2024.11.29
“マニュアル作成が進まない問題”をAIで解決 管理者の負担も軽減できる、先進AIツール活用法
提供:株式会社ベネッセコーポレーション
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川本裕二氏:みなさん、よろしくお願いします。まず私からは、変化について2つの視点でお話しできればと思っています。
1つめは、そもそも変化をどう捉えて、どんなスタンスでいるといいのか。そしてもう1つは、AIに限らずこの先いろいろな変化があるとしても、変わらない本質はなんだろうということですね。大きくこの2つをお話ししていきたいと思います。
まず前半の「このAIによる変化にどう向き合っていくといいか」というお話になります。特にマスコミでは「AIによる恐怖」なんてことが語られがちかもしれませんが。AIの脅威で思い出すエピソードとして、ちょっと昔の話になりますけど、30代以上の方はこんなニュースを思い出されるんじゃないでしょうか。
1997年、ついにチェスのチャンピオンがIBMのAI、ディープ・ブルーに負けたという話です。AIってもっと前だともうSFみたいな話だったかもしれませんし、このへんからいよいよ「AIが人間を脅かすぞ」というリアリティが出てきたかもしれません。
このエピソードは有名なんですけど、この後日談が意外と知られていないんですよね。どんな後日談かと言うと、このチャンピオンのガルリ・カスパロフさんは勝負で負けたんですけど、さすがチャンピオンなんですね。
「自分がそのAIを使って戦ったら、こいつに勝てるんじゃないか」と、やりながら思ったらしいんですよ。そこからAIと人間、人馬一体のケンタウロスのスタイルでAIとチェスをやるゲームが生まれたそうなんです。
ちょっと前のデータになるんですけど、2014年にこのケンタウロスのチームとAIだけのチームでチェスをやったら、なんとかケンタウロスチームが勝ち越したんですよね。
なのでAIの脅威というよりは、AIをうまく使えばAIよりも強くなるという、当たり前のことかもしれません。さっきの石原(直子)さんの話でもあったんですけど、人間だからこそできるところでAIを使っていけば、なんとかなるってことだったりもします。
こういったエピソードからも垣間見えるように、環境変化が起きた時の鉄則が何かと言ったら、当たり前なことかもしれませんが、変化を受け入れてうまく活かすことを考えるしかないということです。
思えば我々人間はそんなふうにして進化していきました。いつまでも木にぶら下がっていられなくて、ちょっと危険な草原に出て、そして2足歩行が始まりました。空いた手で道具を使って進化する。今や片手にスマホを持つようにもなっています。
そもそも、火ですよね。自然界で言うとたぶん圧倒的に火を恐れる生物が多いと思うんですけど、人間はこれをうまく使って繁栄してきた。おそらく最初は、火に遭遇したばかりの人って本当に怖かったと思うんですけども。
たぶん物好きな人とかうっかりした人が火を使って遊び始めて、文字どおり大やけどをしたりして。でも「あ、肉がおいしくなるぞ」とか気づいて、結果論かもしれませんが、うまく使っていった。
産業革命もそうですよね。機械を打ち壊したって何の慰めにも時間稼ぎにもならないですし。本当に私もそうですけど、今やスマホなくしては生きていられない。Googleのスケジューラーとかマップがなければ生きていけない。うまく使っていくしかないし、その恩恵を受けていることのほうが圧倒的に多いと思います。
これまで人類はそうやって生きてきましたが、いざ自分たちがAIや大きな変化に直面した時に、本当にこれからもそんなふうに変化に対応していけるのか。ちょっと不安になるのはしょうがないとは思うんですけども。
例えばこのおよそ100年前の絵。自転車が発明されてちょっとずつヨーロッパで普及していった時に、実は最初は大人向けの自転車の教習所があったんですよね。私も幼稚園の時に父親に練習させてもらいましたけど。今や教習所に行って自転車を習うとか免許を取るなんて人はいないわけですよね。
最初は誰も使い方がわからなかったり、周りで誰もやってないからしっかり習って勉強していくしかないですが、もう100年経ってそんなことをわざわざ誰もやらないですし、(自転車は)幼稚園ぐらいから乗れるようになる。こんなふうに、我々はつい最近も変化をしてきているわけですよね。
そしてこれは私の娘のレナちゃんなんですけども。今1歳3ヶ月で、この写真は生まれて半年ぐらい経った時のもので、スマホにかぶりついてたんですけど、1歳3ヶ月になった今は私のスマホを勝手に持って行って。ロックしてあるんですけどカメラは起動できるので、そのカメラを起動させて遊んでたりしますし。
ついこの間はシャッターボタンの存在に気づいて、写真をパチパチ撮るようにもなったりとか。おそらく彼女は、スマホを使ったりその中に載っているAIを使うことも勝手に遊びながら覚えていきますよね。
一番大変なのは、自転車の教習所と同じ(ように大人になってから新しい道具に出会った時)です。当時なぜ教習所が必要だったかと言うと、大人になって急に自転車が出現したからなんですよね。ただこれはスマホと一緒で、だんだん世代が下るにつれ、生まれた時からある当たり前のことなので特段脅威にも思わないし、便利な道具として使っていきます。
