2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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井上裕司氏(以下、井上):では、改めましてよろしくお願いいたします。今日のタイトルが「BtoBマーケ×セミナー運営」ということで、講師を務めさせていただくRepro株式会社の井上裕司と申します。1983年生まれの35歳です。
実は30歳まで芸人をやっていたのですが芽が出ず、2年ほど前にexcelもまともに使えない状態でITスタートアップに飛び込みまして、社内2人目のマーケティング担当としてオフライン施策を中心にやってきました。
芸人時代の同期でいうと、エド・はるみですとか、コント王者になったシソンヌ、最近ではチョコレートプラネットがIKKOさんのモノマネで、すごく出てきていますよね。
他にも先輩や後輩には誰もが知っているような芸人がいました。こういった環境で上を目指すべく試行錯誤してきた経験は、現在のマーケターとしてのキャリアでも活きていると思っています。今日はここが本題ではないので、ここらへんのお話にもし興味がありましたら、最後の懇親会で聞いていただければと思います。
ではさっそく、みなさんにいくつか質問をするので、当てはまる方は挙手をお願いいたします。まずこの中で自社のマーケティング業務を担当されている方は、いらっしゃいますでしょうか。
(会場挙手)
やはりたくさんいらっしゃいますね。挙手をありがとうございます。ではイベント運営の経験がある方は、どのくらいいらっしゃいますか?
(会場挙手)
半数以上いらっしゃいますね。挙手をありがとうございます。最後に、芸人時代の僕を知っている方はいらっしゃいますか?
(会場笑)
パタッといなくなりましたね。誰か気を遣って手を挙げてくれるかと期待したんですが(笑)。気を取り直して話していきたいと思います。
井上:本日みなさまにお話ししたいことは、大きく3つあります。まず最初に「イベントマーケティングに取り組んで得られた効果」について。次に「どういうやり方をしてきたか?」。そして最後は「さらに効果を高めるために必要だと感じたこと」です。
今日の講演が、みなさまにとってイベントマーケティングがもっと身近に感じていただけるとうれしいです。
あとは、この場での繋がりをきっかけに、何か新しい取り組みが生まれたらいいなと思っております。
では始めに前提条件の共有をさせていただきますと、僕らの製品はソフトウェアやコンサルティングサービスなどの無形商材です。
具体的にはWebサイトやモバイルアプリを利用するユーザーの分析や、適切なユーザーコミュニケーションを行うためのメッセージ配信を実現するマーケティングツールを中心に、サービスの成長を支援しています。
メインのターゲットは、Webサイトやアプリの運用担当者の方々なのですが、マーケット自体がまだ十分に開拓されていないため、顧客課題の明確化や啓蒙が必要な商材です。
商材やターゲットによってアプローチの最適解は変わってくると思いますが、今日は僕が「再現性が高い」なと感じたものをお話ししますので、話を聞いて「明日から真似できそう」「やってみたい」というものがあれば、ぜひ取り入れていただきたいです。
僕がイベントマーケティングを担当することになった当初、「セミナー運営についてのノウハウがぜんぜん出回っていない」という悩みを抱えていました。例えばWebマーケティングのノウハウに関しては、本や記事がすぐ見つかると思うんですけれども、「セミナーってどうやったらいいんだろう?」と思いました。
あとは、改善しようと思っても、変数が多く個別施策の効果検証が非常に難しいなと感じました。こういった悩みをどうやって解決したと思いますか?
井上:では、質問していきたいと思います。みなさんぜんぜん目を合わせてくれないんですけれども、白いカーディガンを着ている男性の方、よろしいでしょうか。先ほどのような僕が抱えていた悩みは、どうやって解決したと思いますか?
回答者1:わからないです。
井上:わからないですよね。正解は「ひたすら開催してトライアンドエラーを繰り返した」です。では、どのくらい開催したかというと、結果的に年間で50回以上にもなりました。
続けて質問してみたいと思います。スライドの申し込みと動員のところの数字が「?」になっていますが、50回でどのくらいの申し込みや動員があったと思いますか?
では、緑のお洋服を着ていらっしゃる女性の方。どのくらいだと思いますか?
