先例のない規模で行われた、医療研究支援

ヤンデル先生(以下、ヤンデル):じゃあ次にいきましょう。今日のメニューで、さっきけいゆう先生も言ってくれてたんですけど。こうやって3人が……あるいは3人だけじゃないですね。何人でしたっけ。クラウドファンディングじゃなくて、今回「いいねの募金」で1,500人以上の方が参加してくれたんですよね? 

小国士朗氏(以下、小国):1,700人ぐらいですかね。

藤松翔太郎氏(以下、藤松):そうです。

ヤンデル:すごいですよね。そんなに人数が集まっているっていうのが……金額もすごいですけど、人数がすごいなと思うんですけど。こんな規模で研究支援したり医療を応援するって、あんまりふだんは見ないワケですよね。

でも一方で「じゃあみんなが何もしていなかったか?」というと、そんなことはないと思うし。けいゆう先生もさっき言ってくれたように細かい、すごく狭い範囲ではみんながんばっているとは思いますが……。ほむほむ先生、そろそろしゃべんない? 

藤松:(笑)。

ほむほむ先生(以下、ほむほむ):気配消してたんですけどね(笑)。

ヤンデル:マイクがミュートになってたのは気づいてた(笑)。座談会でマイクミュートにするとよくわかんないから! もう、しなくていいから! どうですか。

「小児急性リンパ性白血病」の生存率は、およそ10倍に向上

ほむほむ:中島さんのおっしゃっていた「明るく、軽く、柔らかく」というお話を聞いていて、僕は1人の患者さんを思い出したんですよね。

ヤンデル:マジで?

ほむほむ:もう毎年年賀状をいただいているお子さんなんですけど。すごく明るいご家庭で。今年も楽しい年賀状をいただきました。もう15年ぐらいですかね。

ヤンデル:あぁ、そうか。小児科だから(患者との)お付き合いが長いんですね。

ほむほむ:そういった意味では、小児ってどちらかというと今、中島さんが目指している希望の部分が見えている科でもあるかもしれません。

ヤンデル:そっか。

ほむほむ:例えば小児急性リンパ性白血病って、一番最初は1962年にセントジュード小児研究病院というこども病院から報告があるんですけど、5年間で9パーセントしか生きることができなかったっていう結果が……。

ヤンデル:昔? 

ほむほむ:1962年に出ています。

ヤンデル:なんで覚えてるの?(笑)。すごいね。よく覚えてる。

ほむほむ:それが、ずいぶん今はよくなってきて。その同じ病院からだったと思うんですけど、2000年から2005年のデータが出ていて。92パーセントの方が生存できるようになったという報告になっています。

ヤンデル:あれ、先生。だってさっき、9パーセントって言ってなかったでしたっけ?  ほむほむ:最初が9パーセントです。

ヤンデル:最初が9パーセントで、それが何年……。

ほむほむ:それが今、92パーセントに上がりました。

ヤンデル:1桁違う。

ほむほむ:完全に逆転したんですね。

ヤンデル:おおー。

小児がんは日本では1万人に1人の病気

ほむほむ:ただ小児は、今「がんは2人に1人」って言われていますけど、小児は1万人に1人なんですよ。

ヤンデル:あぁ……。

ほむほむ:小児自体が今、日本ではマイノリティなんです。今は12パーセントしかいらっしゃらないんですよ。子どもを15歳までとすると、そうなります。

ですので、いくら声を上げようとしても、声が多くの人には届かない状況になっています。今、みなさんがおっしゃっている「がんの方々に関しての研究」は、成人に関しての話なはずなんですね。

僕は子どもの味方ですので、どうしても子どもの話をしたがるんですけど。マイノリティである子どもにも目を向けてほしいと思います。

実際に研究がいろいろ行われていて、ずいぶん治療がよくなってきて、多くの方が生存できるような時代になったなと思っています。

僕、もともと最初は新生児をやろうとして、その掛け持ち的に、実は血液(の治療)をけっこうやっていました。それこそ血液を染めて、血球を見て白血病細胞かどうかを見たりもしていましたし、骨髄移植とかもしていましたし。

ただ10年以上昔の話ですので、今の僕は完全に素人だと思っています。「がんの診療をしていた」なんて、とてもじゃないけど言ってはいけないんです。だからあんまり偉いことは言えません。

15歳〜30歳代の若年層におけるがん治療

ほむほむ:ただ、そういった多くの方々の研究なりで、今は多くの子どもたちが生きられるようになっている。ただし、また別の問題が出てきたんですね。

例えば中島さんのような「AYA世代」と言われる、15歳から39歳の方々のがんですね。その先にまだ長い人生が待っておられる方々のがんに関しては、やはりまた考えていかないといけないでしょう。

