「先頭に立つものは背中を矢で撃たれる」 余命半年の大学教授が語った、挑戦することの意義

ランディ・パウシュ「最後の授業」 #3/5

2007年9月18日、余命半年を宣告されたカーネギーメロン大学教授・Randy Pausch(ランディ・パウシュ)氏が、「子供のころの夢を実現させる方法」と題して行った「最後の授業」。エネルギッシュかつユーモラスな語り口で、夢の叶え方と人生の教訓について語った約75分間の講義は、世界中の人々に勇気と感動を与えました。

教授になるべき理由

ランディ・パウシュ氏:長期休暇の6ヶ月が終わる頃、イマジニアリング社の人が私のところへ来て言いました。

「あなた、これ本気でやりたい? もしここで働きたいなら、社員になれるよ」

私は「ノー」と言いました。人生でただ1度だけ、私が父を驚愕させた出来事でした。「なんだって?」と彼は言いました。

「お前がこんなちっちゃい頃から、ずっとやりたがってたことじゃないか。それがやっと手に入って……ええっ!?」

私の机の引き出しには胃痛薬が入っていました。願い事をする時は気をつけなくてはいけません。私が働いていたのは、とりわけストレスの多い場所でした。

イマジニアリング社は概して、そこまで胃薬を必要とする職場ではありませんが、私が働いていた研究所はそうでした。そして、ジョンはプロジェクトの途中で退職していました。彼が去った後はかつてのソビエト連邦のようなもので、少し危なっかしかったのです。今はもう大丈夫ですが。

もし彼らが私に「社員になるか、永久に出入禁止か選べ」と言っていたら、私はおそらくイエスと言っていたでしょう。喜んで大学のテニュア(終身雇用資格)を手放し、社員になっていたでしょう。

でも、彼らは私に親切にしてくれました。「やりたいようにしていいよ」と言ってくれたのです。そこで私は、週に1度だけコンサルタントとしてイマジニアリング社で働くことにし、10年ほど勤めました。

これが、あなたたちが教授になるべき理由です。望みのものを手に入れ、さらにそれを好きにできるのですから。

(会場笑)

自分の夢がかなったその後

コンサルタントとして、ディズニークエスト(屋内型アトラクション)のプロジェクトに携りました。バーチャル・ジャングル・クルーズ。そして私が今までやったインタラクティブなプロジェクトの中で最もおもしろい、パイレーツ・オブ・カリビアン。ジェシー・シェル(ビデオゲームデザイナー)の手柄です。

というわけで、これらが私の子供時代の夢です。良かった。私はとても良い気分でした。

そうなると次に、「どうやったら他の人の夢をかなえる手助けができるだろう?」と思うようになりました。繰り返しになりますが、私は大学教授になれたことをとても嬉しく思っています。誰かの夢をかなえるのに、これより良い場所が他にありますかね?

もしかしたら、EA(エレクトロニック・アーツ:ゲーム制作会社)はいいかもしれませんね。わかりませんけど。僅差で2位かな。

「私は誰かの夢をかなえる手助けができる」。とてもわかりやすい事例から、この疑問への答えを得ることができました。バージニア大学で教えている時に、トミー・バーネットという名の青年が私のところへやって来たのです。

彼は私の研究グループに入りたいと希望していました。彼と話をしている時に、彼がこう言ったのです。

「僕には、子供の頃からの夢があるんです」

向こうからわざわざ言って来てくれるなんて、わかりやすいですよね。

私は言いました。

「ほう、トミー、君の夢は何だったんだい?」

彼は言いました。

「『スター・ウォーズ』の次回作に携りたいんです」

時代を思い出していただかないといけません。1993年のことでした。そこで私は彼に言いました。

「うーん、たぶん彼らはもう『スター・ウォーズ』は作らないんじゃないかな」

(会場笑)

トミーは言いました。

「いいえ、彼らは絶対作ります」

(会場笑)

トミーは学部生からスタッフになるまで、何年も私のチームで一緒に研究をしました。私がカーネギーメロン大学に移る時に、他のスタッフ全員が私についてきたにも関わらず、彼だけは一緒に来ませんでした。なぜなら、彼は他からより良い仕事のオファーをもらったからです。そう、彼は本当に、『スター・ウォーズ』の新3部作に携ったのでした。

「良かったなぁ」と私は言いましたが、同時に「1人1人の夢をひとつずつ叶えて行くのは効率が良いとは言えないな」と思いました。私をよく知っている人は、私が効率マニアなのをご存知でしょう。

