2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:株式会社ベネッセコーポレーション
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石原直子氏:ご紹介ありがとうございます。それでは「生成AI時代のリーダーシップ」ということでお話をしていきたいと思います。
本当に「AI新時代」と言っていい時代が2023年に幕開けしたと思っております。画像、テキスト、コードなどさまざまなものを作ってくれるAI。しかもそれを自然言語で動かせるAIが登場したのが2022年の後半だったわけですが、2023年には瞬く間にビジネスの世界にどんどん入ってくるようになりました。
これはエクサウィザーズで、4月に1回目の調査、8月に2回目の調査をした結果になります。経団連のセミナーに参加している方々、全部で518人368社の人に「どれぐらい生成AIを活用していますか?」と聞いたんですね。
黄色が今回の調査なんですが、「関心がない」という人はもはや0.2パーセント。だから99パーセントの人が関心を持っているわけですね。「試しに利用した」というのが前回のボリュームゾーンだったんですが、今回は「試しに利用しただけじゃなくて、時々使っています」「自分のパソコンに生成AIへのショートカットが入っています」というふうに話が1段階上がっています。
しかも最上位に置いてある「日常的に使用する」という人たちも20.3パーセントで、5分の1の人は「日常的に生成AIを使っている」と回答されたわけですね。
役職別では、社員のうちレベル5(日常的に使用する)で使う人が27.3パーセント。経営陣も部課長も社員も、50パーセント以上の人が使っていると言っているんですね。4月からたった4ヶ月の間に、使う人あるいは日常的に使う人が相当増えてきています。
「利用用途は何ですか?」という質問に対しては、「文書作成」が一番多くて、「アイデア出し」「調査」「要約」「壁打ち相手」「翻訳」と続いていくわけですが。(使用頻度の)レベルが高い人ほど活用用途の幅が広がってきます。
レベル3の試しに使用している人たちは「文書作成」が最も多くなるんですけれども、レベル5になると「文書作成」だけでなく「アイデア出し」とか「要約」が増えてくるということですね。たくさん使う人ほど高度な使い方をしていくと言っていいと思います。
この調査から見えてきたことをまとめると、「時々使用する」「日常的に使用する」という人たちが増えていて、さらにレベル4と5が半数を超えているわけですから、業務での活用は急速に広がっていますよと。
そもそも4月ぐらいには、「企業内に生成AIを導入するのか、しないのか? その時にはセキュリティをどうしたらいいのか?」という悩みが多かったわけですけれども。現在は「使わない」ということはなくて「どう活用すると何の役に立つのか」を考える段階に入っています。
今日はちょっと話していませんけれども、活用促進のためにはまず汎用的な用途で使用していくのが効果的です。「この部署の人だけ使っていいよ」「デジタル推進部門の人だけ使っていいよ」ではなくて、一気に全社導入にするほうが、使う人が増えてより良い活用ができるようになるという調査結果でございました。
では生成AIが会社の中でどんどん使われるようになってくると、何が起こるでしょうか? 「たくさんの仕事のありようが今と変わってきます」というのが答えなんですが、特に事務系ホワイトカラーの仕事は、きっと数年以内にものすごく大きな影響を受けると思います。
ホワイトカラーのワークプロセスをここに書いてみたんですけれども、言ってみれば調査をして何かを調べた後に、「どういうことが書いてあるんだろう」と分析して、それを組み合わせて企画にします。
どれがいいのか検討して「これにしよう」と意思決定・選択をして、その後それを実行し、やり切る。最後に「結果に責任を持ちます」と。こんなふうに仕事が進んでいくと思うんですが、よくよく考えると、ほとんどの項目は、たぶんシンプルに考えたらAIのほうが得意なんですね。
組み合わせなんかも人間がやるよりよっぽど早くたくさん作ってくれますし、「企画を作って」と言ったら作ってくれます。実行するところもAIが組み込まれたロボットか何かがあれば一晩中実行してくれるので、結局人間が実行するよりも長く、速く、あるいは根気良くやってくれます。
