マスに届けるのではなく、熱量生み出す

平澤直氏(以下、平澤):はい、そして……。

武者慶佑氏(以下、武者):これですね。僕的には「マス作品にしたいのであれば、マスの熱量を戦略的に獲得していく必要があるのではないか?」というのを、素人のくせに。

あくまでデータの上ではそういうこともあるのかなと。マス作品の場合は、マスに届けたいと思って直接的なメッセージを送るよりも、うまくマスの熱量を持ってくるところとセット。

平澤:そうですね。熱量というか、ある種の視線というか、ある種の注意というか。

武者:気づいてもらうためのきっかけみたいなのも。

平澤:ですね。

武者:よくキャストさんや音楽面での宣伝というのは昔から絶対やられてると思うし、それによってメディアキャラバンをして、テレビに出たりとかラジオに出たり、というのってあるじゃないですか。ですが今は、4マスじゃなくて、Web、ソーシャルというのも考えたほうがいいのかなと思って。

平澤:そうですね。やっぱり隙間時間で見れるところとか、とくにマスはマスでもどの年代のマスに届けたいかによって、使い方は変わります。やはり今の中高生のみなさんは、テレビを見ている時間と同じか、それ以上にスマホを観ている時間が長かったりするので、そっちで展開したりとか、届けるルートを考えていくというのはあるでしょうね。

「話題性」を設計する時代

武者:製作側の方としては、そちら側から企業さんが入ってくるというのはできるものなんですか?

例えば、仮になにかしら新しい作品があって、そこに有名なアーティストさんが絡んでいますと。じゃあ「そのアーティストさんを絡めた宣伝をしたいんですけど」と企業さん側がお題を持ってきたりということはありうるんですか?

平澤:おもしろいですね。今の時代は作品のクリエイティブの強さもそうですし、まずはプロモーションというか、どれだけ人の間に情報として渡っていけるかという部分も、同時に最初から設計しなければいけない時代になり始めてると思っています。ある種の話題性ですかね。そういったもの。

なので、作品として良さ、そしてお金払っていいな、と思うような商品性の高さと同時に、ある種の話題性・拡散性が、初期の企画の段階で入れ込まれているべきだと思っています。

武者:そうですよね。先ほどのベースがあれば、やっぱりムーブアップもさせやすいというところもあると思いますし。

平澤:あとは、コラボレーションするにあたって作品とその企業さんなりタイアップさんなりで共通項があって、その共通項がお客さんにとってさらに価値がある。企業と、クリエイターのみなさんと、それにお客さん、その三方がそれぞれに意味のある、価値のある情報になっているかどうかというのはすごく重要かなと思います。

だから、キャストさんや企業さんと作品だけじゃなくて、その向こう側にいる届けるお客さんにとっての価値が加わると、お客さんにとっても「ああ、それは確かにやる意味があったんじゃないか」となってくるんじゃないかなと思いますね。

タイアップは作品+アーティストが常識になる?

武者:製作側に委員会があったり窓口があるわけじゃないですか。「タイアップしたいです」と企業さんが案件を持ってきます。ただし「このアーティストさんがその作品には入っていますよね。そのアーティストさんもセットでうまく企画考えたいんですけど」というのは、どうなんですか?

例えば平澤さんがプロデュースする作品には、あるアーティストが決まっています。そのときに、それを知った企業さんが「その作品とタイアップしたいんですけど、アーティストさんも一緒に使いたいんです」みたいな場合です。

平澤:その点でいうと、今度はプロデューサーとしての調整力が問われるところですけれども。今後はそういったある種のタイアップというかコラボレーションができるように、組むアーティストさんに、「いろんなタイアップがあるかもしれないので、そこにもご協力いただけますか?」というようなところをあらかじめ入れておく時代になるかもしれないですね。

武者:それってどうなんでしょうか? 失礼にあたるかもしれないけど、そういうのは考えるものなのか、それともあとあと、例えばやっぱりクリエイティブ優先であって、こういうかたちを作っていきたい。そのときにたまたまパワーがある方だったりとかするといいなのか、最初から計算してある程度入れていくのか。

平澤:やはりお客さんから見たときにどのように価値があるものとして映るか、という話で言うと、やはりクリエイティブのパワーは重要視されてるとは思いますよね。

武者:絶対そこはそうですよね。

平澤:まずそこが軸にあって、ということだと思いますね。最終的にお客さんは、おもしろいものを見たいという部分が強いので、そのコラボレーションによっておもしろいものが生まれやすそうだ、という空気が出ているのは大事なところだと思います。

作品の企画の手法には、「みんなが不安に思ってることを入れる」というものがあります。結婚とか就活とか病気とか。そういうのってどうしても人間として関心があるので、まず「企画にそういう要素があります」というと、「ちょっと話聞いてみようかな?」となりがちで。

