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クラウドファーストは、常識やんね(と東急ハンズは思ってます)(全3記事)

「クラウド化は、コスト削減のためとちゃいます」 東急ハンズ・長谷川秀樹氏がAWSイベントで語る

東急ハンズにて情報システムと通販事業の責任者を務める長谷川秀樹氏が、AWS Cloud Roadshow 福岡 powered by Intel に登壇。大手小売企業が仮想サーバを導入するにあたって注意した点、また新しく気がついた点を具体的に列挙。後発組へもAWSの採用を勧めました。

東急グループにおける情シスの責任者が登壇

長谷川秀樹氏:東急ハンズ、長谷川でございます。よろしくお願いします。「一体何者やねん?」っちゅうところなんですけども、東急ハンズで情シス(情報システム)と通販事業の責任者をやっています。ハンズラボという会社で、これSI(システムインテグレーション)の会社なんですけど、そこで代表やらさせてもらっています。

あとは東急不動産ホールディングスのほうで、マーケティングIT戦略部長みたいなのもやらさせてもらっています。今日はどっちかと言うと、ユーザー企業の情シス部長みたいな感じの人がしゃべってるよ、という風に聞いてもらえばいいかなと思います。

AWSの使用用途

E-JAWSはエンタープライズの(AWS)ユーザー会です。ですからAWSを使うという会社だけ集まって「お前のとこではどうやって使ってんねん」みたいにお互い情報交換をする、そんな感じです。そこのコミッティメンバーをやらさせてもらっています。

前にちょっとアンケート取った感じのところでは、これ当たり前なんですよね。大体去年のデータですけども、開発機、あるいは情報系で始めてますよと。どうしてもこの流れになると思います。

Windowsが出てきたときにUNIXから「えー? Windowsって基幹システム動くの?」みたいなことを言うてたときも、だいたい開発とか情報系から行って基幹系という流れ、ここのクラウドでも同じような流れでみんな移行して行っているような感じになっています。

ちょっと特徴的なところで行くと、VPCとか、Direct Connect。Direct ConnectっていうのはAWSと既存のデータセンターを専用線で直結するサービスなんですけども、(社内システムが)いきなり全部ドーンとは移らないので、まずは専用線で直結して、バーチャル的に大きなデータセンターのように見える形にして、それからどんどんどんどんと移行していくと。

こういう感じでは、エンタープライズのユーザーはDirect Connectを相当使ってると言っていいんじゃないかなと思います。では本題に入っていきたいと思います。今日ちょっと時間も少ないので、チャッチャッと行きたいと思っています。

数あるクラウドの中から、なぜAWSが選ばれるのか

うちは2010年ぐらいだと思うんですけど、そこからサーバーはもう買ってないです。新規物は全部AWSです。AWS中心に物事を考えてやっています。何が全部なのかって言うと、細かい管理サーバーとか、ファイルサーバーとか、例えばADサーバーとかですね。そういうのも含めてAWSのほうにドンドコドンドコと載っけていくということをやっております。

たぶん今年度中ぐらいにはほぼ100%行くんちゃうかなと思います。ちなみにうちの規模感で行くと、今(年間売上が)800億円ぐらいの会社なんですけども、ラックで行くと13ラックぐらいオンプレ(自社運用)でデータセンターを借りているような感じです。その13ラックぐらい借りられるところを全部ボコーンと移す、という感じで今やっているところです。

なんでクラウドなのか? と。いろいろあるんですけども、やっぱ僕らもきっかけというか、BCP対応というところがありました。“Multi AZ(マルチ・エーズィー)構成”って書いてありまして、これAWSの用語なんですけど、単純に言うと複数のデータセンターが数十キロ離れたこっちにあって、それが“コールド/ホット”じゃなくて“ホット/ホット”でずーっと動いていますよと、そういうようなものです。

これ、我々のような(売上)800億円の企業がオンプレでやろうと思うと、理論上はできるんですけど、現実には、コスト上無理なんですよね。2つのデータセンターを借りて、その間を太~い線でつないで、同じようにサーバーを立ててちゃんと同期するようにシステムを作っていく。

我々の企業規模で行くと、それを自前でするっていうのは理論上は可能なんですけど、現実的にはまぁ不可能ですね。(AWSだと)それができるとか、いろいろあるんですけども。

最初は多めに借りておくのがミソ

あとデータの冗長性。これも似たような話なんですけど、僕も結構サーバー好きで、オンプレでデータセンター、自分でベンダー呼んで、これ借りて、って一生懸命やってきました。RAIDも0+1やな、5にして消したらあかん、やっぱ0+1で行こうとか一生懸命やってたんですけれども。

このS3っていうのは、データをポーンと投げ込んだら勝手に3か所以上のデータセンターに書き込んでいく、というサービスなんです。自分で一生懸命、ファイバーチャネルもタスキ掛けでクロスでやって……っていろいろ考えて組んでいたのがアホらしくなってくるぐらいに、サービスがある。

S3はAWSってどんどん値下げしていくので金額を忘れていくんですけれども、1ヶ月で1GB当たり2.5円だとか3.5円だとかそんな感じやったと思うんですけど、それぐらい安いという感じなんで。だから今まで一生懸命作っとったっていうところに、こういうふうなメリットがあるよというところ。

サイジング。今日はSIの会社さんもいらっしゃると思いますけど、みなさんの会社でサイジングやって当たったことありますか? ないですよね。僕もないんです。僕もずーっとやっていて、サイジング当たったこと1回もないです。

