高所恐怖症の宇宙飛行士もいる

竹本直一氏(以下、竹本):今、高層ビルがどんどん建ってますよね。ドバイなんか1000メートルくらいの、800メートルですかね? 世界一高いビルあるでしょ? 大昔、エンパイアステートビルよりは低いんですけど、国連ビルが初めてできたときに、足元から全部ガラス張りだったんですね。だから職員が怖がってね。

「仕事ができない」って言うんで、囲いをして足元が見えないようにしたことあるんですよね。たかが60階か80階建てくらいの高さでびびってたんですね。ところが今はもう、もっと高いビルが。そうしたら先生、慣れっていうのはあるんですね。

山崎直子氏(以下、山崎):そうですね。余談ですけれども、宇宙飛行士でも高所恐怖症の人はいまして、一緒に飛んだ宇宙飛行士のクルーの中でも、みんなで東京タワーに昇ったときに「いや、俺はこのガラス張りの床には絶対に入らない」っていう方もいました(笑)。

竹本:やっぱりいるんですか(笑)。僕らも高いところは苦手だから。しかし、そういう夢も含めまして、我々はいろいろ日常生活とは違う経験をしたいという願望を持ってますので、そういうことを満たしてくれれば万博としては大成功かなと思います。

ただ、同時に国連が言っております、SDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)ですか。どんなにいいことでも、瞬間だけで持続可能でないと意味がないですね。

だからそうするためには、どういう科学技術が活かされるのかという。科学技術の先進国である日本でなければできないようなものをいっぱい見せることができると思うんですよね。だからそういう意味で、外国の若い人たちが「日本に行ったら面白いもの見れるぞ」という期待を持ってくれるんじゃないかなと期待してるんですけどね(笑)。

山崎:そうですね。私自身は、1985年のつくば科学万博に中学生のときに行きました。それが初めての万博体験だったんですけども、やっぱりすごく感動したのを覚えてます。

「未来社会、こんな世界になるのかな」っていろんなことを、やっぱり想像力を掻き立てられたんですよね。ですから、この万博を通じてやっぱり未来を考えるという、これはきっと次世代のお子さんたちにとってもすごく刺激的なものになるんじゃないかなあと期待しています。

宇宙開発の議論に入るためには技術力が必要

竹本:今、大阪万博も月の石はどこかに置いてあるんですかね? ちょっと僕は知識がなくてよくわからないんですけどね。

山崎:そうですね。アメリカ館で展示されたと聞いていますが、今いろんな科学館でも展示されていますので。

竹本:ええ、まあそうですね。今はいくらでも取れるんでしょうから。

山崎:実はそうですね、2024年には、今度は日本が火星の衛星フォボスからそのサンプルとして砂を持ち帰ろうという計画を立てています。これも世界初の火星の資料のサンプルリターンなんです。ですから、それが2025年の大阪万博にはちょっと帰るまでに。

竹本:ちょっと間に合いませんかね(笑)。

山崎:間に合わないかもしれないですが、火星の砂なども、いずれは展示できたらいいなと思います。

竹本:宇宙がだんだん近くなってきますよね。

山崎:そうですね。

竹本:そうすると、先生みたいにプロじゃなくても、「宇宙旅行に行きたい」って思う一般の人が出てくるじゃないですか。将来はビジネスとして成り立ちそうですかね。

山崎:はい。今おっしゃってくださったとおりに、官民学共同で宇宙産業を盛り上げようとしています。私も現在、内閣府の宇宙政策委員会というところで、政策面から宇宙の議論に携わっているんですけれども、やっぱりこれからは国家事業だけではなくて産業として宇宙が広まっていく時代だと思っています。

竹本:そうなると、各国が宇宙開発競争やってるじゃないですか。中国なんか熱心でしょ。

山崎:すごい熱心です。

竹本:月でもやっぱり「あの部分はうちの領だ」とか主張してるとかいう話がありますけども。やっぱりそういう国際競争というか紛争というか、そんなことにならないとも限りませんよね。ちゃんと整理しておかないと。

山崎:宇宙条約という国際条約で、「月や天体はどの国も領土としない」ということは定めているんですけども、実際に行く力を持った国があれば、そこの周りは他の国は入らないようにすることもできてしまいますので。そうした国際枠組みを作るためには、技術力を持っていないとその議論にすら参加させてもらえないんですね。

でも日本は幸いなことに、例えばハヤブサが小惑星の砂を世界で初めて地球に持ち帰ったという実績もあります。今度は火星の衛星のサンプルリターンをするという計画もあって、そうした技術を持っていることは大事なことだなと思っています。

大阪万博のライバルはロシアとアゼルバイジャン

竹本:ちょっと話が変わりますけども、この大阪万博は、日本の大阪だけで手を挙げているわけじゃなく、他にロシアとアゼルバイジャンという2つの国が競争相手なんですね。非常に強力な競争相手と思っておりましたフランスが、2024年にオリンピックをやりますので、経費がかさむということもあったと聞いておりますが、リタイヤしてくれましたんでちょっとそこはほっとしてるんですが。

