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小霜和也 × 本田哲也 トークイベント(全5記事)

大事なのは「ユーザーの作業を邪魔しないこと」 スマホ時代の広告の潮流を考える

小霜和也氏著の『急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。』の刊行を記念したトークイベントが2017年10月3日に行われました。登壇したのは小霜氏と、ブルーカレント・ジャパン社長の本田哲也氏。広告とPRのプロが「デジタル時代の新しい広告✕PRの掛け合わせ方」をテーマに語ります。

PRの主戦場が変わってきた

小霜和也氏(以下、小霜):思うのは、PRの主戦場って今まで刷りものだったじゃないですか?

新聞や雑誌など、プリントするもの。でも、動画で見たら一目瞭然というものもあるでしょ? 

例えば僕が今やらせてもらっているもので言うと「豊田TRIKE」という三輪車があるんです。とんでもない重い荷物も運べるんですよ。地方のモビリティ問題を解決しようということで、自治体とか、あるいは宅急便に入っていこうとしている。しかし、それもどんなものか、刷りもので見てもわからない。

だけど、動画だと、「えっ、こんな使い方ができるの!」となります。大の男が2人前後に座って女性が悠々と漕いでいるのを見ると「まじ?!」みたいな、そういうのがある。デジタル時代は、ある種コンテンツとかそういうことでPRの効果も高まっていくのかなという気もちょっとしてますけどね。

本田哲也氏(以下、本田):そうですね。そこが先ほどのつくる時の境遇。まあ商品や状況によっていくつかのものがあるかもしれないですけど、PRは刷り物がいい。確かにテキストベースだったり、ブロガーの時代だったりします。

それこそ10年ぐらいで、今ではデジタルやソーシャルなんでしょうけど。ブロガーマーケティングなどが来た時にはね。ブログはけっこうテキストベースだったから、わりとPR的でしたね。

Twitter、Facebook広告がどんどん増えても、YouTubeやInstagramは完全にビジュアル、あと非言語の世界なので、もうパッと見てわかる。短時間でわかるというところは、広告やPRに大事なスキルです。

司会者:PR素材のつくりかたも、変わっているという。

本田:そうですよね。変わってますよね。

司会者:ありがとうございます。あと15分ほどになってきたので、会場の方からも質問を受け付けたいと思います。

スマホ時代のコンテンツのあり方は

質問者1:スマホ・モバイルになってますますコンテンツが短く、端的に、おそらく動画でもテキストでもそもそも見てくれないということが、さらに進んでいくと思います。とくに動画には15分という尺でも長いとなるのではないかと思っています。

クリエイティブ面でも企画の面でも、いろいろ変わってくるものがあると思うんですけど、そのへんはどうお考えか、お聞かせいただけたらと思います。

小霜:それはデバイスが変わると、クリエィティブの方にどういう影響があるのかということですかね。そうすると、僕は意外と影響が少ないなと思っていますね。

僕らの世代からすると、「こんなに小さい画面で映画とか見るの?」という感じがあるんだけど、わりと若い人は平気だったり、30代の人でも平気でスマホで映画やドラマなど見てたりしています。そして、つくるほうも。

例えば、字幕やエクスキューズみたいな文言など「スマホで読めるかな」みたいなことは気にするんですけど、動画をつくるときには、大画面で見るCMとスマホで見るCMとを少し違うものとして捉えようという感じはあまりないですね。

ただ、今後については縦動画が気になってます。やっぱりスマホで見るには絶対に縦がいいので。動画は今、横標準ですけど、スマホが主役になってくると、縦標準にジワジワ変わっていくのかなという。

スマホには短いヘッドラインが必要になる

小霜:あるいは縦横両方で振り分けるみたいな時代がくるんじゃないかなとか。音に関しては別ですね。テレビは音を出しっぱなしですけど、スマホで見ている人は音を切っている場合が多いです。テレビCMは音でアテンションをつけて見てもらうんです。しかしスマホの場合は効かないという。

ただ「トレインチャンネル」の場合は、「ずっと暇で見ている」という設定なので、テレビCMと比較的近いと思うんですよ。でもスマホではずっとCMを見ているわけでななくて、なにか作業をしているわけですよね。SNSを見ているのか、ゲームしているなのか。

