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トークイベント「忙しい大人のための『児童書』入門」(全5記事)

「できない人ほど“仕事がすべて”と言う」 ライフネット出口氏が語った“いい仕事”をする秘訣とは?

本当に優れたものは、子どもも大人も楽しめるようになっているーー。ライフネット生命の創業者である出口治明氏が著書『教養は児童書で学べ』の出版トークイベント「忙しい大人のための『児童書』入門」を開催しました。大人になった今だからこそ知っておきたい新たな読書論とはなにか。“大の読書好き”とも言われる出口氏が自身の読書法や本を選ぶ時のポイントだけでなく、「大人にこそ児童書」と語る理由などを明かしました。(写真提供:光文社写真室)

友達やロールモデルは簡単に見つからない

質問者7:すいません。出口さんが今日もおっしゃっていたんですけど。人・本・旅っていうところで今日もお話がありました。本と旅については、私もせっせと個人的にはやっているんですが、人については難しく思っていて。「イエス」とまず付いて行くことっておっしゃっていたんですけど、もし別にアドバイスというかそういうのがあれば、もしくはバーっとしてこういうのがあれば。

出口治明氏(以下、出口):他にはないと思いますね。もう少し言い方を変えれば、毎晩合コンに行く以外に人には出会えないですよね。家で考えていても無理だと思うので。人ってやっぱりすごく難しいんで、いろんなところに行っていろんな人に会って初めてだんだんわかってくる気がしますから。

まだ僕もそれ以外のいい解は見つけていませんので、まずイエス、あるいは毎晩合コンに行ってがんばってねぐらいしか言えません。ダメでもともとという気持ちは、すごく大事だと思いますよね。

そんなに簡単に友達とかロールモデルとか見つかるはずもないし、簡単に見つかったら人生は楽ですよね。そんなもんあらへんと思った方が楽だと思いますが。

質問者7:ありがとうございます。

なんでも読めばいいという考えは間違っている

出口:はい、次の方。どうぞ。

質問者8:ありがとうございました。私は自分の専門書だとか資格の本とか、例えば出口先生みたいに歴史の本や生命保険の本とか、そういう本は読めるんですけれども、小説とか物語がなかなか読めなくてですね。どの児童書から始めればいいかなと思っているところなんですけれども。

どうやったら楽しめるのかなというか、どうやって小説を読んでいったらいいのかなということですね。

出口:でも、専門書を普通に読めるんだったら、たぶん小説に興味がないだけの話だと思うので。別に小説を読む必要はないじゃないですか。

(会場笑)

だから好きなものだけを読んで、読みたくなれば手を広げればいいだけなんで。なんでも読めばいいって考えることが、むしろ間違いなんだと思います。

「なんにも本が読めへん」っていうのはちょっと問題ですけれども、専門書とかをちゃんとお読みになれるんであれば「じゃあ自分は専門書を極めよう」と思えばいいんじゃないんですかね。小説とかはだれかに任せておこうとか。

質問者8:ありがとうございます。児童書から始めたいと思います。

(会場笑)

出口:はい。最近読んだ小説では、宮部みゆきさんの『この世の春』っていう小説がとてもおもしろかったです。すごくテンポが早くて、最初から「え、この先どうなるんやろ」とドキドキの連続でした。

本屋に並んでいると思いますので、もし興味があれば本屋で最初の10ページ、立ち読みしてください。そこでおもしろくなければ捨てておけばいいと思います。

神話は素朴な人間の感情が活きている

出口:はい、次の方。じゃあどうぞ、女性の方。その次は男性の方。

質問者9:ありがとうございます。先生が今回児童書入門の中で『ギルガメシュ叙事詩』に触れられていたんですけれども、私は神話がけっこう好きで。

ただ、周りに神話を読んでる人が1人もいなくて、これからの新しい世代の人たちにもとっても魅力的なものだと思うんですけれども、どう魅力を伝えていけばいいかなと。その点についてうかがいたいと思いました。

出口:ハリウッドの映画の固有名詞って、人間って想像力がそれほどないので、だいたい神話から盗んできています。

例えば、スターウォーズの主人公の暮らしていた惑星はナブーですよね。ナブーっていうのは、バビロニアの神様のマルドゥクの子どもですからね。オペラのナブッコと同じ語源です。

だから神話はたぶん食わず嫌いが多くて、こんなにおもしろい話があるでとか、知ればきっとおもしろいと思いますが、極論から言えばギリシャ神話など、すべて男女の嫉妬とか振った振られたの話ですよね。

神話は本当に食わず嫌いが多い気がします。神話って素朴な人間の感情が活きているので僕は大好きですけれども、お友達とか、あるいはお子さんとかにも読んで教えてあげたら、好きになる子どもがいるかもしれないですよね。

日本の古事記もおもしろいですし。インドの神話とか中国の神話とか、本当、神話っておもしろいですよ。こうして話していると、次は神話の本とか書きたくなりました。それでいいですか?

