メディアに対する反論記事はNG

塚本:ありがとうございます。ほかに質問がある方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

質問者4:本日は貴重なお時間、ありがとうございました。先ほどの「日経新聞に掲載されて失敗してしまった」というお話で、もしメディアに取り上げられて真意に反する記事が書かれてしまった場合にはどう対応していましたか? そこをもうちょっと、うかがってもよろしいでしょうか?

菅原弘暁氏(以下、菅原):お客さんでも、そういうケースがありました。そして、社員が不安がるのをどうすればいいか。

一番やっちゃいけないのは、「メディアに書いてあることは間違っている」と反論の記事を書くことですね。余計なことを言うと「そもそもメディアにそういう印象を与えてしまったその人が悪いんだ」と炎上するので。

「メディアが間違っている」ではなく、「その社員が仕事をがんばっている真実」を別のコンテンツとして用意します。

さまざまなメディアに載ったら、それぞれの内容が正しい・間違っているかの両方を見ていないといけません。朝日新聞と産経新聞を見ていても、違いがわかるじゃないですか。そういう意味では、両方を見ているのが正しいですね。

質問者4:ありがとうございます。

採用広報は根回しが大事

質問者5:本日はお話ありがとうございました。すごくざっくりとしているんですが、僕が9月に入社したと同時に、社内で採用と広報が立ち上がりました。今、社員が50名ほどいるんですけれど、そのなかで採用や広報に協力してもらえる環境がまだまだできていません。

例えば、立ち上げたばかりの弊社で「採用広報がんばろう!」という気持ちを作っていけるように、なにかいい方法はありませんか?

菅原:なかなかつらいお立場ですね(笑)。ご自身はどういうことをやっていますか? 職種は?

質問者5:採用と広報を1人でやっているような感じになりますね。

菅原:すごく時間がかかると思うんですけど、やはり社内パトロールが一番いいですね。

質問者5:(笑)。

菅原:テクニック論で言うと、「この部署でこんなにがんばっている」と伝えるほか、キーマンになる人に「なにか困っていることないですか?」「なにかお手伝いできることないですか?」と聞くのがいいと思います。広報や採用は、ほかの人に比べて圧倒的に社外の人と会う機会が多いはずなので、その場で会う人に聞いてみるといいと思います。

質問者5:ありがとうございます。

後藤亮輔氏(以下、後藤):菅原さんの話とほぼ変わらないんが、採用が成功しないと進まないので、結局、部署などの根回しが大事なところもあるんですね。積極的に巻き込むのは、本当に大事なんです。

どう巻き込むかというと、採用広報をされていても、エンジニアの気持ちやデザイナーの気持ち、営業の気持ちは、わからないじゃないですか。人材紹介を運用するとき、もしくは求人の項目を作るときに、その部分を聞くんですね。「いっそのこと書いてくれ」みたいなものを、コミュニケーションでお願いするとはやいと思います。

うちの会社は人材で困っているので、リファラルをやっています。ただ、リファラルをやるときは、菅原さんもよくおっしゃるんですけど、魅力的な会社じゃないと知人に紹介できない。「自分の会社に呼び入れたくない」というのが最大の課題なので、採用広報としてそこを見つめ直すのは大事かもしれないですね。

質問者5:ありがとうございます。

塚本:ありがとうございます。次で最後になります。

サクセスストーリーは読まれない

質問者6:本日はありがとうございました。若干かぶってしまうんですけど、僕も今、人事総務のメンバーをやっています。社内に広報担当がいなくて、採用をずっとマンパワーでやっていくのは限界だというところで、ブランディング、広報も含めて進めたいと思っているんです。

お話にあった、「プレスリリースにするほどじゃないけどいい話」は、社内から吸い上げようとしても、本人が自覚していないケースがけっこう多いと思います。「それ、ネタになるんだ」を吸い上げる仕組み、または、どう拾っているのかを、事例でもいいのでいただきたいです。

菅原:メディアに載せるための広報と、「ちょっといい話」として出す広報は、けっこう違います。メディアに載せるものでも、「日本初」のタイミングなどありますが……今日そこはちょっと飛ばします。

「ちょっといい話」は、ひたすら社員の話を聞くというのが大前提です。苦労話や、上司・部下の関係、師弟関係。だいたい課題があったときに、みんなは乗り越えようとがんばるので、そこでいい話は生まれやすいだろうなと思いますね。

社員には、完全なサクセスストーリーを聞くのがいいですけど、それを読んでも誰もおもしろくない。挫折した人のほうが温かみを感じるんです。そこを意図的に狙っていく。社員にわざわざ失敗した話を聞くのは難しいので、そこは配慮が必要です。とはいえ、失敗した人はいないはずなので、そこは探りにいってもいいと思いますね。

質問者6:聞き方というか、ちょっと視点を変えるような。

菅原:そうですね。いわば、その失敗が社員にとってのターニングポイントだと思います。とくに会社を創業したときの話のなかで、たまに「小学生のころから起業したいと思ってたんです」と言う人もいるんですけど、わけわからないじゃないですか(笑)。

塚本:(笑)。

そこを「なんで?」「なんで?」と4回くらい質問してみると、なにか共感できる話になっていきます。

例えば、その方が「なんか知らないけど、小学校のときから経営の本読んでたんですよね」と言っていた場合。それもおかしいなと思ったら、「なんで読んでたか、わかります?」と聞く。そうすると「親父がよく経営の本読んでたんです」と返ってくる。「よく考えたら、親父がトイレに経営の本を置き忘れていて、たまたま僕それを読んでいたんですよ」と。

トイレに本を置き忘れるとか、誰でも経験するような話です。

ネガティブが「ポジティブ」を生む

後藤:実は僕も一時期、CCO兼広報兼人事兼ディレクターとかやっていました。そのときに1つわかったのは、さっきお伝えしたとおり、経歴はおもしろいんですよ。以前、僕の会社で、21歳で京都大学を辞め、上京して入ってきたエンジニアがいたんですね。

そのエンジニアの経歴もおもしろく、かつ、社内の評価が非常に高かった。それを持ってエンジニアtypeに売りこみに行ったら、取り上げてくれました。その記事がはねて、結果、彼の記事を辿ってきたエンジニアからの応募が複数あるという、副次的効果があったんですね。

菅原さんが100点だと共感できないという話をしてたんですけど、うちの話で言うと、ちょっと普通じゃないです。

(会場笑)

スクーの森(健志郎)さんも、「創業期は飴玉を舐めて生きてた」は有名な話ですよね。あとは、投資家で有名な佐俣アンリさんはリクルート時代、新規事業に2,000万円をぶっこんで、売り上げが数千円だったとか……という話もあります。

そういった、ひどい失敗話はすごくおもしろいんですよ。『しくじり先生』というテレビ番組が高評価な理由は、みんなが人の失敗が大好きだからですね。

ただ、それを愉快に滑稽に伝えることで、だいぶユニークになりますし、「この会社、この人たちはあけっぴろげで素直だな」という印象を与えます。失敗談というネガティブからのポジティブなコミュニケーションは、ありだと思います。

質問者6:ありがとうございます。

塚本:本日は、ありがとうございました。

(会場拍手)