言葉にして落とし込むことの効果

辻庸介氏(以下、辻):わかりました。では、本題に一回戻り、会社の成長のところ。間下さんにおっしゃっていただいた……展開がよくわからなくなってますが、佐藤さんはどうですか? 急成長させる上での痛みとか、気にしているポイント。

佐藤航陽氏(以下、佐藤):一番よかったのは、自分がなにを欲しいか経営者自身もわかってない場合があるじゃないですか。本当は自分はなにが欲しいのかを落とし込んでないと、判断するときににブレるんですよね。私がよかったなと思うのは、自分のやりたいこととか本心みたいなものを言葉に落とし込んで、「ちゃんと自分はこの方向に行きたいんだ」というのを、自分自身に対して理解させていたことです。

だいたい危機的な状況は迷うじゃないですか。右に行くか左に行くか意思決定の連続なので。ただ、それがあると、そのときの迷いというのを極力減らせましたし、周りから見ても「あいつこっちに行くだろうな」って予測可能性が出てくるんです。それがすごく重要だなと考えています。

組織を統治する上でも、事業を推進する上でも、やはり迷っていると周りから見てもわかるんですよね。「この人わかってないだろうな」と。どっちに行きたいかもわかってないし、自分たちのボスがなにを考えてるのかよく理解できないと。そうなってくると困るので、内容そのものを理解してもらう必要はないと思うんですけれど、「こいつはどういう動きをしそうか」というのを組織全体、もしくは社内含めて浸透させていくというプロセスはやっておいてよかったと思いました。キャラクターとしてね。

意思決定のプロセスと組織への浸透のさせ方

:そこのキャラクターというところと、浸透させるプロセスというのがあると思うんですけど。僕だと、プロセスにおいてなるべく自分で「こうだ」と、アウトプットだけじゃなく途中経過を共有しながら議論を作ってアウトプットを出していくんですけど、お三方はどういうかたちでそういうプロセスと意思決定をされているんですか? 間下さんどうですか?

間下直晃氏(以下、間下氏):難しいですね。でも、方向性を決めたらあとはチーム先行でやっていきますよ。

:方向性を決めるときには間下さんが「こっちだ!」とやるのか、けっこうメンバーで……?

間下:ある日突然、まったく反対の方向に行くことはないんですね。もともと行こうとしてる方向があって、微妙な軌道修正がしょっちゅうあるだけの話なので。「やっぱりこれやるぞ!」みたいな話はないですよね。どちらかというと、やってることをひとつ変えていく。日々それは変えていくし、日々それは改善していかなくちゃいけない。

吉田浩一郎氏(以下、吉田):でも、間下さんの事業戦略のなかで日本本社からシンガポール本社にドンッと展開したときとかは、あれは非連続な成長になるんですか?

間下:いや、別にシンガポールに本社を移してない。シンガポールに拠点を移してるだけで、これはあくまで連続性のなかの一個なんですよ。海外展開をしていくという流れのなかで、単にキーが必要だった。要は、結局なんで向こうに行ってるかというと、日本側が海外を見ないんですよ。かつ、日本から見てると海外はわからないんです。

吉田:なるほど。

間下:佐藤さんもおっしゃってたけど、行かないとわかんないことはいっぱいあります。日本のことは、いなくてもわかるんですよ。20年もやってるじゃないですか。するとわかるんです。向こうにいてもこっちのことは遠隔でわかるんだけど、こっちから向こうは遠隔ではわからない。「じゃあ、行きましょう」ということと、行ってしまうと会社に対して「海外を本気でやるんだな」というメッセージが伝わるんですよ。そうすると、会社のメンバーも「俺、海外見ないとダメだよね」と思い始めるじゃないですか。

非連続すぎると強みを活かせない?

吉田:あと、シンガポールでブイキューブの既存の事業と違う会社をやったじゃないですか。教育でしたっけ?

