名刺を何百枚集めても意味がない

ヒラヤマコウスケ氏(以下、ヒラヤマ):では、まず初めに、企業さんの色んな悩みを聞かれているということで、企業のマーケティングやイベントの使い方について徳力さんに何かコメントをいただければなと思います。

徳力基彦氏(以下、徳力):僕も高広さんのプレゼンを聞いていて思ったんですけど、BtoBにおけるマーケティングとセールスって意外とすごい硬直化しているケースって多いなと思うんです。

大昔ってBtoBって本当、マーケティングの選択肢がなかったんですよね。見込み顧客に遭遇する確率がめちゃめちゃ低いから、やるっていったらコンベンションに出展して、とにかく道歩いている人を引き込んで名刺もらう。僕もあれ何回かやったことあるんですけど、めっちゃ大変じゃないですか。

しかも全然意味がない名刺が大量に集められちゃうんですよね。「お前勉強してこい」みたいな新人社員が、送り込まれてて声かけられたからたまたま止まるみたいなケースが多くて。一方で、目的があって来場してる人はそれ目的にきてるから、関係ないこっちが声かけてもなかなか振り向いてもくれないし。

がんばって大量に名刺200枚とか集めたんですけど、何の意味もない、という経験を何度かしました。とはいえ、それを藁にもすがる思いでやらないと、他に選択肢がなかったんだと思うんですよね、ネットがない時代って。BtoBの担当者に知り合おうとして会社に電話しても、コールセンター側で切られるに決まってますから。

それがネットのおかげで直接コンタクトできる手段が増えたことによって、根本的に、BtoBのマーケティングを考え直すチャンスが来てるんだと思うんですよね、BtoBの営業マンで個人でソーシャルメディア使いこなして、見込み顧客とめちゃめちゃ繋がれてる人とかいると思うんですよね。

でも、その一方で結局マーケティング部署の活動は今まで通りの習慣でプランされた、毎年同じイベントに出展してその後ダイレクトメールが常識、みたいになってるから、ここの乖離はすごいあると思うんですよね。僕も結局、NTTから転職してベンチャーで、前の会社とか、今の会社で見込み顧客を集めるときに、いわゆる教科書的な出展とかやってみたんですけど、あまりに、成果がでないと言うよりは、無力感で、終わったときがよくあるんです。

「獲得」ばかりで「育成」に目を向けないイベントが多い

徳力:特に無名のベンチャーって展示会でもなかなか相手にされないんですよね。日本企業の人は基本的に知らない会社の話を聞くつもりないから。それでやめたんです。今の会社でも、いわゆるマーケティング投資ってほとんどしたことがなくって、広告的な手段はあまりやってません。で、なにをしていたかと言うとずっと勉強会をやってるんですね。

勉強会はどっちかっていうと、究極的には、高広さんとか小島さんがいっているように、売り上げにつなげるためなんですけど、すぐに売り上げにはならないので、うちの社内でもたぶん、勉強会って売り上げにあまりつながってないんじゃないかなって、営業の人間は思ってると思います。

長い目で見ると確実につながっている自信はあるんですけど、社内の活動として証明するのは難しいんですよね。たまたま僕が前に社長をやってて、僕が好きだから僕のためにやってるので続けられる。でも普通の会社だと「これ、売り上げにつながってんの?」って聞かれたら「つながってませんね」ってなっちゃう。そうすると「やめちまえ」ってなりやすい。

すごい長い目で、それこそHubSpotみたいなやつで履歴とか取っとくと「今回注文してくれた人、2年前の勉強会にきた人ですよ」みたいなのがあり得るんですけど、「獲得」と「育成」って分けた場合、今のイベントってほとんど「獲得」なんですよね。BtoBで獲得なんて簡単にできるわけないと個人的には思うんですけど、実際には人間として信じてもらえて初めてキャッチをもらえるんだと思ってます。

そこに乖離があるのを感じるんですよね。僕もNTTで法人向け営業の営業マンやってた時代があるんですけど、営業の基本ってまず雑談じゃないですか。仲良くなってなんぼで、しゃべってもらえてなんぼで。そんな感覚が営業の現場ではあるんですけど、いわゆるB2Bマーケティングの獲得重視の世界と現実が世界とは乖離しているのは感じます。

BtoBマーケティングにおける人間関係作りの大切さ

徳力:実は僕のなかでは雑談的な勉強会をしていることによって、「この会社何やってるのかよくわからないんだけど、ソーシャルメディアとか詳しそうだからちょっと相談してみようかな」みたいになる可能性があると思ってます。

