2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
提供:DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA実行委員会
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浜田敬子氏(以下、浜田):モデレーター3連続というのははじめてなので、千本ノックのような感じになってきましたけれども、よろしくお願いします。
みなさんといっしょに、いろいろ楽しくお喋りをできたらな、と思っております。
全体を通しての今日のテーマは「ダイバーシティ」です。ぜひみなさんとは、ダイバーシティが生むビジネスチャンスということで、ビジネスの話に持っていけたらな、と思っております。
では中村さんのから。普通に自己紹介をしてもおもしろくないので「自分の個性って何か」みたいなところを入れつつ、自己紹介をお願いいたします。
中村貞裕氏(以下、中村):TRANSIT GENERAL OFFICEの中村と申します。
基本的には、飲食を中心とした運営と空間のプロデュースをやっている会社です。
実は、数年前に『ミーハー仕事術』という本を出しました。
僕自身の個性としては、個性がないのが個性、みたいな感じで。非常に熱しやすく冷めやすいミーハーなところが僕の売り、ということを書いてる本です。
本当に熱しやすく冷めやすくて、いろんなことに興味があるんですけども、ちょっとできると、すぐほかのことに目がいってしまう。
それがすごく楽しかったんですけども、20歳ぐらいを過ぎるとそれがコンプレックスになっていたんです。例えば、高校時代の友達が、バスケット部だったら大学でも大会に出たり。バンドをやってきたらライブをやったり。サーフィンやったり料理家になったり。
大成功とはいかなくても、それが趣味として成り立つようになるのを見て、「もしあのとき僕が続けてたら」という、根拠のない自信が生まれてきて。それがコンプレックスになってきたんですけれども。
中村:そんなことをずっと広く浅く続けていたら、25歳ぐらいを過ぎたときに「今、これからデート行くんだけど、どのレストランがいい?」とか、僕がすごく尊敬している先輩から、「君たちのまわりで流行ってることって何かな?」とか、みんなが聞いてくるようになって。
その時ふと思ったのが、100という到達点があるとしたら、僕は1という小さな情報を100個持っていて1×100。1つのことを貫いてやっているすごく個性豊かな人は100×1で。同じ100を目指すのは1×100でも100×1でもいっしょだということに気付いたんです。
そう考えることによって自信を持って、僕は100を200にするのも300にするのもすごく得意なので、スーパーミーハーになろう、と。そういう個性を全面に出すことによって今の仕事になっていたんです。
そういう、自分がどういうタイプかわかったことによって、100×1の人の仕事をして、1×100×100×1で1万にしたり。自分がどういうタイプかを理解することによって、いろいろな個性のある人たちとチームをつくって仕事をする、というのがうちのやり方です。
浜田:なるほど。
中村:今はほとんどそういう感じで仕事をやっています。
浜田:みなさんご存知だと思いますが、中村さんが運営しているお店は「bills」や「MAX BRENNER」「ICE MONSTER」など、みなさんも名前を聞いたことがあると思いますし、「あの店なんだ!」といういろいろなお店をやっていらっしゃいますので。ぜひ「TRANSIT GENERAL OFFICE」で検索してみてください。
浜田:後藤さん、今のお仕事も含めて、みなさんにご説明をしていただきたいんですが。後藤さんの個性ってどんなところなんですか?
後藤太一氏(以下、後藤):やっている仕事は、デザイン会社なんです。
浜田:デザイン会社なんですか?
後藤:デザインというと、日本では、かたちをつくること。でも、複雑な課題を整理して、みんなにわかりやすく示して、どこに行くかを導くことだと私は思っているんです。ヨーロッパ、北米ではそうです。
浜田:はい。
後藤:整理屋さんだと思ってます。「渋谷未来デザイン」の準備もお手伝いさせていただいていますし。それまでは、今、福岡のスタートアップでバズってますけども、そういう流れの仕組みの設計、デザインをして、後輩に託すということずっとやっています。
浜田:なるほど。
後藤:何が個性かというのは……。
浜田:昔から問題を整理することが得意だったんですか?
