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データ流通市場の歩き方 – 地理空間情報を中心に(全2記事)

2020.04.20

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「データ流通市場」が世界に進化をもたらす 地理空間情報を駆使する“データの商社”の信条

提供:富士通クラウドテクノロジーズ株式会社

企業のマーケティング活動やプロダクト開発などにおいて欠かせない、データ分析。やみくもにデータを利用するのではなく、正しい方法で分析しなければ真価を発揮できません。富士通クラウドテクノロジーズ株式会社は、2019年7月度より衛星データ「Starflake」をはじめ、あらゆるエリアデータを提供しています。ウェビナー第1部では、株式会社日本データ取引所の上島邦彦氏が「データ流通市場の歩き方 – 地理空間情報を中心に」をテーマに、地理空間データ取引事業の潮流を語ります。

「データの商社」を標榜する日本データ取引所

上島邦彦氏:株式会社日本データ取引所事業企画部、部長の上島邦彦と申します。『データ流通市場の歩き方』と題して、50分ほどお話をお聞きください。

先ほどの(富士通クラウドテクノロジーズの)金岡(亮)さんのご説明だと、「データサービス」という言い方をされていました。弊社の仕事は「データ製品」や「データプロダクト」といって、そのデータ製品の仲介取引や交渉契約、企画の立ち上げから一緒にやる「データの商社」を標榜して活動しています。

今日は、世の中に多種多彩なデータがある中で、弊社から見て地理空間情報の世界はどう見えるのかを、かいつまんでお話しさせていただきます。

みなさんも連日新しいキーワードを盛んに聞いているでしょう。ちょっと前まで 「AI」と言われていたのが、今では政府や民間企業、報道各社で「デジタルトランスフォーメーション」なんて言われるようになってきました。

「ビジネスの仕方や生活のあり方を変えていけるだろう」と期待される一方で、ビッグデータブームを思い起こしていただいてもわかるとおり、なかなか思うようにいかないところも出てくるのかなと。

空中戦の議論ではなく、まずは落ち着いて、ブームで終わらないよう、基本のところから情報収集・情報発信が必要です。

そこで、第2部で金岡さんがお話しされる技術開発や分析事例の前段を、私からお話しします。

そもそも、データ流通市場とは何か

話題は大きく3つです。そもそも「データ流通市場」という言葉は、そんなに世の中に普及していませんから、そこから説明いたします。

金岡さんのお話にあった、機械学習の仕組みを作り上げる「前」までがすごく大変なので、そこでどんなことが必要かも含めて、弊社の経験を少しお話しします。

本題が2つ目ですね。地理空間情報について当社が知っている事柄を、いくつかお話しさせていただきます。こういったウェビナーですと、一般には個別の事例を深くお話しするのかもしれません。今回は少し趣向を変えて、「活用事例の探し方・考え方」にも少し触れます。GIS(地理情報システム)の歴史も、かいつまんでご紹介します。

ちなみに、今回は公開情報をもとにお話しさせていただきます。弊社が知っていることは、やはり世の中のあらゆるデータの世界と比べるとまだまだ小さいところがありますので、その限りでの話としてお聞きください。

あと個別の動向ですね。産官学民で何が起きているかは、盛り込んでいくとキリがないので、いくつか事例はピックアップしていますけど、メインの話題からは除いています。

「データ流通」が示す6つの観点

まず最初に、データ流通市場とは何かを簡単に説明します。この言葉はあまり定着していなくて、データ取引市場と言われたり、データ市場と言われたり、データマーケットやデータマーケットプレイス、データエクスチェンジなど、いろいろなキーワードが出てきています。

その意味もいろいろあって、安定していないです。言葉が乱用されているようなところではあります。ざっくり整理をすると、大きく6つの観点で使われることが多いようです。

一番大きな視点でいくと、スライド1つ目。国家間のパーソナルデータの流通を含め、国際的なデジタル経済圏の協調や競争の枠組みをどう作っていくか。

もう少し視野を実社会に落とすと、昨今出てきた高機能な端末や次世代通信システムや機械学習を、世の中に広めていくキーワードとしても使われます。

また、経済産業省や総務省、内閣府などがかなり熱心に取り組まれているんですけれど、日本の民間企業や自治体、学校にIT投資を促進するための、ある種の政策メッセージとしても使われます。

