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①ブリーフィングって本当にちゃんとできてる? 〜ブリーフィング再考〜(全3記事)

新規事業を動かす「いいブリーフィング」とは? プロジェクトの機動力を高める極意

2019年2月15日、「U-35限定デジタルマーケティングイベント デジマ下剋上」が開催されました。本イベントでは、若手デジタルマーケターらが集い、ディスカッションを行います。本パートでは、「ブリーフィングって本当にちゃんとできてる? 〜ブリーフィング再考〜」と題し、方向づけと説明ができる人材になるための道筋を模索します。今回は、3名の登壇者とモデレーターが「ブリーフィングとは何か」について意見を交わしました。

新規事業が動き出さない理由

倉田達也氏(以下、倉田):そうですね。言える範囲で(ブリーフィングは済んでいても動き出せなかったケースについて)話します。プロモーションやキャンペーンではなく、新規事業を企業さんとやることがあります。

時間の制約があるといえばあるのですが、新規事業なのでキャンペーンやプロモーションに比べて緩いというか、そんなに時間の縛りがない。そういう新規事業系はブリーフィングが甘いと動き出せなかったり、動いていたことが、「これ、なんだったんだっけ?」となりがちです。

廣澤祐氏(以下、廣澤):先ほどは「南」とか「東」とか抽象的な言葉を使ってしまったのですが、ブリーフィングをしてもらって具体的な目的地はわかっているけれど、地図が一切ないか、もしくは行くための足がないということですか? 資産が足りない、予算が足りないということも1つですよね。

先ほど櫻田さんがおっしゃった、「南だと思っていたら、東だった」みたいな話は、「オリエンされた大義や目的がずれているのではないか」と思ってしまったということですか?

櫻田拓也氏(以下、櫻田):そうですね。例えば「目的に向かいましょう」となって、決まった後に「こういうふうにしたいんです」とクライアントさんから言われた時に、「その方法だと南に行くという目的のところが、少し東にずれてしまうな」もしくは「こっちのやり方のほうが南に早く行けるのに、こっちじゃなくてもいいんですか?」ということは聞いたりします。

兒嶋仁視氏(以下、兒嶋):僕は違う受け取り方をしたのですが、例えば「上司は『南』と言っているけれど、担当者はあまりわかっていなくて、オリエンしたら『東』だった」みたいなこともないですか?

廣澤:それは社内で合意が取れてないということですか?

兒嶋:そう。

廣澤:船長は「南」と言っているのに、船員は「東ですよ」みたいな。

兒嶋:そこでも伝言ゲームが行われている可能性はありますね。

廣澤:広告主側の伝言ゲームは難しいと思います。「櫻田さんにオリエンしましょう」「倉田さんにオリエンしましょう」となった時に、担当者から「今、キャプテンが『南』と言っているようだけれど、僕的に『東』もあると思うんだよね。『南』と『東』で作ってくださいよ」という提示をされたらどうなりますか?

櫻田:すごく生っぽい話をすると、「時間とお金があればいくらでも」です。

廣澤:そこは提案しますよということですね?

倉田:僕もしますね。

全員の認識を合わせるための提案が必要

廣澤:「『南』も『東』も作ってよ」と言われたら『南』も『東』も行路、地図は作ってくるということですか?

倉田:作りますが、パワーの掛け方はどちらも100パーセントにいくパターンもあるのですが……。

兒嶋:確率が高いほうに寄せている?

倉田:確率が高いほうに寄せているように見せますね。

廣澤:「南」と「東」を両方出すけれど、「『南』じゃないですか?」という、『南』寄りの案を出していくということですか?

兒嶋:そこでけっこうイニシアチブを取ってしまうのではないでしょうか。「東」を噛ませ案にして、「南」に誘導する。

廣澤:そうなってくると、地図の書き手が実は船長になっているというケースですよね?

兒嶋:そうですね。

廣澤:イニシアチブは本来、広告主にあったはずなんだけれど、広告主側の船長は「南」、担当者は「東」と言っていて統合が取れていないから、「団員である我々でやっちゃおうぜ!」という意味に聞こえたのですが、そこは間違っていませんか?