ただ、ロシアもアゼルバイジャンも非常に強敵です。プーチンさんもこの間、BIE(Bureau International des Expositions)のメンバーがロシアを訪問したとき、きちっと出てきて「ぜひともやりたい」という指示のもと言っておられたということですし、アゼルバイジャンって中東の小さな国ではあるんですけども、産油国でものすごくお金持ってますし、それからすごい意欲的なんですよね。

加えて最近、(開催の)権利を取るところが途上国が多いんですよ。大阪が2025年、その前2020年はドバイですかね。そのように、「今までやったことのないところでやればいいじゃないか」という意見もあるのが事実なんです。だから、それだけに決して油断はできない。

ぜひとも世界の大半の国から支持を得て、大阪万博を実現したいなと思っているんですが、そのとき日本の訴え方として、我々は未来社会ということをひとつ言ってますよね。

日本は、科学技術を含めたいろいろな未来を築くツールを持っているので、それを世界の人に見てもらいたい。こういうことですので。フランスは環境ということをテーマにしておったんですけれども、フランスは一応リタイヤしましたのでね。

ぜひ、未来社会のデザインという日本の考えたことを世界の若者に受けるようにしていきたいなと思っておりますんで。やっぱりそうなると、受けるのは宇宙の話じゃないかなと思うんですけど、いかがですかね。

山崎:そうですね。本当に竹本先生をはじめ、みなさん大阪万博の誘致を一生懸命してくださっていることは私も感じていまして。ぜひオールジャパンで、日本全体でこの大阪万博の誘致を盛り上げていきたいなと私自身も思っています。こうしたことが本当に日本のこれからの未来社会にとって大きな刺激にもなりますし、また世界に発信する大きなきっかけにもなると思っています。

宇宙から地球を見ることで、地球のことがよりわかる

山崎:おっしゃってくださったように、やっぱり未来を考える上では宇宙は欠かせない点だと思っています。それは決して宇宙に行くだけではなくて、宇宙から地球を見ることで地球のことがよりわかるということがあるんだと思います。

私たちが今置かれている状況を正確に見るためには、やっぱり人工衛星の目だったり、宇宙からの目っていうのが必要で。だから、地球自身が宇宙から見たときに、なにか一つの生命体というんですかね、なにか生きているような感覚すらあったんですね。

躍動感がありますし、自然の豊かさであったり、やっぱりダイナミックに動いている一つの生命体というイメージがある。でも、地球そのものには目もないですし耳もないです。私たちがいろいろな科学の力を持って、地球の目となり耳となって、状況を把握して、よりよい社会に繋げていく。

なにかお手伝いをするようにしていかないといけないのかな。よく科学と自然は対立とも捉えがちなんですけれども、そうではなくて、それを融合して調和させていくのはやはり日本ならではの持ち味だと思っています。

竹本:素晴らしい話ですね。日本は自然と人工の物との調和を図ることが上手いじゃないですか。木造の家とか。みんな自然と調和を図ってますよね。外国のように、鉄とか石で遮断するんじゃなくて、そういう発想で文化を育ててきてますから、大阪万博も日本の文化を世界の人に知ってもらう一つのきっかけになるんだろうと思いますね。

和食なんかもいいんじゃないですかね。健康にいいんですし。世界の人から喜ばれると。いろいろなものがやっぱり、手にできるんだろうと思うんですけどね。とにかく、世界の若者をどう惹きつけるかということですから、日本の売り物にしなきゃいけないのは、日本の人口1億2千万いますけども、みんなが「大阪で万博やりたい」と言ってる姿を、もっとアピールしたいなと思ってるんですよ。

それで、この万博推進のために自民党でも万博推進本部というのを作りまして、二階先生が会長なんですが、同時に超党派で、自民党のみならず公明党とか野党も全部入れて、万博誘致の議員連盟を作っております。

万博招致から開催までは10年以上かかる

竹本:この間、BIEの調査団がパリから来たときに「我々そういうの(万博誘致の超党派の議員連盟を)作ってます」と言ったらえらく評価されましてね。喜ばれて。「それは非常にありがたい!」「それやってると非常に安心だ」。なんのことかと思ったんですね。だいたい万博というのは、決めてから実施まで10年以上かかるんですね。そうでしょ? 

