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人事担当者向け勉強会【攻める人事】〜社内外に向けた採用広報について(全5記事)

「なんか寒い……」に陥らない 内輪ノリじゃない“読まれる社内インタビュー”の作り方

2016年9月28日、自社アセットの整理から応募喚起までを具体的な例をもとに伝えるイベント「攻める人事〜社内外に向けた採用広報について」が開催されました。ダイレクトリクルーティングなど、さまざまな採用手法が登場するなか、適切なターゲットに自社を知ってもらうにはどうすればいいのでしょうか。本パートでは、社内外向けに書いたはずの「身内ネタ」がなぜウケないのか、社内インタビューと通常のインタビューの違いについて語りました。

社外だけでなく、社内のモチベーションを上げる

菅原弘暁氏:いくつかやらせていただいている事例を紹介させていただきます。某人材会社さんでは採用広報で使っていただきまして、社員8人分のストーリーを作成しました。

会社には「2・6・2の法則」というものがあります。

ハイパフォーマーな人が2割、ノーポリシーで会社を好きでも嫌いでもない人が6割、とにかく会社が嫌いな人2割がいると言われています。ストーリーとして紹介させていただいているのは、1番上のハイパフォーマーにいる方です。某人材会社として企業に十分なパフォーマンスも出している。

この方々を社外へ露出することで、採用候補者に「こう働いてほしい」という姿を見せつつ、6割のノーポリシーな社員にもいい影響を与えるために作らせていただきました。6割のノーポリシーな社員を、2割のハイパフォーマーな社員にするような、モチベーションが高まるものが会社の経営において非常に重要だと思っています。

次は、Sansanさんの事例です。「営業部隊を採用したい」ということで、これも採用広報コンテンツとして活用いただきました。

Sansanは名刺管理ツールの会社です。しかし、「ただそれを売ってくれ」という話では、営業さんは入りたがらない。

Sansan自体は、別にそんなつもりは一切ないです。名刺管理ツールが日本全国に広がって「名刺」がなくなるとなにが起きるのか、「働き方が変わる=世界の70億人を変える」可能性がある。そういった未来図を見せて、モチベーションを上げるストーリーを作りました。

メルカリさんもやらせていただきました。メルカリは、「Go Bold」「All for One」「Be Professional」という3つのバリューを掲げていて、とくに大事にしているのが「Go Bold(大胆にいこう)」です。この行動規範を体現している社員・役員がどういう人なのか、なぜメルカリに入ったのか、どうしているのかを言語化して、社内外に伝えるというコンテンツを作らせていただきました。

あと、レアジョブさんですね。レアジョブはオンライン英会話の会社で、実はオフラインのサービスも始めています。ただ、社員が「なんでそれをやるの?」「うちはオンラインの会社じゃん」と疑問を抱く社員もいました。

このプロジェクトは副社長が自ら推進していたものです。そこで「なぜ、レアジョブがオフラインサービスをやる必要があるのか?」を社員に伝えるために作りました。これは外部にも公開されているものです。TwitterやFacebookに流したところ、これを見た採用候補者から「この副社長に会いたい」と連絡があり、結果、すごく重要なポストの採用が決まったというケースがありました。

最後は、未来食堂さんという定食屋です。昨年の今ごろにやらせていただきました。12席くらいしかない、本当に小さな定食屋さんです。これを公開したところ、3万シェアくらいいきました。そこから一気にテレビ・新聞・Webメディアの取材が殺到したんです。

この間、そのストーリーが書籍化されたりとか、ドキュメンタリー番組に出たりしていました。一躍、時の人になってしまいました。これも僕たちがなにかを仕掛けたのではなくて、ただ「未来食堂のオーナーが、なぜお店始めたのか」を書かせていただいただけでした。

会社は、ステークホルダーに応援してもらえないと成り立たない

「これまで、なにをやらせていただいたのか」に戻ります。ストーリーは、最初の情報のレイアウトによってミスマッチがなくなります。ミスマッチがないと、会社は事業を加速できます。ストーリーによって、事業の加速につながることをやらせていただいています。

これまで代行させていただいたなかで、どういうことを意識してやってきたかをお話します。

会社は、ステークホルダーに応援してもらえないと成り立たないものです。「一緒に働きたい」「投資したい」「この商品を買いたい」も、ステークホルダーに愛されて応援されているからこそ、成り立っていると思っています。

そういう人たちに、どうすれば応援してもらえるか。それは、「ちゃんと思いを実直に伝えること」「企業・団体としての説明責任を果たすこと」です。

説明責任に関して例を挙げると、謝罪会見で炎上するとき、なぜ炎上するかわかりますか?

1つは、言いわけや責任逃れをしようとして人のせいにしたり、その場で謝らなかったりすることがあります。ふつうの人の中には、悪いことをして謝らない人はいないじゃないですか。それと同じで、謝罪の場などで、ちゃんと説明責任を果たせるかどうかが、非常に重要です。

あとは、会社としてふさわしい表現や、社会に向き合うことが重要です。

競合をけなしたり、業界団体を刺激したりするようなことを言うと、やはり事業が傾きます。この「誰一人として不快な思いをさせない」が非常に重要です。

社員同士でインタビューをすると、自己満足に見えてしまう

では、PR Tableのコンテンツがなにをしているのか。「結局、社員のインタビューでしょう」と言われることもありますし、「社員インタビューで解決するんでしょう」という声もあります。ですが、ぜんぜん違います。「よくある社員インタビューが、なぜ通用しないのか」を考えてみました。

