『クーキー』はチェコ最後のフィルム映画?
生き生きとした人形アニメーションを支える監督のこだわりとは

映画「クーキー」公開前記念講座 #3/3

チェコの伝統芸能である人形劇やマリオネットの技術を駆使して作られた人形アニメーション映画『クーキー』の日本公開を記念して、人形アニメーター・真賀里文子氏と人形アニメ作家・澤田裕太郎氏の講演がデジタルハリウッド大学で行われました。このパートで学生からの質問に答えながら、映画本編の見所や、真賀里氏と澤田氏が今までに関わってきた人形アニメーション制作の裏話について振り返ります。

人形でなければ描けない世界

澤田裕太郎氏(以下、澤田):総評とか、まとめて何かありますかね。

真賀里文子氏(以下、真賀里):まとめですか。観ましょう。アハハハ。映画を観ましょう。

澤田:観てください。観ないとやっぱりわからないことが多いですから。

真賀里:あのねぇ、やはり良いです。なかなか。あぁ、こんなふうにして撮ったっていう裏話を知って観ても、やはり忘れます。

やはりクーキーがかわいいし、1人の少年の病弱な男の子のイメージの世界なんですけれども、それが非常にさりげなく、さすがあの監督だと思います。訴えかけてくるのでね。なかなかいいです。

浮浪者が出てきたりとか、ここにない案のイメージのところが結構あります。人の繋がりとか、それから村長を追い落とそうとする、アヌシュカっていう悪い奴の策略とかね。結構、人間臭いのも出てくるんですけど、見応えのある映画です。

人形が出るからって、間違ったアニメーションだって、最初に思っている人もいるんですけど、これはアニメーションでは描けない。

アニメーションはアニメーションでしか描けないものがありますけど、やはりこの糸操りと、棒使いと、手使いと、あらゆることをして人形を生きているように動かしてるので、これは一見の価値あります。観に行ってください。それからなんか思ったことがあったら教えてください。

澤田:メールを送る感じで。

真賀里:構いませんので送ってください。

澤田:ここに各キャラクターのぬいぐるみとか置いてありますけど、アヌシュカっていうのが真ん中で足組んで腕組んでいる奴、これは真賀里さんに悪い感じでポージングしてもらいました。

真賀里:アハハハ。あいつがクーキーを助けてくれる村長を追い落として、次期村長になろうと策略をめぐらしてる悪いやつです。

澤田:今、このクーキーの隣にいるこの茶色いサツマイモみたいな、これが村長です。ちょっと本編と少し色が、本編はもっと黒かったのに。

真賀里:いや、黒くないです。樹の株みたいな、なかなか味わいのある色。目がよく見えないんだけど、目がよく見えるようになった理由っていうのが、とてもおかしいです(笑)。

澤田:確かにずっとああいう森の中の物を使ってっていうだけじゃなく、いろいろあるんですよ。

撮影をする人にとってもすごく参考になる

真賀里:そうですね。撮影に興味がある方はおそらくメイキングでカメラの位置とか、使い方とか、すごいと思うんで。これやはり実際に撮影の人にも、ものすごく参考になると思います。

澤田:本編を見て、メイキングを見て、まずこれをやりたいと思う人が必ず出てくると思うので、日本の森で今度はやるという人が。

真賀里:でもコマ撮りやりたいと思った人は、私のところに来てくださいね。チェコに行かないで(笑)。

澤田:日本にたくさんいますからね。日本を代表する真賀里さんにぜひ聞いてみてください。

真賀里:1つ宣伝していい?

