世界最大のデザインクラウドソーシング「99designs」

パトリック・ルウェリン氏(以下、パトリック):ご招待いただき、ありがとうございます。さて、今日のセッションでは何を話しましょうか。このセッションは、できるだけインタラクティブにしたいと考えていますので、私の経験や会社がどんなことをしてきたかなど、どんどん質問していただきたいと思います。

今日は、私の会社が海外進出をしたときのアプローチについてお話します。特に、小さなスタートアップの会社にとって、私たちがどのように成長したか、また、オーストラリアの会社からアメリカの会社、そしてグローバルな会社になったかなどが興味深いのではないかと思います。

みなさんは、大きな市場にいるという特別優位なところから始められるということを除けば、日本のスタートアップの若い会社が経験することは、私たちが学んだことと、かなり似ているのではないでしょうか。また、いつ海外進出するか、国内のお客さんを相手にするか、それとも海外に出るかを検討する時期はいつかなどについても、話してまいります。

どこから始めましょうか。私たちの会社は、世界最大のグラフィックデザインのマーケットプレイスです。日本では、かなり一般的になっているクラウドソーシングという言葉を創り出した、また、そのパイオニアでもあります。

99designsは、2008年2月にSitePointという会社からスピンオフしました。SitePoint社内には、Photoshop Tennisのゲームをするデザイナーのフォーラム(掲示板)がありましたが、それが実は、世界初のデザインのクラウドソースのマーケットプレイスのスタートのきっかけとなりました。

より大きな市場を求めてサンフランシスコへ進出

私の故郷、メルボルンのイエローリバーで99designsとしてスピンオフしたのは、2008年2月でした。スタート当時、私たちはデベロッパー2人を雇えるくらいのキャッシュフローしかありませんでしたが、3年間で急成長しました。

実際、サンフランシスコに移ったのは、2010年2月です。私は、2009年9月に入社したので、創始者ではありません。当時は8人のチームでした。私の仕事は会社を発展させて、アメリカに進出することでしたので、役職はアメリカのプレジデントだと冗談を言ったものです。バラク・オバマと私が、アメリカのプレジデントです。

(会場笑)

何故サンフランシスコに移ったかというと、お客さんの近くへ行きたかったからです。オーストラリアで始めましたが、国が小さいので海外のマーケットに焦点を当てていました。最初のサイトはドットコムで米ドル建の支払いのみを受け付けていました。

オーストラリアからアメリカの顧客ベースにサービスを提供していましたが、時差のせいで、あまりうまくいかないだろうと考えていました。そこで、最初のステップは現地に移って、小さな顧客サポートチームを作るためのオフィスを開くことでした。

それによって、お客さんと近くなり、電話で話したり、リアルタイムのチャットができたりなど、製品開発でもっとインタラクティブなアプローチができることになります。それは私たちにとって、大きな収穫でした。まず、いちばん初めにしたことは、ウェブサイトに電話番号を載せることでした。

すると早速電話が鳴り、電話の向こうにいる人が言いました、「よかった。君たち、実在しているのだね」。電話で応対することは、まさにお客さんとの信頼関係を築くことでした。

99designsに登録するデザイナーは100万人以上

99designsのサイトを見たことがない方もいらっしゃることでしょうから、今日はまず、このサイトについて、統計を交えてお話しします。デザインを無料でアップロード、デザイナーが価格を交渉、お客さんは気に入ったデザインを選択できるなどのコンペサイトとして知られています。

基本的には、お客さんが特定のデザイナーと継続的に仕事をするという形態ではありません。一方、デザイナーのポートフォリオを見て、デザイナーと1対1で仕事を依頼するツールも用意されています。

また、小規模のデザインの仕事を迅速に行う、タスク系のサービスもあります。ここで重要なのは、このコミュニティはグローバル規模で、100万人以上のデザイナーが登録していることです。アメリカで、デザイナーに支払った報酬の総額は1.1億ドルで、毎月の支払額は300万ドルになります。また、スモールビジネス35万社にサービスを提供してきました。

サイトのオーディエンスは、他の地域に比べると、アメリカに大きく偏っているといえます。私が2010年にサンフランシスコに移ったときは、顧客層の80%がアメリカでした。現在は、60%が北米なので、海外進出が上手くいったことになります。

グローバル規模のコミュニティですから、1.1億ドルの報酬は、190を超える国のデザイナーに支払われました。文字通り、世界中に登録しているデザイナーがいます。その内、もっとも多いのが北米、中央ヨーロッパ、そして東南アジアです。ここ日本でも、コミュニティを築く必要があります。