既存のやつを単純にリプレイスするサイジングは当たりますよ、既存があるんで。今までなかった新規物でやるときに、サイジングとかいろいろゴソゴソやるんですけど、全然当たらない。もうあれは当たらないためにサイジングしてるんちゃうかと思うくらいです。

でもAWSってディスクもそうですし、メモリもそうですし、CPUもそうですし、(サイズが)間違っていたら直したらいい。要はサービスを立ち上げた時にこけたら怖いから、多めに持っとくんですよね。AWSをブイーンとボリューム上げるような感じで。

それが「おうおう、余裕やんけ」「落ち着いとるからもうええやんけ」ってなってきたら、ボリュームをブイーンと下げていくような感じにして、だいたいこのぐらいのスペックで行けるなぁと思ったら“リザーブド”と言うんですけど、1年間借りるという契約をする。そうすると値段がそこでどーんと下がるわけなんですけども、そこでどーんと下げる。

だから最初高めに持っといて、余裕をかましとく。最初低めでやって「やばいやばい」って言って上げるのはあきませんよ、そりゃあビジネスが倒れよるかもしれへんからね。上げといて、下げて、FIXさせる。こんな手法で、ものすごい楽になりました。

サーバーを調達してからの期間もそうですし。買っても「やっぱり足りませんでした」「なんじゃ、またディスク増加かい」とか、なんやメモリがどうのこうのとか言ってるのがなくなった。これは非常にストレスがなくなって良かったかなと思います。

検討する時間でトライ・アンド・エラーを重ねたほうがトク

なんでAWSなのか? ちゃんとした会社さんってコンサルティング会社を雇ってマイクロソフトとかGoogleとかいろいろ並べて○×△をつけて点数つけて、とかやると思うんですけど、これは僕のやり方からすると、それはもう無駄や、と。3ヶ月ぐらいかけて、何百万かわからんけどコンサルティング会社に金かける、これは無駄やというのが僕の考え方です。

僕らの場合はどうしたかというと、当時やっぱりITに詳しいという人にポンポンポンポン投げたね。「クラウドってさぁ、どうなん?」って聞くと、「もういまやAWSちゃう?」って、大体の人がそう言う。「そやったらそれでええやん。よし、もう決めた、AWSで行こう」、こんなんでいいと思うんです。

だって、○×△ってあんまり意味ないんですよね、自明なことを役員に提出するために一生懸命やっているような感じなんで、それは全く意味がない。長崎さんの資料にもありましたけど、最近ガートナーさんが出した“四角形の右上にAWSがある”っていう図があると思うんですけども、「おお、あれでええやんけ」と。

もし仮に「なんでAWSなんだ?」って役員会で聞かれたら、「ガートナー先生がこんなこと言うてます」ぐらいで、そんなんでええんちゃうかなと思います。

何が言いたいのかというと、「検討するっていうところに時間をかけるのは無駄なんちゃうの?」っていうことです。もう決めてしまって早く導入して、トライアンドエラーをどんどんして、AWSにどんどん慣れる。

癖とかそういうところも学びながら、「おっ、これはこういう風に使ったらええんか」っていうところ、そこをどんどんどんどん繰り返す時間を持って欲しいがために、どこのクラウドにしようかなという時間をカットしましょうよ、と。そんなんで、おまけに金あるんやったらトライアンドエラーの時間に回しましょうよと、そういうふうに思っているわけです。

コスト削減のためのクラウド化、ではない

あと、これは他の方と結構意見が違うと思うところなんですけど、うちの場合はあんまり「コスト削減」ということはもう考えてないです。AWSの導入当初にざざっとは計算しました。これうちのデータセンターから移したら、いったいいくらになるんやろか? ざざっとは計算しました。

それ以来は、基本的に計算してないですし、見てもないです。比較もしてないです。だって意味がないんです。車が(マニュアルの)ギアチェンジからオートマに変わるっていうような、そういうことなんです。

たぶんAWSも会社だから「『コスト削減』って言わんと、みんな使ってくれへんかな?」っていうところでキーワードを言っていると思いますけど、僕からするとコスト削減とかどうでもいいんです。マニュアルの車からオートマに変わるんです。

その時に値段が下がったか上がったかとか、そんなこと言うてたかって言うと、言うてたかもしれんけど、そんなことはどうでもええということなんですよね。自分でゴソゴソやるよりも、ある程度自動のほうがいい。規模は違うけど似たようなことです。

うちのオカンも言うてました。うちのオカンはずっとマニュアルに乗ってたんですよね。なんでかって言うと、1回新聞で、オートマなんだけどなんか知らんけどバックギアに勝手に入ってバックでボーンと突っ込んでもうた、っていうのを見て「あんなん怖い」と。

「自分でギアやるんがええ」みたいなこと言うてましたけども、まあそれは非常に一部な車の話で、そこでオートマのほうに移らんっていうのはどうかしてるよなぁと思いながらも、そんな話と同じなんです。基本的にはオンプレではできひんかったことをやると。できひんかったことをできるようになるというところが基本な考え方じゃないかなぁと思っています。

コスト削減したいんやったら、サーバー5年間使ったからリプレイスとか変なこと言わんと、ずーっと継続してサーバ使って、あとデータセンター業者に「値下げしろ」ってずっと言い続けたってええやんかと。そんなにコスト削減だけが重要なんだったら、と思います。

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