チェコで初登場1位!
映画『クーキー』のスゴさを日本を代表する人形アニメーター真賀里文子氏が語る

映画「クーキー」公開前記念講座 #1/3

数々の映画賞を受賞し、実写映画として高い評価を受けているチェコの人形アニメーション映画『クーキー』のメイキングに、人形アニメーター・真賀里文子氏と人形アニメ作家・澤田裕太郎氏が迫ります。繊細なマリオネットを駆使しながら、チェコの森の中で複数の登場キャラクターを同時に動かして撮影された本作品。1つの人形を5人がかりで動かしたり、映り込んだ糸はポストプロダクションで1つ1つ消していくなど、映画が完成に至るまでには気の遠くなるような作業が繰り返されました。クリエイターを目指す人だけではなく、映画が好きな人でも楽しめる講義の内容となっています。

映画『クーキー』公開記念講座に人形アニメ製作者が登壇

澤田裕太郎氏(以下、澤田):本日はお越しいただき誠に有難うございます。映画『クーキー』公開記念講座ということで、今日は僕にとっては一緒の壇上に立たせていただくのも恐れ多いという感じですが、日本を本当に代表する真賀里文子さんにお越しいただきまして、映画『クーキー』についていろいろお話をさせていただきます。

では今日お越しいただいた真賀里さんの紹介映像からご覧いただきたいと思います。よろしくお願いします。

(真賀里氏の作品を紹介した映像がスクリーンに映される)

澤田:真賀里文子さんの過去作品などいろいろご覧いただきました。真賀里さん、改めまして自己紹介をお願い致します。

真賀里文子氏(以下、真賀里):これ見てても、「あぁ、やっぱりコマ撮りはおもしろいなぁ」と、つい思ってしまうんですよね。

何か無限の可能性があって、あれもあってこれもあって、資生堂のヌードは糸操りなんですけど、それから遣唐使も、サトー無線もみんな同じかたちとして、人形の映像としてあるんでね。

だから人形の持ってるパワーっていうのがおもしろいなぁと思うんですね。楽しんでいただけましたね(笑)。

澤田:はい、もちろんです。

真賀里:ありがとうございました。

(会場拍手)

澤田:ありがとうございます。真賀里さんの作品は、皆さんCMとかで確実にご覧になっていると思うので、もしまだ気になる方がいらっしゃいましたら、家帰って調べてみればどんどん出てくると思います。それでは次に私の自己紹介映像を短いですがご覧ください。

(澤田氏の作品を紹介した映像がスクリーンに映される)

澤田:すごい短い。

(会場拍手)

澤田:シークバーのスピードの進み具合が全然違いましたね。僕はこのデジタルハリウッド大学ができた当初の1期生なんですけど、そのころから授業と関係ない人形アニメーションを勝手にやってまして、それでいろいろそこからお仕事させてもらったりとかして、今でもフリーランスとして、人形アニメーションの他にもいろいろ2Dのアニメーションのお仕事とかを行なってます。

今回、大学、大学院を卒業しまして人形アニメーションやってる人間ということで、この度こういった舞台に立たせていただきました。最後までよろしくお願いいたします。

映画『クーキー』は美しい森のシーンが多い

澤田:ではなんとなく登壇者の紹介ができたと思うので、じゃあさっそく、『クーキー』の予告編をまずご覧ください。

澤田:はい。ありがとうございます。『クーキー』予告編でした。これ200個限定キーホルダーの1つです。というわけで『クーキー』は、真賀里さんも僕も1度試写会で見させていただいたんですが、どうでしたかね『クーキー』? まず率直な感想を聞かせていただければ。

真賀里:皆さん、見てないんですよね。

澤田:皆さんこの中に、いないですよねまだ? 何か試写会で見たっていう方とか、あっ! いらっしゃいます。

真賀里:じゃあ聞いてみましょうか。いかがでしたか?(笑) かわいくておもしろいですよね。おもしろかったですか? すごいですよね。私も木馬座で影絵とかいろいろやって。それで「ひょっこりひょうたん島」をやってたひとみ座で人形劇やったり、まぁ全部アルバイトですけどね。いろんな人形のかたちを経験してきてるんですが、やはりこれはすごいです。

メイキングをご覧になるとわかるんですけど、本当に人形がかわいいし、まずこんな大変なことをなんで思いついたのっていうのがなかったですか?

