会話を広げるなら、答えが名詞になる質問より動詞になる問い
大村信夫氏(以下、大村):「『聴く』には」の質問編。続いては、「回答が『名詞』ではなく『動詞』になる質問をする」。
寺田有希氏(以下、寺田):これもけっこう大事だと思います。さっきの「ありきたりの質問をしない」時に、例えば「好きな食べ物は何ですか?」「趣味は何ですか?」とか、これって何かを特定する名詞が回答になることが多いじゃないですか。これだと広がっていきにくくて。
その時に「あっ、動作が含まれるものを聴いた方がいいんだ」と思ったんですよ。
大村:ほうほう。
寺田:「何が好きですか?」で名詞が返ってくるとその先に掘っていくものがあまりないんですけど、動詞で「何をした」と言われたら、「誰としたんだろう」「いつしたんだろう」とか、掘っていく先が見えやすいんですよ。
大村:広がりがあるんですよね。まさに動いていきますよね。
寺田:この「回答が『動詞』になりそうな質問をする」のは、ありきたりな質問を禁止した上で、私が質問する時に気をつけていることです。例えば、「好きな食べ物は何ですか?」と聴くのではなくて、「ふだん料理されますか?」と聴いてみたりとか、「外食はよくされますか?」と聴いてみるだけで、広がりが変わっていきます。みたいな感じですね。
「好きな食べ物は何ですか?」のほうが想像はしやすいんですけど、ちょっと質問を変えてみる感じですね。同じ食べ物の話でも、ちょっと変えてみるだけで話がどんどん深いほうに変わっていくことが多いです。
難しい質問がいい質問ではない
大村:(次のスライドの)「5W1Hを活用する」。
寺田:これは英語のやつですね。What、Who、When、Whereみたいなやつです。さっき「いい質問は相手が話したいこと」と言ったんですけど、私、いい質問をずっと勘違いしていたなという感覚があって。
大村:ああ、はい。
寺田:ちょっと知識あるふうな、「リテラシーが高そうな質問をしなきゃ」とか、「深いことを聞かきゃ」とか、すごく考えていたと思うんですよ。でも、難しい質問がいい質問ではないなと、経験上すごく感じました。
それこそ「ホリエモンチャンネル」をやっていても、始めのほうは「ちゃんと私もいい質問をしなきゃ」と思って、その内容にそぐうようなちょっと小難しい質問を、無理してやろうとしていたんですよ。でもある時、政治家の鈴木寛さんという方たちと堀江さんが政治の話をしていて、もう正直ぜんぜんわからなかった。
小難しいことを聞かないといけないのかもしれないけど、「わかんない、わかんない」と思って、一番最後にポロっと「結局、政治って何ですか?」って聞いたんですよ。そうしたらその質問をすごく褒めてくださったことがあったんですよ。これって難しい質問でもなくて、「何ですか?」って、この5W1HのまさにWhatじゃないですか。「それ、何ですか?」と聴いただけです。
でも、これが相手にとっていい質問だった。だから「何ですか?」「それはどういうことですか?」「どうしてですか?」とか、もうこれを聴けるだけでいい質問になるんだと私は肌で感じてきたので、小難しく考える必要がないよという感じです。
大村:なるほどね。
寺田:深掘りをしていく時は、こういうWhatとかWhoだけで、話はうまく回っていきます。
大村:そうですよね。「それ、いつだったんですか?」「どこでですか?」「どなたと?」とか。
寺田:「なんでそうなったんですか?」だけで十分だなと思っています。
「私もそうでした」という経験論の被せは危ない
大村:次。おお! 「途中で自分のエピソードを語らない」。なるほど。これは泥棒ですよね。
寺田:はい。
大村:ちょっと今反省しました。さっき僕、キャリコンで言うと「これ、ラポールって言うんだよね」とか、いろいろ被せちゃってごめんなさい。
寺田:(笑)。ぜんぜん。そんな話は他の話に広がっていくからいいんですけど、エピソードは「私もこうでした」とかの経験論のほうが危ないですね。時に自慢話につながっていっちゃいそうなやつ。
大村:ああ、嫌なやつ。
寺田:ね! やはりみなさん経験があるんだ。相手にそれをされて「うーん」と思うことがあるじゃないですか。これはご自身がしゃべる時も、そう思われている可能性があるのでやめましょう。