僕がそれでうまくいっているかと言うと、そんなにうまくいっていなくて、Web広告研究会の広告主の方々からは、「徳力さんって会っても全然仕事の話しないけど、もうちょっと売り込んだほうがいいんじゃないか」って逆に心配されるくらいの状況なので、それはそれで問題なんですが。

でも、やっぱり一人そういう勉強会とかが好きな人がいると、それによってすごいヒューマンネットワークがつなげられる可能性があって、それがさらにアマゾンの小島さんみたいな人だと、これをさらに、子から孫に伝播する能力を持っていて、というのは可能性を感じるんですよね。

小島さんのあれを真似するの、すごい大変だと思うんですけど、実は営業活動とか人間関係づくりに近い活動をBtoBのマーケティングのメインに持ってくるほうが、効率がいいかもしれないと。でも、これを証明するのはすごい難しくて、みたいなのが、今ちょうど過渡期なのかな。さっきの高広さんがいっていたようにデータをちゃんと分析すると、絶対でてくると思うんですよね。

うちとかも、ソーシャルメディアの初期の頃とかに名刺交換をした人たちと、そのとき「仕事やりたいね」っていって流れたんだけど、3年ごしで成就しました、みたいなケースも良くあるんですよ。これ、その年にコンバージョンとってたらゼロなんですけど、でもこの活動してるから今がある。そういうBtoBだからこその難しさがある気がしますね。

長期間のファネルを営業に理解してもらう必要がある

小島英揮氏(以下、小島):今のお話、良いなと思っていて、高広さんの話のなかの営業とマーケティングの言葉が違うというのがありましたけど、時間軸も結構違いますよね。僕らが思ってるファネルと、営業の人が思ってるファネルと、全然ファネルの層も違うし、長さも違うんだと思います。

マーケティングが持ってる長い期間のファネルを営業の人たちに理解してもらう必要があると思うんです。最近だいぶ良くなってきたなと思うのは、トラッキングできるようになってきてるんですよね。

昔は、さっき徳力さんがおっしゃったように、「昔あった人、今案件になってますよ」ってトピックでしか証明できなかったんだけど、たとえばSalesforceとかSFAを使ってる人だったら、いつのキャンペーンで入った人で、その人は何回イベントにきて、最終的に案件になったかをちゃんとトラッキングできるんですよ。

ファクト(事実)を出していくと合意が得やすいですよね。長いファネルってちゃんと有効に動いてるんだと。認知度があって、デマンドジェンがあって、リードジェンとアウェアネスがあって、意外と営業の人ってあんまりデマンドジェンって理解してくれない。自分のことに関係あるって思ってもらう時間が結構長いんです。

徳力:足が長い(笑)。

小島:足長いですよね。うちもよく新しいメンバーに話すときに、アウェアネスとデマンドジェンの違いを結構話すんです。たとえば女の子に「フェラーリって知ってる?」「知ってます」「ほしい?」「ほしくない」。男の子に「シャネル知ってる?」「知ってます」「欲しい?」「欲しくない」。アウェアネスとデマンドが違うんですね。

イベントが埋めてくれるもの

小島:でも、たとえば「シャネルのなんとかを持ってると女の子にモテる」みたいな情報が男の子に入ると、男の子でもシャネルを持ちたいかもしれないですね。フェラーリも、それ持ってるとイケてる女の子に思われるみたいな付加情報が入ると、自分のこととしてとらえられる時が来るんです。自分のこととしてとらえてもらうためのファネルが、なかなか営業の人に理解されないような気がします。

だけど今、証明できるようになってきている。少しずつね。そこのギャップがまだ多いのかなと思います。BtoCみたいにそのとき良いと思ったら買えるものと、担当が良いと思っても社内の稟議を通さなきゃいけないとか、クラウドみたいに通そうと思ってるんだけど抵抗勢力がいるとか。BtoBだとこういうの全然、フローが違うので。その辺りまでまだ過渡期なんですかね。

そこを埋めるところに、大なり小なりイベントの使い方があるんじゃないかと思っていて、ステージのいろんな人に、それは勉強会かもしれないし、お客様向けの説明会かもしれないし、興味がない人向けの雑談かもしれないし。

そういう色んな入り口、ファネルの要所、要所、ポイント、ポイントにいろんな形のイベントがあっていいんじゃないかなと。イベントをやるコストが今下がってきているので。それが今できつつあるというように思います。