「出てきた結果に責任を持つ」。ここはAIにはできませんから、ここと意思決定ぐらいしか、人間が得意なところがないとわかってくるんですね。
これまで私たちが「仕事」だと思ってきた先ほどのプロセスのほとんどが、「作業」だったと言っていいと思うんです。「作業はAIにやってもらったらいいじゃないですか」という話になったら、シンプルに考えて「圧倒的にホワイトカラーは今ほどいらなくなるよね」という時代がやってくるわけですね。
ホワイトカラーの仕事って、何が難しいのか、どこが肝なのかわからないから、大勢の人がいろんなことを試行錯誤しています。なので人数を減らすのは意外に難しかったんですけれども、ホワイトカラーが要らなくなる時代がついにやってくると私は思っております。
ここですごく大事なのが、一番下に書いてあることなんですけど、「人と同じことを同じようにできる能力」。今まで、ビジネスパーソンが持っていなかったら話にならないと言われていたこの能力の価値が著しく低下すると言っていいと思います。
組織もこんなふうに変わります。一昔前はグループリーダーとか課長がいて、そこに同じことができる、同じタイプの人たちが何人もグループになっていると。逆に言うと、リーダーはこの人たちに「同じようなことを同じクオリティ・同じレベル感でやってもらいたい」と思ってきたわけですね。同質の能力を持った人が何人も必要でした。
一方でこれからは、先ほど言ったみたいに人ができることは機械がやってくれるわけですから、何人もいらないんですね。「1人いれば、その人のやったルーティンの部分は全部機械がやってくれます」ということで、トップの能力の人が1人ずついれば、あとは機械でいいじゃないですかと。
これはちょっと極論に聞こえるかもしれませんけれども、2023年にみなさんの想像の中に少しずつ、こんな世界がやってくる可能性が忍び込んできたわけですね。ですからマネージャーのあり方、あるいは働く一人ひとりのあり方もきっと変わってきます。
例えばこれは「階層ごとに役割が変わるでしょう」ということを示しているわけですけれども。会社の存在意義を語ることはAIにはなかなかできないので、経営陣はまず、何のために我々は存在するのかといった、パーパスを語るところは残るでしょうねと。デジタルの可能性をよく学んで、「うちの会社をデジタルを使ってこう変えたい」という変革の方向性を決めるのは経営陣の仕事ですね。
あとは、それをやってくれる自分の下にいる人々が満足して、言ってみれば楽しくハッピーな気持ちで働けるように仕組みと仕掛けを作る。これは昨今、「人的資本経営」と言われていることだと思うんですが、それを進めるのが経営陣の仕事になってきます。
部長とか課長という組織の中の階層を束ねている中間管理職の人たちがいるわけですけれども、この人たちの役割は一緒になってきます。そもそも「生成AIを自分で使いこなして、自分でやれることは自分で」と言われるようになってくるんですけれども。
メンバーもいますから、会社のパーパスとメンバー個人のやりたいことや自分が目指していることをつなぐ結節点にならなくてはいけません。
なので、上が言っていることと下が思っていることが違っていないように、あるいはそこがなるべく重なり合うように、人々の気持ちを動かしていく語り手でなくてはいけないんですね。それからメンバー、そして機械が生み出す情報やオプションをもとに、この人たちはAIにはできない意思決定をするんですね。
好奇心を持って自分の好きなことに邁進してもらうという話になってくるので、好奇心がある人を採用しなくちゃいけません。またその好奇心が成果につながるように、少しずつサポートあるいはアシスタンス、あるいはコーチングをしてあげる必要があります。
先ほど言ったみたいな同質組織じゃなくて、完全に組織は多様になるんですね。多様なメンバーが満足して働けるように「E」と「I」を組織に埋め込む。
「E」と「I」って何かと言うと、「D&I(ダイバーシティー&インクルージョン)」と言われていたものが、一歩進んで「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」と言われるようになっています。「DE&I」あるいは「DI&E」と言っている会社もあるかもしれませんが。