「これをたくさんの人で1度にできないだろうか?」、そう私は考えました。

「人々を一気にこんなふうに変えられないだろうか? みんなが子供の頃の夢を追いかけられるようにできないだろうか?」

手探り状態ではじめた授業「バーチャル・ワールドをつくる」

カーネギーメロン大学で、私はひとつの講座を立ち上げました。「バーチャル・ワールド(仮想世界)をつくる」というコースです。とてもシンプルな授業です。この中に、この講座をとったことのある人はいますか? ……けっこういるみたいですね。

とったことのない人、このコースはとても簡単です。学内のさまざまな学部から来た50人が、ランダムに選ばれて4人のチームを結成します。そして、プロジェクトをひとつ選び、それに取り組むのです。

プロジェクトの期間は2週間しかありません。その中で企画をし、何かを新しく作り、誰かに見せます。その後、私がチームをシャッフルします。新しいチームメイトと一緒に、同じことを繰り返します。プロジェクトは2週間ごとに変わりますから、1学期で5つの異なるプロジェクトをやることになるわけです。

このコースを始めた最初の年は、どんな授業か説明するのが不可能でした。予想外の困難な出来事がたくさんありました。私はこのコースを始めたのは、自分が果たして人の夢のお手伝いをすることができるかどうかを知りたかったからなのです。

私たちは3Dグラフィックへのテクスチャー・マッピングのやり方を学んだばかりで、まだまだ発展途上でした。こんにちの基準で言えば、実にお粗末なコンピュータで作業していたので。でも、「やるだけやってみよう」と私は言いました。

学生の限界を決めないこと

新しく移籍したこの大学で、私は数件の電話をかけて言いました、「この講座を単位互換コースにしたいんだ」。24時間以内に、5つの学部と単位交換できるようになりました。この大学が大好きです。本当に素晴らしい場所です。

学生たちは、「どんなコンテンツを作ったらいいですか?」と訊きました。「知らないよ」私は答えました。

「好きなのを作ったらいい。ただし、2つだけルールがある。暴力と、ポルノはなし。それらのテーマに特に反対するわけじゃないが、バーチャル・リアリティの世界では既にごまんとあるからね、そうじゃないか?」

それら2つをテーマから除いた時に、どれだけ多くの19歳の男子学生が途方に暮れてしまったか、おそらくみなさん驚くでしょうね。

(会場笑)

ともかく、私は授業を受け持ちました。私が与えた最初の課題に対し、2週間後に彼らが提出したものは、私を驚かせました。作品はどれも予想以上に素晴らしく、私が想像もできなかったものばかりでした。

実は私はこの授業で、イマジニアリング社のバーチャル・リアリティ研究所のやり方を真似していたのです。でも機材が不十分という理由もあって、学部生がどんなことができてどんなことができないか、まったく予想がつかなかったのです。

教授になって10年になりますが、いちばん最初の課題で本当に素晴らしい作品が提出されて来たので、次にどうしたらいいかわからなくなってしまいました。そこで師匠と仰ぐアンディ・ヴァン・ダム氏に電話しました。

「学生に2週間の課題を与えたんですが、これが1学期末だったら評価オールAをあげたいくらいのすごいものができて来たんです。先生、どうしたら良いでしょうか?」

アンディはしばらく考えてこう言いました。

「明日の授業で、1人1人の目を見てこう言いなさい。『よくやったね。でも君たちはもっとやれる』」

(会場笑)

適確なアドバイスでした。なぜなら彼が言おうとしていたのは、「君は自分に求められているレベルを知らない。だからどこまでやっても害にはならない」ということだったからです。

これはとても良いアドバイスでした。おかげで学生たちはさらに進歩してゆき、1学期中には、定員50名のところ95人もの人が教室で待っているというアングラなブームになりました。

経験したことのないエネルギーを感じた

その日は作品を見せる予定だったので、生徒のルームメイトやら友人やらご両親たちが来ていたのです。私の授業に親御さんが見に来たことなんかそれまでありませんでしたよ! 光栄でしたが、ちょっと怖くもありました。

この動きは雪だるま式に大きくなり、突飛な思いつきで、「この作品たちをシェアしない?」ということになりました。

私が幼い頃から言われてきたのは、良いものは誰かと分かち合いなさいということです。「学期の終わりに、作品を皆に見せる大きなショウをやろう」と私は言い、ここ、マコノミー講堂を借りました。このホールには良い思い出がたくさんありますね。

ここを借りたのは、客席が全て埋まるとは予想していたからではなく、まともに動くAV機器がここしかなかったからです。コンピュータとかでごちゃごちゃしますからね。

客席は満員になりました。席をすべて埋めただけでなく、立見まで出ました。当時の学部長、ジム・モリス氏がこのあたりに座っていたのを私は忘れないでしょう。彼のために席を用意しなければいけませんでした。