後藤:自己評価と他者評価は違うので、「違うだろう」とたぶん言われるんですけど。自分で言うと、宇宙から物事を見ているような自分が、常にもう1人いて。それで、普通の人とは違うところに目がいって、ここもあそこもって無理矢理組み立てることが、自然にできているのかな、と思います。
同時に、良く言えば好奇心が溢れてて。悪く言うと、たぶん中村さんちょっと近くて「おもしろい」と思ったらいっちゃうところがあります。15年前、渋谷区在住在勤で、生まれ育ちも世田谷なんですけれども。
サラリーマンを辞めて、ほとんど知り合いのいない福岡にIターンして、向こうで会社を起こしてしまったんです。そういうことをやってしまったのも、冷静に考えていなくて。「これがいいんじゃない?」と思ってやってる。そういう、性格が分裂しているところがあるからそんなことができてるのかな、と思っています。
浜田:ちょっと(中村氏と)似てるところがあるんですかね。
後藤:そうですね。
浜田:私もわりと、新しいことを見るとすぐ手をつけたくなるんです。堀江貴文さんが言うところの多動力というところかもしれないですよね(注:堀江貴文氏の著書『多動力』)。
後藤:悪く言えば自分勝手なんです。自分がおもしろいと思うところに行ってしまうところはあるので。さっきの中村さんの話は、ちょっと共感するところがありますね。
浜田:ありがとうございます。古田さん、BuzzFeedという新しいメディアをつくってらっしゃるんですけども。
古田大輔氏(以下、古田):はい。BuzzFeed Japanで創刊編集長をしております、古田と申します。
個性っていろいろなものが含まれると思うんですよね。例えば、先天的に持ってしまうもの。僕が日本人であるとか、福岡生まれであるとか男性であるとか。そういったものと、あとは考え方とか、後天的に自分で獲得していくものがあると思います。
後天的に、僕が獲得していった個性を、強みと言い換えてもいいと思うんですけれども。ストレングスファインダー(注:自分の強みを知るためのツール)をご存知の方、どれぐらいいらっしゃいますか? やったことある方も多いですよね、あれおもしろいですよね。
ストレングスファインダーって、その人の個性を見つける道具じゃないですか。でもあれって、パーソナリティファインダーではなくてストレングスファインダーなんですよね。その人の強みは何かを探すもの。あの考え方ってすごくいいな、と思ってて。
僕の場合だったら、自分の強みを生んできたものって何だろうと考えると、現場の新聞記者を10年間やってきました。そのなかで海外特派員もやって。僕の場合、東南アジアだったんですけど、東南アジアの状況をつぶさに見てきました。
あと僕は、もともとインターネットが大好きだったから、ずっとインターネットメディアの動向を追いかけていて、10年目からデジタル版の編集をはじめて。日本における、朝日新聞というすごく伝統的な紙メディアのなかのデジタル部門をみてきました。
そのあと、今のインターネットメディア、アメリカのインターネットメディアに移ってきています。そういう経験をしてる人って、実は浜田さんもそうなんですけれども、数が少ないんですよね。
その伝統的紙メディアがデジタルをやったらこうなるということを知っていたり、今はアメリカのネットメディアの先端を知ることができたり。あとは僕の場合だと、東南アジアでずっと、東南アジアの先進国ではない人たちがデジタルをどう活用してるのかを見てきた。
そういったものが僕の強みをつくっているし、そういったところが僕自身の個性なんだな、と思ってます。
浜田:ありがとうございます。今日のキーワードが多様性ということなんですけど。ご自身が仕事をしてるときに、多様性ということを、そもそも意識していらっしゃるのか。それとも「そういうことが自然なんだよ」という感じなのか。そのあたりはいかがですか?
後藤さんの会社で働いていらっしゃる方を見て、私は後藤さんの会社はおもしろい会社だな、と思いました。女性も多いし、海外で働いていたような人がいたりしますし。すごくユニークな経歴の人が集まっているなという印象を受けたんですけど、意識して採用していらっしゃるんですか?