AI普及の端境期にいる我々は、ちょっと一生懸命勉強しなきゃいけないのはもちろんあるんですけど。今日ご紹介されているようなエクサウィザーズさんとかUdemyとか、本当に今、いろいろ勉強できるものが多いので、そんなところでやっていけばなんとかなるんじゃないかなと思っています。
ということで、変化にどう向き合うかというお話と、いろいろ変化がある中で変わらない本質は何か、人間ならではの問われることは何かを、ここからお話ししていきたいと思います。
先ほどの石原さんのお話とも被りますけど、生成AIが今、現状や将来の見込みで、何に使えるか使えないか。私の古巣の野村総研のリサーチによると、やっぱり論点整理とか仮説構築はわりと現状でも使えますし、少なくとも参考にはなります。
私も昨日スマホのアプリを使ってこんなことを聞いてみました。「生成AIについて、ビジネスリーダーのみなさんに講演することとなりました。生成AIが与える組織マネジメントやリーダーのあり方への影響について、どんな話をするといいでしょうか」と今日この場(で話すこと)について、スマホアプリのChatGPTを使って聞いてみたら、3秒ぐらいでこんな答えが返ってきました。
ちゃんと見ていただく必要はないんですが、わりと妥当なことを書いてますよね。アシスタントのコンサルタントがそれっぽいことを言ってくれるのと、そんなに遜色はないかなと。これぐらいの論点整理だったり仮説構築の助けぐらいには今もなってますし。将来、その精度がより上がっていくと、頼れるツールにはなってくるかなと思いますよね。
とはいえ、将来に向けてもAIが不得意とするところだって(ありますし)、そもそもAIにやらせるのは原理的に無理があるんじゃないのかとか。仮説検証、あと実行の責任なんていう話もさっきありましたし。
現状をどう見て、どうあるとよりいいかという目的設定なんて、どこまでいっても人間がやるしかないということです。私はリーダーシップ開発などを専門にやっておりますが、よくこの視座の違いをお話しされますよね。(この図は)より視座が高い人、低い人って何が違うのかを整理したものです。
例えば「何をやったらいいか」「どこでやったらいいか」「そのために必要な能力は何か」みたいないわゆるHow?より下は、AIが得意なところだったりもしますよね。
そして、通常の係長ぐらいまでのミクロリーダーシップのところで言うと、現場の実践能力に一番にフォーカスできていればいいんですが。そこから先になると、「何のためにこの仕事が必要なのか」をやっぱり語れないとリーダーとしてはなかなかしんどくなってきますね。
いわゆる管理職以上になってきて、経営者になった時には「売上を立てるためにがんばりましょう」だけでは、今時誰もわくわくして働いてくれないので。
(大事なのは)こういったWhy?とかWho?ですよね。自分たちは何者か。自分や自社の使命は何か。この仕事は何のためにあるのか。どうあるとよりいいのかを語れる。ここが人間ならではのものとして残り続けます。
そことHow?以下のところ。AIはこのケンタウロススタイルで、より可能性は広がってくると言えると思います。ここまでの話は、実はすでに感じていらしゃる方もいると思いますが、めちゃくちゃ新しい話ではないですよね。
例えばピーター・ドラッカーが、存在意義が組織に大事ですよという話をしていたり、スティーブ・ジョブズの言葉を借りると、それを提供するのがリーダーシップの役割ですよと。もともとわりと言われていたことが、いよいよ人間ならではの仕事として問われてくる。これからはやっぱり、AIはある程度安価でオープンに使いやすい道具になっていきますので。
差がつくものがあるとしたら、Who?とかWhy?の視座の質の問題が出てくるのかなと思います。そんなところを担っていくマネジメント、リーダーのあり方。これまでのリーダーシップとこれからのリーダーシップで問われることは大きく変わってくるということです。
答えがあるものに対して、その状況に対応していくこれまでのリーダーシップ。もちろんこれも基礎力としては依然必要だったりします。ただあんまりそこの精度を上げていってもAIには勝てなかったりしますので。じゃあ(AIにできない)状況をいかにこれから作り出すか。まさにWhy?を問うとか、最善であるのはどういうことかが、より必要になってくると思います。
具体例で見てみますと、このWho?とかWhy?の力が感じ取れるかと思います。例えば2人取り上げてみたいと思いますが、これはケネディの有名なアポロ計画の話ですよね。
10年以内にアメリカは人間を月に送り無事帰還させると。なぜそれをやるか、なぜ10年以内なのかと言うと、「それが易しいからではなく難しいからだ。この目標が我々から最高の活力と技術を引き出すからだ」と。
これは1961年の演説で、実際のところ、これを聞いたNASAの担当者は青ざめたらしいんですね。特に事前の相談もなかったし、当時のNASAの技術ロードマップで言うと、かなり実現可能性は低かったりもするわけです。
