東洋経済オンライン、急成長の秘密は?

本田哲也氏(以下、本田):では、(BuzzFeedとは)まったく違ったモデルかと思いますけれども、山田さんお願いいたします。

山田俊浩氏(以下、山田):対局だと思うんですよね、BuzzFeedさんはグローバルにたくさんの拠点があるのに対して、我々は東京しかありませんし、本当にドメスティックです。そのなかでやっているわけですけれども、最近大きく伸びていますので、どういったことをやって伸びてきたかということを説明させていただこうと思います。

ほとんど知られてないと思いますが、「経済ニュースの新基準」というキャッチフレーズを作っております。なぜ「新基準」かというと、ひょっとすると日本においては「旧基準」というのがあったんじゃないかと。某経済新聞のことです。

経済ニュースについては、「ここがこういうかたちで報じるのが経済ニュースだ」という旧基準があるわけですが、そこに、もう1つの選択肢を提供していきたいということを理念に掲げております。

圧倒的なページビューを誇るビジネスサイト

特徴は4つあります。まずは大きなユーザーページビューを取っていますということ。あとは、幅が広いです。取り扱うテーマは幅広いんですけれども、そこを数字、エビデンス、そういったもので切っていくということで、経済的な視点でやることにこだわっています。

あと、ここには読者は「20代~40代」と書いていますけれど、20代にはそれほど強くなくて、やはり30代から40代の、子育て中あるいは家族を養っている働き盛りのビジネスパーソンが中心になっています。

すべての記事を無料で提供、ログインも不要

読まれるのも通勤電車内というのが多くて、地域ですと大都市。読者が首都圏で半分ぐらいおりますので、東京中心と言ってもいいかもしれません。

あと、どうしても多くのところが「記事を有料で」ということを考えがちなんですけれども、我々はすべて無料ですし、IDのログインも不要ということにしています。この点は、BuzzFeedさんと同じだと思います。

このグラフだとPVがちょっと落ちちゃっているんですけれど、5月は復活いたしまして、もう一度1億6,500万というところまでいっています。

ここの「ユニークブラウザが落ちてんじゃねぇか」というのが気になるところだと思うんですけど、これはある特殊要因が絡んでいますので、のちほど説明させていただこうと思います。

こういうこと(他社との比較)をやると嫌われるので、このスライドは飛ばすと……(笑)。

トレンドを独自の視点で斬る

2番目が「トレンドに経済的な視点で迫る」ということで、これが4月によく読まれた記事です。

これもあまり見せると、結局何が見られてるかというところで恥ずかしい面があるんですけれども(笑)、やはりランキングの記事がたくさん読まれています。我々は『会社四季報』という媒体も出していますので、いろんなデータを集めています。そのデータを活用したランキングモノは定番になっています。

あと、MBAとかデキるビジネスマン向けにすごくフォーカスしていた面があったんですけれども、今は「格差社会」というところに注目していまして、これは『週刊東洋経済』の切り口でもあるんですけれど、そういった社会問題についても最近、積極的に取り上げ始めています。

女性版、東洋経済は作りません

この女性比率が高いというところが我々のかなり大きな特徴でして、たぶん要因としては編集部の女性比率が過半数を超えているというのが大きいんですけれど。

女性をターゲットにしたコンテンツが多くて、おじさん受けしそうな写真を私が使うと必ずクレームが来るぐらい(笑)、みなさんきれいなサイトにしたいという思いが強くて。変なものは載せられないというプレッシャーがあります。

ビジネスサイトで30パーセントくらい女性がいるというのはなかなかないことで、だいたい10パーセントぐらいとか、新聞系でも女性が多いところはないですね。

我々は「ユニクロ」だと思っていまして、女性も男性も来てほしい。ですから「WOMAN東洋経済」というのは作らないで、東洋経済は男性も読むし女性も読むというサイトにしていきたいと思っています。

今の読者の平均年齢は、やっぱり40代ぐらいのところですね。週刊誌の方はもう60代に近いところになっていますので、オンラインとはそこに大きな差があります。

他媒体とも相互にコンテンツ提供を行う

あと、分散型というのとは違うんですけれども、我々は条件を満たしているところにはすべて配信をしていっています。例えば、今、力を入れているのが、いわゆるプラットフォームと呼ばれているところだけではなくて、メディアともやっているんですね。

例えば、『東京カレンダー』さんとは、東京カレンダーの記事を我々も転載し、東京カレンダーさんも我々の記事を転載するというかたちで、プラットフォームに依存するんじゃなくて、お互いの読者に必要な情報を、お互いが汗を書きながら、必要なものはキュレーションしていきましょうということで、自分たちのお客さんが求めているものはどんどん出していこうということもやっております。これが特徴4です。

検索も順調に伸びています

それと、これは縦軸(の数字)を取ったので公開していいというものなんですけれども……非常に重要な指標なので。

先ほど、検索での流入がBuzzFeedさんは2パーセントだと言われていたんですけれど、我々は検索が非常に重要で、オレンジ色の線が検索です。バタバタしているものがいろいろありますけれども、バタバタしないで伸びてくれていると。

この計算で行くと、さっきの落ち込みというのがないとおかしいんじゃないかなと思われると思うんですけど、実は1個省いているものがあるんです。ノーリファラー(参照元なし)の流入というものが、去年の9月から今年の3月までは、ものすごくあったんですね。それが今ほぼなくなった、急減しました。

“iOS9バブル”が弾けても成長は止まらない

それは実は一部新聞社とか東洋経済のなかであったんですけれども、iOS9で、iPhoneをクルッとスライドするとなぜか一瞬記事の見出しが4つから8つ出るという(機能)、それによる流入が膨大だった時が一時期あったんですけれど。その時に大きくユーザー数が増えちゃったんですね。

それが今なくなったので、ユーザー数はちょっと落ち着いたということです。これを社内では「iOS9バブル」と呼んでいるんですけれども、もうなくなっちゃいましたので。それがなくなった分で若干苦戦しましたが、ようやく先月またトップを出すことができましたので、今後は順調に成長していきたいと考えております。以上です。

本田:ありがとうございました。みなさんも両方のメディアはご覧になっていると思いますが、改めて違いとかモデルみたいなことをご理解いただけたかと思います。