最近、「身内ネタはどうなのか」という議論もあります。身内ネタ自体は、いいと思っています。身内ネタ自体は内回りにならなければいいです。とくに採用広報で重要なのが、社員であったり、身の周りの方がシェアしてくれたり、それを見て喜んでくれたりすることが非常に重要です。喜ばせるために、身内ネタを書くことはOKです。

では、なぜ身内ネタが内回りになってしまうのか? 「身内が楽しいだけじゃないか」「身内でほめ合っていても、おもしろくない」と言われてしまうのは、なにか原因があるんじゃないかなと思っています。そこで、身内ネタを定義してみました。

例えば、社外から見ても許されるのが、「ほっこりする」「感動する」、もしくは「勉強になる」「ためになる」。これは、社員もとてもシェアしやすいと思うんです。社員がシェアしてくれると、採用にすごい影響があったりします。これはいい影響ですね。

社員がシェアしづらいものだったり、仮にシェアされても「なんか寒い」と思われたりするのはどういうものか。例えば、「社員のことをさん付けで呼ぶ」です。

ブログやオウンドメディアで、「エンジニアの〇〇さんにインタビューしました」があります。よく考えたら、社員の人を社外で「さん付け」にしません。みなさん、新卒のときに学んだことだと思うんですけど、なぜか社外と向き合うときに、社員の敬称を付けることをやってしまうんですね。

あと、もう1つは「写真の向き」です。とくに採用動画ですが、社員が採用候補者に直接語りかけているはずなのに、なぜかろくろ写真(ろくろを回しているように構えている写真)を使ってしまうんです。

例えば、こういう写真ですね。「採用候補者に直接しゃべっているはずなのに、お前はどこを向いてるんだ?」という写真が、よく上がっています。

これに気付いたのは、ちょっと前に「Appleの採用動画がすごい伝わる」と話題になっていたときです。日本の採用動画とAppleの採用動画を見比べてみると、ほとんど構成は変わらないんですね。唯一違ったのは、ろくろ写真ではなく、正面を向いて直接語りかけています。

すごく細かいことですが、どちらが自分に語りかけられているように感じるかというと、完全に左のほうがいい印象を受けます。なぜこうなってしまうのかは知らないですが、みなさん、思考を停止して右から写真を撮ってしまうんですね。

そもそも社員が別の社員にインタビューするのは、社外から見るとなにも価値がないんですよね。なぜインタビューが成り立っているかというと、インタビューしている側がすごい人だったり、あるいは知識を持っている人だったり、社会的に評価されている人だから通用すると考えています。

社員同士でインタビューをすると、自己満足に見えてしまうんですね。第三者というメディアと自分たちのオウンドメディアの違いがわからないから、こうなっていると思います。

とくに採用動画など、社員が直接届けたい相手に語りかける場合は、人にこうですね。語る人は企業の社員、語る相手は採用候補者やステークホルダーです。語る相手と届けたい相手というのが、ほぼイコールなんですね。だから、左側の写真が成立します。

右側の写真がなぜほかのメディアではいいのかというと、企業の語る相手があくまでもメディアだからです。採用候補者やステークホルダーなど、話す内容を届けたい相手はメディアが届ける認識があります。その関係性がだいぶ違います。

自分たちが届ける場合の写真や文章と、メディアに届けてもらう場合の写真や文章はぜんぜん違うと認識されたほうがいいと思います。

顕在層より、潜在層へのリーチが重要

社員インタビューに関してよく聞かれるのが「聞くシーンの選定の基準」です。確かに、ネタの選定基準がわからないというのはよくあります。基本姿勢としては、採用候補者に聞かれるようなことは、すべて事前に答えたほうがベストです。

例えば「貴社らしさ」についてよく聞かれると思います。ならば、その質問の回答として、いい意味で体現している社員を選定しましょう。選定の基準は、先ほど話した「2・6・2の法則」ですね。

もう1つは、「なにが」「誰と」「どう働くのか?」を聞かれると思います。それもすべて答えればいいと思います。企業の理想の働き方は最近とくに話題にもなっていますが、これを行っていて、ちゃんとその思いを実行している社員を選定します。

パフォーマンスの高い社員を選んで、会社としての働き方や、サービスの中の人を出す。そして、実際に社内をイメージしていただく。これは社内に対しても「こういった効率的な働き方をしているから、パフォーマンスが上がっている」「これには、こういった思いがある」を伝え、カンフル剤になったりします。

最後です。よく聞かれるのが「ベンチャーに入社するのは怖くない?」です。これも答えたほうがいいです。実際に、大企業や異業種からベンチャーに入社する人がいるので、「こういう人もベンチャーで働いているんだな」を見せます。

「そのベンチャー企業が社会で評価されている」「大きい企業に対してでも評価されている」という第三者評価になります。それによって、勢いがあることや成長力があること、信頼性を伝えることができる。

例えば、元「CAREER HACK」の編集長の松尾(彰大)さんがメルカリに入ったとき、業界内がざわざわしたんですよね。「メルカリに松尾さんが入ったんだ」「松尾さんが認めたメルカリすごい」みたいな風潮になりましたね。なにがすごかったかというと、これまでメルカリに興味がなかった転職潜在層にリーチすることができたことだと思います。

転職潜在層を取りたいとはいえ、どうすればいいかわからないと思うんです。確実に、潜在層のほうが優秀な方が多いです。いかに潜在層にリーチするのかが、非常に重要です。顕在層の多くが会社に不満があります。会社に不満がある人は、言うほど優秀じゃないんですよね。

優秀な人は会社で評価されていて、「このままいてほしい」と思われていて、本人もある程度会社に満足しています。そのため、なかなか転職する気になってない。いかに潜在層を会社に引き寄せるか。

以上になります、ありがとうございました。

(会場拍手)

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