倉田:いやいや(笑)。イニシアチブを取るつもりではないです。ただ、いいプロジェクト、いいキャンペーンにしたいので、ちゃんと全員の認識が合わせられるかという提案はします。

廣澤:倉田さんはたぶん、「船長が悪い」ということではなくて、その船全部をちゃんと正しいところに導きたいから、そういうふうにしているということなんですね。

倉田:そうですね。いい表現をしていただきました。そうです。本当にそうです。

(一同笑)

廣澤:誰か一人が悪いわけではないという感じですね。(櫻田氏に対して)なんかちょっと言いたそうですね。

櫻田:そういえば自分は、「ダメなブリーフィング」は何かを言っていなかったなと思いまして。やはり「人によって理解が異なる」ものが、一番ダメなブリーフィングだと思っています。曖昧にも結びつくし、南なのか東なのかという話にも結びつきます。まず、最初に上司の方が部下に指示をするタイミングで間違わないようにしたいですね。

動き出せないのはブリーフィングが甘いから

倉田:ちょっと関連したコメントになるかわからないのですが、時間は大丈夫ですか?

廣澤:ぜんぜん大丈夫ですよ。

倉田:僕はオリエンを受ける以外に、オリエンをするという立場で、社内のメンバーにブリーフィングをすることがあるのですが、先日インターンで……。

廣澤:そのブリーフィングは、倉田さんが自分たちの事業を起こすためのブリーフィングですか? クライアントワークのブリーフィングですか?

倉田:クライアントワークですね。

廣澤:クライアントワークを伝えるということですね。

倉田:そうですね。一緒に新しいことを作っていくものなので、クライアントさんのブリーフィングも、めちゃめちゃ固めてはいなかったんです。ただ、「もう動き出さなければいけない」「社内のメンバーを巻き込まなければいけない」ということで、インターンのメンバーと連動してやっていたのですが、「これの目的はないんですか?」みたいなことを言われた時にハッとしました。やっぱりブリーフィングが甘いと動き出せないんだなと思いました。

廣澤:そこは、倉田さんが勝手に定義するわけにはいかないから、クライアントに対してもう1回ヒアリングしようということになるんですね。

倉田:そうです。

廣澤:なるほど。「曖昧が悪い」と言いつつ、めちゃくちゃ曖昧な会話をしていますね。

(一同笑)

兒嶋:この会話は抽象度が高いですよね。

廣澤:後で簡単にはまとめようかなと思います。では次に、「『ブリーフィング』が良いと、何が良くなるの?」というところですね。ちょっと出てきていたとは思うのですが、ブリーフィングがいいとどうでしょう。

良いブリーフィングは施策を打つスピードを速める

櫻田:スピードですね。スピードが速くなります。

廣澤:それは何のスピードですか?

櫻田:施策を打っていく、動いていくスピードが絶対に速くなりますね。例えばクライアントさんからのブリーフィングがよくない中で、僕が作るじゃないですか。僕が作ったとしたら、そこでたぶん1、2営業日かかりますよね。

廣澤:整理しなければいけないですからね。

櫻田:それからクライアントさんに確認してもらって1、2営業日かかりますよね。そんなことをやっているうちに5営業日、1週間を費やしてしまう。そうではなくて、クライアントさんが最初にブリーフィングをきちんとされていた場合は、この5営業日はないですよね。

僕も含めて、時間だけは誰にとっても同一のものなので、時間が一番大事かなと思う時があります。今日は「何を言っているんだ?」と社内の人に笑われてしまうようなことを話しているんですけれども、偉そうに言ってもなかなか自分もできていないことはあります。

廣澤:兒嶋さんの経験した数あるブリーフィングの中で、クライアント的に「これは俺的に満足!」みたいな、「イケてるブリーフィング」だったなと感じたものと、さっき言っていたような「ちょっとこのブリーフィングは悪かったな」と思う瞬間があったと思います。よかった時、自分が「イケてるブリーフィング」ができたなと思った時は、その先、何がスムーズでしたか?

成功しても失敗しても納得感があるプロジェクトになる

兒嶋:圧倒的に成果が違いました。アウトプットされるもの、制作物、施策も含めて納得しています。実際に成果が出たというのもありますが、納得度が違うというか、そもそも出てきたアウトプットが「なんかこれ違うんだけどな」ということにならないです。

廣澤:そこがずれないんですね。

兒嶋:ずれないので、失敗したとしても納得感がある。

廣澤:お客さんのインサイトとか、詰めていった施策のロジックに対して適切なものになったんだけれども、ハマらなかったら、自分なりに「ここのインサイトの設定を間違ったのか」とか、「施策とのインサイトのマッチが不具合だった」とか、何かしらの反芻ができるということですかね?

兒嶋:そもそもの時点で納得度があるということですね。

廣澤:そうすると、まず目的が大事だというのはよくある話ですけれども、自分たちが作った目的があって、かつ、やった後にちゃんとフィードバックできるような設計図になっているかが大事だということですかね?

兒嶋:そうですね。あとは、自分勝手なもので、上がってきたものが「違う!」と感じる時があるじゃないですか。そうすると、「俺は悪くない!」みたいな思考になってしまうんです。それはそもそもよくないと思っています。

廣澤:「俺はちゃんと言っている!」ということですか?