大村:やはり「聴く」ですよね。
寺田:そう。「それ、何でですか?」というタイミングで、「いや、私も実はそういうことがあって、過去にこれをやっていたんですよ」とか、「ああ、あれってすごいですよね」みたいな感じでしゃべってしまいがちです。
大村:うーん。
寺田:それって、相手が話したいことから逸脱してしまうことが多いので、やらないほうが吉ですかね。
大村:みなさん、頷いていらっしゃる方が多いですね。
寺田:ぜひ、語らないほうが得なので、自分のことを語りたくなったら、一回グッとこらえて、一回全部聴くのを意識するだけで、相手は「ああ、めっちゃこの人、自分の話を聞いてくれるんだ」と信頼関係につながっていくので。そうなると逆に自分のターンが来た時に、自分の話もめっちゃしゃべらせてくれる。
大村:はいはいはい。
寺田:聞いてくれるようになるんですよ。なので、一回信頼値は溜めきったほうがいいなと思います。途中でエピソードを語ってしまうと、信頼が溜まりきらないので、これは私の経験上、やめたほうがいいことが多かったですね。
質問が思いつかない時に使えるマインド
大村:次です。「インタビューマインド」。
寺田:インタビューマインド。これは質問が思いつかない時とかに使えるかなと思います。その人の人生とか考え方に触れることって、その人がしゃべれることが絶対にあるので。
大村:絶対ありますよね。
寺田:みんながんばって考えて生きているから、絶対に話すことがある。だから上っ面のいい質問を考えようと思うとすごく難しいんですけど、そんなことを考えず、「あ、この人、どんな人生を歩んできたんだろう?」と思うだけで、質問が思いつきやすくなる経験がすごく多くて。なので人の人生に興味を持ってみる。
大村:興味を持って仕事するということですね。
寺田:コミュニケーションの話をしていたら、よく「人に興味が持てないんですけど、どうしたらいいですか?」という質問を受けることがあるんです。その時にもこれは使えるんです。その人自身に興味がなかったとしても、興味のない人が生きてきた人生って、ちょっと興味ありません?
大村:(笑)。
寺田:ちょっと言い方が悪いけど。そう変換するだけで、その人にちょっと興味が出てくるんですよ。
大村:うん。
寺田:「この人の奥さん、どんな人なんだろう」とか、「どうして結婚したんだろう」とか、「どんな学生時代だったのかな」と想像する。そうしたら嫌いな人も、もしかしたらちょっと好きになれるきっかけを得られるかもしれないし、それでいい話が聴けたら、何かインストールできるし。相手の人生を知ろうとする。
インタビューの時は絶対そうですよ。その人の考え方を引き出すものがインタビューだから。みなさん、ふだんの生活でインタビューをしないんだろうけど、このインタビューマインドを持っておくと便利だよ、という感じですかね。
知ったかぶらず、質問に変えたほうがいい
大村:次は、「知ったかぶりをせず全部、聴く」。知ったかぶっちゃいます。僕も。
寺田:知らないことって、めちゃめちゃ質問の種です。なので、私はその種を逃さないという意味でも、知ったかぶりをしなくなりました。
大村:「そんなの知らないの?」みたいに思われてしまったら嫌だなと感じてしまうんですよね。
寺田:めちゃ思います。私も過去、知ったかぶりをしていたなと思うんですよ。「ホリエモンチャンネル」でめっちゃしていたんですけど、でもいいことがなかったんです(笑)。「おめぇが知ったかしてんじゃねーよ」みたいな、アンチコメントたくさんいただきましたし。
大村:(笑)。
寺田:話している相手の方も、話しづらそうになってしまったりとか、あまりいいことがなくて。質問のためだったら、これを質問に変えたほうがいいなって、私は思えるようになったので。
話すコミュニケーションをしようとしていると、知ったかぶりをしたくなるんですよ。そのあと自分のターンに持ってきて、何かしゃべりたいから。でも、「話す」をやめると、聴けばいいので。知らないことを全部聴くだけで、知ったかぶりもやめられるし、たくさん質問もできるので超お得です。
大村:ですよね。僕も最近、もう開き直って聴いてしまいます。
寺田:おお、すばらしい!