澤田:はい、どうぞ。

真賀里:日本と中国と韓国で、立体アニメーションの芽を作った持永只仁という人がいるんですけども、この人が川本さんに人形の手ほどきをし、岡本さんに人形の手ほどきをし、そして神保さんという学研の女性の方も持永さんから教わって、学研が人形アニメーションを初めて作るんですね。

そういう持永さんのドキュメントをWOWOWが作ってくれまして、(2015年)8月1日でしたっけ? 8月1日の13時WOWOWなんですけど、そこで流してくれます。

造形大の先生とか多摩美の先生とかに言ったら、学生たちテレビみんな持ってないのが多いんですよって言われたんですけど、持ってない人います? テレビ。あーよかった。それでWOWOWに入ってない人? 意外と入ってるんですねぇ。私は入ってないんですけどね。

それで7月30日でしたっけ? 明日の7時半から「WOWOWぷらすと」っていって検索すると出てくるサイトがあるらしいんですけど。あの人なんていったっけ。司会やる人。サンキュータツオって人と私とあと2人、忘れました。4人でトークします。

その時にいろんな映像を流そうと思います。持永さんと私が関わったアーサー・ランキンの仕事の映像とかを、ちょっとちょっと流すんで。たぶんおもしろいと思うんで見てください。

澤田:是非WOWOW入っている人とはご覧ください。

真賀里:「WOWOWぷらすと」は入ってなくても見られるんですって。

澤田:インターネット上で見られる?

真賀里:そうみたい。どうすりゃいいのかな。

澤田:会員登録しないといけないですか。

真賀里:いや全然全然。

澤田:しなくても普通に。

真賀里:うん、なんかね。なんて検索するの? 「WOWOWぷらすと」で検索すると出るそうです(笑)。

澤田:ぜひ皆さん、お見逃しなくということで。

真賀里:7時半だよね。7時半で私もいろんな映像を持っていって。CMでね、サントリーなんですけど爬虫類系のCMで、爬虫類系を出したんですよ。アルマジロ。

そしたらそれからものすごく爬虫類の注文がきまして、私もその頃はいろいろ爬虫類についてわかってたんですけど、今は全部忘れました。その爬虫類系のCMを集めてやってみようかなと思いますので、見てください。宣伝しました。ごめんなさーい。

澤田:皆さんこれ普通に無料で見れるらしいので、ぜひご覧ください。あと10分ほど質疑応答の時間を取りたいと思いますので何か『クーキー』の映画のことでもよろしいですし、真賀里さんの質問などありましたらどうぞお気軽にお願いします。こういうとなかなか手が上がりにくいと思うんですが、どうぞ。マイクを。

クーキーはチェコで最後のフィルム映画

質問者:メイキングを見ていますと、フィルムを回されていたみたいですけど、コスト面で監督が、CGよりも安くみたいな雰囲気のことを言われたような気がするんですけど。

真賀里:そうではなかったみたいです。

質問者:そうですよね(笑)。やっぱり!

澤田:撮影日数的にも、機材的にも、そうは思えないですね。

質問者:結果的にはかかったけどっていうことですか。

真賀里:かかったみたい。ただ最初、自分のクルーだけ、9人ぐらいでやろうと思ったらしいんですけど、最終的には60人とか100人ぐらいになっちゃって、『ダーク・ブルー』の時よりも規模が大きくなってしまったと書いてありましたね。ということは、私はお金がかかっていると思います(笑)。

質問者:最初はやっぱり8名で、そこから……。

真賀里:数名で、自分のクルーだけでやれるつもりで35日でやると。

澤田:そりゃあ、無理だと思いますよ。

真賀里:たぶんね、こんなに大変だとは最初は思ってらっしゃらなかったと思います。1つの人形に5人もかかって、さっきご覧になったと思いますけど、グリーンを持った人が後ついて、こうやって来てましたでしょ。あの大雑把さが、すごいいいんですけど。

あんなに大変だとは思ってらっしゃらなかったと思う。まぁたぶん、お金もかかったんじゃないでしょうか。回収のお手伝いを皆さんしてあげてください。映画を観に行って、アハハハ。

澤田:観に行けばそれが繋がりますから。

質問者:ありがとうございます。

北斎の波を一生懸命見た

澤田:ありがとうございます。他にもいらっしゃいましたらどうぞ。

映画配給会社の関係者:映画の配給会社の者ですが、今の説明の補足をいたしますと、今回フィルムで撮ったのは、監督がどうしてもフィルムで撮りたいと言って、おそらくチェコで撮るいちばん最後のフィルム映画だと思うということを、先日来日した時におっしゃっていました。