さらには、より現場寄りに……データの「流通」と言っても、株式市場や証券市場のようなかたちで売買するわけではなくて、「知るべき人のところにきちんと情報が行き渡ること」や、「世の中や組織の中にあるデータをきちんと使いこなすこと」を指す場合もあります。「社内のデータ流通」みたいな言い方ですね。

よりテクニカルな観点では、APIを介したデータの連携や、データマネジメントプラットフォーム間で顧客データ、オーディエンスデータを受け渡す「流通」。より簡単に、スピーディーに、幅広い関係者間で情報をやり取りするだけでも、データ流通やデータトレードと言われます。

意外と大きいのは、身近すぎて意識されないレベルになってきていますが、音声や動画、例えばこのセミナー資料など、デジタルコンテンツの流通が法人間で増えていくことも、今後のデータ流通市場の活性化に大きくつながる要素だと見ています。

たしか、政府系シンクタンクが発表していた、直近十数年のデータ流通量の見通しで言うと、やはり動画・画像が非常に増えてきたと推計しています。1から6までのようなデータ流通が進んでいく中で、これからどんなデータが増えていくのか。私も気になるところです。

※編注:「ビッグデータの流通量の推計及びビッグデータの活用実態に関する調査研究」(情報通信総合研究所,2015)

トヨタの「Woven City構想」に学ぶ多業界連携

とはいえ、データ流通のあり方そのものは、情報技術が世の中に普及し出した頃と本質的には変わっていないのかなと感じています。

記録されるべき事実をきちんとデータにして、それを網羅統合して変換転送して蓄積することが、いまも昔も、ものすごく大変ですよね。

それこそ富士通クラウドテクノロジーズさんが本領発揮されていますけど、きちんと洗浄して集計分類をして分析手法を適用するとか。最後に結果を評価してビジネスに使える・使えないを踏まえて、企画して実践していくとか。大まかな仕事の流れ自体は変わっていませんね。

それだけに、この分野が少し難しいと言われる理由が、諸々の要素技術の総合力が問われるところですね。さすがに一社ですべてを自前でやり切ることは、もう不可能です。

トヨタ自動車が「Woven City構想」を年明け1月に発表したように、ほかの会社や、会社に所属しないような方々との連携をしたうえで、一連の組み合わせ、市場の「中身」をそれぞれの業界で作っていかなければならない。そういう時代なのでしょう。

関連するコンセプト自体は、やはり英語圏が先を行っていました。日本でもようやく「情報銀行」などのキーワードが使われるようになってきましたが、元になる著作は2012年……もう10年近く前に書かれています。

日本でもよく聞くようになってきた「デジタルトランスフォーメーション」も、5年ぐらい前に英語圏から入ってきました。データ取引では、弊社がやっている領域も、データのマネタイズをしていく「インフォノミクス」に関する本が、4年前に出ています。英語圏でそこそこ売れたみたいで、こういったトレンドが日本に入ってきている状況だとご理解ください。

どの分野にも共通する「5つの課題」

どの分野でも課題はおおむね共通するとうかがっています。弊社にいただくご相談も、突き詰めていくと、この5つが多いです。

1つ目が、データが流通するときの「セキュリティ」をどうしていくか。2つ目は、個人情報に関するプライバシーもあれば、企業の法人としてのプライバシー――営業秘密、技術情報や社内での情報管理をどうするかも課題です。

それに派生するところで、データそのものの権利の取扱いを、どういった契約にまとめあげて、きちんと整理していくか。お客様先、グループ会社、一般の従業員に対して、どうやってVRM(取引関係管理)をするのか。各企業が悩まれているところです。

諸々積み上げていきますと、データ流通ってけっこう大変で、そのコストをどう下げるかも議論になりやすいです。一言で言うと「信頼形成」が重要になってくる、総合力が求められる分野ですね。

そんな中で弊社がどういった取り組みをしているのか。ざっくりご紹介します。大きく2つ掲げています。左側が今ビジネスになっているところ、右側が他の企業さんと一緒に今取り組んでいるほうです。