そういう話題性もあれば、おっしゃるとおり、 クリエイティブパワー とクリエイティブパワーを結びつけて、「それは確かに今まで見たことがないかもしれない」というかたちを作り、さらにコラボレーションしているアーティストさんがそのタイトルを愛してくれているというメッセージによって、これまで作品としては捉えきれていなかったタイプのお客さんが入ってくる、みたいなことになるとたいへん幸せなかたちになりますね。

『心が叫びたがってるだ。』×乃木坂46の事例

武者:ちょっと余談なんですけど。おもしろかったのが、『心が叫びたがってるんだ。』の主題歌は乃木坂46が歌っていますよね。なので、乃木坂メンバーが観に行って、Twitterに「おもしろかったよ」と書いて、その連鎖みたいなものがあったりとか。

平澤:ああ、ありましたね。

武者:『君の名は。』もHKT48のメンバーが観に行って、『この世界』もゴールデンボンバーのメンバーが観に行って、みたいに連鎖が起きるみたいなことがありました。

平澤:なるほど、そういう意味でいうと、今度はコラボレーション、一緒になにかを作るというよりは、さらに宣伝で思わぬお手伝いをいただくというか、思わぬ支援をいただくみたいなこともこれからあるんでしょうね。

武者:『ここさけ』の乃木坂の場合はメンバーがいっぱいるからできたことだったりもするかなと思いましたね。

平澤:なるほど、なるほど。

武者:そうそう。1人1人が順次観に行くみたいな。

平澤:なるほど、確かにそういうところもあったかもしれない。乃木坂さんも、劇場アニメとのタイアップは……。

武者:確かに初かもしれない……かな。

平澤:劇場はたぶん初なのかな。間違ってたら、すみません。

武者:劇場は初かな? テレビアニメではもしかしたらあるのかもしれないですね。たしかあったと思います。

企業さんは「この作品と一緒にやりたいけれども、さらにその作品の先にいるアーティストさんとか、マスの力も一緒にお借りしてやりたいです」というのは、相談は可能なんでしょうか?

平澤:まあ、おそらくそういう時代になって。

武者:時代になる?

平澤:そういうふうに組めると、とても重宝されるタイトルになっていくと思いますし、これから企画開発をしていくときには、そういうこともやるべきかなと思ったりはしますね。

武者:平澤さんにはご相談できるかもしれないと。

平澤:あのー、えー……。

武者:すいません、言えない(笑)。

平澤:個別にお話しましょう(笑)。はい。

深夜アニメにおける「話題になる」とは

武者:かしこまりました。先ほどからマスについてお話していますが、どのぐらいの数字があればマスと言っていいのかな、ということをけっこう思ってまして。なので、そのマスの数字に仮に指標を置くとしたら、というのもちょっと考えました。

平澤:お、きましたね。

武者:マスってどのぐらいの数字があればマスなのか。例えばTwitterのマスってどのくらいの数字かというと……。

深夜アニメではどのくらいのツイートがあれば多いと思うのか、見てみました。僕、すべてのアニメのTwitterアカウントを、何年間か全部登録してて。1日あたり何件作品の名前言っているか、という波形をとってるんですけど。

「作品が放送した日に1万回以上ツイートされているかどうか」というのがけっこうキーポイントになっていて。それ以上を維持してるとけっこういいという感じですね。さらに、波形としては終わりに向かって上がっていくといいみたいな。最終話に向けて。

平澤:なるほど。

武者:劇場版だと、基本的には最初が上がって時間とともに下がっていくというか。『この世界の片隅に』とか、長引いた作品の場合は、ロングテールがすごく長かったと思うんですよね。『君の名は。』も実は長いほうなんですけど、ファンムービーとかも長いのかな。短いものは短いんですよ。ポンポンという流れもあったりとかして。

これは『おそ松さん』とか『けものフレンズ』って放送があったときの波形ですが10万ツイートとか発生しています。

平澤:すげえな。これ。

武者:しかも、安定してるじゃないですか。『おそ松さん』の場合は最終話に向けて2クール分ずっと安定して、最後上がる感じです。

平澤:これ、なんとなく上がっているのは放送日ですか?

武者:そうそう。放送日ですね。だから、上がっている日はきちんと24回あるんじゃないでしょうか。

平澤:そうですね。これ、低い日でも6万ぐらいあると。

武者:そうですね。低くてもそのぐらい。

平澤:6万ぐらいあると。

武者:ええ。

平澤:いやー、きてますなあ。

武者:これは放送中のデータなので今がどのくらいかというのはまた別の話なんですが、いわゆる深夜帯のアニメにおいては「1万」という数字をベースにして考えていて、10万は事件だと思っている。事故・事件の話だなと思っています。

平澤:なるほど。