そこへ飛び込んでいって、流されないようにしなければいけない。なので、「トレインチャンネル」とは違うかな。SNSは頭のビジュアルで興味を持って見てもらうというつくりにしなければいけない、というのはあります。

本田:スマホは相当短いヘッドラインでタイトルや情報を伝えなければいけなくなっているのは間違いないです。これはPRというか、伝えるメディアの数の課題でもあるのだと思います。

この間、プレジデントオンラインの方とお話ししてたときは「14文字」までとおっしゃっていました。LINEで「ハフィントンポスト」など見ていると、究極的に短いタイトルやヘッドラインがある。

あれはギリギリ一番短いぐらいだと思いますけど、けっこう勉強になります。PRやプレスリリースは、「これぐらい短く」という原則があると思いますけど、それどころじゃない。

そうすると「このニュースがなんであるか」「なにを伝えるべきことなのか」みたいなことを、相当短く表現しなければいけないケースになってきています。そこはまだ勉強しなければいけないところかな。

小霜:あとコンテンツの出し方が1つ課題としてあります。「ネイティブ広告」といいますけども、ネイティブって邪魔にならないということなんですよね。

スマホ広告は初期の頃は画面半分を広告に持っていかれて、「打てないよ」となってすごくうざったいわけですよね。そうじゃなくて、作業を邪魔しない広告の出し方みたいなものを考えるべきだろう、という流れはあるかなと思いますね。

司会者:あと2人ぐらいご質問を受け付けたいのですが。

商品ごとのPR手法の違いはどこで生まれるか

質問者2:今日は貴重なお話しありがとうございました。小霜さんと本田さんそれぞれにおうかがいしたいのですけども。

まず小霜さんのお話の冒頭のところで、「すべて動画でやる必要がない」というパネルがあったと思います。実際に実務をされる中で、どのような手段を使うのでしょうか。最初のところはマスで使って、最後は刈り取りでというのが一般的にあると思うのですけども。

もう少し具体的に「こういう場面ではこうしている」「どういう考え方に基いて、じゃあこれにはこういう手段を使おう」というのをふだん考えていらっしゃるのか。

次に、本田さんへの質問です。ベビーカーのところで大きなタイヤを、自動車の急ブレーキと結び付けて、5倍の衝撃が掛かると出されたと思うのですけども。

いろんな商材やサービスに取り組む中で、どう商品の特徴と「世の中の興味や関心ごと」を結び付けて、作っているのか。そこをおうかがいできればなと思います。

小霜:まず商品やサービスによってケースバイケースです。なので、一概には言えないんですけど。以前は新商品の発表というのは、新聞の企業欄でやる感じだったんです。これは「本当に公の社会的になにか知るべきものだ」「企業としてもこれは相当自信を持っておすすめできるのだ」と広める感じで新聞を使ってたんです。

今はテレビがそういうことをやる役割を買ってきているような気がしています。ターゲットを捕まえるというよりも、もしかしたら空気づくりに近いのかもしれないです。テレビでやることによってなにか「この商品ここにあり」的な、存在感を世に知らしめるみたいなそういう役割です。

ニーズはけっこう細分化されているので、実際にターゲットで売り込むのはWebでターゲットを数値化して、それぞれのニーズにあった言い方でもって刺していこう、みたいな感じですね。そういうパブリック的なやり方と、プライベート的なやり方を上手く合わせながらやっていく感じになってきていると思うんですよね。

もしも売りたい商品が、そこまで大きなブランドじゃなくて、テレビでやるほどもない、ニーズが小さいのである程度Webでできちゃうという場合は、Webでいいんじゃないかと思います。あるいは、「もう店頭だけでいいじゃないか」とか。そういう流れに今なってきているような気がしています。

それは商品それぞれの特性によってあるので、「これだったら店頭だけで十分じゃないか」これはもうWebで十分だ」「これは雑誌で十分だ」など、それぞれその極地にいながら、クリエイティブをどうするかを考える。本当に細分化されているというそんな実感があります。

