2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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一ノ瀬メイ氏(以下、一ノ瀬):あと「他人との関係を築く前に、もっと自分との関係を築かないと、最後に何も残らないんだな」と感じた瞬間もあった。その時は、どうやったら自分に矢印を向けられるのか一切わからなかったんだけど、「それをしていかないと最後は空っぽだな」と悟ってから徐々にできるようになっていった。
他人軸や自分の肩書で選択をするんじゃなくて、一個人として自分がやりたいことを言語化して行動に移していくことができるようになった時に、「水泳が人生じゃなくて、人生の中の水泳だ」と思えたし。
あと「自分に向けているジャッジメントを人に向けているんだな」と。自分を深掘りしていった時に、いろんな思い込みや差別があると思うんですけど、自分に対してやっていることを他人にもやっているんだと気づいたんです。
私が最初にそれに気づいたのは、高校3年の時。うちの学校はけっこう進学校だったので、大学受験で、みんな国公立やいい大学と言われるところをどんどん受けている中で、私は最初から唯一スポーツ推薦で近畿大学と決めていて。
今まで誰がどこの大学を出ているとか、パラ水泳の先輩がどの大学出身とか一切気にしたことがなかったのに、自分の身に迫ってきてみんなの話題に上がり始め、ジャッジされ始めた時に、初めて誰がどの大学を出ているかが気になった。
自分の中で「みんなが国公立を受けているのに、自分だけスポーツ推薦で大丈夫かな?」とセルフトークが始まったタイミングで、人にも「え、その大学でいいの?」「あの人、この大学出ててすごいな」と思い始めた。だから、「自分に向けるジャッジと他人に向けるジャッジの物差しは一緒なんだな」とすごく感じたんです。
自分の中で何が起きているか、自分に対してどういう判断を下して、どういう物差しで測っているかを知れば、他人に対して何を向けてしまっているのかも知ることができるんじゃないかなと感じ始めました。
湯川カナ氏(以下、湯川):ちょうどそれが、前半の最後にしようと思っていた質問です。
メイちゃんがマイノリティの立場で、「自分は障害者というカテゴリーの外に出ることにしました」と言っても、マジョリティのほうが「でも障害者でしょ?」というカテゴリーを持っている。あるいは逆に言うと、自分がマジョリティであるというカテゴリーを持っていると……。
こっちが外しても、「そっちはどうするの?」と思っていたのね。だけど、カテゴリーはたぶん肩書と同じで他人軸である。あるいは社会の評価を基にしたものであるとしたら。
マジョリティもマイノリティも同じ意味合いでそれぞれ肩書なんだから、自分が何かの軸でマジョリティのほうにいたとしても、マジョリティ側からも「マジョリティだよね」というカテゴリーを外さないと、本当のダイバーシティを一緒にやっていく環境はできないのかなと思って。
ダイバーシティ・マネジメントというテーマで事前にメイちゃんとお話ししていた時には、「ちょっと難しいよね」と話していたんですよね。どうしても私は経営の立場で上から、「我が社にいろいろな人たちに来てもらい、活躍してもらうにはどうしたらいいかね」と経営者や管理者として、どのようにダイバーシティ、多様性をマネージするかを自分事だけど他人事のように考えていて。
でも、自分がマジョリティ、「経営者として」とか「管理者として」「マジョリティとして」と言っている時点で、たぶんダイバーシティ・マネジメントなんてできないんだなと今思ったんだけど。
一ノ瀬:すごい。
湯川:ねえ。「人の問題じゃなくて自分の問題だぜ」という。もうすぐ50なのでいろいろな社会を見てきたけど、個人の名前で生きていない人ほど早く老けるみたいなね(笑)。昨日、ヤフーの設立の時に一緒にいたメンバーと久しぶりに会って話していたんですけど、その後哲学者になったりして、自分の名前で生きている人は「その人」なんですよ。
「年齢が高くなると肩書も偉くなるよね」「他人に評価される軸でずっとやってくると、すごく老けるよね」という話もしていたのね。ああ、いかん、これもなんか偏見があるかもしれないけど。
一ノ瀬:(笑)。
湯川:「なんでだろう?」と思っていたんだけど、常に自分自身の考えではないところでジャッジしていると、自分もそういう感じでジャッジされている。本当に評価軸が社会と一緒になっちゃって、自分自身の固有の評価軸を持たないと、本当のダイバーシティ・マネジメント、ダイバーシティなんてできない。
自分の中ですべてのカテゴリーや肩書を外して、一人の人間として目の前の一ノ瀬メイだったり湯川カナだったり、ちょっと面倒くさそうな人と向かい合う覚悟があるかどうか。そこに懸かっているのかなという気がしちゃいました。
湯川:メイちゃんは組織にいて、いろんなところでいろんな人と接すると思うんだけど、自分の言いたいことを言えたり、パフォーマンスが上がったりするのは、どういう相手や環境なのだろう?