後藤:今の会社は、結果的にそういう陣容になっていまして。7人の小所帯なんですけども、女が5、男が2。残念ながら国籍は全員日本人。3人が福岡、3人が東京、1人徳島県神山町です。顔を合わせるのはかなりの部分、Web、みたいな状態です。
なぜこうなったかというと、仕事をやるたびに「そういう分野に強い人がいたほうがいいよね」という話を考えてこうなりました。さっき古田さんのお話で、なにが会社の強みか、ということをおっしゃっていたんですけど。当然、お客さん側、パートナーには常にいるのでいっしょにやるんですけど、「ここの部分は(会社の)なかにいなきゃダメだろう」と。
ということで、人を探して、求人みたいなことを口コミでやっていって出会った人がその人たちです。仕事も大事なんですけど、基本的に明るいチームでやりたいので、「生活第一」の人のほうがいいと思っていて。出産、産休明け直後の方とか。あるいは保育園の送り迎えをしなきゃいけないので、働ける時間は10時から4時までですとか。
優秀な人がけっこう、世の中いっぱいいるので。
浜田:そうですね、はい。
後藤:でも逆に、とくに九州にいるせいもあると思うんですけど。男性はやっぱり、大きい組織にまだいる人も多いのかな、と。なので、ふらっと「じゃあ来月から来ます」みたいなことを言える人は、女性が多かったのかな、というふうに。
浜田:なるほど。属性としての多様性を意識したわけじゃなくて、大事にしたい価値観を……それで求人をしたらたまたまそういう属性になった、という。
後藤:そうですね。スタッフがこのなかにいそうでこわいんですけど(笑)。同時に、その人に応じて、一応やり方を変えてるつもりではいます。型に当てはめて、「不合格! Fire!」みたいなことはやってなくて。その人の持ち味はいろいろあると思うので、そういう仕事になるように一応やっているつもりです、とスタッフに向かって言っておかないとですね。
浜田:ありがとうございます。古田さんのところも、今、五分五分で男女がいるということをおっしゃっていたんですけど。それは意識していらっしゃるんですか?
古田:いや、意識してないですね。今、うちは編集部が45人、全体が65人ぐらいいるんですけれども。ぜんぜん意識せずに普通に採用していって、ふと気付いたら男女比が五分五分でした。幹部以上も男女比五分五分で……まあ、自然にやったらこうなるんじゃないの? って。
逆に男性の数がめちゃくちゃ多いとか、女性の数がめちゃくちゃ多いっていうのは、どうやったらそうなるのかな? って自分が採用を2年間やってきて、逆に不思議に感じました。BuzzFeed自体は、すごくダイバーシティを大切にしてて。
浜田:意識していらっしゃるということですね。
古田:そうですね。「ダイバーシティこそが強みを生む」と、SEOのジョナ・ペレッティ自身が言っています。彼は1、2か月に1回、グローバルに対して業務報告みたいなことをするんですけれども。その業務報告の一番最初は、「うちのダイバーシティがどうなっているか」からはじまるんです。
例えば、男女比だってそうだし、あと……アメリカだったら白人系ばかりになってないか? とか。そういうところまでちゃんと見るんですね。
浜田:かなり意識的な経営ですね。
古田:かなり意識的にやってます。ジョナ・ペレッティがいつも言っている言葉で、僕も本当にそうだよなあと思うのが、「いいアイデアはどこからでも出てくる」ということを言うんですよね。
「いいアイデアはどこからでも出てくる」というのは、さっき僕が言ったような生まれたときから持っている属性だけではなくて、考え方の多様性もあったほうが、突飛なアイデアが出てくるということです。その突飛なアイデアこそが新しい、組織の活力になってくると僕らは考えています。
この間選挙があったときに、選挙の記事をぜんぶで100本ぐらい書いたんですけど。そのなかの1つに「国会みたいにヤジを飛ばしながら会議をしてみた」という記事があって、動画を撮ったんです。
その記事のアイデアを最初に出したのは、今24歳の女性社員で、「なんで国会にいる人たちは、あんなに喧嘩してるんですか?」というひと言から。その子は、まったく政治に関心がないんですよ。でも、たまにNHKを見ると、いつもおじさんたちが喧嘩してるから、「あんなに喧嘩して議論できるんですか?」という疑問から動画をつくったんです。
本当に国会風に議論してみたら、昼飯も決まらないという(笑)。「何言ってんだお前!」とか野次飛ばしながら、実際議論してみました。
そういうのってたぶん、伝統的な新聞記者ばかり集めていたらぜったい出てこないアイデアなんですよね。そういうところがすごくうけて。
だから、多様な人を集めることによって、まったく違う意見が出てくる。それが組織自体に多様性や力を生むんじゃないかなと感じますね。
浜田:ありがとうございます。逆に中村さんのところは、西海岸とかオーストラリアのカフェ文化や食文化など、文化自体を日本に持ってくるというビジネスなんですけれども。働いていらっしゃる方も、かなり外国人の方は多いんですか?
