「目でDJをやる」という、未来のテクノロジー

吉藤オリィ氏(以下、吉藤):例えば私は、ALSの患者さんと初めて会った時に、何もわからなくて握手していいかどうかもわからなかったんですよ。「痛いと思ったらどうしよう」とかすごく思っちゃって。

私はそれ以来ちゃんと握手するようになったんだけど、「(ALSの人が)自分から握手を求められる装置を作ったらいいんじゃないか?」と思って、実際にモーターをつけて、腕だけだけど動く服を作ったんです。視線で握手ボタンをピンって押すと、腕がウィーンって上がるみたいな服です。その人はベッドにいるんだけどね。   これって、おもしろいと思います。だから私はちょっと未来の話をしたいんだけど、この前のDJを見て、武藤さんが目ですごくかっこいい感じにやって、周りの人たちを盛り上げるじゃないですか。本当に「目でDJをやる」っていうと、そのテクノロジーがすごいなっていう印象がまずあります。

その「目でDJをやる」っていうのは確かにすごいんだけれども、私の頭の中では「なるほどなるほど、目でDJをやって、音楽とか映像が変わって、あー……」みたいな感じだったんだけど、めちゃくちゃ期待を裏切られたというか、期待じゃないかな、それをさらに上回ったことがあったんです。

周りの人たちもコラボするときにすごく楽しそうで、めちゃくちゃ盛り上がっていて、みんなで「ウォー!」ってやると、観客も「ウォー!」みたいな感じになる。そういう時に思ったのは、武藤さんもぜひそれをやってもらいたかったんですよね。

武藤将胤氏(以下、武藤):やりたいね。

吉藤:もしかしたらあの時に、700人の中には、「武藤くんが手を上げられないのに、俺たち上げていいのかな?」って思っている人たちがいる気がしたんだよ。

武藤:次回は、僕がプレイ中にOriHimeをコントロールして、俺の代わりにガンガン手を上げてもらうとかね。

吉藤:ははは(笑)。実は今作っているものがあって、(スライドを指して)これを作っているんですよ。でかいOriHime。

樋口聡氏(以下、樋口):この間のMOVE FES.で見たもの?

吉藤:そうそう。

不可能を可能にするための「仲間」を募る

樋口:6月19日のあれはいくつか、受付をやっていただいたんですか? 

武藤:僕がバックヤードのどこかに立ってね。

吉藤:そうなんですよ。なかなかね、武藤さんがそういう場所に行っちゃうともうみんなに囲まれちゃって大変じゃないですか。(スライドを指しながら)これ実は目だけで動かしているんですよ。正真正銘、寝たきりのALSの患者さんが、眼球だけでこのロボットを操作して、お客さんに熱々のコーヒーを渡すシーンなんです。

来年の時は一緒に踊れたらと思う。さらにこれを使うと、自分の体に関すること、例えば介護とか着替えとかも自分でできる時代も来るかもしれないなと思ったんです。

というのも、はじめにパッと言うとSF(みたいな話)で終わっちゃうけど、こういった話ができてくると真実味を帯びてくるじゃないですか。そうなってくると、意外とスポンサーがついたりとか、「一緒にやりたいです」っていう仲間が増えてきたりとかっていうことになります。

だから、未来のことを考えること、イメージすることも超大事です。それで、こういった未来にイメージできたことに対して、こんな感じで一緒に活動をやっていくと、「本当にできそうな気がする」っていうことで、どんどん仲間が増えていく。この正のサイクルを、もっとうねりにしていきたいですね。

武藤:僕らの最大の共通点は、「不可能」って言われると逆に燃えるタイプなんです。

吉藤:(笑)。

武藤:じゃあどうやって可能にするか。それって、決して1人でやろうとする必要はないと思う。こういった仲間とタッグを組んでそのメニューを作っていけば、不可能って言われていたことも、どんどん可能にしていけると思う。僕らでそういう未来を作っていきたいですね。

吉藤:例えばどんな不可能が可能になったらいいと思います?

