんな中で、もうだいぶ先生にもいろいろ話を聞いちゃっているんですけれども。「パパとの分かち合いが生まれるか?」という言葉。
ママと話していると、パパととても仲のいいママさんとか、パパの協力をすごく得ているママさんも当然いるんですけど、どうもやっぱり……。
まあママ会だからというのもありますけど、パパへの不満とか、「結局、自分がどんなに稼いで頑張っても、なかなかパパと対等になれないんだよね」という話になっちゃうかなと。と同時に、「マジギレ旦那行動」なんてものも……(笑)。
例えば、つい先日、まだ1歳のかわいいお子さんがいる若い同僚ママさんがいるんですけど、ママさん自身がノロウイルスにやられちゃって、夜中もう本当に大変だったと。そんな中でも子供は当然夜泣きする。
それで、旦那さんに「ちょっとどうにかして」って言ったら、「う~ん、○○ちゃんのお世話はママの役目でしょ」って言われてしまったということで、本当にマジギレしていて(笑)。
田中俊之氏(以下、田中俊):これは、十分キレる理由がありますよ。どういうことかというと、僕は、コミュニケーションのタイプとして、2通りのパターンがあると思うんですね。
1つは演繹型の人で、自分がそう思っていることを当てはめて現実を理解する人。もう1つは帰納的なタイプの人で、目の前に起こっている現象を見て、自分のリアクションを考えるパターンの人。
人間は、例えば水道をひねれば水が出るとか、自分が持っているパターンを当てはめて行動する側面が多くなきゃ生きていけないので、それが多くなっちゃうのはしょうがないんですけど、今の例なんかは、典型的にこの演繹型ですよね。
「赤ちゃんの世話は女の人がやるべきだ」「奥さまの仕事だ」ということを、そのような緊急事態においても当てはめるから、それはもうイラッとするのが当たり前であるということなんですよ。
つまり、緊急事態であるということを見て行動しようとするならば、我が家ではふだんはそういう性別役割分離をやっているけど、今は自分がやんなきゃということを当然理解できると思うんですよ。
僕は、夫婦のすれ違いとかキレるということについて、この演繹型の人が多いことが理由の1つじゃないかなと思います。
今目の前で何が起こっているのかを見て行動するならば、キレられることもキレることも減ると思うんですよね。
自分の聞く能力をもう少し疑っていい
田中和:小中学校で「21世紀型学習」というのが始まろうとしているじゃないですか。コミュニケーション能力をもっと高めるとか、協調型学習やグループ学習、あと課題発見型学習などに取り組み始めていますよね。そういう学習が進むと、すれ違いは少なくなるのかしら(笑)。
田中俊:どうですかねぇ。この間、市民講座で福島に行った時に、「男の人と話していて何か困ることがあるか」というグループワークをしてもらいました。
そこで聞いたのは、ある若い女性が上司に「辞めたい」と相談に行ったら、「そもそも、なんで君は辞めようと思ったの?」と彼女が辞めると思ったことを頭ごなしに否定されたらしいんですね。
それが、まさに今の演繹型というか。彼女は今、上司に「辞めたい」と訴えているわけですよ。それに対して「辞めるなんてことを考えるのがおかしい」という考えを上司がぶつけてきたと。だから、彼女は上司に相談しても無駄だと認識したらしいんですね。
これは、家庭でも起こりがちだと思うんですよ。先ほどの例でも、自分の具合が悪い。それで、赤ちゃんが泣いている。それを「やってくれる?」と言ったら、「それは君の仕事だよ」って言われたら、もうその人とコミュニケーションをするということ自体を閉じちゃうと思うんですね。
田中和:レスポンスアビリティの話でいうと、レスポンスの余地を与えてないということですよね?