一ノ瀬:最近痛感しているんですけど、自分で自分の面倒を見られる人はすごく居心地が良い。それはたぶん自分軸で生きているということだと思うんです。
他人や環境に自分を埋めてもらわないといけないんじゃなくて、自分がやりたいことをやっていて、自分の欲しいものは自分で自分に与えることを実践している人は、一緒にいて居心地がいいなと思っていて。
自分のことをよく知っていて、自分の欲しいものをわかっているからこそ、それを自分に与えることができる。そういう人って、何だろうな。自分を理解できているからこそ他人を理解し、目の前の人にも同じことができるんだなと思う。
あとは、自分ですでに満足感を得られているから他人と話す時もフラットでいられて、自分を受け入れているからこそ他人も受け入れることができている。
湯川:自分を受け入れることは、すごく大事かなと思う。メイちゃんがパラリンピアンとしてガリガリやっていた時のように「自分は何が足りない」とジャッジし否定し、しかも他人軸で評価しながらやっている状況では、やはり他人のことも厳しく見る。
一ノ瀬:本当にそうなんですよ! めっちゃ他人に厳しかったもん。ビビる。自分の中に「水泳の練習はこうしないといけない」というのがあるから、例えば「途中でトイレ休憩へ行くとかあり得へん」「トイレ休憩へ行くんやったら、この一番きついメインセットじゃなくてその前のイージーで行っとけよ」とか。
自分の中にあるルールと違うことをやっている人が許せないんですよ。それで結局愚痴ばっかり言っちゃう。「なんであいつ、ああいう練習の仕方をするの?」「なんであれで結果出てるの?」と愚痴が多くなる。
湯川:自分のイメージと違う、自分が思うようにやっていない他人に対する愚痴だったり、それを実現できない環境だったり、社会に対して怒りばかりでやってきたのはそういう感じなんや。
一ノ瀬:そういうことですね。
湯川:何か不機嫌な人だった?
一ノ瀬:不機嫌も多かったけど、感情を表に出さない選択はできていたと思う。
湯川:なるほど。
一ノ瀬:自分の中に不満がいっぱいあったとしても、人に当たることはしていなかったと思う。でも、ハッピーではなかった。
湯川:自分を受け入れてないからなんだよね。
一ノ瀬:自分がやりたいことをやっているんじゃなくて、頭で「こうじゃなきゃいけない」と思っていることをやっていた。結局自分がすごく我慢しているから、他人にも我慢を強いたくなる。
湯川:うん。いや、本当だよね。
一ノ瀬:そういうループにあったなと思います。
湯川:今の話だと、「障害」というカテゴリーだっていろいろあるのに、「障害者が来るから車いすを用意しようぜ」となったら、メイちゃんの場合は手がないから「いや、私は違います」となる。もうね、私も「女性ならではの細やかな視点で」とよく言われるの。「私のどこに細やかさがあるねん」とすごく思うのね(笑)。
一ノ瀬:(笑)。
湯川:「間違っとるやないか。お前は男やからあれか」……。うん、ちょっと後で言おう。そういう人は、たぶん「自分は男だから~だ」とか。
一ノ瀬:そうそう。
湯川:「男なのにこれができない」と自分自身を等身大で受け入れていないから、人のジャッジでしか相手を見れないんだなと思って。
湯川:ダイバーシティ・マネジメントはまずは人に対してやるものじゃなくて、自分の中の多様でダメなところを認める。「自分はこういうものをやりたいけど、これはできないよね。てへぺろ」という自分を認めるところから「自分のダイバーシティ・マネジメントをしたらいいんじゃね?」という。
一ノ瀬:いや、本当にそう思う。私は引退する前からもやけど、引退してからは特に講演会をさせてもらう機会がすごく多くて。企業さん向けもあるんですけど、学校に行って中学生にお話をさせてもらうこともあって。
その時に絶対最後にお話ししているのが、「まずは自分を知る。自分を受け入れることをしてください」と。自分に厳しくしている人は絶対他人にも厳しい。でも自分に優しく自分を受け入れることができていれば、絶対他人のことももっと受け入れることができるようになるから。
自分に厳しい人は多いと思うんですよ。特に中学生でも、「見た目がこうじゃないといけない」「テストの点数はこれぐらい取れないといけない」とか、みんないろいろなジャッジメントの中で生きている。学校という小さなコミュニティの中で、自分に評価を下して生活している中学生に「まずは自分に優しく、自分を受け入れてみてください」と言うようにしています。
自分を受け入れている人、自分の中のマイノリティや多様性を受け入れている人は、絶対に目の前の人にも同じことができるから。「まずは自分との関係を築いてくださいね」という話をしている。
湯川:本当だね。外じゃなくて、まずは自分の内側にある多様なものと付き合っていく関係性を築く。うん、ありがとうございます。私が見ているメイちゃんは、自然の中で若い木が揺れているような雰囲気なので、もともとそうだと思っていたけどね。そんな嫌な人だったこともあったなんて(笑)。
一ノ瀬:(笑)。
湯川:なるほど。
一ノ瀬:嫌まではいってないと信じたいけど。
湯川:いってないかもしれない、ごめんごめん(笑)。それが肩書というのを手放したから出てきた、とてもすてきな一ノ瀬メイだし、いろいろなすてきな人がメイちゃんと一緒にいたいと思って集まってくる。エコシステムのように一緒に居続けられる場ができるんだなとわかりました。
ちょうど1時間ぐらいになったので、ここで前半の部分を終わりたいと思います。メイちゃん、ありがとうございます。
一ノ瀬:ありがとうございました。
湯川:ありがとうございました。
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