武藤:次は……ALSと闘っている僕の仲間で、目を使ってコミュニケーションをとれていたけれど、目も使えなくなってしまったという方がいるんですね。でもきっと彼の中には、伝えたい思いってたくさんあると思うんです。

今度は目ではなくて、脳で考えたことっていうのをコントローラーとして使える未来が作れたら、彼が脳の中で考えていることっていうのが、意思伝達できる未来を作れると思うんですよ。だから、脳波コントローラーを次に実現させたいですね。だから僕も目でDJをできなくなってしまったら、脳波でDJを続けたいですね。

脳波と筋電が更なる可能性を生み出す

吉藤:ALSの人の中で、だいたい13パーセントぐらいの人がTLS状態っていって、これは別にALSは関係なくてTotally Locked-In Syndromeの略なんですけど、目も動かなくなってしまう。そうすると意識があるかどうかも確認できなくなっちゃうんですね。

そういうときには、やっぱり最後は脳波と筋電。神経のうちでもね、微弱な神経は生きていて、筋肉は落ちちゃって動かなくなるけれども、その神経をうまく拾えれば絶対に意思伝達できるし、今緊急的には、もうインプラントしたいですね。

脳に電極を貼り付けると、髪の毛とか頭皮によってノイズが大きくなるんだけど、中に電極を埋め込むと、かなりいい精度で取れるんですよ。研究はかなりできていて、そもそもパーキンソン病では普通に、脳の中にチューブだとかセンサーだとかの電極を埋め込むっていう手術が日本でもできているから、あとはこれをALSで実例さえ作ってしまえば、そんな先の未来じゃないんですよ。

武藤:それをね、早く実現させて、仲間たちが「今伝えたいこと」っていうのを、自分らしく伝える術を作りたいんですよ。僕らはどれだけ障害(の症状)が進んでも、テクノロジーを進化させることで補える部分、可能性を広げられる部分って絶対にあると信じているので、それを早く実現させたいですね。

吉藤:テクノロジーをちゃんと作っていって、そしてテクノロジーがあったとしても、やっぱり知られていないっていうことが実はけっこう多かったりする。それをね、啓蒙であったりとか、多くの人に知ってもらう。そして、自分が同じ病気になってしまったとか、違う病気であったとしても、「なるほど、ここをこうやってこうするとこうなるのか」みたいな、「いい前例」みたいなものができるといいですね。

さっきのバンダもそうなんですよ。あいつはあごしか動かないのに、寝たきりだけど仕事をして、月に10万円ぐらい稼いでいましたからね。ずっと盛岡にいて、(実際には)うちの会社とか一切来たことなかったのに、うちの会社にOriHimeで出社して働いていました。そういうのができて、「あっ、それできるんだ!」みたいなことがあると、他の人たちのすごい後押しになる。

だからそこをね、今まで不可能と言われていたこと、言われてなかったけど思い込まれていたことを、どんどん更新していくっていうのはたぶん、我々がすごく「命を賭してやりたいこと」の1つではあると思いますね。

樋口:いや、すばらしいですね。

日常生活で感じる不便さはアイデアの種

吉藤:そうそう。さっきの話だけど、腕動くやつあるじゃないですか。来年はでかいOriHimeで、DJのイベントで動いてもらって、再来年はもう、手を動かしたいなと思っていますよ。我々が服作るから。服はもう作れるんですよ。それで、(武藤氏の腕を指しながら)ここにモーターつけたら、きっと腕が動く。

武藤:俺が自分の手で?

吉藤:そう武藤さんが最後もう、「ワーッ!」てやったら、それは全員やる。やらざるを得ない(笑)。

武藤:それ、実はもう出会った時からオリィ君と僕とで言っているんです。だから絶対、実現させたい。

吉藤:今ね、それの研究も密かにやり始めていますよ。

武藤:だいぶ近づいたような気がしますね。

吉藤:そういうのもできるし、だからかっこいい車椅子の次は、究極の車椅子は何かっていうと、たぶんね、このズボンなんです。もう「歩くジーンズ」みたいなもの。別にジーンズじゃなくてもいいけど(笑)。それで起き上がって、歩いたらいい。

そうそう、はじめに言っていたのは、首とかだね。(頭が)落ちて来ちゃうから、(自身の頭を持ち上げるようにしながら)それはこういうふうになってないといけない。首はちょっと怖いけど、「ここ(首のまわり)に自由に操作できるような装置をつけようか」みたいな話はしていたね。うまく、いいかたちでサイボーグ化すればいい。