あとは、2次がんですよね。そして生殖機能とかそういったところに関しても、どれぐらい配慮して子どもたちにやっていかないといけないのか? 僕は素人なのでそこまで詳しくは言えませんけど。そのあたりを考えながら今、子どもたちのがんの治療をしている人たちがいらっしゃるということです。

そして、たった12パーセントしかいない子どもたちの、さらに1万人に1人しか起こらないがんで、今、亡くなっている方は年間400人ぐらいだったかな。どうしても、それでも救えない子たちがいるっていうことです。みなさんにも、大人のがんばかりではなくて、子どものがんにもちょっと目を向けていければなと思っています。

ヤンデル:小国さん、どうぞ。

小国:去年の「deleteC HOPE」では、まさにその小児がんの研究に寄付をさせていただきまして。名古屋大学の奥野(友介)先生なんですけど。本当おっしゃるとおりで。

僕らはあまり、特定のがん種をターゲットにしてないというのも、1つの特徴かなぁなんて思いますけれども。「どのがんでも」というのは、やっぱりやりたいなというので。去年は小児がん。

ほむほむ:ありがとうございます。

中島ナオ氏(以下、中島):一人ひとりを救える希望を探すためのゲノム検査の研究をしていらっしゃる先生に、贈らせていただきました。

ヤンデル:「中島さんが代表理事でいらっしゃるから当たり前」というほど、この世界は簡単じゃなくて。なんていうんですかね。今の「小児がんを去年は扱ったんですよ」という話の先で「どのような研究にお金を贈らせていただきました」まで、ちゃんと把握されているってのは、すごいことだなと正直思うんですけど。

これだけの規模になって、これだけ医療が細かい中で目配りされているんだなというのが今、ちょっと感想として言いたかっただけなんですけどね。ごめんなさいね、偉そうで。

小児がん患者の存在を忘れないで

ヤンデル:けいゆう先生、どう? なんかある? 

けいゆう:そうですね。ほむほむ先生はいつも「ちょっと待て待てぃ! 小児のことを忘れるな!」っていう役回りなんですよ、基本的に。

ヤンデル:「待て待てぃ!」(笑)。

けいゆう:これはなぜかというと、やはり小児の十数パーセントという話がありましたけれども、医者だって、小児を診ている医者って十数パーセントどころじゃないぐらい、たぶん少なくて。

ヤンデル:確かに。

けいゆう:だから、なにか病気の話をする時はだいたい成人のことをイメージしているし、なおかつがんの話をしようと思うと、もうほとんど中高年以上というか、高齢者がやっぱり多いんですよね。

僕も特に消化器が専門で、今、日本で一番多いがんって大腸がんですけど。やっぱり年齢の中央値って60代ですよね。加齢と共に増えていく病気ということで、無意識に中高年以上の話をずっとしているんですよね。

でもそうじゃなくて。それは割合とかいう問題じゃなくて、患者さんにとっては1人の子どもであったり、たった1人の存在なので、「病気に関わる以上は、常に視野を広く持っていないといけない」というのは、ほむほむ先生の話を聞いて思い直すという感じなんですよね。いつも。

ヤンデル:わかる。しかも、先生が今言ってくださったとおりで、コメント欄とかも、ほむほむ先生がしゃべると「そうだった、そうだった」とか「そうそう。忘れちゃいけない」というのが出るから。アクセントなんだよね。

ただ、そうは言いつつも、残り時間がなんと16分で。ちょっと僕、先にみなさんに……みなさんというのは今日お集まりの(視聴者の)みなさんと、ご出演のみなさんにもハッキリ言っておきますけど。普通、こういう企画をやると最後に「これからどうしたいですか?」とかってやるんですけど、僕はそういうの嫌いなんですよ。

なんでかというと、これからも何も「ずっとやり続けてきたものを見てください」で十分なはずなので。最後はたぶん2分ぐらいで「一言、どうですか?」って言いますけど、僕はそんな言葉はいらないんで「がんばります!」でもいいんで。いいですか? あと15分ぐらいだから、テーマの3番に時間を使っていいと思うんですよ。メディアの立場からできること。

今後の展望に関しては「がんばります!」で大丈夫ですから。その代わり、中島さんも小国さんも、ほむほむ先生までマイクをミュートにしている場合じゃないけど。入ってきていいから! 

(一同笑)