真賀里:そうですか。35で撮ってますもんね。

映画配給会社の関係者:そうですね。

真賀里:すごいですね。チェコもそういう事情になったんですか。

映画配給会社の関係者:そうですね。今回は、最初からフィルムでということは決めていたそうで。

真賀里:そうですか。私もこの8月の真ん中ぐらいかなぁ、またコンタックのCMを取るんですけど。これ19年目なんですよ。スタッフが全部一緒。誰も死んでないんですよ。

コンタックが良かったのかどうか、わかんないですけど。全員19年一緒に歳取って、「来年20年目だから何かする?」とか言いながらたぶんしないと思うんですけどね。これフイルムです。ずっと。ずーっとフイルムでやってきてます。

今はCMでもフイルムで撮ってるのは、半分ぐらいになったんだろうか。すいません、ヒロキさんのところはフイルムでしょ? デジカメですか?

関係者:デジカメです。

真賀里:あぁ。そうですか。やっぱりデジカメに。うちもフイルムじゃなくて、デジカメにいきましたからね。真賀里事務所も。

澤田:フイルムだと良いことって、何かあるんですか?

真賀里:好みもあると思うんです。要するに光のラティチュードが倍ありますでしょう? 黒に対して非常に柔らかい綺麗な黒が出るんですよね。それについては、やっぱり照明さんの計測がすごい必要になってくるんですよ。

私もフイルムで昔撮ってたんで、本当にラッシュが上がるまでドキドキでした。針がどれぐらいに振れるか、こことここのコントラストが2分の1にするのか、3分の1にするのかとかね。結構大変なんですよ。

でも今はモニター見たらそのまんまが映るんでね。だからそういう意味では、私は学生さんたちにとって本当に間口が広くなって、敷居が低くなって、これからいろんな映像が出てくると思うんですよ。期待してるんです。

澤田:ありがとうございます。他に何か気になる事、何かご質問ありますでしょうか? この機会に是非、あんまり質問する機会が、真賀里さんに質問する機会があまりないと思うので。

真賀里:遣唐使の波、良かったでしょ。聞きたくないですか? アハハハ。

澤田:遣唐使の波はどうやって?(笑)。

真賀里:なかなか迫力がありましたでしょ。私の小さいスタジオなんですけど。その後に東シナ海と、飛行機が無着陸飛行を日本の青森からアメリカまで行った太平洋を撮ったんです。空を。ですから東シナ海と太平洋と、うちの小さいスタジオで撮りました。ちょっと規模が大きいような気もするんですが(笑)。

澤田:あれって何か、波をぐるぐる回るようなやつってことですかね。

真賀里:あれはみんな手で回してます。いくつか撮って。波はどうしても私はこんな感じにしたいっていうのを、ものすごいテストしまして。

実際にこういう形のブルーをやってみたりとか(手で波の動きを表現)、歌舞伎のような青海波を書いて、それをこうやってみたりとか(手を上下させる)、すごいテストしたんですけどね。やっぱり丸に模様を描いて、そしてそれを大きく持って何本か重ねてっていうのが、1番いいかなぁと思って。

北斎を一生懸命見ました。北斎の波を本当に日夜見ました。こんな感じにしてくださいってお願いして、やって、360度の円盤をこっちとこっちにつけて、みんなでこことこっちで、360分の1じゃなくて720分の1でとかね。穏やかな時は。次はじゃぁ360分の1ずつとかね。

あれの中で光とか、全部すごい綺麗だったと思うんですけど、これは全部スライダックで、何も合成してない。雨だけね、雨は本当にコマ撮りの場合すごい大変なので。お芝居によっては銀線を使ったりとか、セルに書いたものを使うとか、いろんな方法があるんだけど。これだけは妙にリアルの世界だったんで、実際の雨のシーンをダブらせました。

でも光も稲光も、全部アナログで同時撮影です。だからスライダックとかこうふうにあって、あのスライダックとこのスライダックは70ボルトまである、80まで上げて。じゃあ90まで上げてっていうんで、交互に光ったのをバーンッバーンッ! という感じで出してました。そんな感じで撮ってました。