武藤:意外と日々のバリアとかハンディキャップは、次の開発のアイデアの種になることが本当に多いんですよ。だから逆に言うと、その自分の変化っていうものをどれだけ見つけられるかですね。

吉藤:私らは「辛抱強い」とか「我慢」っていう言葉がめちゃくちゃ嫌いなんですよ。昔から、すっごくわがままな人間だから(笑)。学校とか、私が不登校、引きこもりだったのは、病気のせいもあるんですが、そもそも学校が好きじゃなくて。

確かに友達がいるのはいいんだけど、1日中授業でじっとこうやって座っていなきゃいけないっていうのは、これめちゃくちゃ「我慢」ですよね。日本の「辛抱強い人間」を育てる教育はそろそろやめたほうがいいと私は思っています。

樋口:本当にそう思う。

武藤:俺もそう思うかな。

「反・我慢教育」で「おかしいと思うこと」を外部に伝えられる人間に

吉藤:これからはね、「反・我慢教育」をしなきゃいけない。わがままな人間じゃないとね。「これはおかしい」っていうことに対してちゃんとアウトプットできないといけない。そもそも、おかしいことをおかしいと認識していられないというか。

みなさんSuicaって、普通にたぶんポケットに入っていて、こうやってやってやるじゃないですか。ピッてやって戻すみたいな。私は、あれが嫌いです。Suicaができた瞬間から「なんでまた(ポケットに)戻さなきゃいけねぇんだ」「(自身の服の袖を指しながら)ここに埋め込んであったらいいじゃないか」と思っています。要は12年間、私の黒い服には、ここにSuicaが入るポケットがついている……。

(会場笑)

吉藤:これだけでピッてできるから超便利。

武藤:「キャッシュレスでいいじゃん」っていうのは、僕らの共通の見解だよね。

吉藤:それは「別に小銭ぐらい出しゃいいじゃん」って言われたらその通りかもしれないけど、それに対して「めんどくさい」とか、「それって我慢だよな」って自分が「我慢している」ということを認識することって、すごく大事だと思います。

だから20年後、ね。今から20年前に戻ったときに、我々はきっと世の中って、今は治る病気も20年前は治らなかったかもしれないし、20年前はスマホもなければいろんなものがなくて、不便すると思うんですよ。SNSもないし、Googleマップもないし、みたいに。

でもたぶん、今から20年後の人間もきっと同じで、20年後の未来人が今の時代に来たら、世の中っておかしいこととか、足りてないものだらけだと思うんですよ。だからたぶん「未来人の20年後の視点を持ちながら、今日をどれだけ全力で生きられるのかな」っていうのが大事な気がする。

街で困っている患者に対してできることはあるか

樋口聡氏(以下、樋口):はい、そんな感じですね。ちょっと強引だけど(残りの)時間が僅かなので、本当にいい話をありがとうございました。もしあれば、1〜2問でいいので、もし会場のほうから質問等がありましたら、遠慮なくというところです。どうでしょうか? ……ない!?

(会場笑)

樋口:ということで……。

(質問者挙手)

樋口:じゃあすいません、大きい声で。

(会場笑)

質問者:昭和の世代の生まれなのですが、池袋リブロに行くときに、ちょうど池袋の地下街で、車椅子に乗った人がいて、後ろから女性が押していて、文字盤で会話をしていたんです。その後に、オリィさんとかがよくテレビに出ているのを見たので、(吉藤氏の活動が世間に知れ渡る)その前だったんです。

私は地方に住んでいるので、地方だったら「こういう人がいるよ」って教えられたんだと思うんですけど、あの時は、東京都内で知らない見ず知らずの人に話しかけられたら気持ち悪いんだろうなと思ってやめたんです。あの時、私は一体何ができたのかなってずっと考えちゃうんです。文字盤を持って会話をしていた人に、私はあの時、何ができたんでしょうかね?

樋口:逆に「何をしてもらえたらうれしいのか」ということですかね?

