13期連続増収増益のヤッホーブルーイングが「赤字時代のチーム崩壊」を乗り越えるまで

先輩起業家に学べ #1/3

Health 2.0 Asia - Japan 2017
に開催

2017年12月5日・6日の2日間にかけて、医療・ヘルスケアにおける最新テクノロジー(ヘルステック)を活用した先進事例を紹介する「Health 2.0 Asia Japan 2017」が開催されました。プログラム「先輩起業家に学べ」では、メドピア・石見陽氏、ヤッホーブルーイング・井手直行氏、プロノバ・岡島悦子氏の3名が、スタートアップが事業を継続するうえで直面するハードルについて語り合いました。

ヤッホーブルーイングのとある対談記事をキッカケに

石見陽氏(以下、石見):みなさん、こんばんは。「先輩起業家に学べ」へようこそ。ホールAのほうでは製薬企業のデータヘルスの話をされています。こちらは私が「肝いり」と言いますか、オーガナイズさせていただく関係もあって、自分のわがままでセッションを作らせていただきました。

始まりは井手さんが代表を務めるヤッホーブルーイングのとある記事を拝見したのがきっかけでした。私の会社は運営から14年、黒字になってまだ5年ぐらいの会社なので、その間に大変なことは当然ありましたし、資金が尽きそうなときもありました。

そういう時に一番大事なのはやはり組織づくりです。ベンチャーでも大企業でも、会社というのは「人の集合体」「人のつながり」でできていますから、組織づくりが私のなかでテーマになっていますね。

医者は医局にしか所属したことがないので、会社というものをそもそも知らないわけです。そんな時に井手さんとメルカリの小泉さんが対談されている記事が胸にとても響いたんです。「この人に聞きたいな」と思いました。

あとは、実は私が通っていた信州大学とよなよなエールの醸造所、どちらも長野にあるということに勝手に縁を感じて、井手さんを絶対に紹介してくださるだろう小泉さんに「紹介してください」と言ったんです。

「こういうセッションを開きたいんです」という話を無理やり飛び込んで届けて、この会を実現させていただきました。同時に、よなよなを片手にやりたいなと(笑)。いろいろご経験されてきた井手さんと語るにあたって、勝手に自分はシンパシーを感じています。

岡島さんとお会いしたのは実は起業したての10数年前でした。当時は正直、まったく相手にしてくださらないくらいの人だったんです(笑)。

岡島さんのように経営者を横から見ている経験豊富な人の意見も聞きながら、「自分たちが感じていることをビール片手にざっくばらんに話したい」ということで、この3人での開催となりました。2020年までスケジュールが埋まっているというのに無理やり開けていただいて、今日はありがとうございます。

岡島悦子氏(以下、岡島):ありがとうございます。

石見:ということで、私のことは話したので、よなよなエールでさっそく乾杯しながら、井手さんからお話ししていただきたいなと思います。まず乾杯しましょうか。乾杯!

一同:乾杯!

石見:うまいっすねぇ。

岡島:おいしい。

原点は8年間の赤字期に訪れたチームの崩壊

石見:ではまず井手さんから、インタラクティブに進めていきたいと思います。創業されてから今何年目ですか?

井手直行氏(以下、井手):20年です。

石見:20年ですね。20年を語られると終わってしまうので、ダイジェストにしていただきながら今感じている課題、先ほど「組織が自分のテーマ」だとおっしゃっていましたが、組織と人のあたりで感じていらっしゃる課題などをお話しいただければと思います。

井手:はい。(会場に向けて)ちなみによなよなエール、知っています?