講堂に満ちたエネルギーは、私がそれまで経験したことのないものでした。ジェリー・コホン総長がそのあたりに座っていましたが、彼も同じエネルギーを感じたと言っていました。彼はあとでそれを「学術発表以外は、オハイオ州フットボールリーグのエール交換のようだった」と表現しました。

大学内の名物イベントに

彼は私のところへやってきて、とても的確な質問をしました。

「君がショーを始める前に、知っておきたいことがある。これだけたくさんの人たちが、一体どこからやってきたんだ? 観客は、一体どこの学部からなんだ?」

調査してみると、ほぼすべての学部から来ていました。とても嬉しかったです。私も彼も、この大学に来てすぐのことでしたから。私の上司は、この大学はみながひとつになる場所だと考えていましたから、私は震えるほど感激しました。

というわけで、私たちは大学全体での展示会を行いました。発表者がここに来てプレゼンテーションを行いました。コスチュームを着たりしてね。

映像を投影して、何が起こっているのか見えるようにしました。発表者がヘッドギアで見ている映像を観客も見えるようにしたのです。

小道具もたくさん使いました。これはラフティングの映像を見ている人の写真です。

『E.T.』の世界を見ている人です。もちろん彼らに、少年が自転車で月を横切るシーンをやらなかったら落第だと言いましたよ。これは実話です。

非常にユニークなコースでした。学内のさまざまなところからとても優秀でクリエイティブな学生が集まり、そこに参加することは喜びでした。

彼らはこの発表の機会を真剣に捉えすぎ、やがて毎年の発表会は学内の名物になってしまいました。人々は列をなして並びました。とても喜ばしいことでした。

人を喜ばせることこそ最高の贈り物

生徒たちは、お客さんが楽しみにしてくれていることにとても興奮していました。誰かを喜ばせることが、人が人にしてあげられることのうちで、最高の贈り物だと思います。

私たちは常に、観客を巻き込むように心がけました。グロースティック(光る棒)を手渡したり、ビーチボールをトスしてみたり、アクションをしてみたり。

とてもおもしろかったです。この技術は『スパイダーマン3』のロサンゼルスプレミア上映で実際に使われました。観客がスクリーン上に現れる対象を操作できるというものです。

すべての年のクラス写真はありませんが、手元にある限りの写真を集めました。私が言えるのは、このコースを10年間も教えることができて、本当に光栄であり、誇りであるということです。

良いことにはすべて終わりがあるように、私はこのコースを1年ほど前に止めました。いつも人に「1番の思い出は何ですか?」と訊かれます。

お気に入りと言えるかどうかわかりませんが、この瞬間だけは忘れられません。

確か、「ローラースケートニンジャ」というバーチャル世界の発表だったと思います。舞台上で発表する時のルールとして、実際にバーチャル・リアリティが動くところを見せる。でももし止まってしまったらバックアップのビデオを流して良いということになっていました。格好悪いですけどね。

ニンジャがローラースケートをして見せたのですが、バーチャル世界の映像がうまく作動せず、突然止まってしまったのです。

私は機転を利かせて生徒に言いました、「すまない、君のバーチャル世界は止まってしまったようだ。ビデオに切り替えよう」。すると彼は懐から刀を取り出して、「この不名誉、死んでお詫びを!」と叫び、切腹の真似をして舞台から落ちました。

というわけで、ハイテクを究めたコースの10年間で1番の思い出は、この素晴らしいアドリブでした。

そしてビデオ上映が終わり場内が明るくなると、彼は床に横たわり彼のチームメイトが彼を引きずって退場させようとしているところでした。とても素晴らしい瞬間でした。

(会場笑)

先頭に立つものは背中を矢で撃たれる

またこのコースは、絆を深めるのにも役立ちました。

よく人が「世界をもっとよくするにはどうしたらいいだろう?」と言います。私は言いました、「僕もわからなかったけれど、彼らがさっき教えてくれたよ。仲間の側に立って、微笑むこと。このボディ・ランゲージだけで、世界は良いものになる」。

このコースはパイオニアでもありました。細かい話をしすぎて退屈させたくありませんが、簡単ではなかったということだけ、少しお話ししたいと思います。

(背中に矢の刺さったベストを取り出して着る)

ETC(エンターテイメント・テクノロジー・センター)を退職した時、このベストを贈られました。これは私の勲章です。

何か新しいことを始めようとする時、必ず後ろから矢を撃たれます。それに耐えなくてはいけません。うまくいきそうになかったことは、すべてうまくいきませんでした。でも最終的には、多くの人々がとても楽しんでくれました。

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