兒嶋:そうですね。「俺は言っているつもりなんだけど」みたいなことです。僕が悪いんですけどね。なので、ブリーフィングがよくなると、自分の中での納得度が上がるというところですね。自分の話になっちゃいました。

廣澤:なるほど。最後に倉田さんは何かありますか? アグリーだったら次に行きます。

倉田:アグリーで。

(一同笑)

どんな訓練をすればいいブリーフィングができるか?

廣澤:Twitterの最新のコメントに、「早く、上手いブリーフィングの作り方を知りたいです!」と来ていますが、次は「『ブリーフィング』は訓練できるの?」というテーマです。では、倉田さんからいきましょうか。ブリーフィングは訓練できるんですか?

倉田:僕はできると思います。

廣澤:どうやって訓練するんですか?

倉田:僕が最近やっていることの1つは、オリエンでもいいんですけれど、ブリーフを「その場で打ち返す」ということです。例えばブリーフィングの内容だったり、オリエン項目が文字でまとまっていたりして、それを確認する場だった時に、「こういうことで合っていますよね?」というメモ帳を、そのままテキストにする。

廣澤:細かく確認するということですか?

倉田:そうです。細かく確認する。理想は「打ち合わせの場で」です。

廣澤:今の話は、倉田さんがブリーフィングを受けた時に、「受けたブリーフィングを早くいいブリーフィングにしていくには、そういうオペレーションが必要なのではないか」ということですね?

倉田:そうですね。それはブリーフィングを受けた側の場合。ブリーフィングを作った時も、例えばガチガチに100パーセントのものではなく、20パーセントくらいのものでいいと思います。

廣澤:余白を残すということですね。

倉田:相手に当ててみて、リアクションを見て、「量質転化」のような感じですね。

廣澤:では、倉田さんの中では一緒に作っていく前提ということですか?

倉田:そうですね。そちらの方が動き出す時に「これは何のためだっけ?」という、先ほど話したようなことが起きにくいのかなと思います。

廣澤:なるほど。櫻田さんはどうですか? これは訓練できますか?

船頭多くして船山に登りがちな日本

櫻田:できると思います。僕は最初にPR会社にいて、今はデジタルマーケティングの業界にいますが、デジマの業界に来た時の方が「ブリーフをしっかりと作り込んでいるんだな」と思いました。とくにWebの制作ではRFP(提案依頼書)や要件定義をしていくと思いますし、システム開発の現場だったらなおさらかなと思います。

そんな中で僕がブリーフを作る時に気をつけているのは、「誰に」というところ……Who、What、Howですかね。「誰に」「何を」「どうやって」をきちんと伝えるようにしています。あとは大前提としてWhy、つまり「何で」というところかなと思います。

廣澤:なるほど。兒嶋さんはいかがですか?

兒嶋:一言で言うと「(訓練は)できる」なのですが、ポイントは一人でやらないということですね。今、システムのRFPみたいな話もありましたけれど、僕はECの構築もやっていて、この前サイトのリニューアルをした時に、RFPを半年近くかけて作ったんです。半年は盛りすぎかな、3、4ヶ月ですね。

一人で作ってしまうと思考の限界があるので、社内、社外のステークホルダーすべてにヒアリングして、情報を漏れなくダブりなく抜けなく出すようには心がけましたね。

廣澤:あえて2人へのアンチテーゼでいく感じで申し訳ないのですが、「ブリーフィングをみんなで作っていこう」となった時に、日本では「船頭多くして船山に上る」という状況が多いと思うんです。ストラテジック・プランナーや経営者でもいいのですが、圧倒的なチームリーダーなり意思決定者が、「南なんだ」「何が何でも南に行け」「金は多少はみ出ても構わないから、南に行け」というリーダーシップの取り方もあると思っています。

でも、倉田さんと兒嶋君は、どちらかというと「みんなで地図を描こうよ」という議論をしながら作っていくスタイルだと思います。この「一人がリーダーシップを発揮して作る」ということについてはどう思われますか?

倉田:ありだと思います。

ブリーフは一人で作るべきか、チームで作るべきか

廣澤:では、その人が仮に、さっき兒嶋君が言っていたような、「やってみたけど、こっちの道は間違っていた」という時、ちゃんと責任を取ってくれればいいという話ですか?

兒嶋:そうです。それで社内の理解をもらえているならばOKという話です。

廣澤:そのチームリーダーが「圧倒的に南だ」と言った時に、上の人も含めてということですね?