(会場挙手)

井手:ありがとうございます。大体知っているんですね。

20年前に会社ができました。私は創業メンバーで2代目の社長です。2008年から社長をやっているので、9年目くらいでしょうか。

20年前に「よなよなエール」を発売した時は「地ビールブーム」の真っただ中で、ばーっと売れました。そのブームが3年ぐらいで終わって、それから下降線で創業から8年間ずっと赤字でした。

最初はみんなやる気がありましたが、だんだん「もうこんなビール売ってられるか」「こんなことやっても無駄だ」なんて疑心暗鬼になって悪口陰口が横行するようになってみんな辞めていってしまったんです。

そのときのことがトラウマで、「結局、チームを作っていかないと中長期の安定した企業成長はない」と気付きました。この8年間で、今の原点となる「赤字時代のチーム崩壊」というのがあったんです。

ビールはインターネットを武器に成長することができたので、社長になってすぐチーム作りに全情熱をかけていきました。最初はかなり混乱しましたが3年ほどでだんだん会社が回りだし、そこから急成長していって、12年間増収増益中(※2018年2月時点では13期連続増収増益)です。

やっぱり大事なのはチーム作りですね。今も150人くらいの小さな会社ですが、毎年たくさん入ってくる新たなメンバーと同じ方向を見ながら、100人、200人、300人、400人と増えていくときに、おそらくチームの新しい壁ができると思うんですよね。それを楽しみながら、1個1個解決して成長していく、そんな感じですね。

石見:うちはグループを入れて90名で、100名を超えるとまたもう1つ壁があるんだろうと思いますが、150名で感じている壁ってありますか?

井手:どうでしょうか、細かいことはたくさんありますけれども。

入社したばかりの新しいメンバーは当然会社のことはよくわからないと思います。リーダークラスは育ってきてはいますが、急成長しているので、僕が考えていることをリーダーに伝えて、リーダーがスタッフに伝えるということをしています。もちろん私もスタッフに伝えていきます。

そうやって若い人に同じ方向を見てもらって、いかにチームとして機能させるかというのが課題なんです。ただ、それはそんなに大きい壁とは思っていないっていうか(笑)。普通の課題です。

あまり大きい課題がないんですよね。たぶんそれは課題を課題と思っていないのかもしれないですけどね(笑)。

石見:増収増益ってたぶん大きいですよね。

井手:うん、大きい。

企業の急成長と、その成長痛について

岡島:成長がやっぱりすべてを癒すんですよ。

私も年間200人ほどの経営者の組織開発をお手伝いしていますが、本当に成長しているときには課題は見えなくなってしまいます。見なくても済んでしまうんですね。1回成長が停滞してくると、内輪もめや成長の痛みのようなものが出てきますよね。

石見:そうなんですよね。成長している間って見えないことがあります。うちの会社は、3年ほど前の上場したての頃は見えていませんでした。しかし、成長している時こそ経営者には長期的な目線が不可欠なんです。

その時にどれぐらい危機感を持って、みんながハッピーな状態になるように次の手をどれぐらい考えられるか、ということですね。そういう人の特徴ってあるじゃないですか。年齢とか。そういう経験ってありますか?

岡島:私は15年ほどいろんなベンチャー企業の経営チームを作る仕事ばかりやっていますが、だいたいベンチャーキャピタルと一緒に入っていくことが多いんです。

事業開発が完全に先行してしまって、組織開発がついてこないというのが典型的なパターンですね。とくに経営者はみんな事業が大好きなんです。それはテクノロジーの人も営業系の人も事業開発系の人も同じですが、どんどん事業開発をやって、トップセールスをやって、となると、次は「人がけっこうボトルネックじゃない?」という話になるわけですよ。

そこにいくつか成長の罠みたいな、成長の痛みみたいなものがあるんです。例えば、社員が30人を超えて2フロアになったとき「3階は?」「4階は?」となったり、トップとナンバー2がうまくコミュニケーションを取れていないとか、より急成長しているベンチャーに人が一気にぐっと行ってしまうだとかですね。成長の痛みはすごいありますよね。

ですから、わたしの仕事はどちらかというとヘルスケアなんです。かかりつけ医みたいな感じで、「あっ、ちょっとそろそろ組織の課題がくるよ」とくさびを打つっていう(笑)。「そろそろやばいんじゃない」みたいな、「ちょっとメタボなんじゃない」みたいなことを言うんですよね。

石見:ヘルスケアっていうとまさに病気といったところだと思いますが、病気を認めている人にそういう言葉をかけると治るんですよね。例えば、精神科の病気みたいな、病気にあまり気付けないような時はどうするんですか?