間下:あれも既存の事業の延長線上なんです。もともと遠隔教育をやってたので。別に我々は企業のなかの会議とか研修だけじゃなくて遠隔教育もやってて、あれは遠隔教育と研修のプラットフォームの会社なんですよ。もともとあの手のものって我々は簡単なサービスは作ったし、リセールもしたりしてるんですよね。実はウチはあまり非連続なことはやらないんです。

吉田:なるほど。ウチの会社の今年のスローガンは「無限大の挑戦」なので、非連続なことを推奨する会社なんですけど(笑)。

間下:結局、非連続すぎると自分たちの持ってる強みを活かせないんです。

吉田:すいません(笑)。

(会場笑)

:今年のクラウドワークスのスローガンは、今日変わります(笑)。

吉田:「想定の範囲のなかで」に(笑)。

間下:非連続でなにかを作る人がいっぱいいたりすると、なにか生まれる可能性があるじゃないですか。ベンチャーはそうやって生まれてきてるので、それはそれでいいと思うんですけど、僕ら1個の会社として考えたときに「インフラがあって、お客様がいて、既存のシステムがあって、その業界での知名度があって……」というベースがあるので、その周辺を埋めてかない理由はないんですよ。もしその市場がすでに間違いなく広がらないんだったら、当然別のところもあるんですけど。

「連続のなかでも想定外のことは起きる」

吉田:それは、社内のコミュニケーションだと相対的なところがあるじゃないですか。ある人にとっては非連続に見えるという。

間下:それはありますね。

吉田:そこに対して間下さん的にはわりと普通に「いやいや、想定どおりのプランだから」みたいな。

間下:結局、流れを説明していくしかないんですよ。まあ、想定どおりじゃないんですよ。シンガポールにしてもぜんぜん想定どおりじゃなくて、シンガポールに引っ越す半年前に車を買ったりもしてました。まったく引っ越す気はなかったんですけど。

吉田:私はそこが社員のコミュニケーションが違っていて、社員に対して「非連続な変化ってのは必ず起きるんだ」という。だから、今あなたに想定できないことは私も想定できないと。次の社員には「明日にも、来月にもくるかもしれない」というコミュニケーションを常にして、自分にとって理解できないものに対するジャッジに対して……。

間下:たぶん、やってることは一緒ですよ。非連続じゃないと思ってるだけなんですよ。単に……。

吉田:(辻氏に)これ、(2人だけで)話しすぎ?

:傍観者になってる感じが(笑)。おもしろいですよ。

間下:想定外が非連続とは限らないので、要は連続のなかでも想定外のことは起きるじゃないですか。だから我々は延長線上しかやっていかないけれども、もちろん想定外のことはいっぱいやってると思います。

マネジメントで気にしていることは

:ここにいらっしゃるみなさまも部下をマネジメントされている方が多いかと思いますが、どこまで手放して任せるか、どこまで情報を共有するか、どこまで相談してもらうかとか、その案配はすごく難しいと思います。特に、間下さんは何ヶ国でしたっけ? グローバルで。

間下:(佐藤さんと)同じくらいです。9か10くらい。

:見きれないですよね。ある意味。

間下:細かくは見れないです。

:マネジメントにおいて、気にされていることってありますか? 部下が思いっきり活躍できるように。

間下:ウチ的には、各国にキーマンを置けるかどうかだけですよね。その下はキーマンがいれば動きますし、全体の方向性はずっと発信し続けてるので。そこが伝わってさえいれば、そこをちゃんとデプロイするキーマンさえいれば、動きます。

:発信は、どのくらいの頻度でどういうかたちでやられているんですか?

間下:ちょこちょこぐるぐる回って飲み会やってるくらいですかね。四半期に1回くらい。「Web会議を展開してる会社がなんでこんな出張ばかりしてるんだ」というツッコミをたまにいただくんですけど……。

吉田:(笑)。

間下:よく言われるんですよ。Web会議には2種類あって、「現場の方々の無駄な出張を減らしましょう」というご提案と……トップは行かなきゃいけないことがあるじゃないですか。行って話をしなきゃ意味がないこととか、飲み倒すというわけじゃないですけど飲んでコミュニケーション取るとか。実際に行くことによって価値が出ることって、トップになればなるほどあるんですよね。こういう人にとっては、Web会議はどこの国のどこにいようが、本社も含めてマネージメントできるツールなんです。意味合いが違うんです。コストダウンじゃなくて、違ってくるんですよね。

私なんてずっとぐるぐる回り、年間60万キロメートルくらい飛んでますけど、これは各地を回って現場とお話をしたりとか。実際にトップの人間とは日々Web会議でコミュニケーション取りますけど、現地の現場とは取れないので。行って飲んでるだけというのが正直なところです。それでわかることが多いんですよ。