質問者9:はい、ありがとうございます。

「ろくな政党やろくな政治家がいない」は愚かな考え

出口:はい、じゃあ次。

質問者10:今日は人っていうキーワードが出たかと思うんですけど、仕事上の人間関係とか職場の人間関係みたいなものは、どう認識されて組織を回されてるのかなとか、そこら辺を最近悩んでるので、どう良くしていこうとか。

出口:職場の人間関係を見ると、本当に難儀な人がいっぱいいますよね。僕はいつも「2・6・2」と言っているんですが、人間ってそれほど賢くないんで、自分が一所懸命やっていればみんながついてくるとか、みんながわかってくれると思いがちなんですが、動物の世界って全部2・6・2なんですよ。

つまり、10人いたら2人はわかってくれると。2人ぐらいはなにをしても絶対わからへんと。6人ぐらいはわかったりわからなかったりというのが、たぶん社会の平均的な姿だと思うんですよ。

だから、めちゃくちゃな部下やめちゃくちゃな上司がいたら、これは2やなと思えばいいんで。その時によかったなと、自分の所属している組織は普通の社会でよかったなと思えばいい。

だから変な人がいない組織というのは、20世紀の世界にはナチスとスターリンの世界しかないわけですよね。みんなが「万歳!」とか言ったり、拍手する世界っていうのは。でも、だれもナチスとかスターリンの世界がいいとは思っていないんでしょ。

変な人がいるのが当たり前だと思ったらそれほど腹は立たないと思います。だから現状を認識するときには変な人がいて当たり前だと思うことって、すごく大事なことだと思うんですよ。

もうじき選挙でしょ。よく言うじゃないですか「ろくな人がいないしろくな政党がいないんで、バカバカしくて選挙なんか行けへん」と。この考えは、次のチャーチルの言葉を聞いたらいかにアホな考えかというのかわかりますよ。

100年ぐらい前に、チャーチルは次のように言っているんですよ。「選挙に出るやつって、ろくでなしばっかやで」「でしゃばりや目立ちたいやつや一山当てたいやつや、モテたいやつや、いずれにしても立候補するやつってろくでなしばっかやで」「選挙とはそういう人の中から、今だれに税金を分けてもらったら相対的にマシかという、忍耐のことを選挙と呼ぶんやで」と、100年前にチャーチルが言っているんですよ。

だから、「民主主義は最低の形態である」という有名な言葉が続くんですね。

ただし、過去の王政や貴族政や皇帝政を除いては、と。まだ人間って、民主主義以上のましな制度を考える能力がないんやと言っているわけですよ。

この言葉を考えれば、ろくな政党やろくな政治家がいないというのは実に愚かな考えでしょ。だってこの考えの前提には、政治家やリーダーや政党は立派なものであるに違いないという、あり得ない現実を置いているわけですから。そうですよね。だから職場でもそんなもんやと思うことが1つですよね。

仕事ができない人ほど「仕事がすべて」と言う

出口:それからもう1つは、仕事はどうでもいいもんだとわり切ることです。1日は24時間でしょ。1年は365日ですから、8,760時間あるんですよ。日本は労働時間が長くても、それでも2,000時間でしょ。つまり7:3なんですよ。

人間は食べて寝て子育てして、遊んで暮らしている動物で、その7割の時間が僕は大事だと考えています。つまりパートナーや友達がなによりも大事で、3割の時間しかない、わずか2,000時間しか使っていない仕事なんかどうでもいいと思っているんですよ。

このことがわかれば、思い切って仕事ができるでしょ。「なんでどうでもええ3割のために上司の顔色をうかがったり、空気読まなあかんねん」「そんなんどうでもええやんか」と。ライフワークバランスをちゃんと自分で認識したら、いい仕事ができますよね。

自分は自分が信じることをやればいいんで、人にどう思われようが別にかまへんと。そんなんどうでもいいと。僕は7:3だと思っていますが、5:5でもいいですが、やっぱりライフとワークのバランスをちゃんと自分で腹落ちさせれば、思い切っていい仕事ができると思います。