岡島:いわゆる排水溝のごみと同じです、一回見たんだけど見なかったことにするってパターンですね(笑)。

井手:ふたを閉めちゃう。

岡島:そうそう(笑)。成長しているので見なかったことにして、実は波風が吹いているケースもあるので。でもお手伝いしている経営者は2パターンいて、ひとつは「姐さんの言った通りでした」、とかなり重症になってから相談にきます。私、ベンチャー業界のゴッドマザーって呼ばれているんですけど(笑)。

「姐さんの言った通りでした」と言われるケースと、何回も集まっているケースはわりと早めに「そろそろちょっとまずいかなと思うんですけど」って来ます。

横の串を通して情報の非対称に対処する

石見:やっぱりシリアルアントレプレナーの経験って大きいですよね。

岡島:組織開発については結構汎用的なことがあるので、大きいですね。事業開発は領域によってはぜんぜん違いますが、組織についてはやっぱり心理学と結構関係があるので。

とくに30人の壁って言ったのは小学校1クラス分くらいだからなんです。つぶつぶで見られるマックスみたいな人数なので、30人であれば社長が見られます。その人の力量にもよりますが、変なミドルマネージャーみたいなの置いてしまうとそこから朽ちていくみたいなことはありますね。

石見:はい。いろいろありました(笑)。30から50名以下のところはある意味、社員一人ひとりの顔色もやはりわかります。少し話すと社員が考えてそうなことも大体わかります。先ほど井手さんにも言いましたが、自分の感触で50~100名くらいになってくると社員とのコミュニケーションの時間も減ってくるので、ミドルマネージャーが重要なんですよね。

岡島:いやでも300人くらいまでいけますよ。力量があれば。

石見:なるほど。

岡島:場所がすごく分かれているとかじゃなければ。

石見:あぁ。物理的な場所ですか? 

岡島:だから「なるべく1フロアにしてください」とか、ビルも別館とか作らずに「ちょっと家賃上がっても1ヶ所にしてくださいね」とか言っています。場所が離れていると結構つらくないですか? 1ヶ所になっていますか? 

井手:いや、つらいです。

今は醸造所と道を挟んで1個隣の棟を借りて、物流倉庫がまた別のところにあって、東京営業所があって4拠点で合計150人くらいいます。

大変なのでチーム作りとコミュニケーションの壁をなんとかやりくりしていくために毎年スタッフが自らいろいろ考えてくれているんです。ぼくらも1フロアが一番いいと思っているんです。でもなかなかお金とかもかかってくるし税金とかも……。

岡島:醸造とかもね、する場合はなかなか難しいですよね。

井手:そうですね、製造設備のあるところに本当は全部拠点を置ければいいんですがもう建物が決まっちゃっていて……。

今取り組んでいるのは全拠点にテレビ会議システムを置いて、全部同じフロアにいるように顔を合わせられる改善策です。大きいテレビにみんなの顔が映って「あ、今日東京来てる」「物流倉庫来てる」といった感じです。

岡島:調節で動かすやつですよね。

井手:はい。そういう形でいかに疑似的にワンフロアにいるようにできるかトライしています。とくに、同じチーム内に東京と長野にメンバーがいるケースや、同じ担当だけど都合で旦那さんが東京へ行っちゃって女性がついて行っているケースでは常にチームの中で画面で顔を合わせて。

岡島:でも大事ですよね。結局のところは情報の非対称みたいなことが非常に問題になって「おれたちはこんなに頑張っているのにあいつらわかっていない」といった話につながるので、「この縦横の仕組みをいかに仕込むか」というところです。