見ながら、「これで何分か作るわけ?」というのがあって。あと糸を消すとか人間を消すってことよりも、まぁ過酷な自然の中でというか。スヴェラーク監督は、チェコっていうのは3分の1以上が森だとかって言っていて。森はすごいきれいな森なんですって。

たぶん監督はお喋りになると思うんですけれども、この森の中でどうしても人形を動かして、自分の子供たちにお芝居を見せるのに、自分の国の森がこんなに綺麗で素敵だっていうのを知らしめたいっていうのが、かなりあったらしいですね。3DCGの中の森とか自然じゃなくて。

そういう意味では『クーキー』は、とても成功しています。水の中や、森のきれいな霧の中とかね。とても詩情あふれる、そしてとても優しい映像がいっぱいできているんです。これは8月22日にご覧になってくださると、もっと楽しめると思いますがどうでしょうか。

澤田:その通りだと思います。本当にほぼ森のシーンですよね。クーキーが森でいろんな仲間たちと出会って、という。

メイキングを後でご覧いただきますけど、そのメイキングがすごいことになってまして。地面に穴を掘って穴の中に人が入って、そこから人形を動かしていたりとか、後々メイキングで、その辺を真賀里さんにご説明をお願いしたいと思います。

メイキング見てみましょうか、大丈夫でしょうか。さっそくじゃあメイキングの方を見てみましょう。

真賀里:メイキングはね、見逃さないでよぉーく見ると、「わっわっわっ! こんな方法で撮ってる!」ってびっくりします。チェコ人はそんなに器用じゃないし、なんとかかんとかっていうのを本人たちが言ってますけど。

人形劇の歴史がすごいあるんですね。ですから役者さんがとても上手です。人形を動かすのがとても上手です。この辺を見逃さないで見てあげてください。

澤田:人形の操演をしている人たちですね。何人がかりでやっているのかとか、その辺も注目していただければと思います。

気の遠くなるような作業を経て作られる人形アニメーション

澤田:はい。『クーキー』のメイキングでした。相当すごいことやってまして。実際に撮影で使われたクーキーがこちらにいらっしゃいますが。これは真賀里さんにポージングとかしていただいて、たぶん今日だけしか見れないクーキーです。

劇場公開が始まったら、おそらく展示されると思うんですけど、その時はショーケース入りの、「これ以上近づくな」みたいな感じになっちゃいますので。

今日こんなに間近で見れるのはないと思うので、みなさん後ほど、興味ある方は写真の撮影などしてください。森の中でもたくさん撮影されたから、かなりいろんなところが剥げているかもしれませんけど。

では真賀里さん、メイキングについていろいろお話をしていただきたく思います。

真賀里:ため息でますよね。何回見てもため息がでますね。本当に、まずはよくやるわなぁと思ったってこと。初めて人形を使って作ってるんだけど、子供の頃は人形劇とかがとても好きだったらしいですよね。そんな下地があったから作ったんだと思うんですけど。

『コーリャ 愛のプラハ』というとてもいい映画がありまして、この監督は『ダーク・ブルー』もそうだし、全然違うテイストのものを作ってるんですけど、世代の違う者たちの愛のつながり方とか、そういう意味では何か流れているものが一緒なんですよね。

ですから私はこの『クーキー』を見たときに本当に涙が出まして、いまだに私はメイキングを見ても、何を見ても、そのイメージがハートの中にあるので楽しめるんですけど。

皆さんメイキングの技術的なところだけに興味があるわけではないと思うんですけど、この中で人形アニメーションを作りたいと思ってらっしゃる方は、1人か2人でもおありですか?

(会場挙手)

澤田:作りたいというよりは、作っている人がかなりいらっしゃいます。

真賀里:もう作ってますか。ヨウキさんのお友達の方ですか。じゃあ作ってますね(笑)。クランクアップはしましたか? おめでとうございます。私の生徒で、うちへ来てた優秀な生徒が今、たぶん一緒に仕事をしていると思います。

1つの人形を5人ぐらいで動かしている

真賀里:確かに人形は、何もしないと本当にでくの坊なんですよね。そのでくの坊にこれだけの演技をさせるっていうのは、役者さんたちもすごいし、こういう方法をとった人もすごいし、絶対舞台ではやらないような人形使いをしてるんですよね。

ちょっとどんなところか見てみましょうか。まずトラックのところなんか、必死で逃げてますよね。実際にどうやって逃げているか。アニメーションだったらあの演技はできるんですけど、あそこまでこんなふうな動き(身体を揺らす真賀里さん)はできないと思うんです。

澤田:トラックのところは、火をつけられているところですかね?

真賀里:そうじゃないです。 トラックのとこから、初めてクーキーに命が宿ったとこです。この辺からちょっと流してみてもらえますか。

(スクリーンに映像が映る)

澤田:ちょうどクーキーが捨てられて、初めて動き出すところ。

真賀里さん:そうなんですね。それでこれをどうやって撮っているかが、これの後になります。

真賀里:ここでトラクターが2つあって、1つのトラクターの下をクーキーが必死に逃げてるんですけど、こっちのトラクターに乗った人がこうやって動かしてるです(右手を上下させる真賀里氏)。たぶん2、3回は轢いちゃったんじゃないかなと思うんですけどね。割合危うい撮影をしていますね。