中村:もともとカフェからスタートして。ここ5年ぐらい前から海外の人気レストランやカフェを、ライセンスで日本に持ってくるというビジネスもしているので増えています。これはうちがけっこう注目されているビジネス体系の1つなんですけれども。
ある人から言われたのが、飲食の場合、「働く人の外国人比率がお客さんの(外国人)比率にけっこう比例する」と。僕らはできるだけ、その国の雰囲気をそのまま表現したいんです。シドニーだったらシドニーの雰囲気だったり、ニューヨークだったらニューヨークの雰囲気を持ってきたいんですね。
僕らはシェアオフィスもやってるんですが、入ってきた瞬間に「海外みたいね」って言わせたいんですよ。要するに、まとめて「海外みたい」ということなんですよね。
なので、そう思わせるために、例えば、メニューのサイズもレシピも変えないで同じにします。台湾のかき氷店「ICE MONSTER」という店を持ってきたときも、量がけっこう大きいんですよ。
浜田:そうですよね。量が違いますよね。
中村:でも、海外でも人気ショップなので、小さくすることなくそのまま持ってこないと。「現地と違う」って言われるのも嫌なんです。
あとは極力、どちらかというと欧米社会のものを持ってきた場合は、見た目が欧米的な人たちがたくさん来たほうがいいので。その作戦として、アドバイス通りにスタッフの見た目が海外の方を増やしていったら、今はお客さんがすごく増えてきています。
浜田:そうですね。
中村:簡単にいうとオーナーが欧米の方で、スタッフも全員100パーセントそういう感じだと、100パーセントに近いかたちで、海外のような雰囲気になるらしいんですね。
ただ、日本なのでそこまではできない。それでも3割から4割ぐらいまで外国人比率を上げて。アジアの方々含めて、英語を喋れる人たちの比率を今40パーセントぐらいまで広げています。そういった意味では、最近のうちの大箱のレストランに関していうと、インターナショナルなグローバルな雰囲気を表現できてるんじゃないかと思います。
浜田:はい。そもそもなんですけど、中村さんは日本に、いわゆるカフェ文化という大きな文化や価値観を根付かせてきたと思うんですけれども。
それは、なぜ自分はできたんだと思われますか? 先ほど「ミーハーだから」ということもおっしゃってたんですけれども。中村さんがそもそもこのビジネスを立ち上げられた。それに追随してる人も多いので。そもそも、中村さんはなにがほかの人と違ったんだろう、と思うんです。
中村:そうですね、基本的には自分が「流行りそうだな」と思ったものをただやってるだけで、あんまり深い考えはないんですよ。何が流行りそうかというのを考えるのが大切なんですけれども。
趣味が立ち読みなんですけど。代官山で2時間ぐらい、1週間に1回ぐらい蔦屋で立ち読みをします。これ、本屋さんの人には怒られるんですけど。
浜田:はい。すごく残念です、私は雑誌をやっていたので(笑)。
中村:買うと読まないことがけっこう多いんですよ。立ち読みだと思うと、覚えようとして、ものすごく真剣に読むんです。MOOK版、永久保存版みたいなのは買うんですけど。そういうのはバーッと流し読みします。
あとは、ネットだったり、ミーハー仲間が何人かいるんですけど、夜な夜な集まって情報交換したり。あと時間とお金さえあれば実際に海外に行ってみます。5坪ぐらいのお店だと思って見に行ったら、100坪ぐらいで、すごくテンションが上がったりするので。実際に見て、片っ端からインプットするんです。
大切なのは「インプットよりアウトプットだ」と社内でも言ってますし、僕もやっています。ようは目利きにならなきゃいけなくて。情報オタクになっちゃうといいものがわかんなくなっちゃうんで。雑誌と同じで、いい情報を仕入れて、それを出せば出すほどいい情報になるじゃないですか。
浜田:そうですね。
中村:今、SNSで美味しい店を片っ端からあげてる人って、3年も続けてればたぶんいい情報が勝手に入るようになると思う。同じように、インプットしたものを出すアウトプット力が目利きを育てると思ってるんです。