わたしはいくつか社外取締役もやっておりますが、セプテーニはそのあたりすごく上手です。どうしても縦が強くなっちゃうので、横の委員会やプロジェクトにオーナーシップと経営のリソースを使っていて、横をつなぐことをひたすらやっていますね。

石見:組織変更を一時のライブドアのように急激に行う感じではなくて……。

岡島:連続性が出ない場合もありますし、それって疲弊しますよね。もちろん朝令暮改はいいと思うんですけれども、機能別でも事業別でも、どう組んでも結局マトリックス方式になるので、それよりは人のつながりという意味での横の串を通す。

コーポレート系のものでもいいですし、なんならサークルでもなんでもいいんです。飲み会担当でも、ね。ビールおいしいですね(笑)。

井手:ありがとうございます。

ミレニアム世代は同期が大好物、人の配置で成長を考える

岡島:飲み会担当でもいいので、横串を意識して、しかも経営のリソースかけてやるんですね。どこの会社さんもそうだと思いますが、同期がすごい仲良いですよね。

石見:同期が? 

岡島:そう。新卒の子たちを見ていると、最近の若者、つまりミレニアム世代は同期が大好物です。だから横が大好きで縦の人と飲まない。ましてや斜めの人と飲む機会はあんまり好まない。飲めばいいって話ではありませんが、横串は結構重要ですね。

なので、いろんなインディーズのプロジェクトとか、いろんな会社で作るようなボトムアップから上がってくるようなプロジェクト制度とか作ってやっていますね。

石見:その横で刺すといいますか、さきほど名刺交換した井手さんのところは確か秘書さんじゃなくてアシスタントを定期的に必ず入れ替えるというのはどうしてですか?

井手:はい。今日もちょうど新しいアシスタントが12月に異動してきて、1月いっぱいまでは前任者と合わせて2人のアシスタントがいるんです。毎年1年で交代するってとても面倒で大変なんですけど、なんで1年で交代しているかっていうと、ぼくと1年間ずーっと一緒に仕事をしていると、会社のカルチャーがとても色濃く伝わるわけです。

そういう人間をいろんな世代にたくさん作っていくと、ぼくの代わりにそのメンバーが本当に会社のカルチャーを周りの人間に伝えていくんです。

岡島:12人の使徒みたいなやつですね(笑)。

井手:はい。毎年アシスタントを卒業しているスタッフが、それで見事に代表的にいろんなプロジェクトを立ち上げて文化継承系の「こんなことをやりましょう」といった提案を積極的にやってくれるんですよ。

石見:それは新卒? 

井手:今までは新卒を採用していたんですけれども、段々仕事が忙しくなってきたので今年はベテランスタッフをアシスタントにおいています。いろいろな業務改革を進めながら、「新しいスタッフだけじゃなくて、中堅ベテランもアシスタントになるんだよ」みたいなメッセージも込めています。

岡島:基本アシスタントというのは業務秘書みたいな仕事です。井手さんのところがすごくいいなと思うのは、社長の背中というか横顔を見せるところですよね。「井手さんのマインドシェアが今どうなっているか」がすごく伝わる。しかもコンテクストが伝わるので、私が専門にしている「サクセッション・プランニング」という次の社長を作っていくときには、だいたいみんなやっている手立てで、自分にぴったりくっつけるみたいなことは、やっていたりしますね。

石見:それはどういう役職の人、例えば醸造所にいる人も可能性としてそういったことはありえるんですか? 

井手:ぜんぜんありえることですね。あとはできるだけ本人の希望にも沿いたいので、異動希望の中で「アシスタント業に興味があるな」という人を積極的にあてていきたいなと思っています。今、仕事でなにをやっているかというのはまったく関係ありません。

岡島:いいですよね、抜擢で。配置でしか人は育たないでしょうから、そういう意味では経験が糧になるんですよね。

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