今決めたら、10年くらいかかるじゃないですか。その間に、他の国で政権交代が起こるというわけですよ。そうすると、約束したことが実行できなくなる。我が国はそれはないと思ってるんですけど、意外なことで褒められましてね。良かったなと思ってますが。

いずれにしろ、国民みんなの「大阪万博やりたい」という熱意を外国に知ってもらいたいなという気持ちがございましてね。それで、全国を11ブロックに分けてそれぞれの責任者を決めて。全都道府県47ありますから、2つ除いてみんな議会で決議をしてもらってですよ。そんなこともしながら、「万博に賛同する」「応援をする」という署名活動をしてまして、それも120万人くらいやってるんですよ。

これからまだまだ増えると思いますが、あれやこれや、直接担当していない人も「ぜひ万博を見に行きたい」というムードを盛り上げて、それを世界にディスプレイしようと思ってね。その一つがこれなんですよ。どこかで見てますからね。先生みたいな有名な方が大阪万博のことを言ってたこと非常にありがたいということで、万博特使を外務大臣が任命されたんですよね。

山崎:ありがとうございます。まさに宇宙の分野においても国際協力は欠かせなくてですね。つい先日、3月には東京で『国際宇宙探査フォーラム』を開きまして。数十ヶ国のいろいろな宇宙関係の閣僚級の方々が集まってくださって、将来を議論したんですけども。やはりそうした場を活用しながら、宇宙のこうした取り組みが大阪万博とも通じるということを、ぜひ発信していきたいなと思います。

大阪万博を日本の文化や技術のシンボルに

竹本:我々は日常生活もそうですが、自分のライフワークを考えても、夢があったら励みになるじゃないですか。夢があって、当座何をするかというゴールを決めて、目的を決めて、目的のために実現をする。実現できないときもあるけど。

しかし、自分には遠い遠い夢があるんだと。その夢はずっと失わないと。こういう気持ちが、やっぱり大事だと思うんですよ。それがSDGsじゃないけど、社会全体にとっても同じことだと思いまして。

やっぱり、そういう調和のある社会を作るために努力しようということは素晴らしいことだし、また必要なことだと思うんですよね。この大阪万博がそういう教育の場にもなってくれればいいなと思っているんで。

山崎:そうですね。おっしゃるとおりで、私も今、いろいろな縁のある地の科学館などでお手伝いをしていまして、草の根的に宇宙や科学技術の教育活動にも携わっているんですけども。こうした一つのシンボルがあると、関心を持たれる方が増えると思います。

竹本:先生は大学でも教えておられますでしょ?

山崎:はい、非常勤で教えてます。

竹本:どんな感じですか? 若い人たちやっぱり、こういうものについて。

山崎:そうですね。今、社会にいろいろな分野融合じゃないですけれど、一つの専門分野だけではなくて、より広い目で見る方が増えてきたような気がするんです。だから、横通しでいろいろな分野を繋げて見れる人材が、若い世代が育ってきているので、そうした世代がもっともっと参加されて増えていくといいなと。

竹本:今の若い人たちは、そういう意味では昔より洗練されてると思うから、いろいろな世界の人と繋がって、結果としていいものを作っていくと。そういう行動パターンが上手になってきてると思うんで、そういうことを作りあげるのが日本の一つの文化だと思うんですよね。

山崎:そうですね。

竹本:これはなんて言ったらいいんですかね。ソフトパワーって言った方がいいんじゃないかと思うんですけど、外国に行って、よく日本に対する憧れの声をいろいろな国のリーダーからも聞きますし、若い人たちからも聞くんですけど、やっぱり日本は憧れの的になってるんですよ。

山崎:そうした文化のシンボルであってほしいなと思います。ちょうど2020年、東京オリンピック・パラリンピックがありますけども、その先の2025年に、こうした文化や技術のシンボルとして発信できたらいいなと思います。

東京オリンピック・パラリンピックに続く夢

竹本:融合した文化。融合した技術。そういったものは日本は上手く作ると。日本は平和国家だと。70年間戦争もしてないんですから。そんな国なかなかないんですよね。だからそういう意味で、世界の人々は日本に対してものすごい憧れがあるんですよね。その憧れに応える一つのショーがこれ(万博)だから。

山崎:そうです。個人的には、ぜひこうした次世代の若い女性にも興味を持っていただきたいなと思ってます。

竹本:もう2年後には東京オリンピック・パラリンピックがありますよね。おそらく非常にいろいろな話題が出てくると思うんですけど、その夢の向こうに大阪万博があるという。繋いでいくといいですよね。我々の過去の経験を見ても、昭和39年に東京オリンピック、それから6年後か、昭和45年に大阪万博でしたから6年間ですよね。

今回は5年間ですけど、ちょうどこう連綿として「日本が素晴らしいことやってんだ」ということを見せれば、世界の人は日本に対するさらなる憧れを持つようになるんじゃないかなと思いまして、期待してるんですけどね。

山崎:はい、私も応援しています。

竹本:ぜひとも先生の方でも、一つよろしくお願いしたいと思います。最後に、先生の方から一言なにかおっしゃっていただければありがたいなと思います。

山崎:みなさん、今日はご視聴くださりありがとうございます。2025年大阪万博誘致に向けて、ぜひこの日本の文化と科学が融合したかたちで、竹本先生がおっしゃってくださったように発信できたらと思いますので、どうぞご支援よろしくお願いいたします。

竹本:素晴らしい未来社会を目の当たりに見られる日が必ず来るということを信じて、我々もがんばりたいと思っておりますので、どうぞよろしく応援の方お願いします。

山崎:本日はありがとうございました。

竹本:ありがとうございました。