仕事ができない人はこの当たり前のことがわかっていなくて「仕事がすべてや」「この職場がすべてや」と錯覚しているんで、「上司に嫌われたらどうしよう」「職場で浮いてしまったらどうしよう」とか余計なことを考えているんで、仕事ができなくなるんだと思います。

2・6・2の法則、仕事はどうでもええもんやというライフワークバランスを自分で定めたらいいということで、とりあえずいいですか。

質問者10:ありがとうございます。

『はらぺこあおむし』と『エルマー』を何度も読んできた

出口:時間があっという間になくなったみたいで。はい、どうぞ。

質問者11:今までで一番読まれた絵本はなんですか?

出口:一番読んだ絵本は、『はらぺこあおむし』かもしれませんね。あれは本当に楽しくて、色も綺麗ですから。薄いということもありますけれどもね。この10冊の中で一番手に取ったのは『はらぺこあおむし』と、それから『エルマー(のぼうけん)』がそれに次ぐかもしれませんね。

『エルマー』って本当に絵もシュールレアリスム的で、なかなかおもしろいでしょ。1回見たら惹かれちゃうし、文章も堅いようで柔らかくて不思議な感じがして、この10冊では『はらぺこあおむし』と『エルマー』を一番読んでいる気がしますね。

質問者11:ありがとうございます。

出口:では、時間がもうないということですけれども、もし手を挙げていらっしゃったら1人とか、大丈夫ですか。じゃあどうぞ。

質問者12:私は本を読んでもすぐに内容を忘れてしまって、何度も同じ本を読んでしまうっていう、そのたびに同じ本とを買ってしまったりするんですけど、先生はそういうことはおありじゃないですよね?

出口:忘れるということは、そもそもたいしたことのない内容だから忘れるんですよ。人間って大事なことは必ず覚えるので、本を読んで忘れても大したことは書いてなかったんだと思えばそれでいいのです。ぜんぜん気にされなくていいと思いますし、同じ本を何回も読んでもおもしろければそれでいいと思いますから、覚えるとか忘れるとかはどうでもいいことだと思うんですよ。

これもみなさんご存知かと思いますが、人間の脳の活動の9割以上は無意識の部分です。覚える覚えないは、1割しかない意識の部分の話ですからね。

だから、おもしろいと思って本を読まれたら、意識の部分で残っていなくても脳の中には残っているわけですから。それはみなさんの直観とか、これからの活動の中で生きていくわけです。意識の部分に残らなかっただけやなと思えばいいんで、気にされないのが1番だと思います。読んで楽しければそれでいいと思います。

本の方から「見てほしい」と言われている気がする

出口:最後、1人挙げられました? 挙げられた方全員ということで。すみません、時間が過ぎて。

質問者13:先生が書店をよく回られる、最近はなかなか回られないとのことですが、書店を回られて思わず目が留まってしまったり、買いたくなってしまう本のはどういう本なのかなって、ちょっと気になりまして。

出口:さっき言ったように、ジャケ買いタイプです。例えば、表紙が僕の好きな画家の絵を使ったものだったらすぐ手に取ってしまいますよね。

質問者13:自然と。

出口:みなさんも経験があるかと思いますけれども、本屋をぶらぶらしていたら、本の方から「こんな綺麗な僕を見てくれない?」とか言ってるような感じがしませんか? だから直観で目についた本はとりあえず全部取っちゃって、5冊とか6冊とか、その後で本文の最初の10ページを読んでいって、おもしろければ即買い、おもしろくなければ返すというパターンですかね。

質問者13:ありがとうございます。

出口:じゃあ本当に時間がないということですので、とりあえずこれで終わります。もしご質問があれば、TwitterやFacebookは僕は本名でやっていますから、そこでご質問いただいたらOKですし、それからこの本を含めて僕の本はすべて個人のメールアドレスを前書きやあとがきをオープンにしていますから、そこをちょっと立ち読みしていただいてメアドを写していただいて。あ、買ってもらった方がいいですよね。

教養は児童書で学べ (光文社新書)

それで、メールをいただいたらできるだけ質問にはお答えしますし、僕は「10人以上集まればどこにでも行く」と言っていますし、みなさんの勉強会とか職場でもし必要なら、呼んでいただいたらうかがいますから。今日はどうも集まっていただきまして、ありがとうございました。

(会場拍手)

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