「E(エクイティ)」は公正・公平ということで、それぞれの人に必要なサポートですね。「全員に同じものをあげてくれ」という話じゃなくて、「それぞれ事情が違うんだから、必要なサポートをあげて、何の憂いもなく成果を出すことに邁進できるように土壌を整えましょう」というのが「E」ですね。
それから「I」はインクルージョンですね。「私とAさんとBさんとCさんはみんな違うんだけれども、仕事で成果を出すために集まっているんだから、違っていても仲間だよね」と思えるのが「I(インクルージョン)」なんですけれども。
この「E」と「I」のカルチャーを組織に埋め込まなくちゃいけない。これはミドルマネージャーの役割になっていきます。メンバーはさまざまに試行錯誤してくれますから、その結果に責任を持つと。信じて任せるタイプのマネージャーになっていかなくちゃいけません。
そして今部長、課長、メンバーという階層があるんですけども、「階層は1個ぐらい減るんじゃないの?」と。組織はフラットになっていくだろうなと思っています。
メンバーは先ほど言ったみたいに、同じことを同質的にできるかどうか。グループの中で少しだけできるとか、あるいは少しだけ足りてないとか、横を見ながら何かをする時代は終わっています。「自身の知見と感性と好奇心をベースに、自分でやるべきこと・やりたいことを見つけて、スピード感を持ってトライする」という働き方が必要になります。
そしてAIにできないところですね。AIは「顧客、世の中の雰囲気がなんとなく変わったな」というのはデータになっていないとつかめないんですけれども。私たちはアナログな世界を観察するだけでも「ああ、なんか空気感が変わったな」って思うことができるんですね。
具体的には、生身のお客さまの変化を見つけて仮説を立てなくちゃいけません。「こんなふうに役割が変わってくるんですよ」というお話をしてきました。次は、今日のテーマであるリーダーシップについて、「じゃあ働く人々はどうやってリーダーシップを持つんですか?」という話なんですが。
まず「リーダーシップ」の定義をしておきたいんですが、リーダーシップはリーダーだけが持つ必要のあるスキルではない。つまり、経営陣と部長と課長にはリーダーシップが求められるけど、メンバーにはリーダーシップが求められないわけではない、と言っておきます。
「自分のゴールや目的、自分の果たしたい夢のために、他者の力を借りる力」。これが世界的にはリーダーシップの定義なんですよ。「自分のゴールや目的のために他者の力を借りる」というのはこのへんを見てもわかるように、リーダーシップは別にメンバーであっても必要なんですね。
「自ら何かを成し遂げたい」と思っている人は、必ず他者の力を借りることになる。あるいは他者の力を借りなければ、大したことはできないのが今の複雑な世の中ですから、その時に他の人から「喜んで手伝うよ」と言ってもらいたい。リーダーシップはすべての人に必要なんですね。
その時に「えー、すごく嫌なんだけど」と言いながら手伝ってもらうのって、やはり嫌じゃないですか。あるいは「あんまり手伝いたくないんだけど」と嫌々やられると、いい結果にならなさそうじゃないですか。
ということで、「willingly help you」と言ってもらうことが大事なんですね。つまり「喜んで手伝うよ」ですね。これができれば、リーダーシップがあると言っていいんだと。人々が「喜んで手伝いますよ」と言えるかどうかなんですね。
リーダーシップの本質はたぶん変わらないんですけれども、リーダーシップを持たない人の活躍する場は減少していきます。先ほど言った通り、人と同じことを同じレベルでできる能力の価値は劇的に低下していきますから、オリジナルな「自分のやりたいこと」を見つけてやり切れる人の価値が上がります。自分のやりたいことをやるためには人の力を借りる。同時に機械の力も借りましょうということですね。
まず他の人に「willingly help you」と言う人が、圧倒的に人々からも「willingly help you」と言ってもらいやすいんですね。ですから自分の強み(を生かして)、他者の役に立つというマインドセットがものすごく重要になってくると思っています。
