自社開発はコスト削減につながる

長谷川秀樹氏:ここでハンズの状況のほうに入って行きたいかなぁと思います。今日はAWS中心の話なのでどんどん行きます。今オムニチャネル推進部長ってやってるんですけど、2008年からITとか通販とかソーシャルマーケティングとかいろいろやってますよ、という話です。

あと、ITでいくと特徴的なのは、僕らは"自分たちの従業員で"自社開発を今やっています。"自分たちの従業員で"です。エンジニアの派遣会社から来てもらってる人は、いません。自分たちのリアルな従業員でやっているということ。AWSも自分たちの従業員で運用しています。

アドバイスはもらうんですよね、他の会社さんから。プロフェッショナルアドバイスは2週間に1回ぐらい来てもらったり話したりするんですけど、基本自分たちでやってるよという、そんな会社です。

これが、2009年はこんなシステム、要するにバラバラでしたということなんですけれども、

これが、きれいになりましたよというところです。

それでここを僕らが内製化でやったのは、人数。これ情シスの部員なんですけども、濃い緑のところが開発エンジニア兼保守で、黄緑のところがいわゆる企画とかベンダー調整だけやっていた人。開発も保守もできるエンジニアをどんどん増やしていった。これ自社社員です。

外部の人は数人、2人ぐらいずーっといてもらっていたんですけど、2013年度に「もうええんちゃうかな」と思って、来てもらっていたのをやめたという感じです。「こんだけ人間入れたらITコストも膨らんで行くんちゃうかな?」ということなんですけども、ところがどっこい、ITコストはどんどん下がっている。

人件費は上がっているんですけれども、他に払ってる金が下がってるから、全体的には少なくなってるという感じで我々のところは運用してございます。

システムの統一がもたらしたもの

これは我々がAWSを使ってる領域です。今日現在、まだ青のところがあるんですね。会計・人事、経費精算、給与計算、ポータル、ECも当たり前なんですけど、POSサーバー、ファイルサーバー、ADサーバー、これも全部移してしまいました。あとはちょっと青のところが残ってるんですけど、だいたい今年度中ぐらいには換えたろうかいなぁと思っております。

なので今年度中には全部本当に黄緑(AWS)になるんですよね。全部黄緑、1つも何にも残さず黄緑。メールやスケジュールはGoogle Appsを使ってるんで、あれもまあクラウドでそのまま。ただですね、僕らハンズラボっていうのをやってて、INFOX(カード決済端末)センターとつないでるものがあるんで、実は1個だけオンプレが残るのがあってですね……。

それはISDN接続しなければならないもの。AWSってISDN接続のもののルーターはまだ置けないというか、そういうサービスがないので、そこだけは実際問題は残ります。しかしながらISDN接続が必要なもの以外の、要するに全部なんですけど、それはAWSのほうに移行するというところでやってございます。

ここにあるパッケージ、本部バックオフィスと書いてある「SuperStream」とか「OBIC7」とか、そんなのはもちろん担当ベンダーさんにやってもらうわけなんですけども、ここに書いてある本部基幹系、業務系とかですね、店舗、左側のほうですね。営業系のもの含めて、これは自社従業員にてやっていくという感じでやっておるわけです。

これを今のAWSの図で書くとこんな感じになります。AWSのSEというか、意味わかってる人はわかってる、わかってない人は何書いてるのかようわからへん、というような図になっております。右側にオンプレが残ってて、左側のとこはAWSですよという感じになっています。

これは大体これぐらい使ってますよというところ。

AWS導入後のシステム別評価

なんかええことばっかりしゃべってるような感じはありますけども、これはやっぱり少しはあるんですよね。勉強して苦労して失敗もして、だから今こういうふうにうまくいってますよ、という風に言えるところはあるんちゃうかなと思います。

例えばどんなことがあったかというと、POSサーバーを移行するときに東芝テックさんにやってもらったんですけど、なんか「文字のコードセットがなんとかかんとか」「文字化けがなんとかかんとか」とかいう話があって。

「あぁそうなんや、ほんでどうしたらええの?」っちゅうことで、なんか「コードセットっていうのをもう1回書いて、リコンパイルしたら直ります」って言うんで、じゃあそれで直してくれよみたいな、そんな感じでやっていくというところです。

いちばん最初に東芝テックさんにPOSサーバーをAWSのほうに移してくれと言った時も、まずネガティブがもちろんありました。「いやぁ~、ちょっと無理だと思うんですよね」とか、技術者おらんとか。

だいたい100万回ぐらい「ええねんええねん、やってくれたらええんや。俺の金でお前ら実験できるんだからええんちゃうんか」ぐらいのことをバーバー言うてると「まぁしょうがない、やろうか」みたいな感じでやっていただけるという風なところです。大体そうです。