ひたすら僕は、いい情報があればあるほど(アウトプットする)。「口コミ大王」って、僕、いろんな人に言われてて。「中村くんにいい情報を話すと、みんなに話してくれる」と言われてるんですけど。片っ端から言い続けてたら、だんだんいい情報が入ってくるようになったんですね。
浜田:なるほど。
中村:そういう情報に触れていくなかで、これがいいんじゃないかなって思うことがあるんです。だけど、僕のなかでミーハーと同じコンプレックスで。「欧米」ってさっきから言っているんですが、ニューヨークとかLAとかロンドンとか、やっぱり「かっこいいな」「すごく素敵な生活だな」って思い込まされた世代なので。
僕のなかでは「海外みたいに思わせることが日本ではトレンドになる、カルチャーになるヒントだ」とずっと思っていて、探してるんです。なので、ライフスタイルのなかでかっこいい経験をさせるものや、フォトジェニックなものが、「今まで日本になかった何々なカルチャーを根付かせる何々」となるんですよ。
例えば、僕がニューヨークに行ってブレックファーストミーティングしたり、LAに行ってブランチをしたときに、今まで日本になかった朝食カルチャーを根付かせたいなって思ったり。
ブルックリンでは、巨大な倉庫でクリエイターたちがシェアハウスしてるところでミーティングして。めちゃくちゃかっこいいな、と思ったんですよ。だから、ブルックリンで味わったような、クリエイターたちが集まるブルックリンスタイルのシェアハウスがあったらいいな、と思って。
なのでうちのオフィスに来たときに、「ニューヨークみたい」って言ってくれたら成功なんです。
浜田:なるほど。
中村:今は、ロンドンとかニューヨーク、昨日まではLAにいたんですけど。日本にはないなというのが、150坪とか200坪ぐらいで、ちょっと照明が暗くて、音楽ガンガン鳴ってるレストラン。この暗さだったら、日本だったら怒られちゃうんですよ。「料理が見えない」とか「音楽がうるさくて喋れない」ってなるようなところなのに、ちゃんとした料理が出ていて。しかもインターナショナルフードでいて、モダンなタイレストランとか。
中村:僕らはギリシャレストランもやりましたけど、ニューヨークだといろんな国のレストランがたくさんあるんです。日本だと20坪ぐらいのタイ風レストランとか、ギリシャそのままを持ってきたような一軒家のちっちゃいレストランはあるんですけど。200席ぐらいあるような巨大なレストランビジネスシーンのインターナショナルフードがないので。世界に通用する、インターナショナルフードカルチャーのシーンを持ってこようと思ったんですね。
それで今、ギリシャやって、タイやって、来年もいろいろ予定しているのですが。そういうことをやって、東京をニューヨークとかに並ぶような世界基準のイケてる街にする。僕らは「ホットトウキョウ」と言っています。
話が長くなってしまうんですけど。今、趣向が都市別だと思うんですよ。国別ではぜんぜん見ていないというか。クールジャパンという言葉はいいんですけど、僕はやっぱり都市の時代だと思っていて。「スペインに行きたい」という人はいなくて、やっぱり「バルセロナに行きたい」とか、「サンセバスチャンに行きたい」とか。
あとは「メイドインUSA」って別にそんなにピンとこなくて。「メイドインポートランド」とか、「ニューヨークからきました」、「ブルックリンからきました」という都市とか。さらにはディストリクト的な「5番街からきました」とか。今は細かい都市別の世界になっていると思うんです。
そういった意味では、例えば福岡だったら東京を見るわけじゃなくてサンセバスチャンをコンペティターとして攻めればいいし。東京だったらニューヨークだと思ってるんですよ、僕は。
浜田:渋谷は、(区長の)長谷部建さんが「ロンドン、パリ、ニューヨーク、渋谷」と、すごいこと言ってますからね、今。
中村:東京でも、さらに言うといろんな東京があるので。僕のイメージするニューヨークというのは、もしかしたら渋谷だと思うし。ブルックリンが中目黒の可能性もあるし。すごく細かく細かくターゲットを決めてやることによって、そこに足りないものを埋めていけばいいな、と思っています。