回答者2:私たちもイベントをやっているんですけれども、だいたい1回20名規模でやっているので、それで考えると150名の申し込みで100名の動員ぐらいですか?
井上:なるほど。
回答者2:違った?
井上:1回あたり20名くらいで、50回ということですね?
回答者2:はい。1,200名ですか?
井上:1,200名とか1,500名とか、そのくらいですかね。では正解を発表したいと思います。(スライドを指して)どうぞ。
回答者2:おお、すごい。
井上:ありがとうございます。もっと驚いていただいてもいいですよ。
(会場笑)
井上:50回のイベントに対して、参加申し込みは4,500件以上、参加者は、計2,500名にもなりました。ちなみにこれは、2018年6月までの開催実績なんですけれども、現在(2019年3月)では開催数も110回と倍以上になりました。
確実に言えるのは、これだけいろいろなイベントやセミナーを開催した結果、新規リードの獲得から既存リードの活性化、その後の・商談化数まで非常に大きな成果を得ることができました。
「セミナーを中心としたイベントマーケティングはBtoB営業プロセスにおける新規リード獲得から顧客ニーズの顕在化、クロージングに向けた商談創出まで非常に有効であった」ということが言えると思います。
ここまで「幅広い効果」が得られた理由についてあらためて考えてみたのですが、大きな要因としてはセミナー参加をフックとした「2ステップマーケティングによるタッチポイント創出のしやすさ」と、「リアルの場ならでは接触時間の長さ」が良かったのだと考えています。
「顧客は自分が本当に欲しいものを知らない」というおなじみの言葉がありますが、いきなり「ウチの製品は最高なんです! 商談しませんか?」ではなく、まずは「興味関心を持ってもらえるテーマは何なのか?」を軸に企画したセミナーを行い、そこで課題の認識や整理をしてもらうことが大事です。
また、すでにニーズが顕在化している層に対しては解決に向けたソリューションをホットなうちに提案できるようにセミナー後にはその場で疑問点の解消や個別相談が行える時間をしっかりと確保して、できるだけ個別の課題感をヒアリングすることを意識しました。
そうすることで結果的に、one to oneでのダイレクトマーケティングが可能になり、クロージングに向けた案件を多く創出することができたと考えております。
井上:ちなみに、ここまでリードジェンから案件創出まで幅広い効果を得るために、実はちょっと工夫をしていまして、大きく2種類のイベント形式をリーチしたい層に対して使い分けています。
こちらはみなさんよくご存じだと思うんですけれども、購買行動の流れをファネル化したものです。
スライド上から、まず製品の存在を認知して、興味や関心を持つ。そこから比較や検討を経て、最終的に購入に至るわけですが、まず認知や興味関心層の方々に向けては、ユーザー事例紹介を中心としたイベントを実施しています。
ここでは、認知やリードを多く獲得するということを重視していて、サービス自体への興味や必要性を感じていない状態でも参加しやすいユーザー企業による事例紹介を中心としたイベントにしています。また、ミートアップ形式にすることで情報提供だけでなく、同じ課題や価値観を持つ人たちが集まるコミュニティイベント」という意識でやっています。
そしてもう1つが、比較検討層の方々に向けた少人数のセミナーですね。ここでは、サービス理解の促進や案件創出数を重視しているため、参加希望者を最大40名程度までに抑えています。また、講演後にそのまま個別相談会を実施して参加者の方々から課題感のヒアリングを行っています。
これらを月4~5回のペースで実施していた結果、いつの間にか、いろいろな方から「頻繁にイベントやってますよね」「めちゃくちゃ人が来ていますよね」というような反応が増え、次第に「イベントに強い会社」という認識が広まり、「共催でイベントをやりませんか?」というお声がけをいただいたり、共催イベントの開催によって関係値を築いた上で、お互いの既存顧客への紹介や事業連携へと進むケースが出てきました。
また、営業以外の効果としては、既存顧客の方々のフォローを担当する「カスタマーサクセスチーム」があるのですが、イベントを接点としてお客様との関係をより強化することができました。実際に、「訪問ミーティングよりも、イベントで会うと関係値を築きやすい」という声も聞かれたので、みなさんもぜひ既存顧客の方も一緒に参加できるイベントをやっていただきたいです。