澤田:『クーキー』とはまた違う苦労な点がありますよね。

真賀里:いやぁおもしろかった。テストしたらそうなるところにたどり着くと、やったーみたいな。

1年弱、スタジオでみんなで仲良く撮影をしていた

澤田:撮影は何日かかったんですか? 遣唐使。

真賀里:あれはでも、半年、1年弱かな。

澤田:『クーキー』よりかかってますね。

真賀里:うーん、コマ撮りはかかりますね。

澤田:1年か……。

真賀里:その間は、みんなうちのスタジオで共同で、2升炊きの釜を買ってきまして、今日は何が食べたいって、みんなでご飯を作って。今日はいくらかかった? ちょっと高いから明日は納豆ご飯にする? みたいなね(笑)。

そんなに予算があるわけじゃないんでそういう暮らしをして、ずっとみんなで仲良く撮影をしていました。

澤田:どうもありがとうございます。ではどうでしょう何か、もう無いですかね。質問は。大丈夫ですか。大丈夫そうですね。よろしいですか。はい。

真賀里:後で聞きたいことがあったらメールをください。

澤田:皆さん何かたぶん気になることが、終わった後特に聞きに行ってもいいんじゃないでしょうか。いろいろ真賀里さんにおもしろいこといろいろ聞けましたけど。ではそろそろ『クーキー』の特別公開講座をこの辺で終了したいと思います。

皆さんアンケートが配られていると思いますので、こちらの会場の出入り口で回収しますので帰り際にご提出をお願いいたします。ぜひいろいろご感想などお聞かせください。

来月『クーキー』が8月22日(土)より、新宿武蔵野館と、渋谷シネパレスのレイトショーで始まって、その後どんどん全国に広がっていくと思いますので、今日いろいろメイキングとか、真賀里さんが仰っていたこととか、ちょっと頭に残しつつ、是非劇場まで行ってごらんください。

それでは映画『クーキー』公開前記念講座、「パペット映画の新たな挑戦、チェコ映画『クーキー』のメイキングを徹底解説!」をここで一旦終了とさせていただきます。皆さんどうもありがとうございました。

(会場拍手)

日本で人形アニメーションの長編は『くるみ割り人形』しかない

真賀里:すいません、もう1つ宣伝いてもいいですか。

澤田:はい、どうぞ。

真賀里:アハハハ。ごめんなさい。私は35年前に『くるみ割り人形』っていうの作ったんですけれども、このリメイク版というか、何か出たんです。チャイコフスキーの音楽のかけらもない……、悪口言ってませんからね、音楽が相当寂しかったし、私版の、真賀里文子編集版を作りまして。

96分を72分にしまして、スッキリと非常に見やすく、非常に楽しくなったものを、阿佐ヶ谷の学校の地下劇場、ユジク劇場というんですけど、9月にやりますので、今度は1,000円ぐらいで見られると思いますので、ぜひ見てください。

4回しかやらないんですけど。9月7日、9月14日、これが20時40分からです。21日と28日が20時20分。今チラシを一生懸命作ってるんで、今度持ってきますので。

澤田:お願いします。

真賀里:見に来てください。日本で人形アニメーションの長編は、それしかないんです。お金がなかなか無くて、作らせてもらえなくて、自分で作るほどお金ありませんし。億とかかったんでね。サンリオの社長が出してくれて作れたんで。

今、サンリオにお願いしてるんですけど、ちょっと歳とって息子の世代になってるんで、はいはいっていうわけにはいかないんで。もし作れるようになったら、皆さん手伝ってくださいね。よろしくお願いします。宣伝でした。

澤田:よろしくお願いしいたます。9月の毎週月曜日ですかね。7、14、21、28ですかね。

真賀里:あっ偉い! そうですか。

澤田:ということは皆さん仕事が終わってから見に行ける感じです。

真賀里:20時ですからね。そうですね。それで毎回私がいます。そしてトークショーで、どなたかに来てもらおうとは思っています。来てください。

澤田:是非是非、行きます!

真賀里:よろしくどうも。

澤田:是非皆さん、よろしくお願いいたします。それでは一旦ここで締めさせていただきます。皆さんアンケートとか、あとこちら人形の写真撮影とか全然可能ですので、よろしくお願い致します。皆さん、どうも有り難うございました。遅くまで。

(会場拍手)

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