別に、ニューヨークにあって日本にないものを持ってくるわけじゃなくて。サンセバスチャンにあるものを持ってくる必要もなくて。渋谷だったら、ニューヨークに渋谷らしいエリアがあるんですけど、そこにないものをどんどん埋めていくことで、(ニューヨークと)並ぶことになる。
僕のなかではニューヨーク、ロンドン、上海とか。昨日、中国で、アリババがワーッと話題になったじゃないですか(注:中国の「独身の日」で過去最高の取引額を更新した)。それに並んじゃって日本が、東京が、いなくなっちゃうのは嫌なんですよ。だからニューヨーク、ロンドン、東京っていう最先端いけてる都市というのを維持するために、ニューヨークにあるものは(東京にも)なきゃいけない。
国は関係なくて、都市として流行っているもの、話題になってるものがあればいいな、と思ってるだけなので。それを埋めることが僕の仕事というか、それをひたすらやってるんですけど。
浜田:多様性という今日のキーワードと、さっき聞いておもしろいなと思った話を結び付けると、中村さんは社内の多様性だけじゃなくて、外部にも発信することによって多様な情報が入ってきていて。自分でもリアルにいろんなところに行って、情報を自分の目と耳で集めていらっしゃる。
それを1回、中村さんというフィルターを通すことでトランジットの味付けになって、多様なものが東京に出てるのかな、と。そういう意味の多様性なのかなと感じました。
中村:さっき僕は「ミーハー」と言いましたけど、1×100の手段で、何をやるにも社内だけではやらないんですね。毎回、毎回1プロジェクトごとに20人ぐらいのプロジェクトチームをつくってやっています。さらに、最近はインテリアデザイナーもほとんど海外の人を使うようになっています。
もうほとんど国籍とか、住んでる場所とか関係なく。僕らはプロジェクトとして、メディア訴求力があっていいものをつくれるチームを、グローバルな目線で選んでるだけです。
こう言うとあれなんですが、どうやったらメディアにうけるかなっていうことは考えています。
浜田:まんまと乗せられてますね、私たちは。
中村:そうすると、今は海外の人を使ったほうが新しい、という自然の流れで海外の人を増やしてるだけで。常に「どうやったら話題になるか」ということしか考えてないんですよ。
浜田:はい。ありがとうございます。
後藤さんも自社だけじゃなくて外の人を巻き込んでいるプロジェクトが多いですよね。そういう意味で、自社だけの多様性だけじゃなくていろんな人と組むことで、自然とまた多様性が広がっているのかなと感じるのですが。地域の人だったり、そういった部分はどうですか?
後藤:そうですね。女性ばかりの会社と言われましたけど、クライアントはだいたい男性ばかりなのでバランスは結果的にとれている気はします。
関わっている今の仕事も、クライアントの業種でいくと食品メーカー、不動産、投資会社、鉄道会社など。要するにバラバラなので、そのたびに違うタイプの人が出てくるのはおもしろいな、と思いますね。
さっきの、中村さんの逆をやっていることがあって。メディアうけしない人が好きなんですよ。
浜田:なるほど。
中村:見たことないですけど、例えばニューヨークの人は消防士がかっこいい、と。ニューヨークでTEDのイベントをやると、市長じゃなくて元行政マンとかレストランの人とか、次から次へといろんな人が出てくる。日替わりのヒーロー、ヒロインが生まれてくる。
それはやっぱり、いろんな人々の素晴らしさがあって。そういうのができていって、自分がいなくなってもそれが動いている状態ができれば、僕は幸せなので。
福岡なんか10年間ぐらい、キーパーみたいなことやってましたけど(笑)。いなくなってもそれは続いてる、僕じゃなくなってもそれがまわってるので。本当にそういう意味ではよかったな、と思うんですね。
そういった意味で、うちはある意味、スペースが空いたらそこを埋めにいくという。よく言えば「ユーティリティ」、悪く言えば「なんでも屋」なんですけれども。そういうポジションで残りの人の力を出すようなことをやっていきたい、とは常に思っていますね。
浜田:いろんな人を巻き込んでプロジェクトをやっていくときに、一番心がけていらっしゃることはなんですか?