そしてまた「意思決定する力」がより重要になってきます。選択肢はAIがいくらでも作ってくれるので、その中からベストを選ばなくちゃいけないんですが、ベストを選ぶ時には理屈だけではないはずなんですね。
この時に必要なのは、クリエイティビティじゃなくてイマジネーションのほうの「想像力」。これを駆使して「人を幸せにできる解はどれなのか」というのを考えて選び取る意思決定の力が大事になります。
それから、「多様な人で構成されるよ」という話をしましたよね。多様な人からの信頼を勝ち取るのに必要なのは「integrity(インテグリティ)」、誠実さです。「統合されており、裏表や不誠実さがないこと」。これがない人とは、誰も「willingly help you」と言いながら働くことはできないんですよね。
しかも多様なので、全員が完全に納得できる筋ってたぶんないんですが、「私は常にこのような判断基準で物を判断しています」「私はこういうところから常に物を考えています」というプリンシプルですね。自分の原則を持ってないとインテグリティは生まれませんから、プリンシプルも大事になってくるという話で、生成AI時代のリーダーシップをいったんまとめております。
ちなみに、手前でもちょっと言いましたけども、生成AIをはじめとするデジタルを使いこなさなきゃいけませんし、経営陣はデジタルの可能性をしっかり知らなくちゃいけないということで、デジタルスキルを高めることも非常に重要です。ちょっとだけ弊社のサービスを先にここでお知らせしておきたいんですが。
1つはプロンプトエンジニアリング研修。つまり、ChatGPTとか生成AIをどういうふうに使うと、自分の欲している結果が出やすいのかがわかる研修を、弊社は提供しております。このへんの詳しいことは、興味のある方はアンケートにお答えいただいて、これを読んでいただけたらいいなと思うんですが。
これはどんな学びかと言いますと、「知らない」「知っている」「できる」「習慣化」「教えられる」というところの、使ってみてできるようになるところまで。つまり生成AIを使って「こんなことができるのか」とわかるところまでを勉強してもらうのが、この「プロンプトエンジニアリング基礎研修」ですね。非常に人気のある研修なので、ご関心がある方はぜひアンケートにご回答いただければと思っています。
もう1つはアセスメントとラーニングのサービスがあります。これはUdemyさんとも連携しているんですけれども。どんなスキルを持っていて、「この後どのスキルを伸ばせば、どんな仕事ができるようになるのか」を考えるためにはまず、アセスメントが大事ですよねと。これは私は今、政府の委員会とかでもすごく言っているんですが、このアセスメントをまずご提供しております。
私たちのアセスメントは45分間Web上で受けてもらうもので、けっこう大変なんですけれども。先ほどご説明があった、経産省の定めた「デジタルスキル標準」に完全準拠しているので、アセスメントを一回受けていただくと、デジタルスキル標準に書かれているさまざまなリテラシースキルがどれぐらいあるのかがわかると。個人向けにも組織向けにもレポートが出ます。
それからその後に、何かを学んでいくところでは、「DXリテラシーコース」があったり、「パーソナライズドプログラム」をUdemyさんと連携して提供しております。こちらもご関心がある方は、あとで資料で詳細を見ていただければと思っております。では、私のほうからはいったんここで終了にします。ありがとうございます。
司会者:石原さま、ありがとうございました。ミドル層以上のマネジメントの役割も変わっていくという部分のお話もありつつ、「リーダーシップって、マネジメント層だけが持っていればいいわけじゃないよね」と。
一緒に仕事を進めていく上では「willingly help you」と、「喜んで助けるよ」と言えるようなスキルも必要だというお話があり、そのための誠実さや意思決定能力といった、「リーダーシップを持たない人」の活躍の場は減るだろうというところは大変興味深く伺わせていただきました。生成AIとの関わり方も非常に詳しくご説明いただきまして、ありがとうございました。
株式会社ベネッセコーポレーション
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