質問者:東京都内の池袋の地下街だったんですけど、見ず知らずの人間から話しかけられたら気持ち悪いと思うんですよ。地方だったらわりと平気だったんですけどね。「吉藤オリィさんっていう人がいてこういうものを開発していますよ」って言ってもよかったのかもしれないんですけど、どうだったのかなって今でも考えちゃうんです。何ができたんでしょうかね? 昭和の生まれなので、余計そういうのがあるんですけど。

吉藤オリィ氏(以下、吉藤):これ、どうしましょうか? 私の見解ですけど、これはもちろんいろいろあると思うんですけど、私はわりと、なんていうのかな、もしそうなったらたぶん、普通に声をかけに行くタイプですね。

気軽に声をかけて仲良くなればいい

質問者:あの、ちょっといいですか。(他の経験の話ですが)見た目がダウン症の小さいお子さんを連れたママがいて、その方はお子さんとの向き合い方や育て方について金澤翔子さん(日本の書家。幼少期にダウン症と診断されている)のことを知らないらしかったから「金澤翔子さんっていう人がいますよ」って教えられたんですけど、こちらが大人の男女だったので、話しかけられたら気持ち悪いだろうなと思って、私はそれでその場で去ったんです。何ができたのかなっていまだに考えちゃうんです。金澤氏がテレビに出てくれたらいいんですけど、何ができたんでしょうかね? 今年に入ってからの話なんですけどね。

吉藤:私は三鷹駅で車椅子の方にわりと出会いますけど、相手がもし気を悪くしたらそこまでだなと思いつつ、私は普通に「その車椅子、変わっていますね」みたいな話題で声をかけに行きますね。

今まで「えっ、なんだこいつ?」みたいな反応をされたことは、あんまりないです。わりとヘルパーさんとかからは「その服も変わっていますね」とか返事されたりします。

(会場笑)

吉藤:私は三鷹に会社がありますけど、それでけっこう仲良くなって、三鷹近辺の車椅子の人たちとだいたい友達になって、一緒にバーベキューやったりとかしていますね。なので、わりと友達になるってすごく大事な気がしています。

例えばアメリカに行ったら、なんか普通に「ヘイヘイ」みたいな感じで目が合った瞬間にあいさつするじゃないですか。たぶんあの感覚で、日本でも「なんやこいつ? 貴重な時間損した」と思う人ってそこまではいないと私は思っているし、実際そんな反応されることはないので、私はわりと話しかけに行くタイプですね。

それで、「わっ、気持ち悪い。なんだこいつ?」って言われたら、私が傷つくだけなんで(笑)ちょっと凹むけど。

質問者:私もたぶん、傷つくのが嫌だからやらなかったと思うんです。自分がそう(相手の立場)だったらたぶん気持ち悪いと思っただろうから何もやらなかったんだと思うんです。

「話しかけてOK!」のサイン

樋口:武藤さんはどうですか? 逆に声をかけられる方だと思うんですけど。

武藤将胤氏(以下、武藤):実際僕もこの車椅子に乗るようになって、話しかけられることがめちゃくちゃ多くなったんですね。それで話しかけられたときには、まずはやっぱり興味を持ってくださっていること自体、僕もうれしいという思いが強いです。なので、けっこう道端で話し込んで仲良くなることって、僕もけっこう多いですね。だから意外とウェルカムで、ぜんぜん話しかけてほしいなって僕は思います。

樋口:自分の感情に素直に動けばいいんですかね。あんまり……。

吉藤:なんか、あれだったら「話しかけてOK!」みたいな何かを作りたいですね。

(会場笑)

武藤:そういうサイン?

吉藤:そう、サイン。この車椅子みたいなのとか。最近私は、羽を生やすか、仮面をつけようかなと思っているんですけど。

樋口:それはなんで?

