「一人ひとりが100%責任を持てるか」ベンチャーと大企業に共通する、個人が活躍できるチームの条件

8月9日 大阪 #2/2

Startup Factory2017 8月9日 大阪
に開催
NTT西日本がベンチャー企業や新しいテクノロジーやプロダクトを有する企業と一緒になって社会課題に取り組み、その解決をめざすプログラム「Startup Factory」。8月9日に大阪で行われた説明会では、さくらインターネット株式会社代表取締役社長田中邦裕氏、株式会社ウィズグループ代表取締役社長奥田浩美氏、ストリートアカデミー株式会社代表取締役藤本崇氏が登壇。社会課題を解決するビジネスというテーマで、個人が活躍できる環境づくりについて議論を交わしました。
提供:Genuine Startups株式会社

一人ひとりが100パーセント責任を持てるか

奥田浩美氏(以下、奥田):でも、ここ1年ぐらいで相当変わってきたと思っていて。変わってきたのは危機感だと思うんですよね。組織全体は変わりにくい分、治外法権な部分を作るような動きはどんどんできている。そこに関しては、ある程度もうスピードで進めていいよという動きが出てますよね? どうですかね?

伊藤健吾氏(以下、伊藤):そうですね。まさに今回のNTT西日本さんもそうですけど、本当に企業主催のアクセラレーションというか、ベンチャー、スタートアップとの協業プログラムというのは、もう毎年のように出てきていて。それもITに関係するところではない食品メーカーだとか、不動産会社だとか、いろいろありますよね。

そういうなかで、さくらインターネットさんって大きいので、その立場から。両方の立場で話ができそうなんですけど。

田中邦裕氏(以下、田中):そうですね。今の話を聞きながら、「うちはどうなのかな?」と思って、「両方あるな」と思ったんですね。そもそも原点に返ってほしいのは、1人でやれるんだったら1人がいいんですよ、絶対に。その原則を曲げないほうがいいと思うんですね。自分で勉強して、自分で全部できたほうがよくて。

伊藤:そこが一番ストレスがかからない。

田中:ストレスがかからないんです。コミュニケーションのコストがかからないので。そして、もう1つあるのは、100パーセント責任を持てるかどうか。先ほどすばらしいお話をお聞きしたんですけども、5人のチームがいて、CSが1人で、なになにが1人で、全員が「100パーセントお客さまに責任を持っている」と思っているチームってすごく強いんですね。

5人いて、100パーセントが5人だったらすごくいいんですけども、だいたい20パーセント×5人になっちゃうんですよね。要は、一人ひとりのコミットメントが下がってしまうのが、チーム化の課題だと私は思っているんです。

そういった意味で、私は1人でやっていましたけども、やはり複数人でやらないとできないこともあるし、「やっぱり1人のほうがよかったな」と思うことも、すごくたくさんあります。なので、ポイントはたくさん増えたとしても、増えないとできないことにステージを上げていく、ということがすごく重要なんだろうと思っています。

それで、先ほど飛び地を作るというお話がありましたけど、飛び地って、すごく上司から認められているんだけど、それをやらなかったら上司の顔に泥を塗ることになるし、100パーセントのコミットメントがあるんですよね。

よく言われるのは子育てですよね。夫婦で50パーセントずつの責任を負っているわけじゃないですよね。例えば、奥さんが風邪で寝込んだら、自分も乳が出なくても、作り方がわからなくても、なんとかミルクを作って飲ませるわけですよね。旦那が倒れたら、奥さんがなんとか働いて稼いで、生活保護受けに行くでもなんでもいいですけど、なんとか糧を得るわけで。「その仕事はおまえのものだから俺はやらないね」というので子どもが死ぬって、たぶんないはずだと思うんですよね。

なので、大企業だろうが小企業だろうが、100パーセントコミットできるように組み立てればなるし、分散してみんなが許されるようだったら、やはり分散するのかなと自分は思いました。

伊藤:よく言いますね。2人でやったらいいことは2倍、つらいことは半分になるみたいな。結婚式の司会みたいな話になりますが(笑)。

田中:100パーセントのコミットというのは、確かにそうですよね。ただ、おっしゃるように大企業さんは変わってきていると思いますよ。企業が変わることは非常に難しいですけども、企業の中の人を変えていくということですかね。

(会場を指して)なので、○○さん、すごいですよね。NTTの方とは思えない。……あれ、○○さんどこにいる?