兒嶋:アグリーを取っているという前提が必要です。

廣澤:そのさらに上が「東」と言っているのに、「いや、圧倒的に南だ」と言うのはまずいという話ですね?

兒嶋:まずいですね。

廣澤:(櫻田氏に対して)「船頭多くして船山に上る」という状況になるのか、みんなで作るのかというところでいうと、どうですか?

櫻田:1人で作れるなら、それが早いですから、1人で作るに越したことはないんじゃないですかね。ただ、ビジネスではチームで動くので、出発点は1人かもしれないけれど、そこからみんなでいろいろ修正を加えたりするのは、いいことかなと思います。

兒嶋:だから8割くらい1人で作って、2割をみんなで補強していくようなイメージかなと思いますね。

櫻田:ブリーフを自分で作ってそのまま送るということは、少なくともまだないですね。やっぱり周りの人に確認してもらっています。

廣澤:なるほど。先ほどから僕、ずっと拾わなかったんですけれど、ここでやっと拾おうと思います。「Why」の話です。ブリーフィングを作る時に、よく「目的が大事だ」と言われます。

「目的とは何ですか?」といった時に、たぶんクライアントから降りてくる目的というのは、「今回の売上の目標は、前年比105パーセントです」「105パーセントの売上目標があって、それをなんとか達成してほしいです」といったものです。

試算と予算の兼ね合いをどう考えるか

廣澤:もしそれがブレイクダウンされているブリーフィングだったら、例えばうちみたいな「BtoBtoC」で、最終的に店舗で買っていただくようなビジネスだった場合には、「そのためには認知率が60パーセントは必要だ」ということになります。

その中で、「トライアル率が何パーセント必要で、リピーターがこれくらい来れば、年間として何万個くらい売れる。そうすれば利益率も売上も確保できるだろう」みたいな考え方をしていくわけです。

これは一見、すごく筋が通っていそうですが、僕は「本当にそうかな?」と思うところがあります。みなさんは、まず「なんで売上105パーセントなんですか?」というところに疑問を持たないですか?

櫻田:黙っちゃった。

(一同笑)

倉田:いや、今みたいにそこまで完璧なのがくると、何て言ったらいいか……。ちょっと切り込みにくい。

櫻田:まず、僕はそんなに完璧に言っていただいたことはあまりないですね。ないと言っていいのかわからないですけれど、少ない。

廣澤:兒嶋さんはどうですか? 兒嶋さんはダイレクトでやっているから、「これくらいいくだろう」という試算が立てやすいと思うんです。

兒嶋:立てやすいですね。

廣澤:逆に言うと、試算が立てやすいのは、「今回はこれくらいの予算が付いていて、前年比で120パーセント、行けるだろう」という、予算からの逆引きになると思うんです。

兒嶋:そうですね。

廣澤:組織的に仕方がないことだとしても、兒嶋さんの中では今の予算感だと120パーセントなのに、(会社は)デジタル化時代だからダイレクトを強めていきたくて「EC化率を上げていきたいから、130パーセントを出してくれ」と言われた時は、どうします? 社内でそういう話になったんだけれど、ブリーフィングはしなきゃいけない。

試算と予算が乖離しているときの対応策

兒嶋:ブリーフィングしないといけないけど、目的をどうするかということですね?

廣澤:「会社からは130パーセントと言われている。でも、自分の今までの経験やデータの積み重ねから考える試算では、この予算感だといいところでも120パーセントだろう」という時、どうします? ブリーフィングを120パーセントもしくは130パーセントでやってしまうか、そもそも120パーセントと130パーセントという数字のすり合わせをしていくのか。

兒嶋:それだったら一旦、130パーセントで作りますね。

廣澤:なるほど。その場合、与えられている予算だとハードルが急にギュッと上がっちゃうと思うんですけれど、そこはどうクリアしていくんですか?

兒嶋:Webの世界は言ってみて、やってみて、というところもあるので、1回130パーセントのまま走って、途中で軌道修正できるように、プランB、プランCをちゃんと用意しておく流れですね。

廣澤:なるほど。では、1回は130パーセントで作るけれど、この10パーセントのギャップは認識した上で、ちゃんとそれは説明していくということですか?

兒嶋:そうです。

廣澤:「正直、見込みは120パーセントですよ」と。

兒嶋:はい。

廣澤:「ここは10パーセントの乖離があるけれども、130パーセントと言われているので、トライさせてください」ということですか?

兒嶋:そうですね。「130パーセントいかないの?」と言われて、「いけない」と言うのも自分のプライド的に腹が立つじゃないですか。そこじゃないですかね。

廣澤:「言われたら、とりあえずがんばってみる」というスタンスということですね。

兒嶋:そうですね。

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