ただ今日現在は2014年なんで、もう相当変わってきている。「当たり前やんか」「SAPもやってるし普通やん」っていう感じかもわからないですけども、やっぱりやったことのないベンダーさんからすると「いやぁ、ちょっと責任持てませんから」という話は入るかもわからないです。でも1回やってみると「あ、AWS移行全然できまっせ」みたいな話になるというところでございます。

会計・人事っていうところは、まあハードウェア保守から解放されたぐらいです。要するに、これがレンタルサーバー的な扱いなんですね。ここに書いてあるところっていうのは、そんな形です。だからいくつかはそういうマイナーポイントがあるんです。あるんだけど、ちょっとそこを乗り越えていくというところです。

他サービスへの将来的移行に備えることは無意味

あとはそうそう、あったね。POSを自動でオン・オフするのにマジックパケットをブロードキャストでパーンと流すんですけど、それもAWS上はトラフィックの問題で禁止されているので、それはできなかったです。

しかしながらそれはマジックパケット全部にボーンと飛ばすという処理をやめて、時間起動タイマーでPOSがオン・オフするようにプログラムをちょっと変えるということで回避するとか、そんなことをやっていました。いろいろ、ちょびちょびはあるんです。ちょびちょびはあるんだけど、そこで僕、やっぱり人間って大きく2つに分かれると思うんです。

「それ見たことか!」みたいなことを言って「あかん、やっぱり元に戻ろう、元に戻ろう」みたいな重力が働く人と、「そんなもん関係ない、それを直すんが仕事やろ!」みたいな感じで何が何でも前へ進もうとする人。これ、人として、ビジネスマンとして、どっちの方向の人間になるんかっていうのはもう非常に重要なことかなぁと思います。

1回決めたら何が何でも前へ前へやっていくというようなところは重要かと思います。それをまたトップの、なるべく上のほうの人が「絶対にやる」と決めてみんなに指示を出すとか、みんなに言う、後方支援を出していくというのはめちゃめちゃ重要かなと思います。

レンタルサーバー的な使い方から、“フルマネージド”っていう言葉があったかと思うんですけれども、フルマネージドっていう言葉は、ちょっとわかりやすく言うと「AWSに任せといたら何でもやってくれんねん」とか、「今までできひんかったことができんねん」とか、そういう風な意味と思ってもらえればいいかと思います。

我々はレンタルサーバー的なものから、今までにできひんかったことをやるという方向へどんどん移行していきたいなと思います。だからAWS特有のサービスってあるんですけれども、それはどんどん使っていこうと思うんです。今までなかったけどAWSにしかないようなサービスはどんどん使っていく。で、そこでみんなから言われるのが「ベンダーロックインされるんちゃいますか?」っていう話。

「AWSにベンダーロックインされて、エラいことになるんちゃいますか?」っていう質問をよく受けるんですけども、今までのベンダーロックインはまぁネガティブな意味で使われますよね? 僕、それとはちょっと話が違うと思うんです。

それは何かって言うと、今までのベンダーロックインって、例えばSI業者がドーンとあって、そこのSI業者にしか頼むことができないみたいなこと。よくあるのが、初期の提案の頃は一生懸命やってくれて値段も下がって良かったんやけど、1回どーんと入ったらもう後は仕様変更の見積もりも高いし、だんだん遅くなっていくし……みたいな、そういうのが悪い感じのベンダーロックインのイメージだと思うんですね。

でもそれって、人間だから、相手がね。人間がやってるからサボってくるっていうところだけなんですね。見積もりを出すということとか、「ちょっとこれぐらいだったらええかな?」とかですね。でもAWSの場合は、我々がAWSにどっぷり浸かろうが浸かるまいが、勝手に値下げするところは値下げしていくんです。“勝手に”です。彼らは僕らと関係ないんです。

あと、僕らがAWSにどっぷり行こうが行くまいが、一生懸命やるところは一生懸命ずーっとやっていくんです。サボりようがないんです、構造的に。「どっぷり浸かっちゃってるからあいつらはもう適当でええやん」っていうさじ加減ができないんですよね。当たり前ですよね。クラウドベンダー、クラウドサービスって、そういうもんですよね。

だから、今までのベンダーロックインとはちょっと違うんちゃうか? というようなところです。「そうは言うてもベンダーロックインあるんちゃうの?」あるかもわかりませんねと。「じゃあ次にもっといいのが出てきたらどうするんですか? マイクロソフトでもGoogleでも、もっといいのが出てきたらどうするんですか?」あるかもわかんないです。

その時には、ここまでAWSが大きくなると……、今までの歴史でもそうだったじゃないですか。次の会社は移行ツールを絶対用意するんです。それは、MSなのかGoogleなのか第三者の違う会社なのかわからないですけど、「AWSさんからの移行ツールを用意しました、これでどうぞうちに来てください!」絶対こうなるんです。

だからそこにビビって、片足だけ突っ込みながらやるのは僕はあんまり意味ないんちゃうかなと思います。やっぱり、しゃぶり尽くす、使い倒すというところが重要なんじゃないかなというふうに思います。