伊藤:あそこで一生懸命写真を撮ってますよ(笑)。

田中:NTTの方って、だいたい……、すいません、NTTの偉い人がいる前で言うのもあれですけど、うちもNTTの顧客なので、あいさつというと、来なくてもいいのに5人ぐらい来るわけですよ(笑)。

(会場笑)

伊藤:大企業にありがちですね(笑)。

田中:一番困るのはあいさつなんですよね。それで、「いや、電話でいいですから」「メールでいいですから」というわけにもいかない。そういう社風のなかでも、それを認めている上司の方がいて、実際にそういうふうに動いていらっしゃる方がいて。

やはりこれはスタートアップのなせるわざだと思うし、逆にNTTさんのパワーによってうまくいきはじめている会社さんもおられるわけなんですよね。そういった意味で言うと、人と人とのチームのつながりで変えていけるんじゃないかな、とは思っています。

「やりたい」という言葉が出てくる環境を作る

伊藤:結局は大きな組織と言っても個人の集まりなので、個人でどう活躍できるかということをどう作っていくか。先ほど言った飛び地を作るということも、たぶんみなさんそれに気付きはじめているから、そういうことをやろうとされているんだと思いますし。

個人が活躍するという意味で言うと、先ほどの奥田さんの、女性に刺激を与え、無理矢理外から刺激を受ける状態にコミットさせて与えにいくのはすごい取り組みだなと思っていて。そもそも、12人はどうやって選んだんですか?

奥田:Facebookでつぶやいたら、何十人の応募が来まして(笑)。つまり、どれだけ女性のなかにマグマが溜まっていたかですよね。でも、日本のなかでなにか手を挙げても、変わる気がしなかったんだと思うんです。今ちょうど私と堀江愛利の2人で、シリコンバレーと東京で毎日毎日インタビューをやっているんですけれども、そこで1つわかったことがあって。

日本のまず女性たちは、自分たちが起業していても、「私はこういう力があります」「バックグラウンドがあります」「こういうことができます」、あと「社会のためにこういう事業はすべきだと思います」「こういう能力があります」みたいなことをメンターに対してひたすらしゃべるんですね。

だけれども、私たちが必ず返す言葉があって、「やりたいことを最初に言ってから自分のことを説明してください」と(笑)。「私は何をやりたい。今、それに対して私はこれだけの力があります」、そして「でも、私にはこういうバックグラウンドがあります」「でも、私はこれだけがないんです」でもいいんですね。「◯◯がたりないです。だから、やりたいことを叶えるためにそれをどうにかしたいんです」という言い方に全部変えさせていくんですよ。

そこでおもしろいなと思うのは、今回キックオフされるようなことでも一緒で。大企業のなかって、日本人は「僕はこの部署で技術を磨いてきたから、この技術があります」「会社の業績のためにこれをやるべきだと思います」「なんとかの部署の課長なので、ここをやるべきです」という言い方をしますけど、一人ひとりが「僕は何を作りたいです」って……NTTのなかで「洗濯機を作りたい」と言う人っていないじゃないですか(笑)。

でも、とにかく「やりたいです」という言葉が出てくる環境を作るということが、私はとても大切で。先ほど言っていたことが、おそらく女性たちに「これって本気で言っていて、やれるかもしれないな」ということが伝わったので、その12人が。

……東京からじゃないんですよ。大阪もいたし、神戸もいたし、いろいろな所から。なんと12人中6人がお子さんがいるんですよ。一番小さい子どもは2ヶ月(笑)。

伊藤:すごいな。

奥田:そこまでマグマが溜まって、「やりたいことが叶えられる場所があるんだったら行きたい」と思っている人たちがいることを示したいという感じで、今日は本当にその話が一番。「やりたい」という場所のために、例えば、ベンチャーやスタートアップと大企業が組むのに需要な部分になるのかな、と思っています。

伊藤:今こういう話をしていただいて、すごくよかったなと思います。

奥田:なんか終わったみたい(笑)。

伊藤:いやいや、そんなことはないんですけど(笑)。でも、すごいですね。生後2ヶ月のお子さんがいて、シリコンバレーに50万円近くお金を払って行って、やりたいことを実現しようという人がいる。

経産省さんがやっている「始動」というプログラムもありますよね。あれもすごいなと思うんですけれども、なんと言うんですかね、みんなが個人でやれることにチャレンジしはじめているなと。その場をどんどん作っている人が増えているなと思っていて。

藤本さんの事業なんか、まさにそうじゃないですか。もっとカジュアルにやろう、というところからやっているんだと思うんですけど。

重要なのはほとばしる感情

藤本崇氏(以下、藤本):そうですね、スーパーカジュアルですね。やはり起業を志す人って、ある程度意識が高くて、コミットやリソースも持っていて、「人生もかけてやってやろう」みたいな人で。1,000人いてもそういう人って10人かそこらだと思うんですよ。