当時AIがあったとして、これを聞いてみたら「実現可能性が低いのでおすすめしません」って出てくるだけでしょう。「目標が易しいからではなく難しいから、それによって最高の活力と技術が引き出される」というのがポイントなのですが、こんなゴール設定ができるかどうか。これは純粋な合理性だけではできない、人間だからこそ描けるものだと思います。
そしてもう1つ。キング牧師の有名な「I Have a Dream」(私には夢がある)という演説。これは人種差別撤廃のお話ですけども、これを訴えかけた当時は「そんなの無理じゃない? この人が言っている夢って、本当に文字どおり夢物語なんじゃない?」って言われていました。
数十年経った現在、当然まだまだ問題はあるとは思いますが、少なくともこういうものが大事だよね、という世界的な認識はどんどん広がっていて、あんまり逆行することはないかと思います。
それまで概念になかったものとか、当時で言うと空想扱い、もしくは馬鹿扱いされるようなことを描くことが、これからのマネジメントやリーダー、そしてもっと言うと人間ならではの担えるところ。AIでは今後もこういうものは出てこないかなと思います。
ですので、「マネジメントとかリーダーに問われる変わらない本質とは何か」を整理してみますと、他者を触発して共感と協力を引き出す魅力的なビジョン設定とか、ゴール設定がいかにできるか。こんなところがポイントになってくると言えるんじゃないでしょうか。
じゃあ、こういう人たちが天然物としているかと言うと、企業や社会がある程度育てていく必要があるわけなんですけど。それをどうしたらいいか、最後にちょっと簡単にお話ししたいと思います。
Willを起点とするリーダー育成です。よく人材育成で言われます「Will・Can・Mustの重なりが大事ですよ」というところに、特にこのWillが大事になってくるということです。
有名な3人のレンガ職人の話ですよね。「何のために仕事をしているんですか」「あなたは何者ですか」「何者として仕事をしているんですか」って聞かれた時に、職人A・B・Cでだいぶ答えが違ってくるわけですよね。
職人AはHowをまさに答えている。「レンガを積んでるんですよ。なんで、そんな当たり前のこと聞くんですか」ぐらいの感じだったりします。一方で職人Cに聞いてみると、「こういうもののために」って、自分のWhyやWhoを語れるんです。
おそらくこれらの職人たちが親方だったとして、どのギルドが一番強力か、人材がどんどん育っていくかって言ったら、おそらく職人C(がいるギルド)だったりするんじゃないでしょうかね。
ですのでやっぱり先ほどの2人の演説の話にもあった通り、Willの質が仕事の視座。これは自分の視座だけでなく、他者の視座も引き上げたりもします。他者への影響度も左右するということです。
こういったリーダーをどうやって育てていったらいいか、どうしたら自分自身がそうなれるか。基本的な考え方として2つのアプローチがあります。まず、ある意味西洋医学的なアプローチで言うと、その人にない必要なものを、いかに外部から植え付けるか。これを簡単に言ってしまうと、あるべき姿をティーチングしていくということですね。
最近は多少変化はあるかもしれませんが、学校での勉強というオーソドックスなものは、こういったものが今でも中心になっているかもしれません。
一方で、このWillを起点としていくリーダーは、対比的に言いますと、東洋医学的なアプローチです。その人の表面に現れていたり、まだ現れてないポテンシャルとして秘められているWillをいかに引き出していくか。いかに育んでいくかが、ポイントになってくるかと思います。いわゆるありたい姿をコーチングしていくということです。
ということで、私もビジネスリーダーの方たちにこのコーチングスタイルでいろんなことをやっております。例えばこれは後でUdemyの方からご紹介があるかと思いますが、コーチング講座とかですね。こういった「Willを起点とするリーダー養成講座」。半年~1年ぐらいかけてやっていくトレーニングもご用意しております。
ご関心がある方は見ていただければと思います。締めくくりとしては、この言葉が一番ふさわしいかなと思いました。
「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」ということです。この変化をぜひ一緒に楽しんでいければと思います。ということで、私からは以上となります。
司会者:川本さま、ありがとうございました。冒頭のケンタウロススタイルというところでは、AIとのある意味共創のような形を取ることで、一般的なリーダーシップはAIを活用することで強化されるというお話から、最終的には人間独自の強さとして、メタのリーダーシップまで。「AIには出せない、ある種突拍子のないWillをどうやって語るか」が非常に重要であるといったお話は大変興味深く伺わせていただきました。
AI時代のリーダー・マネージャーを育てていくためのポイントについて、非常に身近な例から過去と未来の話を踏まえてお伝えいただいたかと思っております。ありがとうございます。
株式会社ベネッセコーポレーション
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