大村:「それ何ですか?」「すいません。教えてください」というと、すごく教えてくれるんですよね。
寺田:それこそ人は、しゃべりたいので教えてくれる人は多いですよね。
大村:そうです。すごく教えてくれる。こんなことも僕に話してくれていいのかなということまで教えてくれるので。
寺田:もうこれは、「全部、聴く」がいいのかなと思っています。
安易にわかってはいけない
寺田:最後は、「『わかる~』は危険」。
(会場笑)
寺田:これね。
大村:わかる(笑)。
(会場笑)
大村:すみません(笑)。
寺田:(笑)。でも「わかる」って言っていいんですよ。そのことを禁止したいわけではなくて、理解が追いついていないのに、「わかる」と言ってしまうと、相手を悲しませることが多いんですよ。
大村:なるほど。
寺田:大村さんだとたぶんここまでの私の話を聞いて、「そうだよね」という気持ちがあるから。
大村:そう、腑に落ちるんですよ。腑に落ちた時は「ああ、わかります。わかります」と言ってしまうんですよ。それはいいんですよ。
寺田:それはぜんぜんいいと思います。だけどまだ深い話が聴けていないのに、例えば「実は仕事がつらくてさ」みたいな。何がつらいかもどんな仕事をしているかもわからないのに「わかります」と言われても、「いや、お前わかってないじゃん。俺の何を知ってんの?」となってしまうと、信頼関係が溜まっていかないという感覚があります。なので、安易にわからない。
大村:表層上の言葉を取って、「わかる」とか共感するのは危ないということですよね。
寺田:そう。必ずそれを言っている裏には人生があるので。
大村:そうですね。
寺田:人生に触れてからでないと、「わかる」という言葉は危険かなと思っています。人を怒らせてしまう可能性が高い言葉だなと思うので。大村さんは、今日は窮屈ですよね(笑)。
大村:いやいや、ちゃんと振り返る、いいタイミングかなと思っています。
寺田:申し訳ない。
「やりたい」ではなく、「できる」を一生懸命やる人生もすばらしい
大村:あっという間に時間が来てしまいました。最後に僕から質問していいですか? 僕は、Mission Labを主催しているんですけど、ミッションって「使命」だったり、最近だと「パーパス」「存在価値」と言ったり。夢とかビジョンでもいいと思うんですけれど。寺田さんにとっての夢とか使命とかビジョンは何ですか?
寺田:私は今、明確な夢は持っていないんです。昔は「女優になりたい」と思っていたんですけど、フリーランスになって、自分でどうにかしてできることがないかなと探した結果、自分がやりたいことではなくて、できることをがんばるようになったんですね。
「できる」の先にこのMCがあって、今はこうやって話し方でお話しさせてもらえるようになったんですけど、「できる」をやるようになってから、「夢」がなくなったんです。
大村:おぉ!
寺田:やりたいことじゃなくて「できる」をがんばっているから、「やりたい」の持ち方がわからなくなってしまって。
大村:ほう。
寺田:だから、明確な夢があるかと言われたら、「ないよ」が正直なところです。でも、夢がなくて諦めている人とか、「夢がないなんて恥ずかしい」と思われている方もいる気がしていて。でもそんなことない。
「できる」を一生懸命やったり、「できる」から自分のスキルが発揮できることがある人生も、すばらしいと私は思っています。そうであってほしいと願って私自身がんばっているので。
ミッションとして何かできることがあるかなと思うと、人見知りでうまく会話ができないかとか、コミュニケーションが取れないかとか、人生を好転させられないかと思って考えてきたことが、どこかの人見知りさんのためになれるかもしれないなとは思うので。
大村:誰かの気づきになる。
寺田:気づきになればうれしいなと思うので、人見知りさんために、コミュニケーションが苦手な人のために何ができることがあればいいな。そのためなら今日みたいにお話してみたりとかもしたいなと思います。未だに自分のことをしゃべるのは苦手ですけど、そのためならしゃべっていきたいと思います。
1〜2割の「ゴールピープル」と、8〜9割の「リバーピープル」
大村:ありがとうございます。僕も、誰しも夢を持たないといけないとか、そういうことを言っているわけではないんですよ。まさにそういうゴールとか夢に向かっていくいう人たちを、「ゴールピープル」と言うんですって。でもそれって全体の1割とか2割。
じゃあ夢がなくてダメなのかというとそうではなくて。それ以外の人は「リバーピープル」と言って、とにかく目の前にあることを一生懸命やっていく生き方が、8割9割と言われているそうです。
それを行き来するやり方が、けっこういいかもしれないみたいに最近言われているらしい。ということで、実は来月、「熱意が生まれるメカニズム~『エンテージメント』の高め方」というテーマの対談もあって。ちょうどここにうまくつなげてくださったのかなと、僕はびっくりしております。
12月14日木曜日の対談が年内最後となります。ぜひまたご参加いただければと思います。ということで、本当にありがとうございました。寺田さん、ぜひウェブカメラにも目を向けていただいて。
寺田:オンラインでご参加のみなさん、本当にありがとうございました。うまく伝えられたかわからないんですけれども、何か1つでも参考になればうれしいなと思っております。ありがとうございました。
大村:それではみなさん、最後にもう一度、寺田有希さんに盛大な拍手をお願いいたします。ありがとうございました。
寺田:ありがとうございました。