伊藤:エネルギーがそこまで高い人は。

藤本:それで、多くの人は、やりたいことがあっても、やっぱり言い訳もしたいし、人生もあるし。とはいえ「会社でずっと同じことやって同じ上司でイヤだな。なにかを変えたいんだけど」という人は大勢いますよね。シェアリングエコノミーのすばらしさは、そういう人が、大それた起業というような枠組みに飛び込まなくても、自分の持っている何かをネットを介して提供して、それだけで直接知らない人から「ありがとう」を言われること。そのちょっとしたなにかをハードル低く提供できるということと、そこから得られる自信みたいなものが、すごく大きい。

そこには学歴もキャリアも関係なくて、「こんなことできますよ」「やってあげますよ」と言って、それがコマースというかたちですかね。ちょっとしたお金も含めてやりとり上に「ありがとう」が発生する。

それでもマーケットプレイスのおもしろさというのは、先ほどの話に通ずるんですけど、「どれだけやりたいか」という気持ちが実は一番重要だったりします。例えばうちで言うと、単に「中国語教えられます。カフェでお待ちしております」だけだと、誰も「受けたい」を押してくれないわけですよ。

伊藤:それはやはり、もっとPRしないとということですか?(笑)。

藤本:そうですね。やはりパッションが伝わらないと、ズラーッとたくさん講座を見ていても、みんな基本スルーしちゃうので、そこになにかほとばしる感情が見えるとかがないと……それって結局、「やれます」「やってあげます」とか棚卸的に経歴をズラッと並べるのではなくて、一言、本当にほとばしる感情を感じさせられる人が、フックになってやりとりが発生して、その後いろいろなことが起きていく、みたいな。

はっきりと「やりたいんです」と言うとか、「私がなぜやりたいのか」みたいなことを言い出さないとなにも始まらない。どんどん情報社会が進化していくと、どうしてもそうなってきてしまうんですよね。みんなつながっていて、普段からたくさんの人に会ったりするので、「誰だろう?」と忘れられないためには、「あの人、なんかつば飛ばして熱心に話してたな」というような印象が結局残る。

伊藤:なにかやりたくて、すごいエネルギーを持っている人ほど、そのパワーで人を惹きつけることができる?

藤本:そう思います。ユーザーだけじゃなくて面接でもよく感じるんですけど、スタートアップとの面談に来て、「前職ではこんなことをやってきました」ととにかく並べてくれるんですよ。それをもってして、「入れてくれますか?」という判断をこちらに委ねてくるんです。

とにかく僕は、どういう人で、どんなことをやりたくて、例えば「やりたい」が明確に定まってなければ、普段どんな人なのか、という人間性や嗜好性に近いことを必死に聞くんですけど、向こうは必死に「これができます。あれができます。どうでしょうか?」という能力やレジュメを見せてくる、みたいなかけあいがけっこう多くて。

結局、「いや別に、本当にやりたかったら、学習能力が高ければ入ってからでもぜんぜん学べるので、何をやりたいかを教えてください。もちろん入社前にうちの事業が好きだと言える人はそう多くはないことはわかっているので、そもそもどういうことをやるとかどういうものが好きかを教えてくれれば、うちの会社が好きそうかどうかを判断できるんだけど、「好き」という軸の話が聞けてないので、たぶんこのまま話していても……」という話が、けっこうな頻度で起こるんですね。

伊藤:なるほど。

やりたいことを明確に伝えていく

藤本:これはもしかしたら、「やりたい」より「やれますか?」という質問に答えて生きてきてしまった日本人の商慣習に……。

伊藤:商慣習というか、それで言うと教育そのものがそういう……。

藤本:いや、教育だけじゃないですよ。これはリスクアバースな文化(リスクを回避する傾向のこと)なんですよ。やっぱり人に何かをやらせるときに「なにか起こった時に大丈夫?」とか「あなたは本当にできるの?」ということに帰結してしまうから、「資格を取らないと」になるわけですし、今までのキャリアを棚卸して、履歴書と職務経歴書を2つ写真付きでフォーマットを用意しないとダメだということになってくる。

「can」より「want」のほうを価値として認めるというのは、僕は文化としてはアメリカが一番優れているところだと思っていて。向こうではやり直しも何回も効きますし、40歳で180度のキャリア転換で、新しい職種にゼロからやりなおし転職をしたとしても、誰も「Congratulations」以外言わないという文化がある。

伊藤:「大丈夫?」って聞かない。

藤本:聞かないですね。圧倒的に「Congratulations」ですね。その「Congratulations」が何の「Congratulations」かというと、「(今)やりたいことが見つかってよかったね」というだけなんですよね。でも、日本は祝福の前に「大丈夫?」みたいな。

