映画を作ったのはエジソンか? リュミエール兄弟か?

山田玲司氏(以下、山田):ざっくり1つ、これは言っておきたいんだけど、「映画っていったい誰が作るのか?」って問題なの。誰が作る? 誰のものなのか? 作家のものなのか? 観る側のものなのか? いろいろあるんだけど、ひと言で言ってこういうことだと思うんです。僕は。

山田:時代のものなんだよ。

乙君氏(以下、乙君):えっ?

久世孝臣氏(以下、久世):おお。

山田:要は映画って、時代が吐き出してるんだよ。時代から生まれるというか、時代が吐き出してしまってるものなんだよ。それで、要するにその時代の文化とか、その時代の精神をレポートして残しているものが、膨大に1800年代からずーっとあるというさ。

ここをまず押さえてもらうと、「過去のこの瞬間を捉えたんだ」「70年代の空気ってこうだったんだ」って。あとで説明するけど、ATGの空気というのは本当独特なんだよね。暑苦しくて。でも、「あんな人たちが日本人だったんだ」というさ。だから、日本人がどんどん変わっていくというのも、日本映画観てるとわかるじゃん。だから映画ってその時その時にどんな人がどんなふうに生きてたんだっていうことがわかるという部分もあって。そういう意味でも流れおもしろいよなというのがあって。

いきますね。

久世:いきましょう。

山田:それでさ、まず地球の歴史から言いますと、カンブリア紀ですよ。発明からですよ。この間、乙君とその話ちょっとしてたけど、「誰が映画作ったのか?」って話、軽く言います。長くなるので。

乙君:そう。そもそも誰が一番最初に映画っていうものを始めたのか?

山田:これね、諸説あるんですけど、だいたいやれそうな雰囲気になってる時に、エジソンが作ったと言われている。

乙君:発明王?

山田:発明王です。エジソンが作った。ただ、同時期にフランスでルミエール兄弟という……。

久世:リュミエールです。リュミエール兄弟。

山田:ごめんなさい。リュミエール兄弟って言いづらいんだけど(笑)。

久世:ちょっとね(笑)。

山田:が、ほぼ同時期に映写機を作っていて。

乙君:映写機を発明したんですね。

山田:そう。で、93年のエジソンも映写機を作ってる。

久世:エジソンが作ったのは、はじめ、覗き見て1人しか見えないものだったのよ。なんか映像が……。

山田:ガラガラガラって回して。

久世:そうそう。

乙君:あ、遊園地にあるような感じね。

山田:ただ、このレースで3人ぐらい激レースしてたんだけど、たまたまセルのフィルム、あれを手にできたのがエジソンだったらしいんだよ。

だから、フィルムの素材あるじゃん? あれを……要は結局ネガだよね。終わらないネガじゃん。あれの素材を見つけたというか、手にできたのがエジソンだったらしくて。それによって、エジソンが一歩行くっていうさ。

乙君:へえ。

エジソンは“豪傑”

山田:で、ことエジソンが悪いやつなんだよね。

乙君:悪いやつなの?

山田:もうやっぱりさ、なんて言うんだろうな、この時代の豪傑、だからロックフェラーとか……。

乙君:豪傑!?

山田:そう。

乙君:豪傑と呼ぶ……エジソンを。蒼天に染まってますね(笑)。

山田:うるさいな(笑)。豪傑じゃないと、100年200年経ってまで語られないだろうと。

久世:それはそうですね。

山田:だって桁違いなんだよ。いまだにこの話をされる人たちのやってきたことって。

乙君:へえ、破格の人だったんだ。

山田:破格の人だね。この人は、ディズニーもそうだけど、とにかくがめつかったんだよね。

乙君:お金に?

山田:うん。金。そう。あっちこっちで特許で喧嘩して。

乙君:ああ、アメリカ人だしね。

山田:いや、違うんだよ。この人やっぱり学校で苦労してたのもあるよね。学校行けなくなっちゃうでしょ。この人。

乙君:そうなんだ。

山田:要するに引きこもりの元祖みたいな。「もう学校行かない」みたいな、親は「べつにいいんじゃない?」みたいな感じのところからいって。努力の人って言うじゃん。「1パーセント……」とか。

乙君:「1パーセントのひらめきと99パーセントの努力」ね。

山田:だから、電球作るときのフィラメントは、日本の竹を見つけるまで何回もめちゃめちゃ繰り返して。で、ようやく見つかったのが、竹がフィラメントになるというのがわかるとかさ。そこまでいく粘っこい人なんだけどさ。この人が朝食作ったって話、知ってる?

乙君:は?

しみちゃん:へ? 朝食?

乙君:ブレックファースト?

山田:だから、朝食という習慣がなかったの。当時。朝ごはんというのが。

ハリウッド誕生秘話

乙君:それ日本……うん、日本はなかったけど。

山田:それでトースターを発明したので、なんとかトースターで焼いたパンを、トーストを食ってもらいたいとエジソンは思って、それでキャンペーンを打つんだよ。

乙君:平賀源内ですね。まさに。

山田:そこもやっぱりいくつかやばい話、この人はあって。1902年の『月世界旅行』ってメリエスが撮った、いわゆる月にボーンと。あれ、やっぱりアメリカで勝手に売っちゃってるんだよね。この人ね。

久世:(笑)。

乙君:えっ。

山田:それですげー金儲かってるの。だから、要するに海賊版みたいなことが騒がれるずっと前だから、ごく初期だから、「あれ? フランスでやってんだ。よし、アメリカで売っちゃえ」っていうね。

久世:その時、特許という考え方とかなかったの? 著作権の考え方。

山田:あるある。あるけど、だってこの人、特許の王様だから。

久世:特許じゃなくて、著作権って考え方がなかったんだね。

山田:そうそう。だから、「いいんじゃん。やっちゃえ」ってわーってやった。そのくせこの人、「自分が映画作ったんだから、映画撮るやつは全員俺に版権払え」「権利料払え」っていって、それでニュージャージーに拠点を置くんだよ。

そうすると、ニュヨークで映画作ろうと思ったやつが、「エジソンが見てる」って、莫大な金払わなきゃいけないから、だんだん西に逃げていったという(笑)。

久世:(笑)。

乙君:へえ!

山田:それで、エジソンの目を遠ざかるためにできあがったのがハリウッドという。

乙君:もう一番端まで行っちゃうんだ。

山田:端まで行けばもう、「これでもうエジソンの目には……」っていう。

(一同笑)

山田:それくらいエジソン超おもしろい。

乙君:ゴールドラッシュじゃなくて、エジソンから逃げろと。「escape from Edison」と。

山田:だから、一発目、映画の話するんだったら、「エジソン、やべーし」って話をしてもらいたい(笑)。「エジソンやべーよ」という。

乙君:へえ。いや、それ俺、ちょっと使える気がする。(久世氏に)「知ってる? 映画作った人誰か知ってる?」。

久世:俺は知ってるだろ! ここにいるだろ!

(一同笑)