後藤:基本的に、心をオープンにしてるつもりです。
浜田:心をね。
後藤:表現が難しいんですけど「ニコニコしてるけど、この人、本音を言ってないな」っていう人いるじゃないですか。
浜田:よく会社にいます。
後藤:そういうのはよくないと思ってて。そういう人がいるときには、逆の場の、ぜんぜん文脈が共有できていない人を連れてきます。だから田舎の町の仕事なんだけど、なぜかシンガポールのリー・クアンユー(注:シンガポールの初代首相)の右腕だった人を連れてくるとか。
極端にやっています。身内意識とか阿吽の呼吸でわかるみたいなことって、日本人特有かどうか……、日本人だけじゃないと思うんですけど。
浜田:すごく離れたところから。
後藤:そう。「こいつわかんない」ってみんなが思う人を連れてきて、気付いてもらうということはときどきやっています。
今年の僕のなかでのハイライトはラトビアに行ったこと。「お前ははじめて見た日本人で、きっと最後の日本人だ」と言われたんですけど。「お前の国は昔は、戦争で世界最大の両方の国に勝ったじゃないか」とまで言われて。
そういう場所で、明らかにエイリアンなわけですよ。そこに自分が価値を出せるということは、僕にとっても喜びだったりします。なので、そういう飛び地のダイバーシティみたいなことをやっていけたらいいな、と思いますね。
浜田:飛び地の人を連れてくると、ちょっと頑固者の地元の名士みたいな人も、わりと素直に受け入れるんですか?
私の経験から言うと、大会社で働いて、ダイバーシティだということで女性ではじめて編集長になる。じゃあ、「ダイバーシティだから女性を昇進させたんだよね?」と言っても、「部長会で発言しないほうがいい」とか「役員会であんまりものを言うな」という文化が日本の企業にはけっこう残っています。
女性が今、最前線ですごく苦しんでいると思うんですね。ダイバーシティを進めれば進めるほど、女性たちはその最前線にいて討ち死にしています。だから、「近い人」に対しては「守る側」はすごく反発するんだな、と思ったんです。
なので私、ダイバーシティの講演が多いんですけども。必ず女性だけじゃなくて、外国人と中途入社を同時に入れないと(いけない)。「今、女性が最前線ですごく苦しんでいますよ」と言うときに、いきなりぜんぜん違う人を入れてくると、いわゆる旧来のおじさまたちは言うことを聞いてくれたりするんですよ。
後藤:まあ失敗もいっぱいありますけど。
浜田:失敗したケースってあるんですか?
後藤:知り合いの……猛女という言い方はいけないですね。強烈なインパクトがある女の知り合いがいて。その人はアフリカとか行くわけですよ。アフリカの民族衣装の派手なジャケットとか着てる方いるじゃないですか。ああいう人たちと踊って仲良くなっちゃう。そういう、もはやダイバーシティが云々という議論を超越したところにいるような人。
そういうのは僕は、すごくおもしろいと思ってて。例えば渋谷もそうですけど、ニューヨーク、ロンドン、パリって奥行きあるし何度行っても楽しいんだけど、想像できるじゃないですか。
浜田:はい。……でも、想像できない。
後藤:「ラトビアってなに?」みたいな。たまたまこの前行ったとこがそうだったんですけど。なんかそういうのが、僕はおもしろいと思うので。
浜田:かなりショック療法ですよね。
後藤:自分はあんまり、鈍感なのでそこは気付かないんですけど。今日はこんなところにいながら言うのもなんだけど、ダイバーシティのイベントには意図的に出ないようにしています。
浜田:なぜですか?
後藤:語るのが苦手だから。意識していないことはないんですけど、あんまり意識しない。男女とかそういうのを語りたくないんですよ。語ってますけど、今ね。
浜田:なるほど。ありがとうございます。
DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA実行委員会
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