伊藤:「生活大丈夫?」みたいなね。

藤本:「資格持ってるの?」「オファーもらってるの?」「できるの?」「給与水準は上がるの下がるの?」「その会社ってリスクあるのないの?」ということを、親も上司もみんな心配してしまう文化があって。これは早急に変えないと。

起業家文化は芽生えていますけど、一般層を見るとまだ変わっていないので。でも、情報社会が浸透していくと、そういう人の情報がSNSとかでちらつきはじめているので、少しずつ変わっていくとは思うんですけど。それ自体は日々感じます。

伊藤:なるほど。なにか、田中さん。

田中:聞きながら、うちが「やりたいことをできるに変える」という議論をしていた時のことを思い出したんですよね。「やりたいこととやれることは違う」と2人ともずっと言ってましたけど、明確にやりたいこととやれることは分けないといけない、と思っています。

やれることというのは、本当にレジュメだと思っているんです。だから、結局、やりたいことをできるとか、やれることに変えられる人って、たくさんいるんですよ。とくに大企業側はそうだと思うんですよね。

さくらインターネットのミッション自体も、「インターネットを使って、やりたいことをできるに変えるのを手伝う」ということなので、やりたいことは我々は作れないんですよね、残念ながら。だから、お客さまがやりたいことがなければ、我々は「あ、そうですか」と言うぐらいしかなくて、「契約してもらえればうれしいですけど」ということなので。

だから、基本的にはやりたいことだけを言えばいい。先ほど申し上げましたけど、やはり1人でやれるんだったら1人のほうがよくて、やりたいことがあるんだったら学びますし。

例えば、おっぱいのやり方がわからなかったら、自分でミルクぐらい作るでしょうし、稼ぎ方を知らなくても、旦那が倒れたら、奥さんが働いていなくても働くわけなので。まずは「この子をすくすくと育てたい」みたいなことが本当にやりたいこと、大いなる目標なわけですから。

やはり、やれることで留まっているよりは、やりたいことを見つけ出すほうに注力する。それで、やれることは大企業さんにお任せする。それが一番なんじゃないかなと思います。

伊藤:なるほど。それ、連携じゃなくて分離になっちゃいますけど(笑)。

田中:え、分離?

伊藤:分離というか、一緒にやるっていうこと……。

田中:あ、それで言うと、やりたいことを明確に伝えていく。先ほども少し話をしたんですけども、研究所に「これがやれますよ」と言うことからスタートするのではなくて、「こういうことをやりたいから、研究所になにかないですか?」と言うほうが、本当はコミュニケーションとしては正しいですよね。

伊藤:なるほど。今回、僕らがプログラムを作る時にまさにそういう話をしていて。「NTTさんのこういう技術があるから使えるよ」という打ち出し方をするかしないか、ということはすごく話したんですよね。

でも、それよりも今回まさにこういう話になってよかったなと思っているんですけど、社会課題をテーマに挙げているのって、結局、やりたいことを引き出すための打ち出し方かなと思っていて、それに対して「NTTさん、じゃあこれでできるよ」というやり方を今回は目指そうかなと。

田中:その上で、少し斜めな話なんですけど、先ほどリスクの話をされたじゃないですか。私、人生をかけて起業するのは、あまりおすすめしないなと思っていてですね(笑)。

今はこういう時代だから、仕事しながらでも起業できたり、本当にそれこそ週末だけ教えられるわけじゃないですか。だから、起業ってゼロイチで、失敗したら人生なくなるというものでもないのかなと思っていて、やりたいことがあるんだったら、まず手っ取り早くやればいいと思うんですよ。

言い訳っていくらでもできるんですけども、人生をかけなくてもやれる方法はありますし、ただ、人生をかけないと100パーセントのコミットにならない可能性が高いので、それ以外に自分のコミットメントを上げる努力は必要ですけども。

基本的にはリスクなく……「リスクなく」っていう表現はおかしいか。リスクを最小限にしながら、達成した時のリスクが少なければ少ないほど、いくらでもチャレンジできるわけだから、そういうことも一緒に考えるといいのかなと思いますね。

伊藤:そうですね。お金的な失敗さえしなければ、なんとでもできるというのは、本当にそうだと思うので。

田中:NTTさんはお金いっぱい持ってるんで(笑)。

(会場笑)

Startup Factory

NTT西日本がベンチャー企業や新しいテクノロジーやプロダクトを有する企業と一緒になって社会課題に取り組み、その解決をめざすプログラムです。

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