吉藤:いや、かっこいいじゃないですか。最近なんか、こんな感じ。(スライドを指しながら)これ、仮面というか、今実験しているやつに、目だけで文字を打てたらいいなと思って、こんなのを作っているんですよね。

要は透明な文字盤とか、コンピュータがないと視線入力できなかったのが、これであればGoogleグラスみたいな感じで、私にはこのモニターが目の前のセンサーに見えていて、これで視線入力ができちゃうんですよ。

これで車椅子も操作できるし、走りながらできたらいいよねっていうことで、(スライドを指しながら)最近こんな感じにしています。これを知り合いの仲間たちに、片端からつけていく。

(会場笑)

武藤:今、けっこう流行っています。

(会場笑)

樋口:はい(笑)。これね、メガネ型も作っていてそっちのほうがいいかなと思ったら、「いや、こっち(仮面型)にしよう」って。たぶんこれをつけて街走っているとね……めちゃくちゃかっこいいですよね。「スターウォーズみたい」って、間違いなく話しかけられると思うんですよね。

だからそういう「話しかけてほしい人たち」も、何か「話しかけてOK!」みたいなものを1つ作っておくってこと。これからはそれが大事な気がしますね。

武藤:今年のハロウィンは、これでみんなで集まる?

(会場笑)

吉藤:みんな楽しい感じで、ハロウィンに車椅子(に乗ること)はおもしろいかもしれないですね。だって呼吸器つけている人なんか、ダースベイダーの格好をして「リアル・ダーズベイダーだ!」とか言ってFacebookに投稿とかしていますからね。

(会場笑)

吉藤:たぶん、もっとみんなで「絡んでいいんだな」って思ってもらうための活動とかはあっていいですよね。

樋口:はい。そんな感じでしたが、よろしいでしょうか。

質問者:はい。ただその2人は、悲壮感のほうが漂っていたので、声をかけたらまずい気がしたんです。ポジティブな方ばかりじゃないと思うんです。

武藤:そうですよね。

質問者:そんなこんなで遠慮しました。

武藤:ありがとうございます。

「患者力」で応援してくれる人を引き寄せる

吉藤:1つだけ、ごめんなさい。これは、バンダともめちゃくちゃしゃべったんですけど、バンダもけっこう表ではけっこうネガティブなことばっかり言っちゃうタイプだから、周りに人が寄り付かなかったんですよね。でも武藤くんとか、他の人たちは、周りにけっこういい人たちがたくさん来ていて、バンダは「うらやましいな、いいな」って言っていたんですよ。

何が違うのかっていうと、やっぱりこれはもちろん自分の病気のことでもあるし、愚痴を言いたいこともいっぱいあるんですけど、例えば些細なことだけど、「遊びに行くと必ずお菓子が出てくる」とか、「コーヒー出してくれる」とか、「お寿司買っといたんだよ」みたいなこと言われて「マジで?」みたいな。

すごく単純なんだけど、即物的にじゃないけど、こういうことをされると、こっち側もその人のことを好きになるっていうのがあります。「応援される人」「応援されにくい人」っていうのがけっこうあったりする。

私たち、意思伝達装置で寝たきりの人たちの支援をしている団体の中では、これを「患者力」って呼んだりしています。「患者力」がある人には人が集まってくるし、無償でいくらでも協力してくれるみたいなところがあります。

樋口:それ、『患者力』って本を書きましょうよ。

(会場笑)

樋口:時間がきました。はい。いろいろ示唆に富むお話をありがとうございました。じゃあ今後のね、武藤さんの流れだけちょっと聞いておきましょうか。今年の世界ALSデーを過ぎて、ひととおりやって、本も出して。どんな感じですかね?

武藤:僕自身は、気管切開手術という、先ほどの手術を受けることを決めています。その手術をすることで、やっぱり自分自身も今の挑戦、行動っていうのをやめたくないっていう思いが強いんです。延命処置というよりは、自分のチャレンジを続けていく上での自然な選択だと思って、受けることを決めました。

ALSが治る未来って、僕は本気で実現できると思っていますし、「せりか基金」さんと、これからその研究開発支援っていうのも、本当にすばらしいお医者様の方々にも提供していきたいと思っています。

また、オリィ君のようなすばらしいテクノロジーの仲間と一緒に、患者さん一人ひとりが、自分らしい生活、クオリティオブライフっていうのを支える目的のテクノロジーの企画、プロダクト開発をこれからも行っていきたいと思いますし、僕自身もKEEP MOVINGし続けていきたいと思っていますので、これからもよろしくお願いします。

今日は本当にお忙しい中、ありがとうございました。

(会場拍手)

樋口:ありがとうございました。武藤さん、オリィさん、ありがとうございました。会場のみなさんもありがとうございました。

(会場拍手)