複数の言語が使える人材を採用するならベルリンがおすすめ

現在、1万人のデザイナーが常にオンライン状態で、365日24時間、2秒ごとに新しいデザインがアップロードされますので、非常に活気のあるマーケットプレイスです。私たちは、Accel Partnersという会社から資金を得ました。この会社の名前をお聞きなったことがあるかどうかわかりませんが、Facebook, Groupon, Etsy, Dropboxなどの起業初期に投資をした会社です。

私たちは、2011年に資金を得て、海外進出戦略を実現することができました。最初の3年間は、ドットコムで米ドルの支払いのみを受け付けていました。2011年、ホームマーケットのオーストラリアに最初にローカライズしましたので、ほとんどの社員はオーストラリアで仕事をしていました。

(お客さんからの)電話連絡もオーストラリアからでした。IT系の会社にありがちですが、社員はコーディングを好みますが、電話での話は好きではありませんでした(笑)。そして、オーストラリアのお客さんも電話連絡とオーストラリアドルでの決済が可能になりました。

それからイギリスとカナダでも同様にして進出しました。最初にアメリカに進出したときの経験がクールだったので、他の英語圏の国ではどうか、検討してみることにしたのです。

2012年には、ベルリンをベースとした12Designerという小さな会社を買収しました。99designsととてもよく似たマーケットプレイスで、イヴァ(Eva Missling 12Designerの当時のCEO)が不在なので言ってしまいますが、99designsの真似をしたような会社です。

(会場笑)

イヴァは、4人の社員がいて、5か国語対応のオフィスを提供してくれましたので、ヨーロッパ進出のベースとして使うことにしました。8月に12Designerを買収、9月にドイツ進出、そしてフランスに進出しました。

2013年にはイタリア、そしてメキシコ、チリ、アルゼンチンとスペイン語圏のラテンアメリカに進出。それから、オランダとシンガポールに進出しましたが、こちらでは英語のみを使いました。2013年8月には、マーケットとして大きいものの、他の市場とは大きく違うブラジルへ進出し、ポルトガル語をサイトで使用しました。昨年、最初のJPトライアルバージョンを作成して、日本進出の準備をしています。

ブラジルでもちょっとした買収をして、リオデジャネイロに3人の社員がいる小さなオフィスを持っています。ベルリンは4人から12人のオフィスに成長しました。ヨーロッパの拠点としているのはベルリンです。

イギリスの仕事はベルリンから行っています。複数の言語が使える人材を採用したければ、ベルリンは素晴らしい国際都市ですし、同様の選択肢としてはロンドンがありますが、ベルリンのほうが人件費が安いです。

ベルリンは良い都市なので、ヨーロッパ人が移住したがっている場所でもあります。そういう意味でも、(ヨーロッパの)本社として良い場所です。スペイン語圏と自国の言葉であるポルトガル語を使う、ラテンアメリカの仕事はリオデジャネイロで行っています。

まずは地域のITコミュニティに参加する

質問者:海外進出は人件費を安く抑えるためだったのでしょうか?

パトリック:いいえ、今までの経験によるところです。オーストラリアから北米に移ったとき、地元にいるメリットが顕著であることを知りました。顧客サービスを提供できますし、地元でのマーケティングも容易になります。

99designsのアプローチは、まずITコミュニティに浸透することから始めます。地元のスタッフが、その地域のスタートアップ支援のイベントなどに参加して、アーリー・アダプターに使ってもらう狙いがあります。

これは一般的に見て、さらに顧客ベースを広げて行くときに強い基盤になります。すべて地元にいることと、地元のローカルな知識によります。私たちのサービスに要求されるのは、密な「接触(タッチ)」です。

デザインは非常に個人的なものですし、価格はほぼ500米ドルです。これをクレジットカードやPayPalで購入する際、いろいろな考えを巡らせるでしょう。特に自己資金で起業しているフェーズのスタートアップであれば。その場合、この価格帯の金額を支払うときの安心感を得るために、お客さんは電話やリアルタイムのチャットで、私たちと直接話したがります。

初めて99designsからデザインを買うお客さんの多くは、スタートアップのアントレプレナーなので、デザインのプロセスに関しての知識はあまりありません。そのお客さんに、個人的に知識を提供することが大切になります。当たり前のことですが、現地の言葉でそれをしなければなりません。それについて、もう少し詳しくお話します。