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SNS時代の劇場アニメの変化への対応(全8記事)

RADWIMPSは『君の名は。』を観に行く“言い訳”になっていた? Twitterから読み解く、新時代の宣伝戦略

2017年7月20日、Tokyo Otaku Mode渋谷オフィスにて、株式会社シェアコトが主催するアニメカルチャーを活用したプロモーションに関するセミナー「NED」が開催されました。イベントには、シェアコトにてアニメコンテンツマーケティングを手がける武者慶佑氏と、株式会社ウルトラスーパーピクチャーズのプロデューサー、平澤直氏が登壇。劇場アニメが増加する理由や宣伝方法の変化まで、実際の作品を例にアニメビジネスの裏側を紐解きました。

1ヶ月で数万人フォロワーを獲得できたのはなぜ?

平澤直氏(以下、平澤):これは、新海さん以外に乗っている人名でいうと、この人になるんですよね。

武者慶佑氏(以下、武者):(野田)洋次郎さん?

平澤:洋次郎さん。

武者:RADWIMPSのボーカルの方です。これ、誘う言い訳としては、「RADWIMPSの人が推してるから」というのは、絶対あったと思うんですよ。

新海さんは知らない、テレビCMを見ていない、だけどRADWIMPSを知っているとか、RADWIMPSが好きという、この流れを言い訳として誘うというのはあったんじゃないかなということを、僕はこのデータを見て少し考えています。

平澤:お、きたきた。

武者:これは『君の名は。』公式Twitterのフォロワー数の推移です。すこし伸び方がざっくりになっちゃってるんですけど。ここの7月から8月ぐらいまでで、伸び方が万人単位なんです。

平澤:これ尋常じゃないんですよ。

武者:尋常じゃないですよね。

平澤:尋常じゃないんです、これ。この時点でもうお祭り騒ぎですよ。

武者:お祭りですよね。1ヶ月間で数万人フォロワーを伸ばすって、祭りじゃないとたぶん無理なんですよね。

平澤:そうですね。

武者:この祭りをどうやって起こしたかというのが、先ほどおしゃっていたことにちょっと絡んでいるんじゃないかと。

アカウントをリサイクルする手法

平澤:まさにTwitterさんは武者さんの得意分野でもあるのでぜひ聞きたいですけど、例えば4月に放送を開始した深夜アニメが今回も50〜60本あるのかな。

深夜アニメの場合は、毎週毎週放送があって気に入ったら追加でフォローする、という感じでフォロワーが増えるんですが、6万まで行くアカウントっていくつぐらいあります?

武者:えーと、1個か2個。いくとしたら。

平澤:クールごとに?

武者:クールごとに。それはもう本当に、爆発してるかどうかというのはかなり……。例えば『エロマンガ先生』の場合はベースとして『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』があるじゃないですか。

平澤:そうですね。

武者:これずるい方法もあって。

平澤:あ、そうだ、そうだね。

武者:『俺妹』のアカウント名を『エロマンガ先生』に変えたんですよ。だから、ベースになっている人が10万人ぐらいいて、さらに上澄み作るみたいな流れがありました。この手法って『Charlotte』の時にも使われたんですよ。

平澤:そうですね。『Angel Beats!』。

武者:そう、『Angel Beats!』のアカウントを『Charlotte』に変えました。だからもう『進撃の巨人』のアカウントをなにか変えるみたいなものですよね。似た作品を作る時に、新しいアカウントに名前を変えて。

平澤:この場合だと諫山先生が新しくなにかを作られたときには、たぶん『進撃の巨人』の公式アカウントが新しい作品のものになるみたいな。

武者:そうそう諫山先生が。同じ製作委員会で同じ座組みでみたいなのって、最近の映画だとあれですよね、『心が叫びたがってるんだ。』。

平澤:そうだ、そうだ。『ここさけ』。

武者:『ここさけ』の前に『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』がありましたよね。アカウントは移動してないものの、ほぼ座組みが同じなので、「あの『あの花』スタッフが……」みたいな。

平澤:よく使ってましたね。

武者:そうそう。そのパターンかなと思うんですけど。

武者:一方、これは完全にゼロベースで作ってるので、6万までどうやって上げたのかなと。

平澤:すごいですよね。逆にいうと、『言の葉の庭』のアカウントは使わなかったんですよね。

武者:『言の葉』はまた別ですよね。『言の葉』は新海さんファンしか知らないですから。

平澤:あの……ログミーさんにどう載るのか不安ですけど、まさにそうですよね。『言の葉』は新海さんのコアなファン、私も含まれますが。

武者:僕も観ました。もちろん。

平澤:あれは、劇場に行って「うんうん、今回もいい新海さんだった」って言いながら出てくる、みたいなお話でしたからね、たぶんアカウントのフォロワー数もずいぶんと違った数字になってるような気もするんですが。いや、それにしてもこれはすごいですね。本当にジャストふた月で6万人増えてるんですね。

RADWIMPSが『君の名は。』の宣伝に与えた影響

武者:そうですね。そういう状況がどうやって作られているのかという部分に、RADWIMPSさんは大きく関わってきているし、逆にいうと、そのうまい使い方というものを企業さんのプロモーションにも応用する方法はあるんじゃないかと思っていて。

例えば先ほどのサントリーさんのタイアップだと、BGMにRADWIMPSをそのまま使っているということもあったりします。

平澤:ああ、なるほど。

武者:そのあたりについて、これをご覧ください。

これは『君の名は。』とツイートした人が、どんな単語とともに言ってるかをテキストマイニングしたものです。もちろん「映画」ということを言っていますが、もう2位で「前世」ですよ。たぶんこの前に「前前」つきますね。