(図の左側は)データ取引事業と銘打ちまして、そもそもどういうデータをどこから仕入れて、自社で何の目的で使っていけばいいのか、戦略策定からご支援しています。

大まかに戦略・計画が決まったところで、必要なデータを洗い出し、どの会社からどういうふうにデータを調達していくか。その仲介をやらせていただくだけではありません。みなさんがよくお悩みなのは、データ分析・データ活用のプロジェクトを実際に回していくことです。それは2つのサイドから聞こえてきます。

データを使われる方・買い手にとっては、そもそもデータがどこにあるのかわからないし、自社でどう使ったらいいのかわからない。ノウハウが不足していて、つらいと。

一方、データをお持ちの方や、機械学習・統計分析の技術をお持ちの方々にとっては、データ・技術以外のところがなかなかうまく回せなくて困っているという相談をよくいただきます。そういったところの企画立案をして、きちんとプロジェクトを回していくことも、一緒にやらせていただくことがあります。

独自のシステムプラットフォームを持たない戦略

弊社でノウハウが貯まりつつも、最近かなりクリティカルなイシューとして、悩みも増えつつあるのががデータの権利ですね。複数の取引当事者の方からご提供いただくデータをマッシュアップして使ったり、マッシュアップして使ったデータをほかの会社さんにお見せするときに、諸々の権利帰属ライセンス整理がかなり複雑になりやすい。これも共同で整理しています。

今日のウェビナーも、その一環と考えて登壇しています。弊社単独ではなくて、みなさまと一緒にデータ流通の市場を作っていきたいです。

(図の右側は)いろいろな会社さんで共同で利用できるデータを作ったり、データの取引のルールを一緒に作っていたりします。技術情報を共通化できるところもある程度共通化しています。その他パートナーシップ等々を組んでいます。

全体の位置づけとしましては、これはIDSというEUの製造データに関するリファレンスモデルなんですけれど、多くの関係者の間に立つポジションです。日本で言うとたぶん「商社」とか、紙の本が「データ」であるかと言うと議論がありますけど、「出版社」に近い役割なのかなと自認しています。

ほかの会社さんと大きく違うところは、独自のシステムプラットフォームを持たない戦略を取っているところです。あくまで間を中立的につないでいく役割に徹しています。

「仕組み」を作る依頼をいただくこともあります。組織や業界内で新しくデータが取れるようになったので、社内と社外の……いわば「居間」と「客間」を分けて、「居間」では安全なデータ流通をしたうえで、「客間」ではお客さんに出すデータをきちんとお出しする仕組みが作れないかといったことです。

全体で共用するデータと、ある限られたグループや部署部門で使うデータ……と、交通整理をしていくと、諸々多面的な課題が出てきます。取引のポリシーや業務フローなど、データの「オーナーシップ」をどうするのかなど、お客さまと一緒になって解決に向けて取り組んでいます。

弊社と同じような業種の、DAWEXという会社がフランスにあります。昨年、兼松さんが弊社に出資されて、DAWEXとも戦略的パートナーシップ契約を締結して、3社でパートナーシップを組みました。今年、日本向けにデータ取引のサービスを本格展開する予定です。

DAWEXさんはフランスの会社で、設立は2015年です。Webサービス上でデータの売買ができて、データ取引の契約書もある程度は自動で作れるシステムを開発していて、各国に展開しています。EUから出発して北アメリカにも展開し、グローバルにユーザーが集まっていまして、日本向けに進出する準備をされています。弊社と兼松との共同で、今年の夏に向けて新しいサービスを準備中です。

弊社の支援事例等々は今日の本題ではないので、少し早送りでご説明します。

先ほども申し上げたように、企画段階から入らせていただきます。社内・社外に誰がどんなデータを持っていて、どういう状況か、その人ごとに知りたいことは何かをデータカタログに整理していきます。

また、データ取引に関連する法的課題に関しまして、誰がどの契約をどう担当して、それぞれの契約関係がどうなっているのか。弁護士さんにお願いする「前」の論点整理をしています。

伴走支援的に、データ活用プロジェクトを進めるための業務フローの設計もやっています。

2016年12月に創業してから、少しずつご相談やお引き合いに応える中で、こういった事業をこれからも続けていこうと思っています。

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