本田:僕への質問の答えですけど、実際どうやるかというと、どのケースでも応用できる王道的な順番は、あるようでないんです。

基本的な考えは、例えばベビーカーだったら購買者は決まっていますよね、お母さんです。お母さんに関係する社会的なニュースなど、それをまず総ざらいしますよね。

もっと具体的に言うと、過去1年、2年ぐらいの中で探すべき大事なニュースはベビーカーに関するニュースじゃないんですよ。

そればかりではあまり意味がない。それよりも、「赤ちゃんと安全」や「赤ちゃんと外出」などの領域ですよ。もっと言うと、弱者というか、老人、ベビーなど、そういうことに公共空間がどう対応しているか、というぐらいは広いですね。それを総ざらいして、ザーっと出した時に「さて、この大きなタイヤの話しとどう結びつけていくか」と考える。順番的にはそういう検討をしていく感じですよね。それで結びつけるストーリーをつくっていく。

そうやって総ざらいすることで、そもそもメディアが取り上げてたことなので、これから関心がもっと広がるだろうという前提になっている。そのあたりでもうPR自体が入り始めている。そんなイメージですかね。

SNSで空気づくりをした結果、何が起こるか

質問者3:本日は貴重なお話をありがとうございました。お2人にそれぞれお聞きしたいのです。

VAIOの話とベビーカーの話が出たと思うのですけど、実際に広告とPRとパブリシティで、テレビや店頭、Facebook、Instagramなどどのチャンネルでどれぐらい成果が出たのかをもし可能であれば教えていただきたいです。

小霜:VAIOの場合は、基本はWebだけなんですね。時々、秋葉原や羽田で交通広告をしていたぐらいです。しかしそれは例外で、本当にWebなんですよ。ただ購入は、Web経由でECサイトで買うよりも、実はオフラインで売上が伸びたんです。

僕は、それまではWeb広告ってオンラインでの購入に資するものという頭があったんですけど、それでちょっと考え方が変わったというか。インターネットだからどこにリンクを飛ばそうかみたいに、コンバージョン発想で考えていたんだけど、コンバージョンしなくてもいいんじゃないかと思うようになったんですよね。

ちゃんと認知がとれれば、オフラインでも買ってくれる。それで僕はWebを「コンバージョンして買う」だけじゃなくて、「プライベートなテレビCM」という捉え方をして、店舗で買ってもらう伝え方を、これからはしていってもいいんじゃないかなって思っている感じですね。

質問者3:ありがとうございます。

本田:ちなみにベビーカーのケースは、実は戦略PRのケースとして出稿しましたけど、広告も含めてインテグレートになっていました。実は代理店さんは東急エージェンシーさんが入っているんです。

今のご質問の情報のフローでいくと、こういう戦略PRで、まずは新聞とか、ネットメディアの報道系にそれなりに出ました。「ブレーキの5倍」という発表がありました、みたいなことが出て。それでTwitterやSNSでいくと、そういうニュースをピックアップするSNS上の露出がありました。

だんだんとPRから広告に融合していくんですけど、新商品なのでそういう空気づくりをやりつつ、さっきチラッと出てきましたけど商品発表です。それは普通に瀬戸朝香さんを呼んでイベントなどをやって、今度は芸能のパブリシティが出る。そこで段差のことをまた言っう。そしてどんどん商品寄りのPR露出が出て。

あと、これは個人的にはすごくおもしろかったんですけど店頭がやっぱり効いていました。

アップリカもコンビもいいですけど……結局、ベビーザらスなどの店員さんも、薦める理由がほしいわけですよ。お母さんたちが買う理由として。そうすると、「ブレーキの5倍のxx」をやっていると、例えば店員さんも薦める理由になる。そして「お客さんのお家のまわりって凸凹が多いですか」などのトークができるじゃないですか。

全部PRの影響なんですけど。空気づくりみたいなところからだんだんとクリエイティブに落ちて、そして店頭に落ちていくというような、そんな建て付けにはなってましたね。

質問者3:ありがとうございました。

司会者:ありがとうございます。PRをすることが店員さんのセールストークもつくっていたということになっていたわけですね。

本田:そうですね。結果的にはなっていたわけですね。

司会者:今日は具体的お話から大元の考え方の話まで、いろいろなお話をしていただきありがとうございました。これでお2人のトーク終了です。

それでは小霜さん本田さん、今日はどうもありがとうございました。

小霜・本田:ありがとうございました。

(会場拍手)

急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。

戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則

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