平澤:そうですね。つきますね。

武者:まあ「試写会」はともかくとして、このへんは「歌ってみた」ですよ。

平澤:あっ、なるほど。

武者:歌ってみた。最初のほんのちょっとのフレーズしか流れていない、1分版ぐらいしか流れていないものを膨らませて、この人が歌ってみたりしているものが、ニコニコ動画にあがってたりします。それをRADWIMPSファンの人が消費するのか、それともこの歌い手の人のファンの消費するのかいろいろあるんですが。

そして、「RADWIMPS」が入ってくると。ということから、かなりRADWIMPSの力を借りたんじゃないかって思います。

Mr.Childrenの過去のタイアップ事例

平澤:すばらしい。あと見逃せない要素が、RADWIMPSさんが劇場作品の主題歌を担当するのはおそらく初めてですね。

武者:初めてかなと思いますね。

平澤:たぶん初めて。間違ってたら申し訳ありません。記憶によると、たぶん初めて。

武者:だから、僕はこれで認識したという感じなので、一般的な認知というか、「劇場版だ。やったな」という記憶は間違いなくここが強いですよね。

平澤:ですよね。ということでファンに方にとっても記念すべき……。

武者:事故というか事件というか。

平澤:事件になったと思うんですよね。比較対象とするのもあれですが、例えば今まで劇場作品をたくさんやってるアーティストさん、Mr.Childrenさんとかが今回担当するとなったとき、ミスチルさんにはファンがいっぱいいらっしゃると思うんだけど、ここまでの流入があったかというとちょっとわからないですね。

武者:そうですね。『バケモノの子』の時とか。

平澤:あ、そういえば、そうだ。

武者:ええ。あとね、ONE PIECEの一番最初の『STRONG WORLD』。これは2008年ぐらいだったと思います。それはわりと「ミスチルがONE PIECEと」というところでくっついたんですけど。

『バケモノの子』をやった時は、「ミスチルが」というのは、これはファンの方がたまたま言わなかったというのもあるかもしれないですが、ソーシャルにそんなに影響を与えなかったというのがありまして。

ミスチルとタイアップしたことは僕たちにとってはすごく大事件ですけど、ソーシャルで言いたいことなのかというと、また違うのかなと思ってて。

個人アカウントであることの重要性

武者:『君の名は。』でのRADWIMPSさんの使い方でびっくりしているのが、彼らは製作から関わっていますよね。

平澤:そうですね。

武者:RADWIMPSの洋次郎さんがコミケに行って、国際展示場駅からビッグサイトまで歩くまでの間に、「『君の名は。』の看板があったよ」みたいな写メ撮って、UPしたりすると、その時にフォロワーが何千人と伸びたりしています。

平澤:すごい。

武者:そういう状況とかも発生してて。

平澤:あと、コミケいらっしゃってるんですね。

武者:コミケに来てるんですよ。

平澤:知らなかった。そうなんだ。えっ、それ一般ですか?

武者:一般だと思います。わかんないですけど。

平澤:マジで!?

武者:普通にコミケに行ってて、そのときの写メをあげてるとか。あとはRADWIMPSの曲が公開されてMステに出演するというのも、『君の名は。』とセットで必ずRADWIMPSが言い続けているというのがすごくよくて。ミスチルって、アカウント個人で桜井さんとか持ってないんですね。

平澤:そうですね。

武者:ええ。RADWIMPSの場合は個人もあって、かつ……。

平澤:グループでも。

武者:グループもTwitterがあって。その個人的な部分の強さと、グループのアカウントが情報発信だけじゃなくて……。個人の声もちゃんと発信しているかどうかは、ファンにとってはすごく重要なポイントになっていて、事件だと思い得るんじゃないかと思います。

RADWIMPSが『君の名は。』を観に行く言い訳になった

平澤:本当にこのへんは「どこまで計算されてたんでしょうね」って、本当お会いしたら聞きたいぐらいですけども。

武者:計算してるかどうかわかんないですけど、本当にすごい。

平澤:ですね。なので、少なくとも「結果としてものすごい効果であった」という言い方にはなると。

武者:そうですね。だからこのスキームというのは、企業さんのタイアップといったときにでもなにか使えるものはないかすごく考えていますし、SNSに関しては、キャストさんとかアーティストさんの力もセットで作品を考えたほうがいいと思います。セットというか、力というよりは協力関係とか。

平澤:そうですね。

武者:うん。運用方針とか、そういうところも考えるに値するのかなと思って見ていました。

平澤:そうですね。先ほどでいうとまさにあれですよね。たぶんRADWIMPSの洋次郎さんなどがまさに、「一緒に観に行こうよ」って言ってる人、お友達に近い感覚になるのかもしれないですね。

武者:確かに。言い訳を作れますよね。「RADWIMPSの洋次郎さんがあそこにポスターあったよ」って「観に行こうよ」って言ってくれてるんだったら、私も行きますみたいな。

平澤:みたいな。やっぱりそこはすごくフットワークを軽くする要素になりますよね。

武者:若いアーティストさんってファンとの距離がSNSから始まってるから、すごく身近だったりするじゃないですか。ニコ動から始まってる人もそうかもしれませんけれど。

会える距離から始まっているから、その人が呼びかけたら友達みたいな感じになるというのもあるのかなとか。

平澤:おそらく本当このあたり、さらに検証が進んでいくと……。

武者:そうですね。ちなみにRADWIMPSはもともと60万フォロワーいました。その人たちの力を借りたから、6万になったんじゃないか、みたいなことも思っています。

平澤:本当にそうですね。ある種、きっと製作側のクリエイティブな相性の良さもあり、さらにそこに宣伝手法の良さもあり、というふうに、すごく良さが噛み合ったところはあるんでしょうね。

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