またイベントを継続していく中でことで起きた社内の変化として、他チームのメンバーと協力してイベントを運営することで、チーム間を跨いだコミュニケーションが活性化し、組織の雰囲気が良くなったと感じています。
井上:いちマーケターとして、イベントマーケティングに対して感じる魅力は、プル型とプッシュ型のマーケティングが両立できる点です。
プル型マーケティングが持つ特長は、潜在顧客への自然なアプローチです。イベントには、こちらが用意するコンテンツに興味を持った方が申し込み・参加をされるので、潜在的なニーズをお持ちの方が多いですし、テーマによって自然と課題感の見極めができます。
そして、イベントに参加された方に対しては講演を通してプッシュ型でしっかりとストーリーを立てて訴求することにより、ナーチャリング効果や態度変容が期待できます。
すでにニーズが顕在化している方々とはその場での接触が可能ですし、都合により参加ができなかった方も非常に有望なリードと考えることができます。
最近は世の中に広告が溢れすぎて、広告での接触では企業の伝えたいメッセージを理解してもらうことが難しくなってきていると思いますし、リアルの場ならではの接触時間の長さは非常に魅力的です。
また、顧客と企業が「お互いを知る」「理解する」ということは、マーケティングの基本だと思いますし、イベントを通じて実際に顧客の方々と顔を合わせてコミュニケーションを取ることで、より深いインサイトを得ることができていると感じています。
そして、来ていただいた方々に対してしっかりと価値のあるコンテンツを提供することができれば、ニーズの顕在化や醸成、さらには企業に対するエンゲージメントも高まってくると感じております。
井上:これらを踏まえて「なぜ僕らはうまくいったのか?」を考えてみますと、3つあると思っています。まず1つ目は、とにかく継続してきたこと。2つ目は、目先の結果を追い過ぎなかったこと。そして3つ目が、参加者ファースト。あくまでも参加者の方々のことを考えて、運営してきたことがよかったと思っています。
1つ目の「継続」というところは、コツがありまして「完璧を求め過ぎない」ということですね。やってみることで気づかされたり新たなアイデアは浮かんでくるので「PDCAをしっかりと回して改善していく」のが大事ですね。
他の企業様から「イベントを1回やったら燃え尽きてしまい、なかなか2回目、3回目をやる気にならない」という声をけっこう聞きます。
お祭り騒ぎのような感じで大きなイベントをやるのもよいのですが、それだけだと単発的な効果しか期待できないため、検討期間の長いBtoB商材では接触頻度を増やし、適切なタイミングでアプローチをするためにコンスタントに開催していくのが、重要だと思います。
2つ目は「目先の結果を追い過ぎない」というところでは「中長期的な視点でコミュニティを作る」ということを、意識してやってきました。営利企業としてやる以上、やはり数字を求められます。
もちろんそこは重要ですが、ただ目先の結果だけを追って満足するのではなく、イベントに参加してくれる方々が「居心地のいい場所」「人に紹介したい」と思ってもらえることをゴールとして、イベント運営をやってきました。
例えば、「Growth Hack Talks」というアプリの運営担当者向けのミートアップをやっているのですが、アプリのマーケターは市場にまだ多く存在していないので、普段なかなか知り合う機会のない方々同士が集まれる場はとても貴重です。
みなさん「久しぶり」という感じで談笑しながら、新たなノウハウを共有しています。そういった「アプリ業界の活性化に少し貢献できたのかな」というところで、非常によかったと考えております。
そして、3つ目の「参加者ファースト」では、おもてなしの心、ホスピタリティを忘れないことが大事です。Web上の広告をクリックしてもらうのですら、簡単なことではないじゃないですか。
そんななかで「わざわざ足を運んでまでイベントにきてくれるのはとてもありがたいこと」だと思うことですね。なので自社都合だけのコンテンツではなくて、来てくれた人に対してちゃんと価値を提供することを、心がけるのが大事だと思います。
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