澤田:クーキーのパペットも、撮影用にたくさんあるんですけど。

真賀里:この白い人が動かしてるんですね。そこに小さい子が。見えます? ここに(クーキーを指さす)、あのおじさんが(白い服の男性を指さす)。

だからかなり危うい撮影をして、本当に2、3回は潰れたんじゃないかなと思うんですけど、そういう事はないとは聞いてますけどね。

それから戻って、村長の歩き方、どうやって歩いてるのか? どうやって芝居してるのか? というのが、かなりわかるところがあるので、流してみてください。

カメラに注目してください。すごい工夫したカメラをつけているんですよね。穴を掘って埋めているんです。歩いているところなんです。これをきっちり歩いてるんです。グリーンバックのところで止めてみてください。

これですよね。右足、左足持ってる人、体の人、5人ぐらいで動かしてるんですよね。この人たち人形劇をやる時、こういう動かし方をしてないと思うんですよ。

マリオネットだとしたら、まぁギリギリ2人。肩とか頭とか出たものを1人がこう操るのね。そういう操り方をしないんですけど、この人たちは実に臨機応変に上手な演技をしてるんですよね。

(メイキング映像が再生される)

それがこういう動きになります。周りを全部消して、後作業がすごい大変だったと思いますね。さっきの轢かれるところですよね。この人形の数は20体でしたっけ? 20体あるんですけど、このクーキー作ったのが、どなたかのシーツらしんですよ。

澤田:デザイナーさんの?

真賀里:アマニタさんのシーツでやるのが一番いいと思って作ったら、実は20体分しかなかったという。20体っていうのはそういうリミットがあった20体なんだそうですね。

監督はハリウッドではなくチェコでの撮影にこだわった

澤田:スタートが結構、適当ではないですけど、急におかしなスタートを切ってますよね。これも撮影期間が当初よりすごい延びちゃったんですかね。

真賀里:そうですね。30日でできるだろうと思ったら3倍かかって、しかも撮影の季節の関係で、自然の中なので大雨の時には雨のシーンが撮れればいいけど、そうもいかない。

カメラが濡れてしまうし。だから恐らく雨のところは雨を降らせていると思うんです。カメラにまで雨が降ると被害が甚大になるのでね。だから2年間かけて撮影してるんですね。

人形使いの上手い人のところもあるんですよね。どこだったかなぁ。みんなに上手い人を見てもらおうと思って。チェコの人形使いの名人じゃないかと思うんです。

さっき皆さんご覧になったと思うんですけど。グリーンの前で動かしてる、グリーンの横で、横移動のカメラがありましたよね? モーションコントロールみたいなところがあったところです。

(映像が再生される)

真賀里:ここをちょっと見てください。

この足の使い方。すごいですよね。これできっちり人形が生きてますからね。さっきのところ、もう一度見せてください。

このやってる人の顔がね、すごいうれしそうなんですよ。なんか絶対に楽しんでやってる顔してません? ウフフフ(笑)。

澤田:キャラクターの心情が同じように現れてますね。

真賀里:だからアヌシュカになっちゃってるおじさんが、アヌシュカを操っているという。ここは何回見てもほっとする、嬉しい、いいなぁ、アニメーターと一緒だな。そんな気持ちになるところなんですよ。なかなか足さばきが上手いですよね。こんなに小さいのに。

結局彼が上手いし、上の人たちのサポートがチームとしてやっているので、すごい上手いと思うんですよ。ここを見たいっていうところありますか? 火をつけるとこ? 「インディ・ジョーンズ」やってるところですか?

澤田:相当アナログですよね、あれ。普通に火つけてるのを投げつけているっていう。

真賀里:でも、ちゃんと燃えないような手袋してますよね。そこだけは。見てみましょうか。もうアナログの極みだと思いませんか。よくやるなぁ。

澤田:確かに人間がやってたら、もっと大変ですよね。大掛かりなセットを作んなきゃいけないけど、人形だからビュッて投げるだけで……。

真賀里:そうなんですよ。これは「インディ・ジョーンズ」を相当調べたって言ってましたね。「インディージョーンズ」のカットのつなぎ方とか、秒数とか動きとか、カメラアングルとかを相当調べて、オマージュも含めて負けないようなものを作りたかったとか言ってましたけど。

やっぱりハリウッドの話が出るので、ハリウッドに憧れがあるのかなぁ。憧れる必要なんて何もないのになんて、ちらっと思ったんですけどね。やっぱり映画はハリウッドでしょうかね。違いますか。

澤田:この監督自身はハリウッドから声がかかってたみたいですね。

真賀里:でも行ってないんですよね。

澤田:それでもやっぱりチェコで作品が撮りたいっていうので。

真賀里:すごい正しい選択だと思うんですよ。ハリウッドから声がかかったら、「ハイハイハイハイ」って、本当に2つ返事3つ返事で行っちゃうでしょ。日本の人でもすぐに行っちゃうと思うんですよね。

澤田:確かに規模が違いますもんね。

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デジタルハリウッド

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